前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8687字。

戦争が始まりました。


戦争開始

「…んしょっと」

 

後方から飛んでくる魔法の雨の中を魔法石の効果で無傷で通り抜け、スーパーヒーロー着地で地面に着地する。手足がジンジンするが気にしないでおこう。神の使いとして、見栄えは大切だ。

 

「後ろの奴らが来る前に出来るだけ多く片付けておかないとな。優先すべきは...あいつらだ!」

 

ダガーを引き抜き、ここから少し先にいる魔物の所まで走る。途中ですれ違った魔物は無視。こいつは魔法耐性がない魔物だ。そいつらは後ろから飛んできている魔法で勝手に死んでくれる。俺が狙うべきなのは、前線を進む魔法耐性持ちの魔物だ。

 

「よくおいでくださいました死ね!」

 

見慣れてきた鎧の魔物の目の前で止まる。そして俺の声に反応する前に首を掻っ切る。

 

「団体様まとめてあの世行きでございまーす!」

 

そのまま最短距離を走って周囲に固まっていた鎧の魔物の首を斬り飛ばしていく。殺し漏れはないし、油断もしない。首を切ってもすぐ動かなくなるわけではないのは経験済み。すぐにその場を離れて反撃を受けることを避ける。

 

「次は...あれかな」

 

目標を見定め、そこまで走る。通り道ですれ違った耐性持ちはもちろん斬っておく。角度的に首を狙えない奴らは足や腕を斬っておく。後続が来た時に倒しやすくなるようにお膳立てしておく。

 

「あらよっと...雑魚ばっかだな。こいつらに苦戦していた頃が懐かしいぜ」

 

目標殺戮完了。秒速40メートルに反応できる魔物はおらず、なすすべもなく斬られていく。ハッキリ言ってつまらない。まぁ戦争が楽しいものだったら嫌だけど。

 

「よーし次はアレにしよっかなー...あっ、吹っ飛んだ」

 

次に殺しに行こうとした小隊が複数の魔法を喰らって吹き飛ばされていった。流石に魔法耐性持ちでも、あれだけの数を喰らえば大きなダメージを与えられるらしい。死んではいないみたいだけど、ありゃ地面に激突したら死ぬな。

 

「……こりゃ選んでないでひたすら殺し回った方が早いな」

 

魔法の支援が思ったより厚い。距離減衰と耐性による不利を、物量で無理矢理亡き者にしている。これだったら耐性持ちも耐性なしも関係ない。

 

「ってかそうだな。先に奥の奴らを殺しに行くか」

 

距離減衰のため魔法が届かない後列の魔物たち。そいつらから先に倒しておいたら、後々楽になるだろう。囲まれる危険性はあるが、ヤバくなったらすぐに離脱するのみ。後続の冒険者たちが魔物たちとぶつかり出したら戻るとしよう。

 

72ページ右下 黒のみ 跳躍

 

跳躍で地面を蹴り、魔法が飛んでくる中宙を舞う。こんなことができるのは魔法石さまさまだ。正面からの魔法は逸らせないため、戻ってくる時は面倒だけど。もしカイスの方を向いて戻ろうとすればもれなく魔法で撃ち落とされることだろう。

 

「よっ、と」

 

ダンっと敵軍のど真ん中に着地する。普通なら転がって勢いを殺して着地したいところだが、背中に背負っている鞄が邪魔で無理なので代わりに能力で速度を落としての着地となった。

 

「鬼さんこっちら手の鳴る方へ〜」

 

2472ページ上 黒 紫 誘引

 

手を叩きながら魔法を発動させると、周囲にいる魔物の目が全てこちらを向く。

 

「来たら死ぬけどねー」

 

1799ページ左上 黒のみ 路面凍結

 

地面に手をつき、辺り一帯の地面を軒並み凍り付かせる。近づこうとしていた魔物たちは足を滑らせ、尻餅をつきながら滑ってくる。

 

3780ページ上 筆記

 

凍った地面に一瞬で魔法陣を描き込む。前は筆記魔法をうまく扱うことができなかったが、練習した結果、物に書き込むことくらいはできるようになった。ニトラスのように、空気に書き込むことはまだできそうにない。けれど今回はこれで十分。

