前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
戦争回二話目ですね。
大晦日に戦争の話投稿するってどうなんだ...?
「ふぃー到着っと」
魔法に当たるのを防ぐため、大きく迂回してカイスまで戻ってきた。正面からの魔法は逸らせられないってのは意外と面倒だ。バック走で戻ればいいだけなんだが、ちょっと見栄えがね...時間的なロスはあまりないから見栄えを重視させてもらった。
「リヒトーどこだー!」
リヒトはカイスで色々指揮を取るという話をあらかじめ聞いていたので、カイスに入った俺はまずリヒトを探す。多くの人でごった返しているが大声を上げれば気づいてくれるはず...
「なんだ」
「うわびっくりした」
後ろから真っ直ぐ近づいてくる人がいるなと思っていたが、まさかリヒトだったとは。なんで至近距離まで近づいてから声かけるの?びっくりするからやめてほしい。
「もう戻ってきたのか。回復の手伝いか?随分とタイミングがいいが」
「知り合いに会ったんだが、もうバフが切れたって話を聞いてな。魔力管理どうなってるんだ?」
流石にバフが切れるのが早すぎる。聖域の中に入っていても魔力切れを起こすのはミスとしか言いようがない。
「仕方ないだろう。こんな戦い初めてのことなんだ。マニュアルもない。前線を維持できているだけ御の字だ」
…そういうもんか。そりゃそうだ、本来なら防衛装置で向かってくる敵は全部殲滅できるんだ。人員を動員するような戦いなんてしてこなかっただろうし、ところどころ綻びが生じるのも無理はない。
「っと、こんな話をしている暇はない。カリヤはあそこの広場の...そうだな、あの樽でも適当に持ち出して広いところに置き、その上に乗ってくれ。誘導は私が上手いことやる」
「りょーかい」
言われた通りにたーる♪を持ち出して広場の中心に置く。強度は問題なさそうだ。バランスを崩さないように気をつけながら樽に乗る。
「出来たぞー...どうすんだろ」
上手いことやるってどうするんだろうと考えたその時だった。
「うわわっ、勢いすごいなオイ」
多くの人が俺の周囲に集まってきた。樽の上に乗ってなかったら押し潰されて圧死してたんじゃないかってレベルだ。ちょっと怖い。
「加速させればいいのかなこれ...」
とりあえず範囲内にいる人全員の魔力回復速度を加速させる。けれど、範囲である半径3.3メートルに入っていない人の方がほとんどだ。入れ替わる時の混雑も考えると、ここにいる人の魔力全部回復させるとしたらどれだけの時間がかかることやら...
「ここまでの人数の加速は初めてだな...ん?」
常に動き続けてる?よく見ると、俺の周りにいる人は皆、常に移動し続けていた。ペンギンがおしくらまんじゅうの要領で暖を取るときに、暖まった内側のペンギンが外側に、冷えている外側のペンギンが内側に移動してうまく暖め合っているという話を思い出した。まさにそんな感じ。他の例えをするなら、イスラームの人がハッジのためにカーバ神殿の周りをグルグル回ってるような、そんな感じだ。
「なるほど、面白いやり方するねリヒトも...どれくらいかかるのかなこれ」
人数と一人あたりにかかっている時間的に十分くらい?結構かかりそうだ。その間、シュールなこの光景をただ見続けているのは退屈だし時間の無駄だな。
「自分の魔力も回復できてるし...ちょっと準備しておくか」
これだけの人数を加速させても、自身の魔力収支はプラスだった。まだまだ魔力には余裕があるし、回復した分の魔力で後のための下準備をすることにした。
「ここに二種類の金属がありまーす」
7002ページ 黒のみ 金属生成
「あるっていうか今作ったんだけどね」
作ったのは二つの金属。一つはインジウム。カッターナイフで切れたり、爪で削れたり、歯で噛み切ることができるほど柔らかいものだ。もう一つは水銀。それもただの水銀ではない。ジメチル水銀という強い神経毒で、たった0.001ml吸引しただけで致命的になるらしいやばい代物だ。
「そしてこれらを組み合わせて...と」
4000ページ 黒のみ 流体金属
インジウムを液状化させて、クナイのような形に変える。その時、手持ちは普通に作るが先の刃の部分は中身のないハリボテになるように、外側だけを作る。厚さの目安は何かに当たったら簡単に歪んで壊れるくらいだ。
