前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

50 / 213
9000字。

戦争後色々の回です。
…37話目からこの回までの出来事全部一日ってのが信じられん。

あと完全に余談なんですが、喉の痛みと咳と倦怠感があって検査したらコロナなってました。
熱はないので...ヨシ!
インフルエンザも流行ってたりするので、皆さま健康にはお気をつけて...


魔族は戦後をどう過ごす?

「カイスとうちゃーく!」

 

カイスに戻ると、多くの人に出迎えられた。英雄を歓迎してるようなムードだ。

 

「…ここまでしなくてもいいんだけどな」

 

結構やらかしは多かったし、時間稼ぎをしたとはいえトドメはカイスの防衛装置がやったわけで、自分自身ここまで賞賛されるほどの活躍してないと思うのだが...まぁ貰えるもんは貰っておくか。

 

「あ、ありがとー...」

 

軽く手を振って、歓声に答えておく。

 

『カリヤ、ちょっと壁の上まで来てもらえるか』

 

みんなに手を振っていると、頭の中にまたリヒトの声が響いてくる。

 

『ニトラスが近くにいるはずだ。一緒に来てくれ』

 

「ニトラスニトラス...あっ、いた」

 

背伸びをしながら辺りを見渡すと、ニトラスの姿を見つけた。人混みの中を割って進み、そっちに近づく。

 

「来たな、こっちじゃ」

 

ニトラスの後ろをついていく。戦争前に通った階段を登り、壁の中に入っていく。

 

「なぁニトラス、まさかまた演説しろとは言わないよな...?」

 

「そのまさかじゃ」

 

「マジか...」

 

まーた演説しないといけないの?何すればいいの?勝利宣言?

 

「ってか俺魔力切れしてるんだけど。拡声使えないのにどうやって演説すれば.いいのさ」

 

「リヒトが魔法をかけてくれる。なんら問題はない」

 

に、逃げられない...

 

「それにワシたちも話すことがあるからの。カリヤは最初に少し話してくれればそれで良い」

 

…それでも嫌なものは嫌なんだよな...まぁいいや。適当にやって乗り切ろう。

 

「諦めるんだな。お前が開始の宣言をしたんだから終結の宣言もするのは当然だろう?」

 

「リヒト...魔力切れしてんの知ってるだろ?走り回って疲れてるんだよせめて明日にしてくれね?」

 

壁の上にでるハッチを開けて、こっちを見ていたリヒトに文句を言う。適当にやって乗り切ろうとか思っちゃったけど、諦めろって言われたら諦めたくなくなった。

 

「明日は朝イチに復興を始めたいからな。今日のうちに終わらしておきたいんだ」

 

リヒトの言うこともわかるけど、もう陽は沈みかけている。疲れてるのもあってめっちゃ眠い。明日早起きするから日の出前にやれば良くない?それでいいじゃん今日はみんなも疲れてるだろうし明日にしようよ。

 

「……2人が話してるうちに寝ちゃったとしても文句言うなよ?」

 

さっきの主張を口に出そうとしたけど、なんとか抑え込んでこう言う。抵抗するのはもう諦めた。やっぱりさっさと終わらした方が下手にごねるよりも早く終わるだろう。

 

「いいからいいから、さっさとこっち来い。終わったら寝ててもいいから」

 

「いいのか...」

 

階段を登り切り、壁の上に出る。そして戦争前の時とは反対方向、壁の内側、カイスの方を向く。

 

「リヒトー拡声お願い」

 

「頼まれた」

 

魔法がかかったことを確かめるために、軽く咳払いをする。その音が結構デカくて一瞬ビビったが、すぐに気を取り直す。

 

…やるか。

 

「あーあーマイクチェックマイクチェック!ワンツーワンツー!It is fine today!」

 

戦争前にやったマイクチェックをもう一度やる。これで、みんな俺が話し始めると分かったはずだ。

 

「皆のものー!神の使い、仮谷幸希だ!」

 

名乗りを上げると、俺の声に負けないくらいの歓声が聞こえてくる。

 

「全員ご苦労だった!皆の活躍によって、このカイスの防衛装置を移動させ魔物どもを殲滅するまでの時間を稼ぐことができた!それ以外にも魔族フロートの乱入、三体の巨大化魔物の乱入、超巨大魔物の転移、これら全てをこの町は乗り越えることができた!どれも全て、皆が臆することなく戦いに徹したからこそ得れた結果である!」

 

思いついたことをどんどん言い放つ。

 

「皆が必死に繋いだ時間で発動させた防衛装置!これに恐れをなして魔族は魔物を転移させるのをやめた!」

 

さぁ、最後の締めだ。

 

「ここに宣言する!この戦争は...我々人間の勝利だ!」

 

言葉では言い表せない歓声が町中に響く。さ、流石にここまで喜ぶとは思ってなかった...

