前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8146字。

依頼受けに行きます。
あと、カリスの時みたいに二ヶ月間の描写がキンクリされてますが、気にしないでください。


ダブルヘッダー

「やっほーカリヤ。今日の依頼はなに?」

 

「今日は二つだ。受諾頼む」

 

リヒトの弟子になってから二ヶ月近く経った。こいつとも結構長い仲になってきたな。

 

「ねぇ、なんで毎回遠いところの依頼受けてるの?」

 

サーマルが受諾の手続きをしながら聞いてくる。

 

「師匠が受ける依頼決めてるから俺にはわからん。ちょうどいい依頼がそれくらいしかなかったか、俺だと遠いところでも短い時間で行って帰って来れるからじゃね?」

 

多分後者だと思う。速度操作は使えば使うほど進化する能力だから、行き帰りに能力を使わせて成長させようという魂胆だろう。

 

「へー。今日も頑張ってねー」

 

「言われなくても頑張りますよー」

 

そう言いながらサーマルに向かって手を振り、ギルドを出る。

 

「さっさと行こう」

 

ギルドを出た瞬間速度操作を使って走り、南の門の前まで移動して止まる。

 

「一個目は南西っと」

 

門を出る前に魔力を全回復させる。再度能力を発動、門を出て南西に向かって走る。一つ目の依頼の場所はカイス南西にある湖と川だ。秒速40メートルで走って四分ちょいの距離だ。まぁまぁ遠い。それに加えて、道中魔物を見つけたら迂回しているのでさらに時間がかかった。けれど、それでも五分ほどで着いた。速度操作さまさまだ。

 

「さて、探すか」

 

今回狙う魔物は透明化している魔物だ。水中に生息していて、体液を分泌して周囲の水の間に膜をつくり、光の屈折率を変えることで透明になるらしい。能力を使えば透明化など無意味になるので、俺に向いている依頼だと思う。

 

「まず湖の方から始めるか」

 

本来その魔物は川の上流にしかいないらしい。それがなぜか下流や湖にも現れ始めているとのことでこの依頼が出たのだ。下からやれば漏れがなく倒しに回れると思ったので、湖の中から始めることにした。

 

『呼気再生』『水泡』

 

背負っていた鞄を降ろし、ダガーと盾以外の装備を全て降ろしてから二つのスキルを発動する。

 

呼気再生は吐いた息に含まれる二酸化炭素から炭素を取り出し、酸素に戻す魔法だ。これを使えば、ずっと水中に潜ることができるようになる。地下に潜るときにも役立つ魔法だろう。

 

水泡は体の表面に濡れない水を纏わせる魔法だ。一種のバリアのようなものになり、水の中に入っても濡れることがなくなるほか、どれだけ深く潜っても水圧の影響を受けなくなる効果がある。そこまで深くないため今回は関係ないが、減圧症の発症を防ぐこともできるだろう。

 

呼気再生も水泡も、発動すれば解除するまで効果が残るタイプのため、詠唱ではなくスキルで発動させた。

 

よし、行こう。

 

ダガーを両手に持ちながら湖の中に飛び込む。

 

……変な感覚だ。水中にいるのに濡れないという違和感も理由の一つだが、一番の理由は常に浮力で浮き上がってしまいそうになることだ。たぶんだが、湖の水よりも、水泡の水のほうが比重が軽いのだろう。水泡の水が持ち上がってしまうため、つられて俺も浮き上がってしまう。常に下に泳がないとすぐに水面に浮いてしまうだろう。

 

あと、独り言に注意だ。今口を開けたら水泡で作った水が肺の中まで入り込んでしまう。いつもの癖でやった瞬間溺死確定だ。ムカデ討伐のときのように、声に出さず頭の中だけで考えなければならない。

 

そんなことを考えていると、速度探知が魔物の動きを捉えた。斜め下一時の方向に1体。一瞬だったが能力適用範囲である3.3メートルに入って出て行った。ドルフィンキックをして魔物のいた方向にすぐさま移動をする。

 

いた。アノマロカリスっぽい形をした魔物の位置を捉えたので、十分に近づきダガーを振る。本来なら水の抵抗で動きが鈍くなるだろうが、加速させているので普通の何倍もの速さで魔物を斬る。

 

少し手応えが薄い。体液の膜のせいで少し軌道が逸れてしまったみたいだ。けれど掠っていたようで、魔物から血が噴き出す。それによって体液の膜が揺らぎ、透明化が解除された。