そして、あらかじめ空けておいた先端の穴からさっき作ったジメチル水銀を流し込み、蓋をする。
「よし、完成っと」
これで特製クナイの完成だ。魔物に当たったら柔らかいインジウムは形を変え、中に入っているジメチル水銀が降りかかるというまぁまぁヤバめな化学兵器である。
「魔物に効くかはわからんが...試して成功したら量産しよう」
特製クナイは慎重に持っておく。ちょっとでも強く握りすぎたら持ち手も変形しかねないので、本当に取り扱いには注意しなければならない。今この場で落としでもしたら、近くにいる人は軒並み倒れることになる。作るときも、下手に飛び散らないように細心の注意を払って作ることになった。その努力を無駄にしたくはない。
「…あれ?クナイってたしか苦しみなく死ねるから苦無って言うんじゃなかったっけ...毒とか使ったら苦しみまくって死ぬよなこれ」
そもそもクナイで刺されて本当に苦しまないのかは謎だが。
「まぁいっか魔物だし」
最終的にその結論に辿り着く。うん。魔物が苦しむことを心配する必要ないわな。
「……まだまだ時間かかりそうだな。あとできることは...何もないか」
まだ魔力回復には時間がかかりそうだ。やることもなくなり、暇な時間が流れる。
あと、独り言喋りすぎて周囲の人に怪訝な目を向けられてる。ノーモア独り言!これ以上は控えます。
そうして俺が黙り込んでから数分が経ち...
「よーしラストぉ!」
最後の一人の魔力回復が終わった。
「ありがとうございます!では!」
おぉ、最後の一人だけはちゃんと礼を言ってくれた。ちょっとだけ和むと同時に、他の人全員にちょっとだけ、なんというか...こう...ね。言い表せられないような微妙な感情が...最初の方の人は言ってても気づかなかっただろうからいいけど、最後の方の人は言う余裕あったよね?形だけでも感謝を伝えてほしかったなーって。
「んまぁそんなこと言ってる余裕ないってのもわかるけどさ。すぐ戦いに行かないとだし」
「だな。お前も行ってこい」
「…リヒトも助かるとかそんくらい言ってくれても良くない?」
「終わったら言ってやるさ」
「オッケー俺頑張る」
樽から降り、そのまま走ってカイスの外に出る...あっ、バフ貰うの忘れてた。まぁいいや今から戻るのもめんどいし、こいつも試したいし。
「さーてどいつで実験しようかなー」
魔法使いの集団を突っ切り、魔物軍の前線まで走る。もし物理保護が自動でかかる設定じゃなかったら一瞬でクナイが壊れてジメチル水銀が撒き散らされてるよなぁ...と考えながら持ち手を軽く握る。
「みーつけた。突撃お前が実験体!」
手頃なゴブリンっぽいやつを見つけたので、そいつにクナイを投げる。秒速40メートルの速さで動きながら投げられたクナイは、それ以上の速さで飛んでいく。当然避けられるはずもなく、クナイが命中する。
クナイは刺さらなかった。当初の思惑通り、クナイはゴブリンに当たった瞬間変形し、砕け散った。そして中に入っていたジメチル水銀が溢れ出し、ゴブリンはモロに被る。
形容し難い叫び声が上がった。
「おおぅ思ってた以上の効果だな。苦しみまくってる」
流石にここまで効果があるとは思ってもみなかった。魔物にも普通にこういう毒効くんだな。魔法の毒じゃないとあまり効果ないんじゃないかと思ってたが、杞憂だったか。
「ってかちょっとうるさいな。もう黙れ」
99ページ右上 黒のみ 火球
火球をゴブリンに向かって放つ。ジメチル水銀は可燃性の液体だ。簡単に燃える。ゴブリンはジメチル水銀の毒と炎によって徐々に動きが鈍くなり、死んでいった。
「魔法で作ったものだから後処理も問題なし...と」
本来なら周囲にジメチル水銀が残っているため、使った場所は近づくだけでも危険になってしまうが、金属生成で作ったものなので消すことができる。自滅の危険性は低い。
「よし、量産しよ」
魔物にも効果があるとわかったなら、量産しない手はない。
量産するのは簡単だ。
7002ページ 黒のみ 金属生成
金属生成の魔法を使い、インジウムとジメチル水銀を大量に作り出す。最初から完成形は作れない。金属生成では、立方体か、延べ棒の形、もしくは小さな塊状でしか生成できないのだ。けれど、これでもう準備は完了。
