前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8261字。

村を回るだけなので戦闘は無しです。


これってよくよく考えたらデートじゃね?

「帰ってきたー!」

 

村まで戻ってきた俺たち。まだ日は高いし、色々できる時間がありそうだ。

 

「お帰りステラちゃん。それと...そういえば名前聞いていなかったね」

 

衛兵の人が話しかけてくる。確かに、ステラ以外に名乗ってなかったな。

 

「カリヤさんだよー」

 

俺が名乗る前にステラが言う。

 

「そうか、カリヤと言うのか。俺はヨイだ。よろしく」

 

「よろしく」

 

「というかステラちゃんすごい量狩ってきたんだね。その袋でしょ?」

 

「そうなの。カリヤさんが荷物持ちしてくれたからいっぱいやっちゃった」

 

「重いでしょ。持つの手伝おうか?」

 

「あっ、大丈夫です。一人でも持てるんで」

 

「おじちゃん衛兵の仕事あるんだから手伝えないでしょ。お人好しはいいけどちゃんと仕事はしなね?」

 

「あはは、そうだったそうだった」

 

「じゃあねー」

 

門を通り村の中に入る。そして向かった先は...肉屋か?ここ。店先には氷で冷やされた肉のようなものが置いてあった。人はいなかった。

 

「ツルさーん!持ってきたよー!」

 

ステラが家の扉を開けて中に声をかける。そんな勝手に扉を開けていいのか?田舎みたいだな。行ったことないけど。

 

「おぉ、いらっしゃいステラちゃん。いつもありがとね...おや、そちらの人は?」

 

女の人が出てくる。この店の人らしい。

 

「紹介するよ。この人はカリヤさん。狩りを手伝ってもらったの!」

 

手伝ってもらったのはこっちだと思うけど...まぁ訂正するのも面倒だな。

 

「どうも、仮谷幸希です」

 

「カリヤさん...ね。私はツルよ。こちらこそどうも。あっ、その袋が今日の獲物かい?もらうよ」

 

袋をツルさんに渡す。

 

「随分と獲ってきたのねぇ」

 

袋を開けて中身を出しながらツルさんが言う。

 

「手伝ってもらったって言ったでしょ?目一杯獲ってきちゃった!」

 

「カリヤさんってすごいのね」

 

「いえいえそんな...荷物持ちをしたからステラがのびのびと狩りができただけのことですよ」

 

「えっ、これまで獲ったのかい?すごいねステラちゃん」

 

鳥の魔物を引っ張り出して言う。

 

「それそれ!それを狩るときに手伝ってもらったの!」

 

「ちょっとだけですけどね。褒めるならステラですよ。俺一人じゃ到底無理でしたし」

 

ステラの弓の腕があったからこそできたことだ。今の俺が一人でやってたら普通に失敗しているだろう。

 

「それにそれ以外の魔物は全部ステラ一人で全部片付けてましたよ。全部ステラの実力です」

 

「えへへ...」

 

ベタ褒めしたのでステラが照れてる。正当な評価なんだから照れなくていいのに。

 

「じゃあ、今回はこれだけ獲ってきてもらったわけだし...いつもより多めに渡さないとね!」

 

ツルさんがステラにお金を渡す。ここは弓矢の村って話だったし、こういう感じで経済が回ってるのかな。誰かが獲った獲物を卸して、売って金にする。そういう感じの、一次産業の盛んな村なんだろうな。

 

「いつもありがと!ツルさん!」

 

「こちらこそね。いつもいい肉をくれるから助かってるよ」

 

ちょっと思ったんだが、この世界には牛とか豚とかいないんだろうか?この辺りには生息していないだけなのかもしれないけど、畜産とかしないのかな?いや、魔物になってるから無理なのか。

 

「じゃあねツルさん!カリヤさん行くよ!」

 

「お、おう」

 

ステラが元気よく店から出ていくので、自分もツルさんに軽く礼をしてから店を出る。

 

「まずはトリさんのところに行かないとね」

 

「そうだな、金返さないと」

 

「あっ、そうだ。はいこれ!手を出して!」

 

「えっ?うん」

 

言われた通りに手を出すと、ステラが何かを渡してくる。

 

「これって...」

 

渡されたのはお金だった。一枚の硬貨だが、俺が渡したのと違う硬貨だった。

 

「カリヤさんの取り分だよ。あの鳥の分ね」

 

「…いいのか?」

 

「いいよいいよ。貰っちゃって。これはカリヤさんがいなかったら貰えなかったやつだからね」

 

「じゃあ貰っておくけど...本当にいいの?俺が渡した意味なくなった気がする」

 