 

「ありがとうカリヤ。もう寝てていいぞ」

 

リヒトが俺にそう伝えてくる。魔法も既に解除したみたいで、さっき驚いた時に少し出てしまった声は大きくなっていなかった。

 

「大声出してたら目が覚めたわ。起きてるよ」

 

そう言いながら俺は後ろに下がり、下から見えない位置まで移動する。

 

「ここからは私たちの出番だ」

 

下がる俺とは反対に、リヒトとニトラスの2人が前に出た。そして話し出す。

 

「もう夜だ。簡潔に明日から行う復興作業などの諸々について私たちから説明していく」

 

「まず、明日は日の出と同時にカイス前の平原の修復を行う。土を扱う魔法を使えるものは、日の出までに門の前に集合じゃ」

 

「平原の修復が終われば、次は超巨大魔物が落としていった武器を回収することになる。物の運搬が得意な魔法使いは日の出前にギルドに集合、職員に従ってくれ。回収が終わったら抉れた地面を治すため、平原の修復が終わり次第そのまま直行してくれ」

 

「その他の魔法使い、冒険者はカイス内に設置したテントなどの備品の片付けに協力してもらいたい。力仕事も多いので、冒険者たちは積極的な参加をしてくれると助かる」

 

「ああ、あと負傷したものは門の近くにいる医療班に回復してもらうといい。精鋭が揃っている。安心してくれ」

 

二人は交互に指示を出していく。事前に打合せていたのだろう。俺も打ち合わせの時間欲しかったな...

 

「そして、今日防衛装置の移動に協力してくれた者には感謝する。明日修復作業をするので、昼ごろにギルドまで来てくれ」

 

「最後に一つ、悲しいお知らせじゃ」

 

か、悲しいお知らせ...?まさか...

 

「防衛装置の移動中、何者からかの妨害があったことは周知の事実だろう。そして、その犯人はこのカイスの中にいることがわかった」

 

な、なんだ。そのことか。誰か死人が出ちゃったのかと思ってびっくりしちゃった...ってか、やっぱりカイスの中にいるんだな。多分魔族だろう。

 

「カイスの中に魔族が紛れ込んでいる、と我々は見ている。アンデッドにはそんなことはできないから、魔族で確定だ」

 

「そしてカイスの中にいる魔族を捜索するために、三日間カイスを出入りすることを禁ずることにした。カイスを出る予定がある者には悪いが、協力を頼む」

 

「戦争中、そして戦争終結後にカイスの門から出て、戻ってきていないものは誰一人としていない。既に逃げられているということはないから安心してくれ」

 

「修復のためにカイスの外に出る者はギルド職員複数名による監視を受けることとなる。くれぐれも怪しい行動をとることがないように注意してくれ」

 

「以上で連絡事項は全てだ。速やかに解散し、明日からの作業に備えて英気を養ってくれ」

 

リヒトのその号令によって、集まっていた冒険者、魔法使いたちは解散していった。

 

「二人ともお疲れ様。ところで、魔族は見つかると思うか?」

 

「どうだろうな。魔族の人間社会に溶け込む才能は凄まじい。三日あっても見つけられるかどうか...」

 

「転移で逃げられることはないから、確実にこの中にはいるはずじゃ。根気よく探せば見つかるじゃろうて」

 

「…いや、転移は普通にされると思うぞ?」

 

俺は超巨大魔物と戦っている最中に考え出した考察を二人に話した。予想が正しければ、カイスの中に魔素を増幅させる魔族、もしくは転移とフロートとは違う別の魔族Xがいること。転移をするには、移動先に魔素がいること。全て話す。

 

