前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
いろいろやります。
戦闘もあるよ。
「うぅ...今何時だ...?」
目が覚める。いつもなら直ぐ近くにあるはずの時計がないのに気がついて、ここが自分の部屋ではなくて異世界だということを思い出す。
「そっか異世界...ってか外真っ暗じゃん。どうしよ、ぜんぜん眠くない」
まだ夜だが、体はもう充分寝たらしい。二度寝をしようとしたが全然寝れなかった。
「えっと、ライトは...この紐か」
天井から垂れ下がっている紐を引くと、ライトがつく。光る魔道具のようだ。明るくなった部屋で、時計を見ると8時を指していた。日の出が12時ちょうどだとすると、あと四時間で日の出だ。この世界の4時間はもとの地球の五時間にあたるから、結構時間があるな。
「借りた本でも読むか」
適当な本を一冊取り、読み始める。
「…童話か、これ。まぁ何かの役には立つかな」
最初に取った本の中身は童話だった。タイトルがなんか凄そうだったから手に取ってみたが、名前負けしている気がする。けれど、こういうので文化を知るのも大切だろう。案外、魔法とかも載ってるかもしれない。
「なかなか面白いな、異世界の童話。次の、読んでみるか」
次の本を手に取り、読み始める。
「これもか。これも...これも?ほとんど童話だな。名前に釣られすぎだな俺」
借りてきた本のほとんどは童話で、あとは図鑑みたいなものだった。今度はタイトルだけじゃなくて中身も少し見てから借りることにしよう。
「植物図鑑も面白いんだけどね...魔物図鑑とかないのかな?というか魔導書みたいなのは普通の本屋じゃ売ってないのかなぁ...」
能力を使い、思考速度や理解速度などを加速させて本を読んでいく。そのおかげで2時間もかからないうちに全ての本を読み切ることができた。
「確かあの店日の出と共に開店するって言ってたよな。あと二時間どうしよ」
少し考えて、あることを思いつく。
「朝シャンしてねぇじゃん」
いつもやっていたことを忘れていた。大浴場に移動する。やはり、この時間に風呂に入る人はいないようでまたしても貸切状態だ。
「…そういえばシャンプーねぇじゃん。ってかシャワーすらないし。仕方ない、風呂入るか」
かけ湯して、風呂に入る...あれ?
「入れてる...?眠くないから?トラウマ息してないな」
慣れないととは思っていたが、こうも簡単に風呂に入れるとは。眠くなければ風呂に入れるらしい。入浴欲の方が強いのかな?
「よっしゃこの風呂を堪能してやるぜー!」
肩まで目一杯浸かる。普通の地球の宿だったら、この時間だとお湯はまだ止まっているだろうけど、この世界は水道とかガスとかじゃなくて魔道具で沸かしているみたいだからいつでも入れるってのが最高だ。他の人もこの時間に来ればいいのに。
「っはぁー!いい湯だった。シャンプーもリンスもボディソープもないのは嫌だけどお湯に浸かれたからよかったわ!昨日の疲れが全部吹き飛んだ!」
疲労回復の効能でもあったのだろうか?昨日の疲れや筋肉痛などが全部消えていた。そういう治癒魔法でもかかっていたのかもしれない。
「よーし、今日も一日がんばるぞい!」
そう意気込みながら自分の部屋に戻る。
「さて、朝まで何しよう」
風呂で時間を潰せたが、それでもまだ日の出まで一時間近くある。それまで暇だ。
『あっ、そうじゃ』
「ん?なんだ神様?」
『暇ならお主にスキルについて説明するぞい』
「…スキル?そういえばスタミナの説明の時にそんなこと言ってたような...?」
スキルを使うとスタミナが減ることがあるとかなんとか言っていた気がする。
『スキルとは、簡単に言うと過去を再現する力じゃ』