「カリヤさんから貰った分よりは少ないからいいんだよ」

 

そうなのか。早めに硬貨の価値がそれぞれどれくらいなのかを知りたいな。詐欺みたいな感じでふっかけられたり、使いすぎて宿代がなくなったりとかしたら困りそうだ。

 

「なぁステラ、行き道でお金の価値とか色々教えてくれないか?どれがどれより高い硬貨なのかとか、一つでどんなものをどれくらい買えるのかとか」

 

「カリヤさんってお金使ったことないの?」

 

「…山奥に住んでたって言っただろ?そこから出たことがほとんどなかったからさ、お金の価値がわからないんだよ」

 

「じゃあそのお金はどうやって手に入れたの?」

 

「…親が用意してくれたんだよ」

 

「なるほどねぇ。じゃあちょっとお金出して?説明するから」

 

袋から種類の違うお金を取り出してステラに見せる。すると、それぞれの価値や、どんなものが買えるのかを教えてくれた。途中、聞きなれない物の名前が出てきたりしたが、知らないと言うとそれも教えてくれた。

 

そして一つ分かったことがある。この世界には紙幣が無い。それが、印刷技術が発展していないから作れていないというだけなのか、紙幣を皆が価値がある物と思うことができなくて使えなかったのかはわからないが、紙幣がないというのは確かだ。でも硬貨をジャラジャラ持ち歩くのは面倒だよなぁ。紙幣とかキャッシュレスって本当に便利なんだなと思う。

 

「これで説明は終わりかなー。なんかカリヤさんって生きるのに大変そうだね」

 

「どうして?」

 

「いや、あまりにも物を知らなすぎるから...」

 

別の世界の人間だからしょうがないだろとは言えないよなぁ。

 

「これから頑張るよ」

 

そんなことを話しているうちに、診療所に着いた。

 

「トリさんトリさん!カリヤさん戻ったよー」

 

「カリヤって誰だよ...ああ、あんたか」

 

トリさんが奥から出てくる。

 

「それで、金は回収できたのか?」

 

「できたよ」

 

「じゃあキッカリ払ってもらおうか」

 

「あっ、それより前に体を見てあげて。ちょっと派手目の動きをさせちゃったから確認してくれる?」

 

「いいが...診察代は貰うぞ?」

 

「払う、ちゃんと払うから頼むよ」

 

「了解」

 

ステラには一度外に出てもらって、トリさんに診察をしてもらう。流石に診察は魔法を使わずに、目で診察していた。ってか、聴診器とかあるんだな。普通の医療道具もあるにはあるのか。まぁそっか。魔力切れ起こしたら治療できませんだと困る。普通の医療もある程度はできるんだろう。

 

「ふむ、特に異常はなさそうだ。よかったな、余計な治療費は増えないぞ」

 

「そうですね、良かったです」

 

「…治療費はこれだ。ちゃんとあるんだよな?」

 

紙に値段が書かれる。というか、いつのまにか数字や文字も読めるようになっていた。見た目は完全に異世界の言語の文字なので、なんて書いてあるのかはさっぱりだが、なぜか内容がわかる。翻訳能力は文字にも適用されているらしい。でも、文字はちゃんと覚えないといけなさそうだ。読めるが書けないだと将来困りそうだ。

 

「ええ、ちゃんとありますよ」

 

袋からお金を取り出す。さっきステラにお金の価値を聞いておいて助かった。っとと、ピッタリは払えないな。お釣りもらわないと。

 

「お釣りあります?」

 

値段以上のお金を机に出すと、トリさんが足りているかどうかを確認する。そして棚からお釣りを取り出して俺に渡す。

 

「これでピッタリだ。毎度あり」

 

「この村には診療所はここしかないそうですね。また怪我したら頼みます」

 

「来ないことを願うよ。俺を忙しくしないでくれ」

 

これ、彼なりの心配なんだろうか?確かに、医者が忙しくないってのはいいことだよな。

 

「…そうですね。では、ありがとうございました」

 

外に出る。

 

「終わったよ。待たせたね」

 

「いいよー。それじゃあ行こっか♪」

 

村の中を歩いていく。結構いろんなところを回るとのことで、ステラの要望で能力を使いほんの少し歩行速度を上げて移動していく。

 

「ここが服屋だよ。なんか買って行ったら?」

 

「じゃあ一セットだけ買っていくか」

 

店の中に入って、すぐに出る。

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや、今買っても持ち歩きにくいしさ。なんか鞄とか買えるとこない?まず鞄買いたい」

 

