前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8146字。

戦争回4話目です。


走って、走って、走り続けて

空から、転移した三体の魔物が落ちてくる。

 

「ナルミさん!失礼します!」

 

「えっ、えっ⁉︎」

 

急いでナルミさんのところまで駆け寄り、担ぎ上げてその場を離れる。

 

「っぶねぇ...やられたな」

 

ナルミさんを下ろしながら呟く。あのままその場にいたら、落ちてきた魔物たちに押し潰されていただろう。

 

「これが...転移...まさかこんなでっかい魔物が来るだなんて...」

 

「ナルミさんは前線に戻っててください。こいつらは俺がなんとかします」

 

「あなた一人で⁉︎流石に無茶じゃ...」

 

「巨大化した奴らを殺すのは慣れてるので問題ないです。それに、一人じゃないので」

 

俺一人で三体殺れるとは思っていない。そもそも俺が加勢したところで、魔物たちの死が早まるだけだ。

 

「今やばいのは前線です。あの魔物たちが魔法の射線を塞いでいるから、前線の援護ができない。時期に押され始める。だから早く行ってください」

 

ここに転移してきたのは、おそらく魔法の射線を切るため。巨大化した魔物たちを盾にして、少しでも前線を押し上げようという魔族側の思惑があるはずだ。

 

「…わかりました。気をつけてくださいね」

 

「十分気をつけますよ」

 

ナルミさんがここを離れ、前線に戻っていく。

 

「さて、まずは三体がどんな魔物なのかを確認しないとな...ん?三体?」

 

ちょっと待て、三体?三体ってたしか...

 

7535ページ 黒のみ 物質転移

 

鞄の中からとある物を転移させ、それを見る。

 

「やっぱり...残ってた三体が転移してきやがったのか」

 

取り出したのはジャイアントキリングの依頼で使っていたレーダーだ。それを見ると、それぞれ別々の位置にいたはずの三体の魔物の反応が一箇所、ここに集中していた。新しく作ったのではなく、元々作っていたのを転移させてきたみたいだ。

 

「まずは真ん中...だな」

 

巨大化した三体の魔物。左から、大きな斧を持ったヒノッ○スみたいなやつ、大きな翼を持った巨鳥、石っぽい質感の埴輪みたいな魔物だ。中央にいる巨鳥が魔法の射線を一番塞いでいるので、一番に処理することに決めた。巨大化のせいで、あの翼では飛ぶこともできないみたいだしな。

 

「ってなわけでまずはお前からだ!」

 

72ページ右下 黒のみ 跳躍

 

ダガーを引き抜きながら巨鳥の上を飛び越える。その時うまく体を捻ってカイスに背を向ける。魔法の直撃を防ぐためだ。

 

1061ページ右下 黒のみ 風刃

1323ページ右上 黒のみ 火刃

 

何度もダガーを振り、炎と風の刃を飛ばす。刃は特に妨害されることなく巨鳥に命中し、傷をつける。

 

そして、それに追随するように後ろから大量の魔法が飛んでくる。幾つかは俺に当たりそうになって逸れていったが、殆どの魔法が巨鳥の全身に命中していく。

 

「今のでダメージは...薄そうだな」

 

着地して巨鳥の方を見る。発声器官がないのか、叫び声を上げることがないのでダメージの具合が分かりにくいが、羽毛によって軽減されているみたいだ。

 

「なんとかしてどでかい傷をつけられれば...まずはその羽根をむしり取るか。そのためには...と」

 

度重なる魔法攻撃によって身動きできない巨鳥を見ながら弓矢を取り出す。

 

『氷装・矢』

 

弓を限界まで引き絞り、矢を放つ。

 

2283ページ上 黒 黄 増殖

 

矢は魔法によって増殖し、巨鳥に向かって飛んでいく。体に刺さると、羽根が凍りついていく。

 

「そして...!」

 

5710ページ 黒のみ 水分操作

 

「めちゃ痛いだろうけど我慢してくれ!」

 

凍りついた羽根を水分操作を利用して引っこ抜く。根本から抜けたみたいで、痛々しく赤くなった皮膚が顕になる。

 

「よし、あとはあそこに攻撃...はやってくれたな」

 

適当な攻撃魔法を撃とうとしたら、後ろから大量に飛んできた魔法が剥き出しの皮膚に命中していった。それによって、随分と大きな傷ができた。これなら十分だろう。

 

