前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8232字。

お久しぶりです。
定期考査が終わりましたので、投稿再開になります。

依頼二話目です。


熱の魔法使い

「そろそろ行くか」

 

しばらく川辺で休んでいたおかげで、だいぶ回復してきた。そろそろ次の魔物のところに行こう。

 

「えーっと?ここから一番近いのは...あっちの方か。距離的に森の中っぽいな」

 

移動を始める。いつも通り秒速40メートルで走り、2分ほどで森の前まで辿り着く。

 

「やっぱこの中だな。どんな魔物が巨大化してるんだろ...」

 

外から姿が見えなかったから、この森に生えている木々よりは小さいはず。目測だが、周囲にある木の高さは20メートル弱。森の中心にいれば20メートルを超えていても姿が見えなくなるが、木の枝や葉を突き抜けることになるためあまり考えにくい。

 

それに、まぁまぁ木と木の間隔が広いとはいえここは森の中。幅が広い魔物だと絶対に木に引っかかる。しかし、レーダーの反応では普通に森の中を動いている。縦にデカくなってるとでも言うのか?どこのワンダーなマ○オだ?

 

「ダメだ一切検討つかねぇ。直接確認するか」

 

森の中に入る。速度探知を常時発動させ、いつどこで魔物が襲いかかってきてもいいように対策をしておく。ダガーをいつでも抜けるようにし、魔法図鑑の起動に意識を割く。

 

「あと数十メートル先か...見通し悪すぎて全然魔物の姿が見えねぇな」

 

足音すら聞こえないのは変だ。魔物は今も動いている。巨大化しているなら、足音も大きくなるはず。浮いているのか?それか地下か...あっ、空確認するの忘れてた。飛んでる可能性もあるな。見つけられなかったら確認するか。

 

「まぁ探知するにしても辿り着いてからだな」

 

だいぶ近くなってきたので、レーダーをしまう。

 

と、その時だった。

 

とてつもない熱波がこちらに襲いかかるのを、速度探知で感じ取った。

 

「っ!」

 

速度操作で自身の温度、並びに熱波の温度を出来るだけ下げながら木の裏に隠れ、熱波をやり過ごす。気が動転していて魔法図鑑は間に合わなそうだったので速度操作で対処したが、正解だった。やはり発動までの速度は魔法図鑑よりも能力の方が早い。

 

「なんで急に熱波が...既視感がヤベェな」

 

先ほどの熱波で森が燃えつつある。燃える森というこのシーン、嫌な予感がする。

 

「…急ごう」

 

最高速度で森を駆ける。迫り来る木々を避け、熱波の発生源に向かって走る。

 

「あれは...人?それと魔物!」

 

そこにいたのは、腰を抜かしながら杖を魔物に向ける青年と、同じように杖を青年に向ける、宙に浮く巨大なローブを着た魔物だった。

 

両者の杖が光り出し、まずは青年の魔法が発動する。森の中で使うには危険すぎる炎を杖から大量に放射する。しかし、ローブの魔物の魔法が発動して魔物の周囲に結界のようなものが貼られて炎を弾く。

 

「あっつ!」

 

熱波がこちらに襲いかかる。さっきの熱波の正体はこれかだったのか...ってやべぇ!

 

4014ページ 黒のみ 障壁

5000ページ 黒のみ 魔法復唱

 

多重魔法による障壁魔法の連続発動。それにより青年に向けて放たれた魔物の炎の魔法を防ぎながら青年を抱きかかえ、そのまま駆け抜ける。

 

「くっそ男なんて抱えたくなかったぜ!」

 

なんとかその場を離れる。あの魔物の大きさじゃあそこを動くことなんてできまい。ここまで離れれば魔法も届かないはず...