「あー、そっか、そうだよね。じゃあこっち!」

 

ステラの歩く方についていく。

 

「ほらここ!ここなら色々あるよ?」

 

「ホントだ。色々入って軽いのあるかな...ポケット多い方が整理が楽だしそういうのもないかな?」

 

陳列されているものを見ていく。とりあえず機能性の良さそうなものを片っ端から取ってみて、見比べてみる。

 

「…ナップザック系の多いな。作りやすいのかな?そういうのよりもちゃんとしたバックパックタイプの方がいいんだよなぁ...」

 

「これにしたら?」

 

ステラが持ってきたのを見る。おっ、使いやすそう。でも色がなー、ちょっとね。

 

「それどこから取ってきたの?あったところまでちょっと連れてって?」

 

「こっちこっち!」

 

ついていくと、同じような鞄が並んでるところに着く。

 

「じゃあこれにしよっかな」

 

「えー同じやつじゃんこっちにしなよー」

 

「色がね...」

 

ステラが持ってきたのは赤とかそっちの方の色だった。目立ちたくないので無難な黒めのグレーのものを取る。

 

「じゃあこれ買ってくるよ。店員さーん!」

 

パパッとお金を払い、鞄を購入する。

 

「よし、さっきの店に戻ろう」

 

「近いところからどんどん回ってこ!さっきの店は後でにしてさ!」

 

「それでいいよ。ステラの好きなように回って」

 

ステラの横をついていく。能力の範囲は一メートルしかないので、これくらいの近くまでくっついて歩かないといけないのだ。肘とかちょくちょく当たってちょっと痛い。

 

「次はここー!武器屋!弓がほとんどだけど剣とかも色々置いてあるよ」

 

「おー、ほんとだ。色々置いてある」

 

置いてある武器のうち、九割ほどを弓が占めていた。弓ってそんなに違いあるのか?よくわからん。

 

「ステラが使ってるのってここで買ったやつ?」

 

「そうだよ?これ!」

 

ステラが指を指した弓を見る。あれ?ちょっと違う気がする。

 

「ちょっと違くね?」

 

「これをもとに私用に作り直してくれたんだ。力が弱くても矢を撃てるようにしてくれたんだ!」

 

「オーダーメイドってことか」

 

「そういうのしてくれる店だからカリヤさんもしてもらったらいいよ!」

 

「なるほどね。まぁ、今日は見てくだけにしようかな。衝動買いはやめない...とだし」

 

今日は買わないと頭の中で唱え続けていないと、いつのまにか買ってしまいそうだ。今日は買わない...今日は買わないぞ!

 

乗り切った。絶対買うフラグだと思ったやつは手を上げておくといい。

 

「明日買おっかな。目ぼしい物はすでに見つけてあるし」

 

「じゃあ次はこっち行こっか」

 

「おう」

 

次に行ったのは防具屋とでも言うべき店だった。

 

「まぁここに来る人はあんまりいないんだけどね。ここ使う人は外から来た冒険者の人くらいなんだ」

 

「そっか、この村は弓使いが多くて魔物に攻撃されること自体が少ないから、防具があまりいらないんだな」

 

「そうなのそうなの。だから品揃えもあんまり良くないんだよね。ちゃんとしたのを買うなら別の町に行ったほうがいいかも」

 

「なるほど」

 

そんな会話を店の人に聞こえないくらいの小声でしながら品物を見ていく。

 

「これも明日買いに来よっかな。一応は揃えておきたいし」

 

「そっか。じゃあ次に...」

 

ステラが歩き出そうとした瞬間、間抜けな音が鳴る。音の発生源は俺の腹だった。

 

「あっ、そうだった。ここに来てから水しか口にしてないじゃん俺」

 

「私もちょっとお腹減ってきちゃった...」

 

「それじゃあちょっとお茶しに行こうか」

 

「………?」

 

あっ、お茶するって言っても伝わらないのか。そもそもお茶自体がないのか?

 

「なんかご飯食べれるところある?」

 

「それじゃあこっちかな」

 

向きを変えて歩き始める。歩いている途中、魔力切れを起こして能力が切れて歩く速度が元に戻るも、ほとんど着いていたのでほぼ影響なかった。

 

「ご飯ご飯ー!」

 

俺はどんな料理が出てくるのかわからないのでドキドキしていた。異世界の料理ってどんなんなんだろ。

 

「ハノさーん!私いつものー!」

 

「はいよー!ってステラちゃん、そちらの人は?」

 

「カリヤさん。今日初めてこの村に来たから村を紹介してるの!」

 

「なるほどねぇ。で、カリヤさんは何を頼むんだい?」

 

「んー...どれにしようかな」

 

渡された手書きのメニュー表を見る。写真がないからどんな料理なのかまるでわからんな。変なの出てきたらどうしよう。そうだ、ここは安全策で...