「過去を再現?全然簡単じゃないけど説明あってる?」
『過去に行った行動を繰り返す、と言った方がよかったかのう』
「繰り返す...?ダメだわからん」
『んー、例を挙げるとするかのう。お主が槍を持っていて、魔物に三回連続で突きを放つ攻撃をしたとする』
「おう」
『それを、スキルとして保存することでいつでも同じ動きをすることができるようになる。三連続の突きを、スキル発動で自動でやってくれるのじゃ』
「…なるほど?流○のロッ○マンのベストコンボみたいな感じ?」
『まぁ大体そんな感じかのう』
「なるほど。理解したわ」
『ただこのスキル、途中でキャンセルすることができなくて、あらかじめ決められた動きを全て完了するまで自分の意思じゃ動けないのじゃ』
「そういうデメリットもあるのか」
『だから、攻撃のスキルはここで決めるという場面で使われることが多いそうじゃ。普段は自分で動いてスキルと同じように攻撃し、トドメの時とかにスキルを使って確実に決める。スキルは軌道が同じな分威力が高くなるようだしのう』
「スキルばっかりに頼ることはしないわけか」
『魔法のスキルも同じじゃな。スキルで放った魔法は何度撃っても同じ軌道、効果を産む。じゃから普段は自力で魔法を発動して細かく出力を決めるそうじゃ』
「魔法か...どこで覚えられる?一回でも使わなきゃスキルとして登録することもできないんだろ?」
『素直に魔法の町に行って学ぶのが手っ取り早いと思うぞい』
「やっぱそうか」
『スキルの話に戻るぞい』
「えっ、まだあるの?」
『そうじゃ。今までのは攻撃と魔法のスキルの説明。次は日常系のスキルじゃ』
「日常系?えっ、なに?き○ら?」
『日常生活で使うスキルじゃ。代表的なのは製作のスキルらしい』
「せいさく...?物を作る製作のことか?」
『そうじゃ。このスキルは結構便利だそうで、成長するタイプのスキルなんじゃが、最後まで成長すれば材料を揃えるだけで物を作れるようになるようじゃ』
「作業せずに?」
『作業無しで一瞬じゃ』
「えっ、便利」
『作れるのは今までに一度でも作ったことがあるものに限るようじゃが、その便利さからこの世界の殆どの人がレベルは低くとも持ってはいるらしいぞい』
「へー、他にはどんなスキルがあるんだ?その日常系スキルってやつ」
『料理や洗濯、掃除のスキルもあるようじゃ』
「それただの家事スキルじゃねぇか」
『日常系スキルは過去にやったことの再現とは別に、技能としての力も含まれるようじゃからな。全部数えたらキリがないくらいある』
「なるほど...スキルって色々あるんだな」
『小さい子供みたいな感想じゃのう...これでスキルの解説は終わりじゃ。また説明することができたら呼びかけるぞい!』
「ありがと神様ー」
さて、まだ日の出前だが結構いい時間になってきた。今から出れば、本屋に着く頃には開店しているだろう。
「よし、じゃあ行くか。能力使ったら多分早く着いちゃうよな。使わんとこ」
鞄に本を詰めていき、鞄を背負って宿を出る。昨日の今日で返すことになるから、多分驚かれるだろうな。
「ん?なんだろこの鐘の音」
本屋に向かう途中、村の中央から鐘の鳴る音が聞こえた。昨日も宿で聞いた気がする。
「…もしかして日の出を伝える鐘か?日の出日の入りのたびに鳴らしてるのかな?」
まだ陽は見えないが、多分そうなんだろう。時間的にもちょうど12時ぴったりなはずだし。
「よし、着いた。ちゃんと開いてるな」
開店している本屋の中に入る。
「いらっしゃい...あら、昨日の子じゃない。もしかしてもう返しに来たの?」
「ええ」
「あんまりお気に召さなかった?」
「いえ、全部読み切ったので返しにきました」
「あら早いわねぇ。こんなにすぐ返しに来る人なんていないからびっくりしちゃったわ」