急いで巨鳥のほうに走る。翼を振ってなんとか魔法を弾こうとしているみたいで、それによって暴風が吹き込んでくるが走りに影響はしない。速度操作の前では、たとえ向かい風だろうと速度は落ちない。一瞬で近づき、振られる翼に撃ち落とされないように飛ぶ。

 

「あらよっと」

 

ダガーを傷口に突き刺し、へばりつく。

 

「加速...最大!」

 

傷口から漏れ出す魔素の速度を最大まで加速させる。最初の頃は魔力切れを起こしたが、今はもうそんな心配はいらない。逆に魔素が漏れたことによる影響を心配すべきだ。

 

「こいつは...特に問題なさそうだな。おっと、暴れんな暴れんな」

 

漏れ出た魔素による強化はないみたいだ。いや、もしかしたら強化されているのかもしれないが、俺を弾き飛ばすほどの力はないらしい。暴れてはいるが、しがみついていられる程度だ。

 

そうしてしばらくしがみつきながら加速させていると、どんどん巨鳥は小さくなっていく。抵抗する力も少しずつ弱くなっていく。正直に言って飛んでくる魔法の衝撃に耐える方が難しい。それくらい力は弱くなっていた。

 

「あと...少し...うわわっ⁉︎」

 

急に空を飛び出した。小さくなったおかげで飛べるようになったのだ。胸部分の羽根はもぎ取ったが、翼の羽根はあまり傷ついていない。なんとか飛べる程度の力は残っていたらしい。

 

「空には逃がさない!」

 

7713ページ 黒 赤 重力操作

 

重力を操作し、無理矢理地面に叩き落とす。まだ真上に飛んだだけなので、落ちても被害はないはずだ。

 

「せっかくだ。このままぶっ潰れろ!」

 

5701ページ 黒のみ 重力反転

 

ダガーを傷口から抜き、飛んで鳥から離れる。そして重力操作による下向きの重力と、重力反転による上向きへの重力を同時に発生させる。上下からの重力をモロに喰らった鳥は次第に潰れていき...ぐしゃりとひしゃげてその命が消えた。

 

「よし、まずは一体...次はあっちかな」

 

正面の射線は通るようになった。次はどっちにしようかと考えて左右を見ると、左にいた埴輪っぽいやつは一切動いていなく、右にいたヒノッ○スっぽいやつは斧を振り回して暴れ回っていた。防御系の魔法でなんとか受け止めているが、受け止めるので精一杯で攻撃できていないようだった。次に殺るべきは右だろう。

 

「まずは斧を手放させる...!」

 

魔物のもとに走りながら、使う魔法を考える。最優先は武器を奪うこと。武器さえ奪えば魔法使いたちが攻撃できる余裕が生まれる。できれば傷を作るのは魔法使いたちに任せたい。魔力量には余裕があるとはいえ、魔素流出加速中には魔力の自然回復が出来なくなる。万が一にも魔力切れを起こすわけにはいかないので、節約を怠るわけにはいかない。

 

「そのためにはやっぱり!」

 

地面を蹴り、障壁に阻まれて止まっている斧に触れる。

 

7535ページ 黒のみ 物質転移

 

物質転移の魔法で斧を転移させる。転移先は魔物の頭上だ。

 

「アポートしかねぇよなァ!」

 

7713ページ 黒のみ 重力操作

 

さらに重力を操って斧の落下速度を速める。これによって斧は魔物の頭を砕く...はずだった。

 

「掴み取った⁉︎意外と俊敏なんだなこいつ」

 

魔物は一瞬で斧を避け、地面に落ちる前に掴み取った。その巨体に似合わない速さだ。

 

「だけど俺はそいつにもう触れている!」

 

7535ページ 黒のみ 物質転移

 

再度斧を転移させる。転移先は俺の真下、地面の中。物質転移の対象は近くにある、一度手に触れたものか、自らの所有物だと認識したもの。そして転移先にある物質は押しのけられるため、地面の中や体内に転移させることも理論上は可能だ。もっとも、物質を押しのけるためにはその物質に存在する魔力以上の魔力を注ぎ込む必要があるため、魔物の体内にぶち込むことはほぼ不可能である。

 

「今だみんな!一斉砲撃!」

 

そう俺が叫ぶと、大量の魔法が魔物に襲いかかり、その体を撃ち抜いていく。

 

「よーしいい感じだ。このまま傷をつけてさっきみたいにやれば...ってあれ?」

 

魔法による衝撃をうまく受け流そうと地面をグッと踏み締めた時、あることに気づく。

 

地面に転移させたはずの斧。押し退けたはずの土。なのに、なぜか地面は盛り上がっていない。隆起していない。一切だ。

 

これが表しているのはつまり...