「久しぶりに使うな。『製作』っと」
スキル『製作』 それは一度作ったことのあるものなら、材料とほんの少しの魔力さえあれば過程を無視して物を作ることができるようになるスキル。以前は手作業で作ったものに限定されていたが、度重なる箸の製作によって進化し、工程に魔法が組み込まれていても良くなったのだ。
そんなスキルを発動すると、二種類の金属は一度バラバラに分解される。そして形が整えられて瓜二つ、まったくもってズレのない完璧な複製品のクナイが八本完成した。
「よしいい感じ...金属生成で魔力喰うのだけはデメリットだな」
そこだけ目を瞑れば、これはいい武器になる。一つの魔法と、一つのスキルの発動だけで即死級の武器を作ることができるのだ。製作途中で襲われても、ジメチル水銀を直接浴びせればいいだけだし、いいことづくめだ。魔力に余裕がある時なら十二分に使える。
「さーて次はどいつがああなりたいかなァ?」
あたりを見渡すと、魔物が何体かにじり寄っていた。さっきのゴブリンの叫びで引き寄せられたのだろう。似たようなゴブリンたちがやってきていた。
「なんだなんだ敵討ちでもしに来たってのか?」
ゴブリンは警戒しながら距離を詰めてくる。
「近づいてくるだなんてそんなに死にたいのか...んじゃ、天国で待ってるあいつに会ってきな。毒の感想でも語り合ってろ!」
指と指の間に挟んでいた八本のクナイを、魔物一体につき一本ずつ投擲する。狙いは能力範囲内にいる七体と、目視で確認できる、能力範囲外にいる一体だ。
七本のクナイは問題なく命中し、中のジメチル水銀を撒き散らした。範囲内のゴブリンのうち一体はクナイを弾こうとしていたが、刃の側面を叩いた瞬間中のジメチル水銀が漏れ出して浴びていた。物理的手段でこれを受け止めることは難しい。魔法ならなんとかなるだろうが、たとえ軌道変更の魔法でも力加減をミスればすぐさまインジウムが壊れて中身が漏れ出す。対処するなら、立ち向かうのではなく避けるのが正解だろう。
七本は役目を終えた。残るは範囲外のゴブリンを狙って投げた一本だったが...面白いことが起きた。
クナイはゴブリンに命中する前に自壊、中のジメチル水銀が漏れ出してゴブリンに降りかかった。
「……あそっか。範囲外に出て物理保護が消えたから、風圧に負けて壊れたのか」
そもそも、インジウムは自重で折れ曲がってしまうほど柔らかい金属。クナイの形にしてから使うまでの間に壊れなかったのは、能力の副次的効果である物理保護によるもの。物理保護がなければクナイとして存在することすら不可能だ。能力適用範囲から出れば、その瞬間に形を変えて壊れてしまう。
「これじゃ俺しか使えないな...それに遠距離攻撃には使えないし、欠陥品だな。改良の余地あり、と...」
ログの毒の刃を見て思いついた武器だったが、遠距離の相手に対して使えないなら意味ない。この戦争が終わったら、インジウムから別の柔らかい金属に変えて試してみるとしよう。
「次元収納使えるようになったら出番くるかな多分」
次元収納とは魔法図鑑の9902、9903ページに描かれている魔法である。その名の通り、別次元に物を収納する魔法だ。具体的には7次元に収納するらしい。7次元は時間が流れておらず、素粒子に張り付いてどこにでも存在するからこそ成立するみたいだ。入れた瞬間の状態を保ったまま取り出せるので、特製クナイの収納にうってつけだ。逆にこれじゃないと安心できない。
「使えるまではその場で作るしかない...か。とりあえず次の魔物のところに行こう」
あたりを見渡し、防衛ラインが崩れている場所がないか確認する。
冒険者たちはほとんど横一列に並び、魔物たちと戦っていた。俺たちの目的は魔物のこれ以上の進軍を防ぐこと。前線を押す必要はないのだ。さらに、同じ場所で戦っているおかげで魔物の死体が積み重なっている。それにより魔物の進軍が少しだが妨害されている。下がるのは論外だし、足の踏み場が少ない前に出る理由もない。
ってなわけで横を見ればどこが防衛できていないのかが一目瞭然なのだが...特にやばそうなところはなさそうだ。何箇所か押されているところはあるが、致命的ではない。まぁ念のため一番押されているところから援護に回るとしよう。
