前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8175字。

しばらく依頼編。
少ししたら物語がグッと動きます。


ジャイアントキリング

「杖買いてぇなぁ...」

 

宿からギルドまでの道を歩いている最中に、ぼそっとつぶやく。魔法使いの町とも言われるカイス、その名に恥じない魔法使いの多さ。周囲を見渡せばその大半が魔法使いだ。そしてその殆どが、大小の差はあれど杖を持っていた。それを見るたびに、杖を買いたくなってくる。

 

「でも買うなってリヒトに言われてるからなぁ...」

 

なぜ買ってはいけないのかと聞いたことがあるが、理由は俺には必要ないかららしい。

 

そもそも杖というのは、魔力の貯蔵タンクであり、魔法のブースト装置でもあるようだ。杖に魔力を溜め込んで魔力総量を増やしたり、杖を体の一部と見做して魔力を循環させ効率を上げるといったことができるらしい。他にも、杖に魔法陣を刻むことで、普通だと使用できない魔法を使ったりなんてこともできるらしい。これはフレアとミレアがやっていたな。

 

こんなことができる杖がなぜ俺に必要ないかというと、魔力総量は普通に増やせばいいからいらない。そしてブースト機能は魔法図鑑を使った魔法では効果を発揮することができないかららしい。あとは杖を使った魔法に慣れてしまうと杖が使えなくなったときに魔法の発動が難しくなってしまうだとか、杖を持っていると武器を持つことができなくなるからだとか言われた。

 

「それがいいってのはわかるけど...リヒトはロマンってやつがわかってないよなぁ」

 

杖欲しいじゃん。カッコいいし、魔法使いっぽいし。効率ばっか追い求めてもダメだと思う。

 

そうリヒトに言ったら、魔王を倒してから買えばいいじゃないかと言われた。ちくせう。絶対魔王倒してやる...あれ?目的と手段が入れ替わってるような...

 

「まぁ師匠の言うことは守った方がいいんだろうけどさ」

 

変に逆らっても意味がない。専門家の言うことはちゃんと守っておいた方が、悪いようにはならないだろう。

 

「ニトラスの杖カッコよかったから欲しかったんだけどな...」

 

未練タラタラでギルドの中に入る。

 

「切り替えないと...いい感じの依頼はないかなー」

 

「これなんかどうだい?」

 

「へ?」

 

後ろから声をかけられた。周りに何人も人がいるし、自分に声をかけてきたわけじゃないと一瞬考えたが、この声的に多分対象は俺だろう。

 

「…なんでサーマルがこんなところに?」

 

後ろを振り向くと、そこには声の主、サーマルがいた。

 

「もしかしてまたサボりか?」

 

「いや違うし。れっきとした仕事だし」

 

サーマルはそう言いながら紙を渡してきた。

 

「これは?」

 

「ギルドからあんた指名の依頼。もちろん受けてくれるよね?」

 

「内容と報酬によるな。どれどれ...?」

 

紙を受け取り、内容を読んでいく。

 

「……なるほど、大体わかった」

 

「それで、受ける?受けない?」

 

「受けるよ」

 

「オッケー受付はこっちで済ませておくからもう行っていいよ」

 

「わかった」

 

「あっそうだ忘れてた。これも持ってってね。大事なやつだから」

 

「大事なやつ忘れんなよ...」

 

見た目がドラゴ○レーダーに酷似している何かを渡された。これで探せばいいのか。

 

「そんじゃ行ってくる」

 

「何時間で戻ってくるかねぇ」

 

「さぁな。当てたら報酬の一割をやってもいい」

 

「マジ⁉︎じゃあ...4時間!」

 

「オッケー5時間後に戻ってくるわ」

 

「んな⁉︎」

 

こっちで帰るタイミングを調節できるんだから当たるわけないのに...なんで当てられると思ったんだこいつ。

 

「外した時のペナルティないんだからいいだろ。こっちのメリットないのに本気で賭けが成立しているとでも思ったのか?バーカバーカ」

 