 

「転移できて...いない?」

 

なぜ不発した?なぜ転移できていない?この距離なら転移できていなきゃおかしい。斧が消滅したのはこの目で見た。そのはずだ。

 

「こ、攻撃止め!障壁を展開して早く!」

 

嫌な予感がして、後ろに向かって叫ぶ。しかし遅かった。魔法を撃つのを止めるのより早く魔物は前方に突進、いつのまにか手にしていた斧を振り下ろしてくる。

 

まだ魔法は撃たれている。今この瞬間に魔法使いたちを守ろうと障壁を張れば、自らが撃った魔法で自滅していってしまうだろう。障壁は張れない。

 

しかし、そんなことを考える前に、体は動いてしまっていた。

 

4014ページ 黒 黄 障壁

 

魔法使いたちと魔物の間に見えない壁が作り出され、斧が受け止められる。けれどやはり、それだけでは終わらない。撃たれていた魔法も障壁で止められ、各々効果を発揮する。それによって起きた衝撃波によって、ことごとく魔法使いたちは吹き飛ばされてカイスを囲む壁へと激突していく。赤い血が撒き散らされる。

 

「あ...あぁ...」

 

失敗した。選択を誤った。大人しく思考速度加速で考える時間を作り、ベストな対処法を考えるべきだった。斧を喰らっていたら死んでいたからまだマシだなんて考えは甘えだ。もっと上手くやれた。できたはずなんだ。

 

「…早く治さないと...!」

 

2007ページ下 黒 赤 拘束

 

治療の最中に攻撃されることは絶対に防がなければならない。地面から鎖を召喚して魔物を雁字搦めに拘束する。そして障壁を解除し、怪我を負わせてしまった魔法使いたちのもとに全力で走る。

 

「治療魔法は何ページだっけ...いやそれより前に怪我の具合を見ないと...えっ」

 

速度探知で出血している箇所はないか、骨が折れたり内臓が傷ついていないか見ようとして、気づく。

 

「死ん...でる...⁉︎」

 

血が流れていない。傷口から出血はしているけど、心臓は動いていなかった。

 

「いやでもこんな短時間で心臓が止まるとは到底...なんだこれ、魔素?」

 

人が死んだという事実に、逆に冷静になったおかげで気づく。流れ出る血液に魔素が含まれていた。体の中に残っている血液も同じだ。

 

「体の中に魔素があるってことは...これって...?」

 

まさかアンデッド...?と考えたその時だった。

 

「おーい...助けるなら俺からにしてくれー...」

 

少し先のところから、声が聞こえてきた。

 

「…!今行きます!」

 

急いで声のした方向に駆け寄る。生存者がいた。いや、もしかしたらアンデッドなのかもしれないが...少なくとも、意識を保っているやつがいるのは確かだ。

 

「ここだー...」

 

「…いた!すぐ治しますね!」

 

すぐに治療に取り掛かる。まずは速度探知で傷の具合を確認する...よかった、そこまで酷い傷ではないみたいだ。出血もほとんどない。背中の打撲と内出血が一番大きな傷だ。これなら簡単に治せる。

 

7535ページ 黒のみ 物質転移

 

まず、内出血した血液を取り除くために物質転移を発動させる。本来なら使えない。触れてもいないし、自分の所有物ではないからだ。けれど、自分の所有物だと強く思い込めば、対象に取ることができる。前に子供に財布を掏られたが、おそらく自分のものだと強く思い込むことで物質転移の対象にして盗んだのだ。俺の場合は速度探知があるので、そこにそれがあることを認識しやすい。常人よりも簡単に対象に取ることができる。

 

5092ページ 黒のみ 再生

 

そして内出血を取り除いた瞬間に再生魔法を発動する。さらに速度操作で再生速度を加速させ、ほとんど一瞬で打撲の傷を治す。

 

「よし、これで治ったはず...他の生存者を探さないと」

 

「探しても無駄だ。すでに全員死んでいる」

 

「…えっ?」

 

「俺が回復したのなら、アンデッドらも復活する。ほら野郎ども!寝てねぇでさっさと起きて仕事しやがれ!」

 

回復した男は立ち上がると、周囲に倒れている魔法使いたちに声をかける。すると、魔法使いたちは血を流しながらも起き上がり始める。とても、生気のない目をしていた。

 

「まさか...全員アンデッド?」

 

「死を恐れてんじゃねぇ!防御は捨てろ!一斉攻撃だ!」

 

そう呼びかけると、大量の魔法が拘束されている魔物に向かって飛んでいった。

 