「んじゃ、あそこからかな」
後ろから飛んでくる魔法に対して垂直に向き、真っ直ぐ走る。横ならまだ魔法石の効果で逸らすことができる。この角度なら問題ないはずだ。正面ってのがどこからどこまでの範囲なのかは知らんが。
「参考になりそうなのは...」
目的地まで走りながら、冒険者の戦いを観察する。
冒険者はそれぞれ固有の戦い方を持つ。剣一筋の者がいれば、武器と魔法をうまく使い分ける者、魔法で戦う者もいる。
特に、魔法使いは適性と努力によって使える魔法が大きく変わるため、万能型は少数で、一点特化の場合が多い。そして一点特化の魔法使いは自ら研究した魔法を使っていることが多い。その研究は秘匿され一子相伝のことが多いが、今回のような大規模な戦いになれば使わざるを得ない。
いわば、この戦いは魔法のアイデアを会得するチャンスだ。魔法使いはほとんど後方から攻撃するが、前線に出ている魔法使いもいる。そういった魔法使いの魔法を見て盗み、自らの力とできれば今後のためになる。
「あれいいな。使わせてもらおう」
途中で一人の魔法使いを見つけた。その魔法使いは、小さな犬笛のようなものを吹き、魔物を操っていた。
「えーっと確かあの魔法は...あのページだよな」
目的地に到着する。そこでは鞭を持った冒険者が戦っていた。押されていたのは武器のせいだろう。鞭ならある程度の妨害は出来るだろうが、死に至らしめることは難しい。倒れている魔物の殆どが右目がない状態で死んでいるのはよくわからないが、このままだとここを突破されるのも時間の問題だ。
「助けにきた!ここは...突破させない!」
6972ページ 黒のみ 洗脳操作
この魔法、洗脳操作は術者が出した音を聞いたものを洗脳、一時的に操る魔法だ。音を聞いた全ての者が洗脳されてしまうため、周囲に人間がいる場所で使うとその人たちも洗脳してしまう。なので本来なら自分一人しか人間がおらず、周りには魔物しかいない状況でしか使うことはできない。
しかしさっきの魔法使いは犬笛のような物を使ってそのリスクを回避した。人間の可聴域外の音を出すことで魔物だけを操っていたのだ。俺は犬笛を持っていないが、擬似的な再現はできる。
まず、音を出さないといけないので指笛を吹く。そして指笛で出した高音を能力で加速させる。加速させるのは移動速度ではなく、振動の速度だ。この加速により、音は人間の可聴域である二万Hzを超えて人間には聞こえなくなった。能力の範囲から出れば聞こえるようになってしまうが、近くにいる人間はすぐそばにいる冒険者一人しかいない。問題はない。
「洗脳完了...よーしお前ら!あいつらは敵だ全て殺せ!」
洗脳した魔物に呼びかけ、少し先にいる魔物目掛けて突進させる。
「ふぅ...これでここは問題ないっと」
「あなたは...神の使い⁉︎来てくれたんですね助かりました!」
ん?この声...あっ、確か最後に魔力回復させた子だな。なんとなく覚えてるぞ。帽子被ってて顔は見てないから気づかなかった。帽子は戦ってる最中に落ちたんだろうな。すぐ近くに落ちていて、拾い上げて被り直していた。
「いえいえそれほどでも...ってかその目は...?」
目の前に立っている女性。その右目には眼帯がしてあった。話す余裕ができたので、ちょっと聞いてみる。ノンデリかもしれんが。
「これですか?駆け出しの頃にミスをしてしまいまして...」
「抉り取られるほどのミスか...痛そう...」
「…どうしてないことに気づけたんですか?」
女性が眼帯を取る。そこにあるべき眼はなかった。見えるのは窪んだ眼窩のみ。
「能力の効果で周囲の全てのものを探知できるもんで...治したりはしないのか?カイスにいる医者ならできるんじゃ?」
眼の欠損程度なら直せるはずだが、なぜそれをしないのだろう。
「今はこれじゃないと戦えないんですよね。それに今更視界が戻っても違和感になるだけですし」
「なるほど、確かにそれもそうか」
そんなことを話していると、洗脳した魔物が全て殺されたみたいで魔物たちがこちらに襲いかかってこようと迫る。
「ありゃ、もう時間か...話は終わりだな」
「あの、もうここは大丈夫ですよ。あなたは他のところに行ってください」
「いや、まだ残らせてもらう。まだちゃんと前線を戻せていないからな。それまでは付き合うぞ」