 

もう一回ダガーを振り、見えるようになった魔物に直接突き刺す。魔物は少しの間暴れるも、訪れる死から逃れることは出来ず死に至る。

 

さぁ次の獲物を探すとしよう。今回倒す必要のある数は15体。あと14だ。

 

どこだどこだー...いた。今度は2体。十一時の方向に1体、二時の方向に1体だ。

 

まずは微妙に距離が近い十一時の方向のほうを狙う。さっきのようにドルフィンキックで近づき、右手のダガーで一度斬る。それで体液の膜を破り、できた穴を左手のダガーで突き刺す。

 

よし、死んだな。ならすぐにさっき見つけた奴を...ダメだ見失った。見えないから一度見失うと大変だな。速度操作以外でも見つけられたらいいんだけど...地道に探すしかない。見つけられさえすれば簡単に殺せるから、見つけることだけに労力を使えるのは幸いだろう。

 

この魔物は人間を襲わない。直接的には人間に害をなさないのだ。しかし、間接的には害をなす。この魔物は雑食らしい。自分より小さい魔物を体液の膜の中に閉じ込めて窒息させ、捕食する。そんな生態の魔物が、本来の生息域を外れて湖まで来ているのだ。

 

おかしいとは思わなかっただろうか。この湖に入ってから一度もあの魔物以外の魔物に遭遇していないことに。そう、全て食べてしまったのだ。それを解決するために、駆除の依頼が出た。国内外来種みたいなものだろう。いっそのこと湖の水全部抜いてしまえば楽なのだが、俺にはそこまでやる力がない。

 

…変なこと考えてないで探さないとな。あと13体。呼吸は魔力がもつ限り続く。ダブルヘッダーなのでそこまで時間をかけることはできないが、ゆっくり探すとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつでラスト...!

 

スパンっと魔物が斬り飛ばされる。血が魔物の切断面から漏れ出し、湖をほんの少し赤色に染める。

 

やっと終わった。やっとといっても、せいぜい30分くらいだが。もう水中には用はないので、さっさと外に出る。そして水泡と呼気再生を解除する。

 

「ふぅ...やっと喋れるぜ」

 

ずっと黙ってるの意外と辛かった。どうやら俺は黙ってると死ぬような人種だったらしい。多分反動でしばらく独り言多めになるだろう。

 

「ってか湖にどんだけいんだよ。まだ半分くらいしか探してないってのにもう目標数殺せちゃったよ。いいのかな15体だけで。もっと殺しちゃった方がいいんじゃ...」

 

多分まだ湖の中に相当数いるだろう。このままだと何も変わらないと思う。

 

「まぁいっか。残業代出る保証ないし、また依頼出たら受ければいいだけの話だな」

 

目標数以上の成果を出したら追加報酬有り!みたいな依頼もあるが、今回のがそうかは確認していない。リヒトに指定された依頼をただ受けているだけなので、ちゃんと読み込んでいないのだ。

 

「あっ、でもどうせサーマル見てるだろうし、今ここで脅せば報酬増えるかも...いや、やめておくか。さっさと次の依頼のところ行こう」

 

次の依頼の現場はここからさらに南西。川の上流だ。そこにいるトカゲの魔物を倒せばいいらしい。リザードマンみたいなのだろう多分。

 

「加速は...やめておくか。魔力結構消費したし、歩きながら回復しよう」

 

一度鞄を置いたところまで戻って鞄を回収し、川沿いを歩く。

 

「にしても...リヒトも結構な難題を突きつけてくるなぁ」

 

こっちの依頼にはリヒトに制限をかけられている。最初の実践で魔力回復速度を封じられたような感じだ。今回は魔法を封じることになった。使っていいのは速度操作に、魔力操作のみ。ついでに武器の使用も禁じられたので、己の体一つの肉弾戦をすることになる。今まで肉弾戦って最初の猪やスライムのときくらいしかしてこなかったから、ちょっと新鮮だ。

 

「まぁ能力使えるならいっか」

 

魔力回復速度加速は封じられていない。魔力操作を存分に使うことができるだろう。

 

「……やっぱ回復速度遅いな。魔素が多いのか?」

 