 

「あ、あれ、ここは...ってあんた誰!」

 

「誰ってなんだよ命の恩人に対して言うセリフがそれかぁ?」

 

「そんなこと言ってる場合じゃない!なんで止まってるんだ早くここから離れないと!」

 

「二百メートルは離れたぞ?まだ離れないとダメか?ってか逃げたいなら自分の足で歩け」

 

「逃げないと死ぬぞ!」

 

「っ、マジかよ...!」

 

真後ろに動く速度を検知した。さっきの魔物だ。しかしおかしい。今、俺の真後ろには木しかない。それも、まぁまぁ太い木だ。なのに、なんで2メートルまで近づけているんだ?

 

「こいつ透過してくんのかよ!」

 

飛び跳ねるようにその場を離れた瞬間、木から杖が飛び出してそこからレーザーが放たれた。レーザーは木々をいくつも貫いて薙ぎ倒していく。

 

「なんだよこの威力...バカみてぇだな」

 

当たっていないことに気付いたのか、魔物が木の中からスゥーっと出てくる。そうだなんで忘れてたんだこいつレーダーだと森の中を普通に動いてたんじゃんか。どうして魔物は動けないなんて楽観的なことを...

 

「な、何を考え込んでるんだ今はそんな場合じゃないだろ!早く僕を逃してくれ!」

 

「あァ?悪いけど俺はこいつを倒さないといけないんでな。逃げるなら一人で逃げてろ」

 

4566ページ 黒のみ 閃光

 

閃光を魔物に向かって放つ。しかし、魔物の持つ杖が光ったかと思うと、結界のようなものが魔物を包み、さっき青年が放った炎のように捻じ曲げられ軌道が逸れる。

 

「魔法無効化か?面倒な...」

 

「そいつに魔法は通用しない。やるだけ無駄だ逃げるぞ」

 

「だから逃げるなら勝手にどうぞつってんだろ。ほら、早く行きな」

 

青年を下ろす。さっきは腰が抜けていたが、流石にもう動けるだろう。

 

「あんた、神の使いだろ?悪いことは言わないから逃げたほうがいい」

 

「だあぁぁもううっさいな黙っててくれ。逃げるならさっさと逃げろ文句言うくらいなら一緒に戦え!」

 

4700ページ 黒のみ 軌道変更

 

魔物の放ったレーザーを軌道変更で逸らす。おそらく、このレーザーは一度何かにぶつかっても消えないように、カスタムか付与がかけられた閃光だ。閃光は魔力でできたものを通り抜ける性質を持つ。障壁は使えない。

 

「じゃあ逃げるよ死んでも僕は責任を取らないぞ!...もう誰かが死ぬところなんて...」

 

吐き捨てるように言いながら青年は逃げていった。

 

「…嫌なもん聞いちまったな」

 

誰かが死ぬところをあの青年は見たことがあるのだろう。以前の経験なのか、こいつにやられたのかはわからないが、多分後者だ。そうでなければあそこまで俺を引き止めようとはしないだろう。神の使いとはいえ見ず知らずの人間だしな。

 

「舐めてもらっちゃ困るなぁ...俺は死なねぇよ。魔王をぶっ殺して、この世界を満喫して寿命で死ぬんだ。こんなところで死んでられるかってんだ!」

 

絶対に生きて帰る。そう思いながらダガー引き抜き、一瞬で魔物のもとまで近づく。

 

「ハァッ!...はぁ⁉︎」

 

ダガーを振った。しかし、二本のダガーどちらとも空を切った。逸されたわけではない。完全に魔物を通り抜けた。

 

「物理無効だと⁉︎って危ねぇ!」

 

すぐさま移動して魔物の放つ魔法を避ける。

 

「魔法は逸らされ物理攻撃は効かない...どう倒せって言うんだよ」

 

そりゃそうだ。木を通り抜けられるんだから、ダガーもすり抜けないとおかしい。それはわかるんだが...