 

72ページ右下 黒のみ 跳躍

 

地面を蹴り、真上へと跳ぶ。そして今さっき描いた魔法陣を起動する。その魔法は土流。凍った地面の真下を流動化させて地表に染み出させ、周囲に飛び散らさせる。その分地面は沈下し、落とし穴が完成する。誘引で引き寄せられた魔物たちは残らず落とし穴に落ちていく。

 

「電網の落とし穴にごあんなーい!」

 

『雷装・矢』

 

矢を一本引き抜き、電気を纏わせて落とす。矢は魔物の一体に突き刺さった。その魔物から落とし穴に落ちている他の魔物へと氷を通じて電流が流れる。矢の電流だし、間接的に流れているだけなので殺傷能力はそこまで見込めないが、多くの魔物を足止めできただけで成果としては十分だ。

 

「次探すか」

 

4014ページ 黒のみ 障壁

 

空中に障壁を設置し、足場代わりにして跳ぶ。

 

「おっ、いい感じに集まってるねぇ」

 

少し先に魔物の集団がいる。人の軍で言う一個小隊くらいの規模だ。飛んでくる俺に気づいてこっちを見ている。

 

「…っとそうか。誘引の効果だこれ」

 

この速度で気づかれるわけないと思っていたが、まだ魔法を切っていないのを忘れていた。まぁこのままにしておこう。勝手に来てくれるなら楽ちんだ。

 

「んーでもこのままじゃ衝突すんなこれ...そうだ」

 

何もしなければ魔物の集団に激突する。避けようかと思ったが、どうせなら攻撃も同時に済ませてしまおう。

 

5017ページ 重力発散

 

自身と魔物の集団との間、ちょうど中点のあたりに魔法の起点を置く。するとそこから周囲に重力が発生し、下にいた魔物は地面と挟まれて潰され、上にいた俺は弾かれるように斜め上に吹っ飛ぶ。

 

「回避成功っと」

 

吹っ飛ばされた俺はぐるぐると回転しながら落下予想地点を見る。魔物はまだいない。このままならちゃんと着地できそうだ。

 

「…ん?」

 

空から魔物が飛んできているのが速度探知でわかった。

 

「あっぶね」

 

襲いかかってくる魔物の速度を若干ながら遅くし、落下速度を加速させて避け、着地する。

 

「惜しい惜しい!あともうちょっとだったねェ!」

 

空を見上げる。襲いかかってきていたのは鳥の魔物のようで、空にわんさかいた。けれど、地面にまでは降りてこないみたいだ。流石に無謀だとわかるのだろう。俺が足場のない空に跳んでいるタイミングでしか攻撃してくることはないだろう。

 

「でもちょーっとピンチかも」

 

誘引の効果で、周囲から魔物が近づきつつある。今から解いてもここに来るのは変わらないだろう。数的に地上を走り抜けるのは難しい。空に跳べば鳥の攻撃を喰らうかもしれない。

 

「まぁ、ここまで近づけたらの話だけどね」

 

ダガーをしまい、弓を取り出す。そして五本の矢を持ち、そのうちの一本をつがえて上に向ける。

 

2283ページ上 黒 黄 増殖

5000ページ 黒のみ 魔法復唱

『速射』

 

魔法とスキルを同時発動し、1秒のうちに五本の矢を真上に飛ばす。本来だったらそのまま真下に落ちるだけだが、増殖の魔法の効果で矢が増えた瞬間それぞれがバラバラの方向に飛び散っていく。増えた矢同士が重なり合いそうになり弾け飛んだのだ。

 

魔法復唱で連続発動した増殖により数えることができないほど増えた矢の雨が周囲に降り注ぐ。その一部は空を飛んでいる鳥に命中し、残る矢はこちらに迫ってくる地上の魔物に突き刺さる。

 

「これ結構使えるな。次ステラに会ったら教えよっと」

 