本をカウンターに置くと、一つずつ丁寧に確認していく。
「うん傷無し。料金はこれでいいわよ」
「はい、ではこれで」
「ちょうどね。毎度あり」
「また多分後で来るんで、その時はよろしくお願いします」
「また来てね」
本屋を後にする。
「次は...武器屋に行こう」
武器屋まで歩く。買いたい物は既に決まっているので、ささっと買って冒険に行きたい。
というわけで、武器屋で色々買い物をしてきた。いくつか買ったのだが、まず一つ目は長めの西洋剣だ。いわゆるロングソードである。流石に日本刀はなかったのでこれにしたのだ。
次に買ったのは二本の短剣。両刃なので、ナイフではなくダガーだ。二本買ったのはとあるゲーム、アニメの影響である。あとカッコいいから。ダガーにした理由もカッコいいから。だって†ダガー†だよ?しょうがないね。
最後に買ったのは弓矢だ。ステラに憧れて買いました、はい。使う機会がどれだけあるかはわからないが、遠距離武器は持っていても損にはならないし持つことにした。
店員には武器は一つに絞った方がいいとは言われたが、重量が嵩むことさえ無視すれば手数の増加に繋がるし、何より自分が何を一番使えるかわからないので、試すためにこれだけのものを揃えた。
武器をつけるためのホルダーは無料でくれた。本来は別料金がかかるが、いろいろ一気に買ったのでサービスしてもらった。ラッキー!
「ダガーは腰の両側につけて、ロングソードは背中に...いや、鞄が邪魔で出来ないな。どうしよ...そっかホルダーの上から鞄を背負えばいいのか。弓は鞄に括り付ければいいかな?」
買ったけど装備できないは洒落になんない。なんとか無理矢理でもいいので装備していく。
「よしできた。最悪戦闘の時は鞄下ろせばいいしそれでいっか。よし、防具屋行こう」
今度は防具屋に行く。と言っても、買うのは盾一個だけだ。これ以上装備を増やして重量は増やしたくないし、攻撃を全部避けたり捌いたりすれば硬い装甲はいらない。当たらなければどうということはないのだ。
「腕につけるタイプの盾が欲しいな。戦○中で出てくるようなやつが欲しい」
受け止めるのではなく、受け流すような盾。そっちの方が能力と合っている気がする。
「毎度ありー!」
良さそうなのを見つけてさっさと買う。そして当然装備する。ゲームだと装備し忘れることあるけど、現実だったらそんなこと絶対ありえないよね。装備するために買ってるのに忘れるのって現実味ない。装備するかい?って店員が聞いてくるのも変だけど。
「よし、準備完了!今こそ冒険の世界へ!しゅっぱーつ!」
「…何やってるの?」
「…あっ」
いつのまにか背後にステラが立っていた。もしかしなくても今の見られた?恥ずかし!
「い、いやー、道具が揃ったから村の外に冒険にでも行こうかなってね」
「そうなんだ...なんかゴツくない?」
「まぁ色々買ったからな」
「鞄邪魔じゃない?」
「アイテムインベントリ無いんだから仕方ないだろ?」
「……?」
そりゃインベントリとか言われてもわからんよな。
「そういえばお金って大丈夫?色々買ったみたいだけど」
「んーまだまだあるけど、ちょっと不安かな。二、三週間で底を尽きると思う」
「そっかそっか。じゃあちょっと着いてきてよ!」
「えっ?あっ、ちょっと待ってよ」
タタタッと駆けていくステラを追いかける。何回か曲がり角を曲がり、着いた先は村の役所の前だった。
「役所...?ここに何があるんだ?」
「これこれ!」
ステラの指差す方を見る。
「これは...掲示板?」
役所の外の壁に、掲示板のようなものがあった。大量の張り紙がされている。
「なにこれ?」
「ここにはね、みんなのお願い事が書いてあるの」