魔力を回復させながら考える。加速の限界が上がっているので一ヶ月前よりかは早いのだが、カリスにいたころよりも回復が遅い気がするのだ。魔力の回復の速さは、周囲に存在する聖素の量によって決まる。少なくなればなるほど遅くなり、完全に無くなれば回復も止まる。確か北に行くほど魔素が多くなるなんて話を神様がしてた気がするし、魔素が多いのだろう。

 

「魔素の多いところの魔物は強いって聞くし...トカゲとやらもさぞかし強いんだろうなぁ」

 

上流に向かって歩いていくと、ほんの少しずつだが魔力の回復が遅くなっていった。この辺りはおそらく上に行くほど魔素が濃いのだろう。きっと道中に現れる魔物も、カリスあたりにいた奴らとは比べ物にならないくらい強いはずだ。警戒は怠らない。

 

「…でもあのアノマロカリスは弱いような...?透明化に力入れすぎたとかそんな感じかな」

 

必ずしも凶暴なわけではないのかな。強いというのにも色々あるってことだろう。俺でなければあの魔物は厄介以外の何でもないしな。

 

「もうそろそろ目的地のはずだけど...魔力全快しなかったか。仕方ない。行くしかないか」

 

この二ヶ月で魔力量は飛躍的に増加した。聖域内で魔力ゼロの状態から全快するのに、加速なしで3時間かかるくらいには増えた。この程度の時間では回復には程遠い。

 

「トカゲ...どんな魔物かな?剣持ってるのかな?よくわからん。最初は観察するか」

 

まずやるべきことは敵の情報収集だ。肉弾戦をする羽目になったので、普段以上に情報が欲しい。下手に突っ込んで返り討ちだけは避けたい。

 

「そうだ。戦う前に荷物置いとかないと」

 

鞄があったら肉弾戦の邪魔になるし、武器をつけたままだとつい条件反射で使いかねない。盾も含めて、全て外しておかないと。

 

「とりあえずわかりやすいところに...ってなんだあれ」

 

目立つ木の下にでも置こうかなと辺りを見渡していると、俺はとあるものを発見した。地面に刺さっている、水色の杭だ。

 

「水色の杭...って聖域のやつじゃね?ってことはここ聖域なのか⁉︎」

 

水色の杭は今立っているところからちょうど正方形になるような形で刺さっていた。正方形の聖域は珍しい。自然発生のため聖域は歪な形をしていることが多いのだ。大きな聖域である各町も、外壁が聖域の境目に沿って造られているため歪な形をしている。ここまで綺麗な形をしているのはそれだけで珍しいのだ。

 

「まったく、聖域があると分かってたなら最初からここで魔力を回復したというのに...というか結構狭いな。いや、あっちまで聖域なのか」

 

水色の杭は川を挟んだ向こう側にもあった。それはつまり、この範囲内にある川も聖域になっているということだ。

 

「……それって変じゃね?」

 

聖域の中には魔物は立ち入らない。つまり、ここより上流にいる魔物は下流に移動することができないのだ。なら、あのアノマロカリスっぽい魔物はどうやって湖にまで辿り着いたんだ?

 

「魔族のせい...いや、自然発生の可能性も普通にあるか」

 

真っ先に浮かんだのは、転移の魔族の仕業という可能性。本来ならその地生息していない魔物がいるという事態は、大抵そいつのせいだった。今回もその可能性が高い。

 

けれど、転移している現場を見てない以上、自然発生の可能性も否定できない。魔物は普通の動物と同じように繁殖で産まれることもあれば、周囲の魔素の影響で自然発生することもある。今代の魔王の影響か、全体的に魔素の量が増えているため湖で産まれていても不思議ではないのだ。

 

他にも、聖域がつい最近できたものであり、ここが聖域になる前に移動していた、なんて可能性もある。考えれば他にもいくつか出てくるだろう。

 

「まっ、どうせ魔族だろ。また襲ってこないといいけど...」

 

もし魔族がさっきのに関わっているとすれば、そこに水を差すようなことを俺はした。最初の実践の時のように襲われる可能性は大いにある。これから武器防具を全て取っ払うため、そこを狙われたら大変なことになる。唯一の武器になる魔力の管理には気をつけなければならない。

 

「よし、行くか」

 

魔力が回復しきったので、聖域を出る。魔力温存のため移動速度の加速は行わず、速度探知と魔力回復速度加速だけを使っておく。

 

「トカゲの魔物...やっぱ依頼書の中身ちゃんと見ておくべきだったか」

 

情報不足感が否めない。せめて姿形くらいは確認しておけばよかった。せっかく倒した魔物が目標のものとは違いましたー、なんてことは避けたい。

 

神様ー何か知ってたりしない?