「ムカつく...!バカって言う方がバ

 

サーマルが最後まで言い終える前にギルドの外に出た。サーマルの話につきあってたらそれだけで日が暮れてしまう。

 

「それじゃあ行くとしますか」

 

まずはカイスを出ないといけない。俺は南の門まで走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼名はジャイアントキリング。カイス周辺で目撃されている巨大な魔物を倒すという依頼なので、下克上という意味ではなく本当にジャイアントをキリングするわけだが。巨大化した魔物が増えているためできた言葉を、ちゃんと意味が伝わるように翻訳してくれるこの言語能力に感謝だ。

 

「ここら辺にいるはずなんだが...どこだろ」

 

サーマルに渡されたドラゴ○レーダーっぽい装置は、マジでレーダーだった。これを使うと、巨大化している魔物の位置がわかるという優れものだ。おそらくだが、マナ探知の一種なのだろう。巨大化した魔物は体内に大量の魔素を保有している。探知する魔素の下限を目一杯引き上げれば、巨大化した魔物だけ探知できるというわけだ。

 

「巨大化してるならもう見えてないと変なんだけど...」

 

レーダーが指している位置はここ。しかし、魔物はどこにもいない。

 

「となると空か...地下か」

 

このレーダーは二次元の座標しか表示してくれない。座標があっているのに魔物がいないとなると、上か下にいるか透明化しているかの三択だ。地上にはいないことは速度探知でわかる。空は見た感じいないが、透明化しているかもしれない。地下は、少なくとも3.3メートルまでの中にはいない。それより下にはいるかもしれない。

 

「とりあえず空だけ確認しておくか」

 

レーダーの示す位置は常に動き続けている。その位置にピッタリつけながら魔力操作で魔法図鑑に魔力を流す。

 

4566ページ 黒 灰 閃光

 

レーザーを真上に向かって撃ち込む。灰色のカスタムで射程が延長されたレーザーは空気を切り裂き、雲を払った。

 

「やっぱニトラスのより威力も速度も遅い...どんだけ魔改造されてたんだあれ」

 

今撃った魔法はニトラスの使っていた魔改造閃光ではなく、それの元になった普通の閃光だ。難しい魔法ではあるが、その中では比較的簡単な魔法。それをどこまで極めたら代名詞に使われるくらいまでの実力になるのだろう。使ってみればわかる。その努力に感服だ。

 

「じゃあ地下だな。探知を使うか」

 

地面に手をつく。

 

3731ページ下 黒のみ 反響探知

 

音を使った探知魔法。イルカやコウモリがやっているようなエコーロケーションを地面に対して行っているのだろう。

 

「……こんな感じでわかるんだな。なんか変な感じ」

 

手から音が地面に流れ、跳ね返ってきた音が手に触れた瞬間、魔法の効果で頭の中に情報が流れ込んでくる。

 

「多分これかな。泥みたいなのが移動してる」

 

魔物の姿を捉えたわけではないが、レーダーに合わせて動いている泥の塊がある以上、そこに魔物がいるはずだ。泥の大きさから見るに、最大でも全長7メートルくらいだろう。細長くないからミミズだとかウナギだとかではないはずだ。丸っこいし、順当に考えればモグラかな。

 

「先制攻撃するか」

 

左手は地面につけたまま、右手で鞭を取り出す。

 

714ページ左上 黒 黄 土流

2241ページ上 黒 黄 射程延長付与

3171ページ上 黒のみ 粘着付与

1774ページ右下 黒のみ 物質強化

 

左手で地面を泥に変え、エコーロケーションで魔物の位置を索敵する。そして泥を魔物のいる泥の塊まで繋げる。

 

「ふんっ!」

 

射程が魔法で強化された鞭を泥の中に向かって勢いよく振る。見えないが鞭はやがて魔物のところまで辿り着き、粘着付与の効果で鞭が魔物にへばりついていることだろう。

 