 

「ステラと同じのでお願いします」

 

「あらそう。じゃあ作ってくるわね」

 

ハノさんと呼ばれた人が店の奥に消えていく。

 

「同じのでよかったの?」

 

「なんの料理が出てくるかわからないからな。ステラが食べる物なら安心して食べられる」

 

「そっか」

 

そうして出てきた料理は普通に美味しかった。まぁ、現代日本の料理と比べてしまうと劣ってるように感じてしまうよなぁ。仕方ないと思う。

 

「よし、じゃあ次行こー!」

 

その後も、いろいろなところを回った。村の役所的なところの前まで行ったり、本屋的なところに行ったり、学校みたいなところに行ったり。学校ってよりかは、教科書で見た寺子屋っぽい感じだったけど。

 

いろんな人に挨拶もされた。ステラと一緒にいたからか、第一印象は良さげだったけど、近所付き合いって難しいと思った。近所付き合いなんて田舎じゃなければあんまり今の日本にはない文化だし。コミュニケーション能力が高いわけでもないから、慣れるのには時間がかかりそうだ。

 

「よし、ここまで戻ってきたね」

 

最初に来た服屋に戻ってきた。

 

「じゃあ適当に一セット買ってくるよ」

 

「適当に〜?いいの買いなよー」

 

「いいんだよ別に。とりあえず買うやつだし、そもそも俺あんまり服に興味ないからなぁ。あっ、寝巻きも買わないとダメじゃん」

 

そんなに目立たないものだけを手に取り、見比べる。本当に適当に選んでいるだけなので、コーデとかまったく気にしてない。というかコーデってなにそれって感じだ。私服なんてほとんど持ってなかったしな。服のセンスなんて俺にはない。

 

「これでいいや」

 

パパッと買って鞄にしまう。まだお金には全然余裕がある。この感じならまだ何日ももちそうだ。

 

「最後は宿屋だねー。すぐ近くだよ」

 

宿屋に着く。

 

「どう?結構綺麗でしょ」

 

「そうだな。思ってたよりかは綺麗だ。てっきり防具屋と同じような感じだと」

 

「冒険者は元々ある程度の装備を整えてるから防具屋を使う人は少ないけど、宿屋はほぼ全ての冒険者使うからさ。集客良くて綺麗なんだよ」

 

「なるほどねぇ...じゃあここに泊まることにするか。チェックインだけ済ませておこ」

 

お金を払い、部屋を取る。風呂もご飯も出るそうで、そのためちょっと他の宿よりも高くなっているそうだ。この世界の風呂ってどうなってるんだろ。ちょっと日本人として気になるな。

 

「済ませてきたよ」

 

ステラのもとに戻る。

 

「今日はいろいろありがとね。助かったよ」

 

「もういいの?」

 

「うん。もう結構村については知れたし、あとは一人でも大丈夫だよ」

 

「そっか。じゃあねー!バイバイ!」

 

ステラが大きく手を振りながら駆けていく。

 

「よし、これから何しよっかな」

 

日は西に傾きつつある。今日、ステラと一緒に行ったあの飲食店で時計を見つけたおかげで一日が三十時間くらいだとわかった。別に文字盤が1から15まであったわけではない。なんか秒針回るの遅いなと思って数えてみたら、一周するのに75秒経っているのに気づいただけだ。それ以外は普通の時計だった。

 

そして日中が15時間で、夜が15時間らしい。一年を通してこれは変わらないらしい。今の陽の傾き的に夜になるまであと一、二時間かかりそうだ。夜になるまで何をするべきか...

 

「そうだ、本屋行ってみよ」

 

今は情報が欲しい。この世界について知らないことが多すぎるしな。ステラにも物を知らなすぎるとか言われたし。

 

「確かこの道を曲がれば...よし、あったあった」

 

本屋に入る。

 

「とりあえず必要なのは...」

 

この本屋は買うこともできるが、借りることもできるらしい。なので、とりあえず必要そうなものを片っ端から借りて夜読むことにした。そういうわけで店内を色々見て回っているのだが...

 

「地図...地図⁉︎あっ、買お!」

 

平置きで地図が置いてあった。地図は買った方がいいだろう。多分一生使える。

 

「どんな本借りればいいんだろ...わからん。適当でいっか。まぁ時間はあるし、時間かけて全部読破すればいっか」

 

でも徒に時間はかけたくないな。できれば効率よく、必要なやつだけ読みたい。一応聞くけど神様なんかオススメある?