相当な量の魔物の命を絶てた。地上の魔物はまだ動けるものがいるみたいだが、空を飛ぶ鳥はだいぶ減った。誘引を解除して一旦この場を離れるとしよう。

 

俺の目的は数を減らすことだが、その方法は殺すことだけじゃない。負傷だけでも十分な成果だ。殺すよりも負傷させた方が、人員が割かれて軍の消耗に繋がりやすいという、人間の軍での法則を魔物に適用できるのかは知らないが、進行が遅れるなら同じようなものだろう。

 

「誘引解除。さて、次行きますか!」

 

軽く助走を取ってから斜めに跳ぶ。

 

「ついでだ死んでおけ!」

 

進行経路を飛んでいた魔物の羽を斬り飛ばし、地面に叩き落とす。

 

「あっ、ちょうどいいところに!お前らに決定!」

 

着地点のその先に、プルプルと蠢くスライムの集団を見つけた。久しぶりにスライム退治をしよう。

 

3171ページ上 黒のみ 粘着付与

 

鞭を取り出し、粘着付与を発動してダガーを先端にくっつける。

 

「先制攻撃行くぜェ!」

 

ぶんっと鞭を振ると、先端のダガーがスライムの一体を上下に切り分ける。スライムの体の一部が外に弾け飛ぶが、上下に分かれた二つの大きな塊は重力に従って触れ合いくっつく。

 

「懐かしいねぇその感じ!バラバラに引き裂いてやらァ!」

 

スライムの集団の中にドンっと着地し、その場で一回転しながら鞭を振るう。スパンスパンとスライムの体が切断されていき、辺りに破片が飛び散る。破片はその勢いによって粉々に弾け飛んでいたため動くことはなかった。しかし、このままだと別の動けるスライムに取り込まれて再生されるだけだ。

 

「しまっちゃおうねー!」

 

7535ページ 黒のみ 物質転移

 

鞄の中にある小瓶を空いている左手に転移させる。元々スライムだった液体を入れていた小瓶だ。

 

3099ページ下 黒のみ 延性付与

 

その小瓶の蓋を開け、魔法を付与してスライムが飛び散らない程度に息を軽く吹き込み膨らませる。そして物質転移を使って、弾け飛んで動かなくなった元々スライムだったものをその中に入れていく。

 

「いい感じいい感じ...だけどちょっと効率悪いな。もう少しいい方法ないかな?」

 

物質転移は魔力の消費が激しいため、このまま続けていくのはちょっと厳しい。

 

「あっそうだ雷装使ったらどうなんだろ。やってみるか。『雷装・剣』!」

 

一度鞭を引き戻してダガーに触れる。そして雷装を発動する。

 

「さーてどうなるかな!」

 

鞭を振ると、電流の流れたダガーがスライムたちの体を引き裂く。破片は出てこない。電気分解されて消滅する。

 

「効くには効くのか。でも氷装を使った方が早そうだな...」

 

おそらく、前にやったように凍らせるのが一番早いだろう。その後の処分は面倒だが、これなら確実に処理できる。

 

「そのためにはまず、全部くっついてもらわないとな」

 

雷装を解除。鞭を戻してダガーも取り外す。攻撃は一旦やめだ。

 

「こいつ、欲しいやつあっつまれー!」

 

スライムだったものが入った瓶を揺らし、スライムを挑発する。スライムは体を大きくしたいという欲求を抑えることができない。なんの警戒心も抱かず、ジリジリとこちらに近づいてくる。

 

「よーしよーしいい子だ...お前らだけで融合しとけ!」

 

ぴょんっとスライムの上を飛び越えながら、魔法を発動する。

 

5003ページ 黒のみ 重力生成

 

スライムたちの中心に重力を置く。さっき使ったのとは反対に、発生点に向かって重力が発生してスライム同士が衝突する。全部が一つの塊となって融合する。

 

「あとは氷装を...あっ、いいこと思いつーいた」

 

作戦変更。ちょっと試したいことができた。巨大になったスライムの方に向き直る。

 

3776ページ下 黒 黄 音撃

 