 

「無敵なんてありえねぇ。ニトラスはこいつを倒してたんだ。何かしら方法はあるはずだ。考えろ...」

 

宙に浮いているローブを纏った魔物、そう、こいつはカイスに来る途中で転移してきた魔物の中にいたやつだ。あの時はニトラスが倒していたはずだ。残念ながらその場面は見てないのだが、倒せることだけは確かだ。希望はある。

 

「まずは何が効くのか探さないと...!」

 

4970ページ 黒のみ 鎌鼬

 

空気を操作し、真空を作り出す。しかし、ローブが引き裂かれることはなく、平然と杖をこちらに向けてくる。

 

「次!」

 

5437ページ 黒のみ 植物操作

 

近くにあった木々に触れ、木の枝を操る。枝や葉を振り回し、魔物の体を貫きにかかる。けれど、やはり全てすり抜けてしまう。

 

そしてその枝を貫通する形でレーザーが飛んできたので、横に跳んで避ける。レーザーは地面に突き刺さり、風穴を開ける。

 

「あっぶねぇ...」

 

当たったら普通に死ぬ。こっちの攻撃は当たらないってのに、あっちの攻撃に一回でも当たったら終わりなのは不公平だ。

 

「俺のターンだオラァ!」

 

1061ページ右下 黒のみ 風刃

1323ページ右上 黒のみ 火刃

 

ダガーを振り、風と火の刃を魔物に向けて飛ばす。しかし、杖が光ったかと思うと軌道が逸らされてあらぬ方向に飛んでいく。

 

「まだだ!」

 

4700ページ 黒のみ 軌道変更

 

あらぬ方向に飛んでいった刃たちが反転し、再度魔物に向かって飛ぶ。けれど、またしても結界が現れて逸される。

 

「軌道操作系の結界だな」

 

おそらく魔法を逸らしているのは、俺がさっき使った軌道変更のような魔法によるものだ。杖が光り、大体魔物の周囲1メートルくらいの位置に結界が出現することで魔法が逸らされる。

 

「なら逸らされる前に貫く!」

 

247ページ左下 黒 緑 黄 光弾

 

魔物との距離3メートルにまで近づき、右手から発射レートと弾速を上げた光弾を連射する。さらに能力で加速をし、秒速80メートルの速度で光を散らしながら光弾が飛ぶ。

 

「…これでも無理かよ」

 

だが、またしても逸される。今までのように結界の表面で逸されたわけではなく、結界の内部で逸れ始めたという違いはあったが、そこに大きな違いはない。この方法で魔物を倒すには、速さが足りない。

 

「次...次は...あの杖だ!」

 

魔物の持っている杖。あれをなんとか手放させることができれば、結界が貼れなくなるかもしれない。

 

2007ページ下 黒のみ 拘束

 

地面から魔力でできた鎖が召喚され、魔物の腕を拘束せんと飛び出す。けれど、やはり鎖は逸らされる。

 

「当たれっ!」

 

鞭を振り、杖を狙う。しかし素通り。

 

「杖も透過すんのかよ...あと何か使える魔法あったっけ⁉︎」

 

魔法を避けながら頭をフル回転させる。ただの障壁だったら閃光で貫けるのだが、使われているのが軌道変更なせいで突破口が見出せない。何かいい魔法は...

 

「めんどくせぇこうなりゃ特攻だオラァッ!」

 

247ページ左下 黒のみ 光弾

 

光弾を指に溜める。逸らされるってんならゼロ距離でブチ抜くだけだもう考えるのもめんどくせぇ!

 

「終わりだ!」

 

一瞬で魔物の目の前まで近づき、指を構える。そして放とうとした瞬間だった。

 

急に脳が冷静になる。思考が加速する。

 

逸らされるからゼロ距離で撃つなんて誰でも考えつくことじゃないか?さっきの青年もやってたんじゃないか?それが失敗したがために打つ手なしと判断して逃げてるのではないか?