「な、なんでアンデッドが魔物を...洗脳か?」

 

「洗脳...まぁ似たようなもんだな。ってかあんた、アンデッド部隊のこと知らねぇのか?」

 

「知らないな。こんな時になんだが教えてくれないか?」

 

「いいぞ。知らないで討伐されたら困るしな」

 

男からアンデッド部隊について聞いた。

 

まず、アンデッド部隊とはその名の通り、死者だけで構成された軍隊だ。

 

アンデッドになったとき、その人の人格は歪む。その方法は二種類。反転するか、増幅するかの二つ。ミリフは増幅だったが、それは結構なレアケースみたいで、ほとんどは人格の反転が起こるらしい。

 

そして、凶悪な犯罪者が人格の反転を起こすと、完全な善人になる。しかし、もし完全な善人になったとしても、普通なら魔物に利益が及ぶような行動を取るように思考が操作されてしまう。けれどその操作はあまり強くないため、死者に隷属の魔法をあらかじめかけておくことで打ち消すことができるようで、そうしてできた善人を集めてできたのが、アンデッド部隊だそうだ。

 

普段は聖域の中で死体として保存し、有事の時に取り出して魔素に晒すことで起動させる。痛覚が存在しないため心臓を破壊されない限り動き続けることができ、特攻部隊として優秀らしい。もし仮に死体が完全に損壊したとしても、元々が凶悪犯罪者なので悲しむ人もいない。安心して使い潰せる駒。それがアンデッド部隊。

 

…かなーり倫理観ゆるキャラでやばいけど、この世界だと普通なんだろうな。郷に入っては郷に従え。外から来た俺がとやかく言う問題ではないだろう。

 

「……まずいな。このままじゃ全滅だ」

 

男はそう呟く。少し前に魔物を縛っていた鎖が外れて、アンデッドたちを襲い始めたのだ。斧を喰らったアンデッドたちは激しく血を噴き出しながら吹き飛び、地面か壁に打ちつけられる。心臓が破壊されたわけではないため、動けないながらも魔法を放ち続けていた。

 

「もう三分の一も使えなくなった。このままじゃ数分で全滅する...」

 

「なんとかしてあいつにデカい傷をつけられませんか?できれば、直径6メートルくらいの傷を」

 

「…随分と難しい質問をするなあんた...聞いたかお前ら!協力して魔法を一点集中させろ!デッケェ傷をつけてやれ!」

 

男が叫ぶ。何体かのアンデッドが障壁を小さく展開して斧を受け止め、残りのアンデッドが魔法を撃ち込んだ。狙いはど真ん中、腹だ。

 

「……んな⁉︎」

 

斧が消えた。そして、どこからともなく巨大な盾が現れた。魔物は盾を掴むと、飛んできた魔法を全て受け止める。

 

「あれはまさか...次元収納⁉︎あいつ魔法使えんのかよ!」

 

見た目とやっていることが合わなすぎる。素早いし、魔法も使えるとかどうなってんだ。ってかなるほど。斧を地中に転移できていなかったのは、次元収納で一時的に別次元にしまわれていたからか。

 

「魔法を受け止める盾...吸収しているのか。あの盾がある限りアンデッド部隊は何もできない。どうにかできないか?」

 

「それくらいなら...なんとかやってみるよ。盾をどっか遠くにやればいいだけだろ?」

 

魔物のもとまで走る。魔法が効かない盾は物理攻撃でなんとかするしかないが、あの速さで抵抗されたら面倒だ。警戒される前に吹っ飛ばす。

 

「『雷装』!」

 

雷装による更なる加速をもって、魔物のもとまで近づく。そして跳び上がり、盾を持つ魔物の手に触れる。魔物は雷装の電流に耐えきれず、盾を持つ手を離す。

 

『雷装・矢』

 

「これでも持ってな」

 

矢を一本取り出し、その手に突き刺す。

 

「ダメ押しだ。こいつも貰ってけ」

 

5114ページ 黒のみ 思考共有

 

適当に思考を押し付ける。ただの時間稼ぎだ。物質転移の発動を少しでも遅らせるだけでいいので、本当に適当だ。

 

「そーれ飛んでいけ!」

 

魔物の手の上から降り、速度操作を利用して先に地面に着地すると、落ちてきた盾を思い切り蹴りつける。狙いは斜め上、カイスの壁の上だ。

 

そして蹴った瞬間、盾に桃○白のように飛び乗る。速度操作の効果を切らさないためだ。そうして壁の上まで飛んでいき、壁にたどり着く直前で飛び降りる。

 