指パッチンをして指向性を持った凄まじい音の塊をスライムに叩き込む。しかし、このままだと意味はない。スライムには鼓膜も脳もないため、揺さぶることができないからだ。けれど、音は確かにスライムの体に染み込み、その体を揺らす。

 

1901ページ左上 黒のみ 振動増幅

 

音がスライムの中心にたどり着いた瞬間、魔法を発動する。それは振動を一気に増幅させるもの。さらに、音撃の指向性付与のカスタムを振動増幅の効果で無理矢理打ち消し、全方向に音の塊を放出させる。

 

もはや音とはいえないその振動は、スライムの体の中心から外側に向かって揺れ動き、内側から弾け飛ばした。

 

「おーきたねぇ花火だ...いや、水か」

 

ひとまず、スライムはバラバラになった。カケラが動くこともない。動けないほどの大きさまで弾けて飛び散った。

 

「……とりあえず地中に埋めておくか」

 

714ページ左上 黒のみ 土流

 

後で別のスライムがここまで来てカケラを吸収しにくる可能性がないわけじゃない。前にやったように、土流で地面の中に沈める。前回とは違って生きていないので、地中で増殖してるなんてことにはならないはずだ。

 

「よーしこれでオッケーっと...一旦戦況を確認するか」

 

3441ページ下 俯瞰視点

 

魔法を発動し、両目を閉じる。すると、この戦場を真上から見下ろしているかのような視点に移り変わる。イメージとしては鳥○把握みたいな感じだ。

 

「えーっと...魔法飛びまくってて地面が見えにくい...」

 

索敵の邪魔になるから一瞬止めてもらえないかな...あっ、見えた。

 

「なるほどなるほど...もうそろそろ戻ったほうが良さげだね」

 

魔法が飛び、魔物たちが弾け飛んでいく景色の中、冒険者たちがもうそろそろで魔物軍の最前線にたどり着きそうなのがなんとか見えた。このタイミングで戻ると決めていたので、後ろに戻ることにした。

 

「背中を向けて...と」

 

72ページ右下 黒のみ 跳躍

 

「よっ」

 

後ろ向きに跳ぶ。速度探知で落下地点に魔物がいないかを確認しながら着地し、後ろに跳ぶのを繰り返す。もし魔物がいたなら適当な魔法を使って排除し、着地してまた跳ぶ。

 

しばらくすると、背後から魔法が飛んでくるようになる。遥か後方にいる魔法使いたちの射程圏内に入ったのだ。飛んでくる魔法は全て魔法石のおかげで逸れていく。

 

「あと少しで着くはず...!」

 

あと二、三回跳べば最前線に辿り着くはずだ。真下には魔物たちがおり、横を見れば魔法で吹き飛ばされて宙に浮いている魔物の姿が見える。多分だが、後ろの方を見れば駆逐されていった魔物の死体が見えるはずだ。

 

「あっ、またまたいいこと思いつーいた!」

 

一度着地し、再度後ろに跳ぶ。

 

「これをこうして...こう!」

 

後ろから魔法が飛んでくるのを確認した瞬間、そちらに手をバッと突き出す。そして手のひらを斜め下に向ける。

 

するとどうだろう。飛んできた魔法は魔法石の力によって逸れた。それも、突き出した手のひらに沿って斜め下に逸れていった。そして下にいた魔物たちに直撃した。視界に吹っ飛ばされた魔物たちの姿が通っていき、上へとフェードアウトしていった。

 

「うしっ!成功!そして到着!」

 

そのまま二回地面を蹴り、やっとこさ最前線まで後退することができた。着地地点に魔物も人も無し。そのまま着地する。

 

「ふぅ...みんなよく戦ってるねぇ」

 

後ろを振り返ることができなかったので、今の今まで冒険者たちが戦っているところを見れていなかった。予想以上に、というと失礼だが、ここから見える冒険者たちは皆魔物たちをばったばったと薙ぎ倒していた。

 

「バフでもかかってるのかな。そうでもなきゃあんな力でねぇよな...」

 

ここから見えたものをいくつか例に挙げよう。

 

冒険者が剣を振ると、ちょっと掠っただけなのに魔物の腕は弾け飛んだ。矢は鎧ごと貫いて複数体に命中させるし、槍は振れば柄の部分でも肉を引き裂いた。

 

……うん、ハッキリ言って威力がおかしい。なんだこれ。味方を巻き込む心配を一切してないよなこれ。今はまだ魔物相手に力を振るえてるからいいけど、手元が狂って味方殺っちゃいましたとかは勘弁してくれよ?出来るだけ死人は出さないって俺決めたけど、流石に同士討ちは止められないよ?勝手に死ぬのだけはやめてね?