 

仮定に仮定を重ねた推論。けれど、その考えが頭をよぎり、嫌な予感がして光弾を撃つ直前で止める。

 

その時だった。

 

真後ろから炎がやってくるのを速度探知が検知した。咄嗟に身を捩る。

 

「っ、なんだ追尾してくる⁉︎」

 

身を捩って直撃コースから確実に避けたはずだったが、俺から1メートルほどの距離で急に軌道が変わり俺めがけて突っ込んできた。急いで地面を蹴ってその場を離れると、その炎は追尾することなくそのまま直進して木にぶつかった。

 

「い、一体何が...」

 

何が起きたのかはわからないが、とりあえず指に溜めていた光弾を適当に撃ち込んでおく。あの炎、魔物の攻撃...ではない気がする。

 

「あの結界の中に入っちゃダメだ!」

 

青年がこちらに駆けてくる。

 

「へ?...あんたさっきの!なんで戻ってきた!」

 

「あの中で魔法を撃ったら自滅する!それで僕の相棒が...!」

 

自滅する?...なるほど、そういうことか。あの中で魔法を撃ったら、すぐさま軌道を逸らされてしまい自分に命中するのだろう。もしあのまま光弾を撃ち込んでいたら、威力は低いとはいえ結構なダメージを負う羽目になっていただろう。

 

あと、さっき炎を撃ってきたのはこいつだな。俺を止めるために撃ったのだろう。そして、急に軌道が変わったのは魔物の結界のせいだろうな。能力があったから避けれたけど、普通の人だったら燃えてるぞもうちょい注意の方法なんとかならなかったもんかね?

 

「あいつは...僕が殺す!あんただけに任せてはいられない!」

 

「へぇ、敵討ちねぇ...いいじゃん。一応言っておくけど、お前が死んでも責任取らないからな?」

 

「こっちもだ」

 

「オーケー。あんた、炎以外の魔法は使えるか?」

 

4700ページ 黒のみ 軌道変更

 

軌道変更で魔法を逸らしながら聞く。戦力の確認は必要だ。何ができるのか知っていないと、コンビネーションも満足に取れなくなる。

 

「熱操作だから氷も使える」

 

「なるほど、じゃあ氷使ってくれ。炎じゃ森が燃えて酸欠になっちまう」

 

「今すぐには無理だ。水分が足りない」

 

「熱操作で水分を凍らせてるだけなのか...いつもはどうやって使ってたんだ」

 

「相棒が水魔法が得意だったから...」

 

「…なるほど。じゃあこの戦いだけその相棒の代わりになってやる。水なら任せろ」

 

4571ページ 黒のみ 触手・水

5293ページ 黒のみ 熱操作

 

鞄から水でできた触手が何本も生えてくる。それらを勢いよく振り回しながら熱操作で急速に蒸発させ、辺りに水分を撒き散らしていく。

 

「これでいいか」

 

「…ああ、十分だ」

 

ついでに火も消しておいた。これで酸欠の心配もない...はず。

 

「じゃあ行くぞ」

 

「ああ」

 

青年が杖を構えると、周囲に大量の氷の粒が生み出され、一斉に射出される。それと同時に水の触手を叩き込む。

 

「チッ、やっぱ弾かれるか」

 

氷も触手もあらぬ方向へと逸らされる。

 

「もういっそのこと魔力切れでも狙うか!」

 

攻撃の通る例外を探すよりも、何十と攻撃を逸らさせるなり透過させるなりして魔力切れさせる方が何百倍も楽だ。

 

5437ページ 黒のみ 植物操作

 

氷と水の触手を叩き込みながら木に触れる。木の根がギュンッと伸びて魔物に襲いかかった。

 

木の根は魔物を通り抜け...なかった。魔物がなぜか身を捩って避けたのだ。

 

「えっ...なんで?」

 

なぜ避けた?避けずとも通り抜けるだけでいいのに...なんで?