 

『なんでもかんでもワシに頼るでない』

 

…すんません。

 

『もういるではないか』

 

えっ?

 

周りを見渡す。目の届く範囲にはいそうにないが...少なくとも周囲3.3メートル以内にはいないのは確実だ。もしかしてまた透明化してたりするのか?

 

『そうではないが...似たようなものじゃな。川じゃ』

 

川...?

 

「……まさか水か⁉︎」

 

神様が魔物がいると言うってことは、近くにいるはずだ。川に近づき、能力適用範囲内に入れる。

 

その時だった。川の水とは違う何かが川から飛び出してきた。反射的に回し蹴りを放ち、その体の一部を弾き飛ばす。

 

「やっぱ水だったか...」

 

一度バックステップをして距離を取り、魔物を観察する。地面を這う水でできたトカゲ。ぱっと見の印象はそんな感じだ。リザードマンではなく、サラマンダーに近いな。さっき蹴った箇所が少し削れていたが、弾け飛んだ水と川の水がそこに流れ込み、修復された。回復持ち...めんどくせぇ。

 

「さて、どうやって倒そうか」

 

こんな体をしているのだ。普通に攻撃してもさっきのように回復されて終わりだろう。何かしらの策が必要だ。

 

魔法が使えるなら一瞬だ。氷の魔法で凍らせたり、火の魔法で蒸発させたり、雷装で電気分解したり...しかし、今回魔法やスキルは使えない。ないものねだりをしても時間を無駄にするだけだ。

 

何かはあるはずなのだ。魔法やスキルを使わないでこの魔物を倒す方法が。そうでなければ、リヒトはこんな条件をつけてこない。きっと倒す方法はある。

 

「色々試してみるか...!」

 

そう決めた直後、魔物がこちらに高速で這い寄ってくる。そして氷になっている爪を振ってくる。

 

「あぶねっ」

 

爪を避け、蹴りを前足に叩き込む。体を構成している水が弾け飛ぶ。しかし、すぐに再生が始まる。

 

「これくらいじゃ無意味...なら何度も!」

 

加速を最大、魔力操作による蹴りの速度の加速もして連続で蹴りを叩き込む。再生の隙をも与えない連続攻撃。体のいたるところを蹴りつけ、水を弾き飛ばす。

 

「ここまでやったらどうなる?」

 

もう既に原型をとどめていない。辺りに魔物だった液体が散らばっていた。スライムだったらもう動かなくなっているくらいの大きさだ。ここまでやってまだ生きてるとしたら...次の策を考えないとな。

 

「チッ、ダメだったか」

 

魔物は再生し始めた。ここまで粉々にしても、再生の速度が遅くなるだけみたいだ。弾け飛んだ水が集まって体を形成し、川の水が吸収されて大きさが元に戻る。

 

「川の水を取り込んでる...川から離れたところで倒せばいけるか?...いや、誘い出すのは無理そうだな」

 

再生が完了した魔物は、すぐには襲いかかってこなかった。流石にあそこまでやられたら警戒もするだろう。たとえ俺が川から離れたとしても、追ってくるようなことはないはずだ。川から引き剥がすのは無理だな。

 

「くっそ魔法使いてぇ...」

 

魔法が使えればこんなやつすぐに倒せるというのに...もどかしい。

 

「ただの蹴りじゃダメ...何か別の方法は...」

 

悩んでいると、魔物が再度襲いかかってくる。俺が川から離れなかったからだろう。川を生息地にしていて、川から水を供給している魔物はここから逃げることはできない。俺が移動しなければ逃げられることはない。時間はいっぱいあるということだ。爪や尾の攻撃を避けながら思考を続ける。

 

「使えるのは速度操作と魔力操作だけ...今のままだと死につながるような速度もないし...」

 

速度探知には、死までの速度は引っかからない。寿命や衰弱死といったものが存在していないようだ。血も流れていないから出血死させることもできない。速度操作だけでは奴を殺せない。

 

「再生速度の減速も意味ないだろうし...あと使えるのは魔力操作だけ」

 

でも、魔力操作だけで何ができる?できるのはせいぜい強化程度。速度や威力を底上げしたところで再生されるだけだ。どうすれば葬ることができるのかすらわからないのだ。強化など何の意味もない。