 

「でもすげぇなこのバフ。俺にもかけて欲しいな」

 

もしかしたらすぐに飛び出さずに下に降りて、魔法使いたちのところに行っていたらバフを貰えたのかもしれない。

 

…あっ、そういえば俺が飛び出そうとした時、リヒトが何か言おうとしていたような...?俺も叫んでいたからよく聞こえなかったし、気にも留めてなかったから忘れていた。

 

「あちゃーこりゃミスったな...まぁいいや。みんな戦ってんのに戻るわけにはいかんよなァ!」

 

辺りを見渡して少し手薄なところを見つけると、ダガーを引き抜いてそこまで走る。

 

「よっ、助太刀させてもらうよ!」

 

二人の冒険者が魔物と戦っているところに割り込み、抜いたダガーで魔物の首を斬り裂く。そのまま近くにいた魔物を蹴り飛ばし、冒険者の方に向き直る。

 

「…んお?お前ら...ログとメリッサ⁉︎」

 

めっっちゃ久しぶりだ。二ヶ月以上も前、俺が王都からカイスに行くために乗った馬車で会ったんだっけか。まだカイスにいたんだな。それでこの戦争に動員された...と。

 

「久しぶりだな...なんて話してる暇はないね。カリヤもこっち向いてないで魔物の方を見な。魔法に当たっても知らないよ」

 

「おっと、確かにそうだな」

 

二人に背を向ける。ちょっと油断してたな。忘れてた。

 

「カリヤが来てくれたなら安心だな」

 

「俺バフもらってないから、今は二人の方が強いだろうけどね...俺は速度操作のサポートに回るよ。二人の成長を見せてくれないかい?」

 

「わかったよ。ほら行くよログ!私たちの力を神の使い様に見せてやろうじゃないか!」

 

「その呼び方、できればやめてほしいんだけどな...」

 

「だってさメリッサ。気をつけような」

 

「わーったよ。カリヤ、しっかり見ときなよ」

 

「「私たち夫婦の力をね!」」

 

二人が同時に前に駆け出した。それに俺もついていき、速度操作で加速をする。

 

「まずは私からいくよ!」

 

メリッサのモーニングスターが手元でブンブンと振り回され、ヒュンッと勢いよく振られる。その瞬間、棘付き鉄球と柄を結んでいる鎖が伸びた。範囲が一気に伸びたその攻撃は、魔物たちを薙ぎ払い、風穴を開けていった。

 

「射程延長の一種か。バフも相まってつっよ」

 

「俺とメリッサにかけてもらったバフはもう切れてるよ。メリッサが自分でバフをかけているんだ」

 

メリッサが魔物を薙ぎ倒している最中、ログから説明を受ける。

 

「バフが切れてる?えっ、どゆこと?」

 

「おそらく、俺たちにかけてくれた魔法使いの魔力が切れたのだろう。聖域に入っても回復しきれないほどの人数にかけていたんだろうな」

 

「ミスってんじゃねぇかだからちょっと押されてたのか」

 

「でもカリヤが来たおかげでここは押し返せそうだ」

 

「自分でバフかけてやっとってところか...戻ってきてよかった」

 

「…っと、だいたいこんなもんかな。ほら、次はログの番だよ」

 

あらかた魔物を倒し終わったメリッサはモーニングスターの長さを戻し、手元に戻した。

 

「わかった。非力なりの力を見せるとするか」

 

今度はログの番。ログがフランベルジュを構え、走り始める。

 

「ハッ!」

 