「おっ、釣れた釣れた。ほれ一本釣りじゃーい!」

 

鞭にテンションがかかった。エコーロケーションで魔物に当たったことも確認した。一気に鞭を振り上げて引っ張り上げる。釣りは今までしたことないが、多分こんな感じなんだろう。めっちゃ抵抗されているため、引きずり込まれそうになる。物質強化の魔法をかけていなかったら、もう鞭は千切れているだろう。

 

「やっっばいな俺も強化しないともってかれる...!」

 

837ページ右上 黒のみ 膂力強化

 

魔法で腕力を強化する。

 

「ふんぬっ!ぐぬぬぬ...!」

 

まだ足りない。カスタムの膂力強化なら引っ張れそうだが、カスタムするには一度解除する必要がある。しかし、このままだと解除した瞬間に引き摺り込まれるため、そんなことをする余裕はない。となると、同じバフ魔法を重ねることはできないので、別の魔法を使うしかない。

 

837ページ左下 黒 赤 脚力強化

 

均衡が崩れる。魔物が地上に向かって引き上げられつつある。

 

「あとちょっと...!」

 

72ページ右下 黒のみ 跳躍

 

「どっせい!!」

 

地面を蹴り、一気に魔物を引っこ抜く。

 

「よっしゃ釣り上げた!戦闘開始だ手間取らせやがって!」

 

そのまま鞭を振り、魔物を真上に投げる。さてさてどんな魔物かな...

 

「な、なんじゃありゃ気持ち悪っ!い、芋虫⁉︎」

 

その魔物には手足がなかった。丸っこくてうねうねもがいていた。

 

「いや、幼虫か!カブトムシだなテメー!」

 

魔物が重力に引かれて落ちてくる。

 

「まずは一撃...!」

 

1323ページ右上 黒 赤 火刃

 

左手でダガーを持ち、魔物に向かって振る。火力を増した炎の刃がダガーの軌道上に生成され、魔物に向かって飛ぶ。炎が魔物の体を焼き、傷をつける。

 

「チッ、やっぱ火力不足か」

 

巨大化した魔物相手だと、この程度の魔法じゃ効果が薄い。もっと後ろのページでないと倒すのは厳しい。

 

「ってどこ行く気だテメェ!」

 

重力に従って地面に落ちた魔物は、再度泥の能力で地面に潜っていった。

 

「また釣りごっこは勘弁だぞ...!」

 

5701ページ 黒のみ 重力反転

 

自身にかかる重力を反転させ、空に落ちる。それによって無理やり魔物を地面から引き摺り出す。

 

「よーしお帰り幼虫くん二度と逃げんじゃねぇぞ」

 

重力反転を解除する。俺と魔物が一緒に地面に向かって落ちていく。

 

「悪いけど、もう地面には潜らせないよ」

 

4014ページ 黒 黄 障壁

 

障壁を地面から1メートルほど上に、20メートル四方くらいの大きさで貼る。

 

「よっと。思った通り、地面から離せば潜れねぇよなぁ!」

 

魔物が障壁の地面の上でジタバタと暴れる。

 

「おっとそっちは行っちゃダメだぞー。戻ってきなさーい!」

 

ジタバタしている姿は物凄いキモいが、これだけデカいと身を捩るだけで結構な距離を移動できるみたいだ。このままだと障壁を貼った範囲から出てしまうだろう。

 

「ああもうめんどくせぇなぁ...」

 

4014ページ 黒 黄 障壁

 

四方の辺に、縦20メートルの壁を障壁で作る。ついでに天井も障壁で閉じる。

 

「もう逃げられないねぇ...俺も出れないけど」

 

この障壁は俺の魔力が尽きるか、解除するかを願わない限り解除されない。あっ、死んでも解除されるな。死ぬ気はないし、魔物が死ぬまで解除する気もない。どちらが死ぬまでこの閉鎖空間から出ることはできない。

 