張り紙の内容を見てみると、この魔物を倒せだとかこの薬草を採ってこいだとか土木工事を手伝ってくれみたいなことが書いてあった。クエストのようなものらしい。
「役所の、村としてお願いしたいことがこの色の紙に書いてあって、みんながそれぞれお願いしたいことがこの色の紙に書いてあるの。これをやるといろんな報酬が貰えるんだ」
「なるほど...冒険ついでに受けておくのもいいな。この紙を取って役所に出せばいい感じ?」
「そうだよ。私は...これにしよっと」
「じゃあ俺はこれで」
俺が取ったクエストは、北西の平原で増え始めている魔物を狩るものだ。絵から察するに、その魔物は羊っぽい姿をしているらしい。狩った数に応じて報酬が増える歩合制のようだ。
「行き先同じだね」
「えっ?あっ、本当だ」
ステラが取ったクエストも北西の平原で行うものだったらしい。
「じゃあ一緒に出しに行こっか」
「だな」
役所の中に入る。窓口がいくつかあるが、入ってすぐ左のところに依頼受付所という看板があった。たらい回しにされることはなさそうだな。
「あらステラちゃんいらっしゃい。そちらの方は?」
「カリヤさん!行き先同じなんで一緒に受けにきました!」
「どうもです」
「冒険者の方ですか?」
「…ええ、一応は」
「そうですか。頑張ってくださいね。あっ、その紙はこちらで預かります。受理しておきますね。カリヤさんの依頼は村からのものなのでここで報告してください。報酬もここで支払います。それでは頑張ってください!」
ステラと共に紙を出す。これで依頼を受理してくれたらしい。まだ自分の名前を書けないからそっちで書いてくれるのは助かる。
「それじゃあ行こっか!」
「だな。道案内は頼むよ」
地図は買ったが、ちゃんと道を知っている人についていく方が楽だし安全だろう。
「任された!ついてきて!」
ステラの少し斜め後ろをついていく。
「そういえばなんだけどさ、昨日のツルさんに肉渡したやつも依頼だったりするの?」
「そうだよー。じ、つ、は...今日もなの!」
「あっ、そうだったんだ。じゃあ今日はなんの魔物を狩るんだ?」
「えっとね、四足歩行で、こんな感じのツノが生えたやつ」
ジェスチャーでツノの形状を表すステラ。多分だが鹿っぽい魔物なんだろう。それっぽい動きをしていた。
「おっけ大体わかった」
「そう?私のジェスチャー上手かったかーそっかー」
「なにニヤニヤしてんだステラ。俺の理解力がすごいだけだ」
「いや、私がすごかったね」
「いや俺だって」
「私だよ」
「俺だよ」
「私!」
「俺」
ギャーギャー言い合いながら平原を歩いていく。この騒ぎでよく魔物が寄ってこなかったなと、目的地に着いてから思った。
「遠くから見えてたけどすごい量だねー」
「だな。増え始めてるとは聞いてたけどここまでとは思ってなかった」
俺のクエストの討伐対象が平原に大量にいた。流石に増えすぎだと思う。
「こいつらを倒せばいいんだよな。倒したら耳切り取ればいいんだっけ?」
「そうだよ。耳で数の確認をするんだって。死体は他の魔物が食べてくれるから基本放置でいいよ。何か素材として剥ぎ取るなら持ち帰ってもいいと思うけど」
「ハイエナみたいな魔物でもいるのかね...そういえば、ステラの倒す魔物は見当たらないな」
「そうだねー。この子たちに追いやられてもう少し奥の方にいるのかも」
「俺のことは置いていって自分のすることやってていいぞ?」
「いや、カリヤさんが心配だしついてくよ。しばらくしたら見つかるだろうし。援護はいる?」
「いらない。一人でやってみたいんだ」
「そっか。じゃあ忠告だけしておくよ。その子たち、追い込まれると口から火を吐くから気をつけてね」
「えっ、火吐くの?普通に毛皮あるけど燃えたりしないの?」
「うん。たまに自分の毛に火が燃え移って死んじゃうことがあるんだよね」