 

「悪い水分なくなった!補充を頼む!」

 

「えっ、あ、ああ!」

 

何か思いつきそうだったんだが...とりあえず青年の戦力を取り戻さないと。

 

「今触手を...ん?これは...雨?」

 

ポツポツとだが、雨が降ってきた。広葉樹の葉から雨水が垂れてくる。

 

「ちょうどいい湿気だ。最大火力でいくぞ!」

 

青年が杖を振り、大量の氷を射出する。氷は雨を透過している魔物に向かって飛んでいき、そのまま通り抜けた。

 

「えっ⁉︎」

 

青年が驚き、声を出す。さっきまで結界で回避していたはずなのに、急に透過で回避したからだろう。

 

「…何か掴めた気がする」

 

俺は一つの仮説を立てた。さっきの植物操作での攻撃でも感じた違和感。そして今の、青年が放った氷が透過した事実。そこから導き出された仮説。

 

247ページ左下 黒のみ 光弾

 

「今、この魔法で証明する!光弾!」

 

指から光の弾丸を飛ばす。光弾は魔物のもとまで飛んでいき、杖が光って結界が生じると同時に逸される。

 

「…あれは!やっぱりそういうことか」

 

俺は見た。こいつを倒す手がかりをハッキリと見た。

 

「行ける...氷を撃ち続けろ!」

 

「そのつもりだ!」

 

青年が氷を作り始める。その最中、ずっと水の触手を魔物に叩き込み続ける。そのどれも結界によって弾かれてしまうが、それでいい。

 

「生成完了!射出!」

 

何十もの氷が魔物に向かって飛ぶ。

 

「回避はさせないよ」

 

714ページ左上 黒のみ 土流

 

触手を叩きつけながら土流を発動し、魔物の足を土で固定する。氷からの回避は許さない。

 

そしてその瞬間、大量の氷が魔物に突き刺さる。

 

「当たった⁉︎」

 

「お前は無敵じゃない。魔法を逸らしている間は物質透過は使えない...だろ?」

 

光弾が結界によって逸されたその瞬間、魔物のローブが濡れ出したのが見えた。そして結界が消えた瞬間、ローブに染み込んだ水が抜け落ちたのも見た。それによって法則を掴めたのだ。

 

今青年が放っている氷は雨水、自然の水を凍らせたものだ。雨が降る前の、俺の触手で出した水ではないため、物理法則が働く。なぜか奴の使う軌道変更は魔法にしか効力を持たないようなので、氷が効いたのだ。

 

魔物は痛手を負ったため、結界を解除して土の拘束から逃れる。そして木を透過しながら逃げ出す。

 

「そしてもう一つ、透過している間は結界を使えない。今は魔法が通じる」

 

触手で魔物と頭を叩く。逸されることはなく、直撃して木の中から引き摺り出される。

 

「手の内がわかっちまえば大したことねぇなァ...氷を撃ち続けろ。トドメは譲ってやる」

 

5437ページ 黒のみ 植物操作

 

木に触れ、枝一本を操る。そして二本の木刀を作り出す。

 

4302ページ 黒のみ 念動

 

「よーし、行け」

 

二本の木刀を念動の魔法で動かし、魔物を斬りつけにかかる。物理攻撃のため、通り抜けられてしまうかもしれないが、そうなれば触手が当たるようになる。そして触手を避けようとすれば、木刀と氷が突き刺さる。どちらを選んでも、必ずどちらかは受けることになる二者択一。

 

魔物が選んだのは、結界だった。。触手よりも、切れ味の悪い木刀と威力の低い氷を喰らう方がまだマシだと考えたのだろう。

 

「『雷装』!」

 

けれど、それは間違いだ。

 

触手を通して超高圧の電流が流れ出す。触手自体は結界によって弾かれてしまうが、今もなお降り注いでいる雨や魔物めがけて放たれている氷に電流が移動し、魔物に流れ込む。

 

「『雷装・剣』!」

 

一度木刀をこちらに戻し、触れることで電流を流す。電流の流れる木刀を念動で動かして直接流し込む。

 

「結構魔力ヤベェ...もうそろ終わりにするか」

 

雨が降っているせいで、触手に流している電流が周りに散りやすくなっている。その分雷装に使用している魔力が無駄になっているということであり、触手や念動での魔力消費も合わさって結構減ってきている。

 

「氷を撃ちながらでいい!あいつから距離を取るぞ!」

 

青年に呼びかける。

 

「なぜだ!」

 