「さーて障壁デスマッチの始まりだ!殺し合うぞ幼虫野郎!」

 

魔物は逃げられないのを察したのか、こちらに向かって転がってくる。

 

「どうやって俺のいる方がわかってるんだ?目も耳もないってのに...あらよっと」

 

72ページ右下 黒のみ 跳躍

 

跳躍で障壁の地面や壁を蹴って魔物の転がり攻撃を避ける。

 

「っとそろそろこいつ外すか」

 

鞭の粘着付与を解除し、魔物との結合を解除する。よくよく考えれば、こいつのせいで俺の位置が気取られたんだな。危ない危ない。

 

2094ページ下 黒のみ 貫穿

2283ページ上 黒 黄 増殖

1900ページ右下 黒のみ 威力増大

4700ページ 黒のみ 軌道変更

 

『雷装・矢』『速射』

 

弓を取り出し、五本の矢を一秒のうちに放つ。貫穿と威力増大で強化した五本の矢。それらはそれぞれ六本に分裂し、三十本の矢が魔物の体全身に突き刺さっていく。

 

「ああ、矢が...」

 

魔物は矢が刺さったまま転がってきた。そのせいで矢は折れ、矢尻だけ魔物に刺さったままになる。いつも戦闘後に矢を回収していたので、ちょっともったいなく感じる。

 

「せめて矢尻も抜けてくれればよかったのに...!」

 

矢尻が刺さっているせいで、傷口が塞がってしまっている。それによって、巨大化した魔物特有の魔素漏失が起こっていない。巨大化した魔物を倒すには、できるだけ大きな傷をつけてそこから魔素を噴出させ、その速度を加速させるのが一番だ。しかし、今は傷口が開いていない。別の傷をつけるか、矢尻を魔物から引き抜くかしなければならない。

 

「その前に回避っと!」

 

72ページ右下 黒のみ 跳躍

 

地面を蹴って宙を舞う。そんな俺の真下を魔物が転がっていき、障壁の壁にぶち当たる。

 

「この程度の高さならスキルで十分か。って戻ってきやがった!『跳躍』!」

 

魔物は障壁にぶつかった反動を利用してまた転がってきた。時間短縮のためにスキルで魔法を発動し、地面を蹴る。

 

4970ページ 黒のみ 鎌鼬

 

空気を操作し、意図的に真空を作り出す。そして魔物が作り出した真空の位置まで転がっていき...ズバッと皮膚が引き裂かれる。

 

「あともう少しくらい傷をつけておきてェな...ならこれだな」

 

3824ページ下 黒のみ 斬撃残留

 

ダガーを二本持ち、その場で何度も素振りをする。何回も、何十回もダガーを振る。

 

「こんな程度でいいだろ。ほらほら虫さんこっちおいで。手の鳴る方へ〜」

 

手を何回か叩いて魔物を誘き寄せる。

 

「…こねぇな。やっぱ耳はないのか。ただ転がってるだけ...?」

 

ただ転がってるだけでも十分脅威になるのだが...ここまで来てくれないと困るんだよな。

 

2472ページ上 黒のみ 誘引

 

「これで来んだろ」

 

無差別に転がっていた魔物が方向転換し、こちら側に転がり始める。

 

「よーしいい子だ」

 

『跳躍』

 

その場で高く飛び、天井を蹴って魔物の進行方向の反対側に着地する。

 

「切り裂かれな!」

 

魔物の転がりが急に止まる。何かを受けて無理やり動きを封じられたような挙動だった。

 

「ありゃ、手前の何回かしか意味なかったな」

 

斬撃残留の魔法で、ダガーの斬るという効果を空間に残留させた。座標設置型の斬撃のトラップを仕掛けたのだ。しかし、全ての斬撃が当たったわけではなかった。解除するまで斬撃は残り続けるため、引っかかってしまったのだ。

 

「いろんな場所に一つずつ設置していくのがいいのか...まぁいいや。これでだいぶ傷ついただろ」

 

斬撃残留を解除する。魔物が転がり出す。

 

「よしよし、だいぶ傷が大きくなってきたな...そろそろ加速させるか」

 

魔物の傷口に近づき、魔素の噴出速度を加速させる。それをすればこいつを倒せる...