「わかりました。力を借ります!」
女性が鞭を振り、魔物の足を払う。俺はそうして倒れ込んだ魔物のもとまで近づき、ダガーで首を切り落とす。
「トドメは任せな!足止めは任す!」
「はい!」
その後も同じような展開が続く。鞭で手足が払われ、動きの封じられた魔物を俺が殺す。役割分体をして効率よく魔物を処理していく。
「よーしあともう少しだ!...今更だけど名前聞いてもいい?」
「随分と急ですね...ナルミです」
「オッケー、ナルミね。ナルミさんは普段戦闘する時魔力余ってたりする?」
「…時と場合によりますけど、大体余りますね。でもどうしてそんなことを?」
「いやね、ちょっとした戦力向上をっと」
3331ページ上 黒のみ 氷結付与
ナルミの鞭に氷結効果を付与する。俺がフレアにやってもらったのと同じことだ。
「氷装を使えば鞭での決定力も上がるはずだ。これで俺がこの場を離れても戦えるよね?」
「ええ、ありがとうございます」
「おけ、んじゃあともう少ししたら離れるからそのつもりでよろしく」
そうやってしばらく二人で戦っていた。けれどその時は長くは続かなかった。悪いことが起こったわけではない。思わぬ援軍が来たのだ。
「おーい!」
後ろの方から、今日よく聞く声が聞こえてきた。
「おぉ、カイじゃん。お前前衛なのか?」
「ああ。熱操作じゃ遠距離攻撃できないからな」
「それもそっか。それじゃあここ手伝ってもらえる?あとちょっとしたら俺抜けるから、ナルミさんと一緒に守ってくれると助かる」
「わかった」
カイが加わり三人になった。そこからはもう一方的な虐殺と言ってよかった。そもそもこの場では熱操作だけでも過剰戦力なくらいだったのに、俺の速度操作と、ナルミさんの鞭の腕の前にはどんな魔物も雑魚以下だった。ほとんど一瞬で殲滅されていく。
「よし前線戻せた!そして悪いけど俺は抜ける。別のところ行くからあとは頼むよ!」
次の方へ行こうと、東の方向を向く。カイが立っていて少し見えにくいが、少し押されている箇所があるみたいだった。
そして、俺が走り出そうとしたその時だった。
カイスの方から魔法が一つ飛んできた。この辺りの魔物は数が減ってきているので狙ったわけではあるまい。おそらく制御をミスったのだろう。俺たちに直撃するルートだった。
俺はそれを見ても微動だにしなかった。逸れるのが分かりきっているからだ。ナルミさんも魔法が飛んできているのを見つけた瞬間背を向け、魔法石の効果に頼る。
しかし、カイは違った。なぜかバックステップをして魔法を回避した。
「……えっ?」
ものすごい違和感だった。普段の癖で避けたという可能性はなくはないが、流石に早すぎる。反応速度という意味ではない。移動速度的な問題だ。俺だって速度探知がなければ気づかなかったくらいの速さの魔法を、ナルミさんも身を捩ることしか出来なかった速さの魔法を、カイは視界にそれが入ってすぐ避けた。もし地面に命中したら発生するであろう二次災害にも巻き込まれない距離へと逃れていた。
それが示すこととは...
「お前、魔法石もらってない?」
「……なんだそれ」
「ははは、リヒトもおっちょこちょいだなー。俺も危うく貰えないところだったんだよー」
………
「って、そんなわけないよな。お前どうせフロートだろ」
そう言い放つと、周囲を沈黙が支配する。そして数秒経ち...
「そうだが?」
あっさりと白状した。
「無駄な足掻きはしないんだなお前」
「どうせバレるんだ。今でも後でも変わらんだろう?」
「それもそうだな...」
「…えっ?どういう状況...?」
俺とフロートが話していると、ナルミさんが少しあたふたし始める。そりゃ理解できないよな、こんな状況なんて。
「端的に言うと、こいつは人の姿をコピーした魔族だ。俺が相手するからナルミさんは魔物たちの対処を頼む」
「…わかりました。ご武運を!」
ナルミさんは魔物との戦いに戻った。そして、こっからは俺の戦いだ。
「めんどくさいけど...第二ラウンドだ。ここでお前は殺しておく」
「ハッ、できるならやってみろ。せいぜい時間を浪費しな」
防衛装置移動完了まで、あと20分。
唐突に出てくるフロートさん。
あの場面で都合よく合流してる時点で少し怪しいんですよね。
次回はフロート戦二回目です。