 

「なにか方法は...うわキモっ⁉︎」

 

急に魔物の一部が変形した。全体的にサイズが縮小し、背中から触手のようなものが生えてきた。突然だったのと、普通にキモくて体が一瞬硬直する。

 

「…っ!危ねぇ⁉︎」

 

その硬直した隙をついて、魔物は触手を叩きつけてくる。先端には氷でできた針がいくつもついている殺意マシマシの攻撃だ。急いで避けようとしたが足がもつれてしまって後ろに倒れ込んでしまう。

 

「くっ...!」

 

倒れ込んだおかげで初撃は偶然避けることができたが、振り下ろされた次の触手は避けることができない。加速は間に合わない。減速も微々たるものだ。避ける時間を稼げることじゃない。

 

「っっぶねぇ...ギリ成功...」

 

しかし、その減速が功を奏した。減速したことで、触手の軌道を読む時間ができた。触手が命中する箇所がわかれば、あとは魔力操作でその部位の表面に魔力を集中させるだけ。皮膚表面に集めた魔力を練り上げて即席の壁を作り、それをもって触手を受け止める。

 

「お返しだ受け取れ!」

 

手を地面について押し、魔物の頭にドロップキックをかます。そしてそのままの勢いで魔物から距離を取る。

 

「触手怖えな警戒しないと」

 

触手の攻撃は動きが読みづらいため避けにくい。全方位から攻撃されて逃げ場がないなんて事態は避けたい。すぐに行動できるように、魔物の再生をしっかりと見届ける。

 

魔物が再生しだす。さっき蹴り飛ばした水が集まって頭を形成する。そして胴体の水が一度形を崩して頭に向かって飛んでいき、くっつきだす。

 

「…頭が本体?」

 

頭を中心にして再生が始まった。つまり、そこに何かしらがある。この魔物の、核のようなものがあるに違いない。

 

「なるほど...じゃあ倒せる!」

 

再生が完了した魔物が動き出す。背中から触手が生え、俺を叩き潰そうと襲いかかってくる。

 

「遅い遅い!」

 

もうその攻撃を喰らうつもりはない。触手の隙間を抜け、魔力を込めた手で弾き、魔物に接近する。

 

「まずはこれ、喰らいな!」

 

地面を思いっきり蹴り上げ、砂埃を舞わせる。砂埃が魔物を構成する水の中に入り込む。

 

「次っ!」

 

砂埃が排出される前に、魔物の頭のすぐ目の前に手を突き出す。触れるか触れないかのギリギリのライン。あと数ミリ動かせば触れるくらいの位置まで手を伸ばす。

 

そして、魔力を操作する。突き出した右手を通して魔力が魔物に流れ込む。流れ込んだ魔力はさっき入り込んだ砂埃とくっつき、それぞれの砂埃の間に魔力でできた糸を作り出す。さらに魔力を流し込むと、魔力は糸を中心に氷の結晶ができていくような感じで広がり、魔物の頭をガッチリ固める。

 

魔力は高密度になるほど物質に近づく性質を持つ。さっき触手を受け止めた魔力の壁も、その原理を利用したものだ。その性質を利用し、魔物の頭の中で魔力物質を作ることで頭を固めたのだ。これでもう液体じゃない。殴れば粉々に崩れる固体となった。

 

これで終わりだ。

 

「チェイサーっ!」

 

上段回し蹴り。魔物を死に追いやった最後の攻撃だった。再生はしない。

 

俺の勝ちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、俺はカイスまで走って帰った。道中一度も魔物に襲われなかったのは幸運だった。念のために聖域で魔力全回復させてから出発したが、杞憂になった。

 

カイスに戻った俺はギルドに報告しに行った。いつも通りサーマルとわちゃわちゃ言い合いながら報告を終えた俺は、リヒトの研究所に向かう。

 

研究所に着いたら、これまたいつも通り報告会が始まった。良かった点改善すべき点の洗い出しが行われる。そしてそれを踏まえた特訓が始まり、日没間近まで続いた。

 

これがカイスについてからの俺の一日だ。

 

いつもと違ったのは、帰り際に聞こえたリヒトの、「そろそろあれをやらせてみるか...」という独り言だった。

 

…リヒトも独り言してるやんけ!




依頼の描写を優先したため、カイスの描写がすっごい簡略化されました。
まぁいちいちやるとくどいしね、しょうがないね。

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