 

「…あれ、無理...じゃね?」

 

転がり続ける魔物にどうやって近づけと?それに、傷も回転しているため半径3.3メートルに入れ続けるのも難しい。

 

「なんとかして止めないと...斬撃残留で...いや、これにしよう」

 

4000ページ 黒のみ 流体金属

1972ページ右上 黒のみ 体積増加

 

「ほれ」

 

矢尻に使われているのは鉄。魔物の全身に突き刺さった鉄の矢尻の体積が増し、液体になって形を変える。そして野球ボール置く三本のバットみたいな形で固まり、魔物の動きを封じる。

 

「なんかすっごい絵面シュールだけど...もう動けんだろ」

 

もし地面が障壁で作ったものではなかったなら、全身の矢尻を棘のような形にして地面に突き刺すことで動きを封じようとしていたが、今それをやっても障壁が棘を弾いてしまってできないためやめた。もしやっていたら、全身棘だらけの魔物が転がってくるとかいう地獄になるところだった。危ない危ない。

 

「傷も開いたし、これで終わりだな」

 

奴は転がる以外の攻撃をしてこなかった。何か隠し持っている可能性はあるが、それを出してくる前に終わらせる。

 

「加速加速...ん?なんだこの速度」

 

魔物の真下に立つ。すると、とある速度を感じ取った。

 

「蛹に成長するまでの速度...?こいつ成長するのか。一応減速させておこうかな」

 

速度探知では、速度しかわからない。蛹になるまでの時間はわからないのだ。もしかしたら今にも変化しだすかもしれない。万が一を考えて減速させながら、魔素の流出速度を加速させる。

 

「チッ、結構な量溜まってるな。こりゃ時間かかりそうだぞ...」

 

魔素が大量に流れ出し、周囲が魔素で埋め尽くされる。そのせいで聖素が外側に追い出され、魔力回復が止まる。

 

「魔力は足りそうだけど...なんだこれ、体が重い...」

 

魔素が増えたせい?いや、それなら前にやった時にもこの症状が出ているはず。おそらく、障壁で周囲を囲っているため大気中のマナの量が増えてしまっているのだろう。本来なら均等になるように分散していくはずだが、障壁のせいでこの閉鎖空間に留まり続けてしまっている。

 

「障壁解除するか?もう逃げられる必要ないだろうし...ん?なんだこの速さなんで⁉︎」

 

蛹になる速度が加速してる⁉︎魔素に反応しているのか!そうかなんで地中を幼虫なんかが動いてるのか不思議だったが、成長するために魔素の多いところを探していたのかってそんなこと考えてる場合じゃねぇ!

 

「し、障壁解除!」

 

急いで障壁を解除させる。障壁が解けたことで魔素が外に向かって流れ出す。

 

しかし、蛹への変化は止められなかった。

 

「チッ!傷ごと塞ぎやがった...!」

 

だいぶサイズは小さくなったが、蛹になる前に殺せなかったのは痛い。魔物は硬い殻のようなもので身を包んでおり、何回かダガーで斬ってみるもなかなか傷がつかない。傷も殻で埋まった。魔素を流出させられない。

 

「成虫まであとどれくらい猶予があるのやら...できるなら蛹の状態のうちに殺しときたいけど」

 

いっそのこと成虫になってから殺してやろうか...いや待て、結構いい考えかもしれない。殻を貫くよりも、羽化してから殺す方がほうが楽かもしれない...ダメだ、こいつカブトムシの幼虫っぽいんだった。甲虫だ、逆に面倒になる。腹は柔らかいだろうが、もしかしたらこの世界のカブトムシは腹まで硬いかもしれない。そもそもカブトムシじゃないかもしれないが。