「なにそのざんねんな生き物」
あの図鑑にこの魔物の情報を入れて欲しくなるくらいざんねんだ。どうしてそんなふうに進化してしまったのだろう。めっちゃ気になる。
「火を吐くならせめて防火性能ある毛皮に進化すればいいのに...まぁいいや。武器の試し切りにはちょうどいい!」
背中のロングソードを弾き抜く。初めてやる動作だったため、めっちゃ引っかかったしめっちゃ自分のことを斬りそうになった。
「危な⁉︎練習しないとなぁ...」
そう言いながら意識を集中させる。その目的は自身の加速。能力を発動し、自らの移動速度を一気に加速させて、一瞬で現在出せる最高速度に到達する。そして、大体100メートル走8秒くらいは余裕で切れるくらいの速さで魔物まで走りすれ違いざまに魔物を斬りつける。
「あんまり斬れない...そうだよな。ロングソードはそういう物だったわ」
魔物は少し血を飛び散らして倒れる。少ししか飛び散っていないのは、ロングソードは元々斬ることよりも甲冑の上から叩くことを目的として作られた物だからだろう。そのため、切り傷自体はそこまで深くはない。倒れたのは、おそらく内臓にまで衝撃が走ったからだろう。
「なら叩くまで!」
まだ生きているかもしれないので、首元を思い切りロングソードで叩きつける。そして次の標的を見てすぐに駆け出す。
「次はお前だ!」
魔物がこちらを向き火を吐こうとする寸前、口にロングソードを突き刺す。
「吐かせねぇぞ」
口に突き刺したままロングソードから手を離して後ろに下がる。そして剣の柄を勢いよく蹴る。
「先端なら刺さるよな。口の中だしもう死んだろ。次だ」
魔物の口からロングソードを引き抜き、ヒュンッと一回振ってついた血を吹き飛ばしてからしまう。そして二本のダガーを抜く。
「次はこっちを試すか。ダガーなら斬れるよな!」
近くにいた魔物に狙いを定め、高速で連続斬りを放つ。
「おお斬れる斬れる!そのまま毛刈りの時間だァ!」
皮膚に触れないように毛だけを刈っていく。ダガーの感覚を掴むためだけのほとんど無駄な行為だが、結構上手く行った。
「練習完了。やっぱこっちの方が俺に合ってるな。んじゃっ、死ね」
全身丸裸にした魔物の首を刈り落とす。
「次は弓を...いや、スキル使ってみるか」
スキルの習得。今までは気づいていなかったが、スキルについて知った後、その予兆に気がついた。何かをした時に感じるほんの少しの高揚感と、頭に走るほんの一瞬の痺れ。それがスキル習得の瞬間だと思った。
「スキルの発動は頭で思い浮かべるだけ。詠唱はしてもしなくてもいい...ならしたほうがカッコいいよなァ!」
ダガーを構え、逃げる魔物を追う。
「『連続斬り』ィ!」
ダガーが先程放った攻撃と完璧に同じ軌道で走る。体の自由が戻った時、すでに魔物は斬り刻まれていた。
「強い...けど一切体が動かせなくなるのはマズイな。トドメだけに使う理由を実感できたよ」
魔物の吐く炎を避けていく。自らの加速と、範囲内に入った炎を減速させれば避けるのは簡単だった。
「…遊びすぎたか」
応戦してくる魔物もいるが、あれだけいた魔物がほとんどいなくなっていた。殿だけ残して逃げたらしい。多分もうそろそろ魔力切れを起こすから、ここで逃げてくれるのはありがたくもあった。
「スタミナ切れにも気をつけないとな。弓を使うか」
炎を必要最小限の動きで避け切り、途切れた瞬間に一気に背後に飛んで距離をとる。そしてダガーをしまい弓を取り出す。
「当たるかな...いや、当てる」
矢を取り出し、弓の弦に引っ掛けて引っ張る。そして全神経を研ぎ澄まさせて狙いを定め、矢を放つ。しかし、放った矢は魔物の頭上を通り越してその奥に突き刺さる。矢が飛んできたことに気づきた魔物は慌てて逃げ出す。