フランベルジュを振ると、紫色の刃のようなものが飛び出して魔物に命中した。すぐさま魔物の体はグズグズになり、溶けていく。

 

「毒の刃...遠距離攻撃手段があるのはいいね」

 

「それだけじゃないよ。ログの実力はこんなものじゃない」

 

メリッサがそう言うと、ログは毒の刃を放つのをやめ、魔物に近づく。そして綺麗に薄皮一枚だけを切り裂いた。

 

「いったい何を...」

 

フランベルジュでわざわざこんなことをする理由がわからない。フランベルジュは肉を引き裂き、治りにくい傷を作り出すためのもの。薄皮一枚だけを切り裂く意味は、本来ならない。何かの魔法でも使うのか?

 

ログは切り裂いた魔物を放置し、別の魔物の方に走った。そしてまた薄皮一枚を切り裂き、別の魔物を切りに行くのを繰り返した。

 

「こんなところかな」

 

ログは攻撃をやめた。

 

そして異変は起こった。

 

切られた魔物はログを襲おうとしていたが、突然その動きを止めた。そして、切られていない魔物を襲い出した。

 

「え?なにこれ」

 

「毒だよ。俺にとって、とっても都合のいい毒さ」

 

毒...?

 

「薄皮一枚。それを切った瞬間、幾つもの毒を流し込んだ。幻覚をもたらすもの、味方を敵だと誤認させるものが主な成分」

 

なるほど、毒を使って魔物を操っているのか。

 

「他にも、筋力を爆発的に増強させるものも入っている。副作用として、一分経つと体をボロボロにして殺してしまうがな」

 

後処理もバッチリってわけか。

 

「そしてこの毒たちは魔物の魔力を吸い取って増殖する。毒を持った魔物が別の魔物を襲えば、その魔物にも毒が移る。そうやって魔物同士で潰し合わせるのがこの魔法さ」

 

「なるほど...すごいな。どうして俺が来るまでに使ってなかったんだ?」

 

「魔力の消費が激しくてね。一度使うと相当量持ってかれてしまうんだ。カリヤがいれば魔力回復が早くなるだろう?」

 

「なるほどね」

 

「これでここはしばらく突破されることはないはずだ。次のところに行くぞ」

 

「しばらく?感染するならずっと守れそうだけど...ひっきりなしに魔物は来るわけだし」

 

発動すれば魔力を消費する必要もないみたいだし、ずっと守れそうなもんだが...違うのかな。

 

「ずっとは無理だ。感染が続くと、いつかは感染の段階で動けないくらいの傷を負う個体が出てくる。そうなると、それ以上の感染は見込めなくなる」

 

なるほど。だから最初に感染させる時、薄皮一枚だけしか切らないのか。筋力増強などの強化はするけど、体が傷ついて動けないと意味ないもんな。

 

「それに、毒が魔力を使って増殖する関係上、魔力の影響を受けやすい。多くの魔物を媒介していくうちに変異して無毒化される可能性がある」

 

耐性を持っちゃったり、攻撃性がなくなったりするのか。そこら辺はウイルスと同じような感じなんだな。

 

「ってなわけでずっとは無理だ。だから別の場所で同じことを繰り返す」

 

「なるほど。じゃあ魔力を回復させながら移動するか」

 

「いや、カリヤは魔力を回復させるだけでいい。終わったら一旦カイスに戻ってくれ」

 

「どうしてだ?」

 

「私たち同じように、バフが切れている人がいるはずだ。そういう人たちはカイスに戻っていくだろうし、魔法使いの魔力も減ってくる頃合いだから、カリヤには戻って魔力回復の手伝いをしてもらいたいんだ」

 

「なるほど、わかった。そうさせてもらうよ」

 

俺は移動しながらログの魔力を回復させた。そしてメリッサに言われた通りにカイスに戻った。

 

一旦、戦線離脱だ。

 

防衛装置移動完了まで、あと40分。




カリヤくん初めての大規模な戦闘で軽くハイになってますねこれ...キャラ崩壊が進む進む。

そして戦闘描写がむっずい!
あと何話戦争回作るかわかりませんが、なんとか頑張って書きますねー
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