 

「今殺さないとダメか。どうやって殺そう...色々試すか」

 

1025ページ左上 黒 青 紫 水泡

 

青で範囲を広げ、紫で自己対象を変更し蛹に対象を移す。巨大な水の球体が蛹となった魔物を包む。

 

「とりあえず水責め。呼吸するのかは知らんが...泡が出れば隙間があるってことだしな」

 

まずは牽制がてら水球。これで窒息するならそれでよし。殺せなくとも、泡が出てくればそこを攻撃するまで。出なかったら別の策を考えよう。

 

「泡は...出たな。あそこか」

 

ちょうど俺から真正面の位置から泡がかすかだが出てきた。そこを狙えば、あるいは...

 

4566ページ 黒 黄 閃光

3823ページ上 黒のみ 魔法残留

6901ページ 黒のみ 物質操作

 

黄色のカスタムで限りなく細くしたレーザーを、殻の僅かな隙間を狙って撃ち込む。閃光は何かに当たると消滅する。そのため、蛹を包む水を物質操作で動かし、レーザーを通すための穴を開けた。レーザーは水の穴と殻の隙間を通り抜け、中身に突き刺さる。

 

「こいつで死ぬとは思ってないよ。ただ、これで終わりだ」

 

魔法残留によって、レーザーの通った軌跡上に魔力の塊が残留した。この魔力の塊は俺の指と蛹の中身を繋いでいる。これを使えば、蛹の内側を攻撃することができる。

 

『雷装』

 

「じゃあな」

 

物質操作で水を操作し、残留している魔力の塊を包む。そしてそこに雷装による高圧電流を流し込む。

 

「…さーてそろそろ死んだかな」

 

電流を流し続けて十秒ほど経った。外側は硬くても、流石に内側は脆いはず...

 

「ん?」

 

なんか膨らんでね?

 

「あっ、やべっ」

 

魔力残留を解除し、速度操作で最高速度で後ろに跳ぶ。

 

その瞬間、蛹が爆発した。ついさっきまで魔物だった何かがベチャァっと辺りに撒き散らかされ、ドロドロの何かと、かろうじて形が判別できるくらいの翅や足が転がった。

 

「…うん、どうしてこうなった?」

 

理由はわかってる。わかってるんだが...理解が追いつかない。

 

水は蛹の中にも入り込んでいた。そこに雷装の電流が流れ、電気分解が起こった。蛹の中身は既に魔物でいっぱいいっぱい。辛うじてあったであろう隙間もすぐに水素と酸素で埋め尽くされる。さらに魔法残留で唯一の外への隙間も塞がれていて...圧力に耐えきれず爆発したんだろう。

 

「うっわ気持ち悪...うぷっ、別の方法で殺せばよかった...」

 

まぁ何はともあれ討伐完了...レーダーの反応も消えたから、実は殺せていませんでしたもないはず。

 

「とりあえずどっかで休んでから次探すか」

 

魔力の回復をしないといけないし、この気分の悪さも治したい。近くに川があったはずだし、そこで休むことにしよう。

 

俺は異臭のするその場からダッシュで逃げ出した。




蛹が弾け飛ぶの気持ち悪すぎる...

カリヤくんなんで普通の回避に跳躍使ってるんですかね?
秒速40メートルで跳べばそれなりに高く飛べるのに...と自分で思ってしまいましたが、上にも障壁を貼っているので衝突の危険があるからというのと、高さの調整がしやすいっていう理由でしょうね多分。
日を分けて書いているので、ちょくちょく昨日の自分が書いた内容にツッコミを入れる羽目になってます。

読者の皆さんも、これ変じゃね?ってのがあったら感想でバシバシ送ってきてください。
感想を見た日の自分がそれっぽい理由をつけて返信してくれるはずです。

最後に、また定期考査の時期がやってきました。
次の投稿まで時間が開きますがご了承ください。

次回の投稿は12月13日水曜日になります。
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