「ってなわけで、俺の予想だと聖域の中から外に転移することは可能だと思う。逆は交換する魔素が存在しないから無理なはずだ」

 

「なるほど...確かに筋は通っているのう」

 

「逃げられる可能性がある...か。でも、封鎖しない理由にはならない。もしかしたら魔族が転移できない状況にあって、捕らえられる唯一のチャンスかもしれない。その一縷の可能性に賭ける価値はある」

 

「それにもしいたはずの人間が消えたとなれば、そいつが魔族だと確定する。そして魔族の人間に化ける力は融通が効かないからのう。別の姿に変えることはできんのじゃ」

 

「なるほど。消えた人間を指名手配かけちまえば、姿を変えられないから別の町に潜むことも難しくなるってわけか」

 

それなら確かにやる意味はあるな。捕まえられるならよし、逃げられたとしてもどいつが魔族だったのかわかる。三日間の拘束だけで魔族一体を割り出せるのならいい条件だろう。

 

「ただそうなると一個気になるのがフロートだよな...あいつは複数の人間をコピーして姿を変えられるし、もし姿形の模倣が他人にも付与できるものだったらいくらでも逃げられる」

 

あくまで可能性だが、転移で逃したあとに別の人間の姿に変えるなどして逃げられるかもしれない。できるかはわからないが。

 

「ふむ...これ以上考えるのは無駄じゃろうな。仮定ばかりで確定した情報が少ない」

 

「だな。ここで頭を悩ましたところで何も進みはしない。もうこうなるとやってみないとわからない」

 

「…まぁそっか、そうだな」

 

やってみないとわからないのも確かだ。ダメだったら運が悪かったってことだな。

 

「…もうカリヤも疲れただろう。帰っていいぞ」

 

リヒトにそう言われる。

 

「確かに、流石にもう眠いな...帰るわ。じゃあな二人とも」

 

リヒトとニトラスに別れを告げてから、壁から飛び立つ...

 

「あっぶね忘れてた!」

 

飛び出す寸前で魔力切れを起こしていることを思い出し、なんとか踏みとどまる。危うく死ぬところだった...

 

「何をやっているんだお前は...」

 

「ついいつもの癖で...順路通って帰るわ。じゃあな」

 

俺は気を取り直して階段を下り、宿へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょっとキネット助けてー!』

 

赤いショートカットの髪をした女、サーマルはギルド内の人気のない場所でテレパスを使って話していた。テレパスなので普段のように仕事場でやっても聞かれることはないのだが、今回に限っては焦りが表情に出る可能性があるため隠れてやっていた。

 

『なんですか姉さん』

 

『なんかねなんかね、防衛装置の移動妨害をキネットに言われた通りにやってたんだけどね?そしたら犯人は魔族でまだカイスの中にいる!なんて話になって...』

 

『それで?』

 

『魔族を探すために三日間カイスの出入りが禁止されるみたいで、逃げられない』

 

『あー...』

 

『ねぇどうすればいい?』

 

『…私に聞いたということは、転移させればいいんですよね?一旦カイスの外に出すので、三日後にこっそり中に戻ってください』

 

『それじゃダメなんだよ〜』

 

『…なんでダメなんですか私はどうすればいいんですか変なこと言ってないでさっさと言いなさい』

 

「ヒッ、キネットちゃん怖い...」

 

なんでキネットちゃんはすぐ怒るかな...私何かした?

 

『え、えっとね、まず探すってのはカイスにいる人を一人一人魔族じゃないか調べるっていう意味でね?そしてカイスは門の出入りの時点で誰が通ったのか記録されてるから当然名簿があるわけで...転移で外に出ちゃったら、私がいない!ってことになって結局私が魔族ってバレちゃうんだよね』

 

『姉さんはギルド職員ですし、なおさらいなくなったらすぐバレるでしょうね』

 

『そうなんだよ〜』

 

『でも、バレてもいいのでは?情報収集と内側からの妨害が私たちの仕事ですが、ハッキリ言って私だけでも十分ですし...バレても隠れればいいだけです。戦闘の時だけはよろしくお願いしますね』

 

『バレるのは困るんだって〜仕事失いたくなーい』

 

『姉さんがそんなことを言うなんて...本当にそれだけですか?』

 

「…町に出入りできなくなったら、美味しいもの食べられなくなるしなんて言ったら確実に怒られるんだろうなぁ...」

 

私がギルドで働いているのは情報収集と妨害のためだが、お金を得るためでもある。人間の料理は美味しいが、金がかかるのがちょっと面倒だ。何もしないでお金だけもらえる仕事があったらいいのに...