盾は壁の真上を通った瞬間、消滅した。カイスの壁の上には特殊な結界が貼られており、特定の位置から外に出る以外の出入りを禁じている。通った瞬間、魔法だろうが物だろうが生物だろうが問答無用で消滅する。魔法耐性もほとんど効果をなさないため、こういった物の処理にはうってつけだ。

 

盾を処分した俺はそのまま男のもとまで戻る。

 

「これでどうだ?」

 

男にそう言いながら魔物の方を見ると、ちょうど矢が抜け落ちるところだった。大量の思考処理も終わったらしくで、魔物は完全に復帰したみたいだ。

 

「ああ、問題ない。これなら傷もつけられるはずだ。ほら!お前ら早く目的を遂行しろ!」

 

号令に応えるように、アンデッドたちが魔法を放つ。盾を失った魔物はどうしたかといえば...まず、斧を取り出した。そしてそれを掴み取った瞬間、魔物は凄まじい速度で動き出し、魔法をできる限り避けていく。

 

「…なるほど、斧を持つことでバフがかかるのか」

 

「動きは俺が止める」

 

2007ページ下 黒 赤 拘束

5000ページ 黒のみ 魔法復唱

 

大量の鎖を召喚する。その速度によって大半はかわされてしまうが、少しずつ追い込んでいき魔物を絡めとる。殺し切るまでもう二度と解放する気はない。それくらいの力で拘束する。

 

そして次の瞬間には大量の魔法が命中していた。腹に向かって一点集中された魔法は分厚い肉を傷つけ、抉り取っていく。

 

「よーし十分だ!」

 

魔物の方まで走り、傷口ができているであろうところに飛び込み、ダガーを刺して張り付く。魔法はそのまま撃ち続けてもらう。俺の背中に撃たれる魔法は魔法石の効果で周囲に逸れる。それが俺を守る壁となる。もし拘束から逃れたとしても、俺を退かすにはこの魔法の壁に触れる必要がある。容易には俺には触れられない。

 

「魔素流出速度、最っ大!」

 

魔素の流出速度を加速させる。魔法がすぐ周りに当たり、傷を抉り続けているため、表面積が増えて加速度的に魔素の流出が増えていく。

 

さっきの鳥よりもはるかに早い時間で魔素の排出が終わり、魔物は息耐えた。周囲の魔素が増えたことによる魔物の強化が特になかったのは幸いだ。逆に、アンデッドの魔力回復が早まっていたり、魔法が強化されていたため助かったくらいだ。

 

「……よっと、これであとはあいつだけか」

 

ダガーを抜いて魔物の上から降り、左側にいる最後の巨大な魔物の方を見る。埴輪みたいなやつだったが...一切動いていなかった。しかし、大量の魔法を浴びていてもびくともしていない。耐久全振りの置物か?攻撃性能がないただの盾なのだろうか。

 

…ちょっと思ったのだが、なぜあの埴輪っぽいやつや、さっき倒した斧と盾の魔物を中央に置かなかったのだろう。一番妨害したい場所は正面のはずだ。それなのにあんなに弱い鳥を置くだけなのはなんでなんだ?事実、真っ先に空いた正面から前線に向かって魔法の火力支援ができてしまっている。魔法の射線を塞ぐことだけが魔族の目的ではないのか...?

 

「おいあんた。あいつ、早めに処理しないとまずいぞ」

 

アンデッドを操作している男がこちらに近づいてきて、そう言った。

 

「…どうしてだ?」

 

「あの魔物は基本的には何もしないやつなんだが、長時間攻撃にさらされると攻撃モードに移行するんだ。ハッキリに言って、さっきのやつよりも何倍も強い」

 

「…マジで?」

 

「ああ、マイナーな魔物で生息域が限られているから、知っているやつは少ない。一旦攻撃を止めてもらわないと、尋常じゃない被害が出るぞ」

 

「わかった。教えてくれてありがとう!」

 

急いで魔物のいる方に走る。

 

お願いだ、間に合ってくれ。死者は出したくない。さっきので身に染みた。もう、誰にも傷ついて欲しくはない。

 

全力で、走り続けた。

 

防衛装置移動完了まで、

 

…あと何分?




今回で3体とも倒す予定だったんですが、予想以上に文字数が増えたので2体だけになりました。

サブタイでも書いたけど、走ってばっかですねカリヤくん。
能力が能力なんで、走らせないとという謎の使命感があります。

というか戦争回あと何話で終わるのかな...?
早く平和な回を書きたいどー
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