「…流石に初めては当たらんか。でも次は当たる」
今射った矢の軌道、そしてどれだけの時間をかけてどこまで飛んだのかを全て覚えた俺は、魔物が逃げるのを待つ。
「……今!」
『射撃・矢』
先程と完璧に同じ動作で矢を番える。そしてこれまた完璧に同じ強さで弦を引っ張り、その手を離す。放たれた矢は、例に漏れず同じ軌道を描いて飛んでいく。
「命中。予想通りだな」
矢は、逃げていく魔物の一体に見事命中した。血を流して動けなくなった魔物にゆっくりと近づき、ダガーでトドメを刺す。
「他のは...もう射程外か。成果は上々といったところかな」
武器をダガー一本だけ残してしまう。そして殺した魔物たちの耳をダガーで切り取っていく。
「なぁステラー!これって両耳持って帰ればいいんだよなー?」
一応ステラに確認を取る。
「そうだけど...すごいねカリヤさん。なんかビックリしちゃった」
「ん?なんで?」
「ちゃんと戦えてたし、弓も二発目で当てたじゃん。センスがいいね」
「スキルの性質を使っただけなんだけどな」
スキルを使えば、一度目とまるっきり同じ矢を放てる。当たる場所が確定するため、魔物がそこを通るタイミングと合わせて射るだけになるのだ。普通に射っていたら大外れしていただろう。
「それでもすごいよ。というか冷静すぎてちょっと怖かった」
「うっ、怖がらせたならごめん。でも内心俺もめっちゃ怖かったんだぞ?いつミスって黒焦げにされるかもわからない瀬戸際のせいで、心臓バクバクで死ぬかと思ったもん」
魔力切れとスタミナ切れ。このいずれかが起きていたら俺は死んでいた。下手したら俺は今日、異世界生活二日目にしてあっさりと死んでいたのかもしれない。
「というかカリヤさんって、戦う時性格変わるタイプ?」
「…かもしれない」
FPSとかする時性格少し変わるので、さっきも少々荒々しくなっていたかもしれない。ちょっとはしゃぎすぎたか。気をつけないとな。
「まぁでも、カリヤさんが一人でもやっていけそうで安心したよ」
「心配してくれてありがとな」
耳を回収しきる。
「後はこれももらってこうかな」
「毛皮持って帰るの?」
全身丸裸にした魔物の毛皮を鞄に突っ込んでいく。
「何かに使えるかもしれないしな」
「そっか。あっ、ちょっと動ける?」
「えっ?うん。一応スタミナは残ってるけど...」
「じゃあこっち来て一緒に隠れて」
ステラに引っ張られて近くの草むらに隠れる。
「いったい何を...?」
「多分そろそろ来ると思うから」
「来る...?あっ、ホントだなんか来た」
「あれが私の今日の獲物だよ」
鹿っぽい魔物が現れた。でもなんでここに来たんだ?ここには死体しかないのに。
「……よし食いついた!」
「あいつ肉食なのかよ...」
ハイエナしてるのあいつなのかよ。鹿なのに草食じゃないんだな。俺の世界の常識は通用しないみたいだ。
「あの魔物食べてる時は完全に無防備だから狙いやすいんだよね」
そう言いながらステラは矢を放つ。適当に射ったのかと疑いたくなるほどの速さで撃ち込まれた矢は、当然とでも言うように魔物に突き刺さった。
「いっちょあがりー♪」
ステラが殺した魔物の方に歩いていく。
「一撃...やっぱ本職は違うな」
まだまだ追いつけそうにない。
「よし、じゃあ帰ろっか!」
「ステラは一体でいいのか?」
「一体で終わりの依頼なんだ。それに、重いから一体が限界なんだよね」
確かにこのサイズを一人で運ぶのは一体でも大変そうだ。複数体は持って帰れないだろう。
「手伝うよ。一緒に持って帰ろう」
「うん、お願い」
二人で魔物を担ぎ、俺たちは村へと向かう道を歩いて行ったのだった。
スキルの説明難しかった...
もしかしたらこの先補足説明を入れることがあるかも。