 

『全部読めばいいじゃろ。知識はあればあるだけ力になるぞ』

 

やっぱそうだよな。うん。

 

「すみませーん!店員さーん!」

 

店の奥にいる店員さんに声をかける。おばあちゃんなのでちょっと声のボリューム多めにしておいた。

 

「はいはい、痛いほど聞こえてますよ。これでも耳だけはいいんでね」

 

どうやらその必要はなかったみたいだ。明日からは気をつけよ。

 

「この地図は買って、こっちの本は全部借ります」

 

「太っ腹だねぇ...じゃあ地図の代金だけ貰うよ。借りる方は時間で料金がつくから、返す時に払ってね」

 

「はい、ではこれを」

 

「はい毎度あり。袋いるかい?」

 

「大丈夫です。鞄あるんで」

 

鞄に借りた本を入れていく。全部入れ終わって、背負ってみるとめっちゃ重い。流石に一気に借りすぎたか?でも宿まで近くて助かった。途中でスタミナ切れすることはなさそうだ。

 

「重い...よいしょっと。ふぅ、着いた着いた」

 

宿まで着く。部屋が二階だったのは誤算だったが、スタミナギリギリで部屋まで辿り着き、鞄をドカッと置く。

 

「よーしまずは...地図を読もう」

 

買った地図を開く。

 

「あっ、ここがこの村か。ここがカリスで、ちょっと北行くとデカい町があるな。王都?ここが首都なんか」

 

簡単に地図に載っている内容を説明すると、まずこの世界は真四角だった。地図の外はそもそも世界がないらしい。端と端が繋がってるわけでもなく、本当に先がないらしい。

 

『ちなみにこの世界は平面じゃから、空が回っておるぞ。天動説が現実になった世界じゃな』

 

世界の北と南に一つずつ大きな山があり、南側が女神の山で、北側が魔王の城がある山らしい。魔王が現れると城も同時に現れるらしいので、この地図には城は書いていなかった。

 

女神の山の少し上北にこの村、カリスがあり、そのまた北に王都がある。それまた北に行くとナゾの空白があった。世界の中心にはナゾの穴っぽいのがあるらしい。

 

穴の北には三つの町があるようだった。中央は盾の町、ガルム。盾の町の名前が番犬の名前になってるのは何かの偶然かな?

 

ガルムの東側には魔法の町、カイスがある。西側には冒険者の町、ガネルがある。

 

なんか町の位置関係を見ると、魔王軍が王都めがけて襲ってくるところを盾が正面から防ぎ、左右から魔法使いと冒険者が叩いて、遥か後方から矢が飛んでくるような、そんな想像ができる。実際そういう想定で町を作っていそうだ。女神の山乗っ取られたらヤバそう。

 

「他にもいろいろあるなぁ。ってかこれめっちゃ描き込まれてんな。誰が作ったんだろこの地図」

 

伊能忠敬みたいに歩いて測量したのか、それとも魔法で作ったのか、わからないけどこれ作った人がすごいってことだけはわかる。

 

「うぅ...ちょっと眠くなってきたな。風呂入ってご飯食べたら寝るか」

 

まだ夜は始まったばかりだが、そもそも一日が長いのだ。もとの地球ならもう真夜中に近いだろう。普通に眠い。

 

「お風呂お風呂ー!」

 

お風呂は大浴場だった。この時間に入る人はいないようで、ほとんど貸切状態だったが。

 

「お風呂ってどうやってんだろ。魔法でも使ってんのか?まぁあったかけりゃなんでもいいけど」

 

置いてあった桶を使ってかけ湯をしてからお湯に浸かろうとする。しかし、足がお湯につくその瞬間、体が硬直する。

 

「なんで...体が震えて...?」

 

自らの体の制御が効かない。無意識にお湯に浸かることを避けてしまっている...?

 

「トラウマ...か」

 

この世界に来たそもそものきっかけはお風呂に入ったまま寝てしまい、溺死したからだ。そのトラウマのせいで、結局お湯には浸かれず、何回もかけ湯して体を洗い流すだけになった。

 

「お湯に浸かれないのは日本人として終わってるなぁ...いつか慣れないとな」

 

その後、大浴場から出た俺は宿のご飯を食べ、そのまま部屋で泥のように眠ることとなった。




神様が説明役として補足説明させるのに使いやすすぎる。

こんな使い勝手いい神がいて良いのだろうか。いや、いていい(反語)
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