 

『…姉さん?』

 

やっべ何か正当な理由を言わないと絶対納得してもらえないよなんとか捻り出さないと...あっ。

 

…一個思いついたけれど、これを言えば確実にキネットちゃんは怒るだろうな...さっきの理由を言った方がまだ怒られない気がする。でも仕方ない。言うしかないか。

 

『じ、実は前に神の使いに妹がいるって言っちゃってて...』

 

『…えっ?で、でも妹がいるってだけならまだなんとか...』

 

『名前バレもしてて...』

 

『…………』

 

む、無言なのが怖い!

 

『な、なんてことしてくれてんですかこのバカ姉はっっ!!!』

 

『ヒウッ!ご、ごべん゛な゛ざい゛...!』

 

『なんでこうもペラペラと個人情報を敵に話しちゃうんですかねぇ!』

 

『世間話でうまく情報を引き出そうとしたらつい弾みで...』

 

『もうほんとこの馬鹿は...それなら魔族だとバレるわけにはいきませんね。対策を考えましょう。まず、どうやって魔族だと確認するのですか?流石のバカ姉さんでもそこら辺はもう調べてますよね?』

 

よ、よかった。なんとかキネットちゃんの協力を得ることができた。私が魔族だとバレれば、当然その妹も魔族だということになる。私だけならまだなんとかなるとキネットちゃんは言っていたが、流石に二人ともバレるとなるとこの後の作戦に支障をきたすことになる。半ば脅しになってしまったが、まぁいいよね。

 

『うん、調べてるよ。体内に魔素があるかどうかを調べて、魔族かどうかを確認するみたい』

 

『なるほど...ついでにアンデッドが混ざっていないかも確認するみたいね』

 

『そうっぽい。あと、確認作業はギルド職員数名と魔法使い数名でチームになってやっていくから、洗脳してもうやったと思わせるのは難しそう。結果は魔道具でデータとして保存するらしいから、結果を誤魔化すのも無理っぽい』

 

『誤魔化しは難しい...か』

 

『あとあと、ギルド職員と確認作業をするための魔法使いたちは真っ先に調べられるらしいの。明後日の朝から確認が始まるから、0時から1時くらいの間には調べられると思う』

 

『明後日の0時...タイムリミットは一日半ってことね。でも確認作業がその手順なら...うん、いけるかも』

 

『お、何か思いついた?』

 

『頭を使うのは私の仕事ですからね馬鹿姉さん。だから私を頼ってきたのでしょう?』

 

『そうだけどもうそろそろ馬鹿って言うのやめない?』

 

『いいですか?今から方法を言いますからきちんと、きちんと!覚えてくださいね?』

 

無視された...

 

『わかったよ。で?方法はどんなの?』

 

『簡単です。調べられる寸前に身の回りの聖素を増幅させてください。ありったけです』

 

『…それだけ?』

 

『簡単でしょう?』

 

『でもそれだけでできるの?』

 

『できますよ。そもそも私たち魔族は、聖素しか存在しない聖域ではその力を落とします。アンデッドとは違うところですね』

 

『…そうか、だから聖素を私の力で増幅させて、魔族の力を最大限まで落としてしまうってわけね』

 

『ついでに膨大な聖素で判定結果そのものを狂わせてしまいましょう。そうすれば人間だというデータが残り続けるはずです』

 

『なっるほどキネットちゃんあったまいい!』

 

そんな方法思いつかなかったよ。

 

『でも...私聖素を増幅させたことないよ?もし失敗したら...』

 

『時間があるんですから、練習してください。では』

 

「えっ、ちょっ、通信切られた⁉︎き、キネットちゃん返事して!そんな雑に終わらせないで〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後にあいつにちょっかいかけてこよっかな」

 

今日は戦争が終わってから3日目。明日になれば行動制限が解除されて、町の外と自由に行き来できるようになる。

 