「巻き込まれないようにするためだ!早くこっち来い!」

 

手を引いて魔物から距離を取る。

 

「よし、この辺なら...大丈夫だな」

 

「何が大丈夫なんだ。何に巻き込まれるってんだよ」

 

「あー...俺の二つ名知らない?」

 

「神の使い」

 

「それじゃなくて...自分でも言いたくないけどさ、爆発魔(ボマー)っていうんだよ」

 

「…まさか」

 

「そのまさかだ。トドメは任せるつったろ?炎を撃ち込め。最後の仕上げは頼んだぞ」

 

「…わかった」

 

青年は氷を撃つのを止める。そして大きく杖を振り、魔物に先端を向ける。

 

「ありがとな」

 

炎がバァッと飛び出す。魔物はそれを見て結界を起動するが、それではこの攻撃を防げない。

 

「消し飛びやがれ!ミリフの...仇だ!」

 

水素と酸素が瞬時に反応して大爆発が起こる。爆風と爆炎が周囲に撒き散らされる。木の裏に隠れ、かつ水の触手を使って身を守ったため、なんとか巻き込まれずに済む。

 

「殺せた...のか?」

 

爆発で土が巻き上げられたせいで、殺せたのかがわからなかった。

 

「そうだ、これを使えばわかるはず...」

 

鞄からレーダーを取り出す。もし魔物が死んだのであれば、その身に内包されていた大量の魔素は周囲に放出されるはず。そうなれば、レーダーの探知に引っかからないはずだ。

 

「えーっと...まだ反応があるな。まさかまだ死んでいない?」

 

7ページ右下 黒のみ 微風

 

微風を発動、その風を加速し、舞い上がった土を吹き飛ばす。少しずつ視界が鮮明になり、魔物の姿が見えるようになってくる。来ているローブは既にボロボロで、体にも火傷の痕が見える。

 

「やっぱ死んでなかったか...」

 

「でももうボロボロだ。適当な魔法を撃ってくれ。僕が氷で仕留める」

 

「オーケー、牽制だからスキルでいいよな。『光弾』」

 

指を向け、光弾を連射する。魔物は結界を生成し、それによって逸されるが無視して撃ち続ける。その光弾の弾幕の中を縫うようにして氷が飛び、魔物を貫かんと迫る。

 

「…な、なに⁉︎」

 

しかし、氷は魔物に一発も当たらなかった。逸らされたのではない。氷が逸された光弾で全て撃ち落とされてしまったのだ。

 

「死にかけなのに今更本気を出してきたか。あと一分早ければ俺たちを殺せたかもしれないのになァ...遅いね、遅すぎる」

 

俺たちが何もしなくても、こいつは時間が経てば死ぬ。もう遅いのだ。

 

「今度こそトドメといこうか」

 

27ページ左下 黒のみ 水弾

 

「空気中の水分で氷を作って撃て。そしてその中にこの水で作った氷を混ぜるんだ。それで殺せる」

 

「わかった。これで...終わりだ」

 

青年の周囲で氷が作り出される。その中に一つ、水弾を凍らせた氷が混じる。

 

そして、射出された。

 

魔物は結界を貼ることなく、氷をすり抜けていく。しかし、水弾を凍らせた氷だけは通り抜けることが出来ず、胸の中心を貫く

 

…はずだった。

 

「これは...⁉︎」

 

空中で氷が消失した。全てだ。

 

「やられた...こんな隠し球を持ってただなんてな...」

 

青年がボソッと諦めたかのように呟いた。

 

魔法拡散(ディスタブマジック)...勝ち目なしだ」




頑張って戦闘シーン書いたけど、魔法の描写難しいなぁ...ページ数書くからテンポも少し悪いし。
呪文を何個も書くよりかは何倍もいいんですけどね。
物理攻撃を書いている方が動きを想像しながら書けるのでもっと楽なんですよね。
魔法だと速度操作の描写を入れにくいというのもあって、なんとなく疾走感が足りない。

多分次回は物理戦闘多くなると思います。
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