そして明日になれば、俺がカイスに来てから大体三ヶ月くらいが経つことになる。というわけで俺は明日の朝にはこの町を出て、盾の町ガルムに向かうことになった。今は世話になった人や、関わりを持った人たちに挨拶回りをしているところだ。

 

「おっしゃサーマルいるかー」

 

ギルドに入り、サーマルを呼ぶ。行動制限のせいで依頼の受理だとか冒険者の登録だとかがほとんどないはずだから、受付のサーマルはさぞ暇してることだろう。

 

「はいはいここですよー歩くのめんどいからそっちが来て」

 

案の定誰も並んでいない受付にだらーんとサーマルは座っていた。

 

「いつも通り...いや、いつにも増して疲れてんな。どうした?」

 

「そりゃそうだよ。受付の仕事がないかららくできるかなーって思ってたのに別の仕事を割り当てられるわ、めんどくさい魔族確認作業やらされるわでさ。給料弾んでくんないと怒るぞーって」

 

「それは上司に頼めよ」

 

「ってかあんたどうして来たの?もうそろギルド閉まるんだけど」

 

「明日にはガルムに向かうからいろんな人に挨拶回りをね」

 

「それで私に?嬉しいねぇ」

 

「でももうギルド閉まるんだろ?それじゃあこの辺で...」

 

「ちょーっと待った!」

 

「…なに?」

 

「いやーちょっと世間話という名の愚痴を聞いてほしくてさ。ご飯ついでにどっか寄らない?」

 

「なにデート?逆ナン?」

 

「違うわ!」

 

「わかってるって。じゃあギルドの前で待ってるわ」

 

「オッケー終わったら行く」

 

…なんかご飯誘われた。宿でこれから食べるんだけど...まぁいっか。

 

ギルドの外に出て、サーマルを待つ。

 

「愚痴...愚痴かぁ。やっぱ帰ろうかな」

 

「帰っちゃダメだよー」

 

「うわびっくりした。なんで後ろ立つんだよびっくりすんだろ」

 

急に後ろに立つなよ俺がどこぞの13だったら殴ってるぞ。多分いつもの装備を身に付けてたらダガーで切ってた。

 

「じゃあいこー!お金はあんたの奢りねー」

 

「なんでさお前が誘ったんだからお前が払えよ」

 

「今財布持ってないんだよ」

 

「…しょうがねぇな」

 

鞄は持ってたから財布あるけど、もし俺が持ってなかったらどうするつもりだったんだろう。まだ今言ってくれてよかった。会計の時に言われたらちょっとキレる。

 

「ここにしよー。いいよね?」

 

「どこでもどーぞ」

 

サーマルの選んだ店に入る。

 

「なに選ぼっかなー」

 

「一品だけにしろよ」

 

「え、なんで?いろいろ食べさせてよ」

 

「誰が金払うと思ってんだよ...お金だって無限にあるわけじゃないんだからな?」

 

「しょうがないな...じゃあ私これにしよ。あんたはなににする?」

 

「俺はいいや。宿でご飯食べるし」

 

「そう?...店員さーん注文お願いしまーす!」

 

サーマルが店員を呼び注文をする。

 

「…よし、料理来るまで話しよ」

 

「はいはいいくらでも愚痴聞きますよー」

 

「聞いてよ大変だったんだから...戦争後の諸々で普段やらない仕事任されたし、いろんなところまわって魔族がいないか探さないといけないし、この三日間働きづくめでさー」

 

「そういえば魔族って見つかったの?」

 

「…あんたならいっか。ここだけの話なんだけどね、見つからなかったんだって」

 

「…マジ?」

 

「マジのマジ。アンデッドは二、三人見つかったらしいんだけどね」

 

「成果はほぼ無し...か。不満が出るだろうな」

 

三日間拘束されて成果無しだと、住人や冒険者たちから不満が出てくるだろう。どうすんだろ。

 

「一応見つかって打ち倒したっていうふうな話を広めるらしいよ?」

 

「嘘を広めんのかよ...まぁ不満が出るよりはマシか」

 

「そうそう。いい嘘もあるんだよ...おっ、キタキタ」

 

サーマルの頼んだ料理がやってくる。これ...パスタ?まぁラーメンあるからあってもおかしくはないか。

 

「これ初めて食べるんだよね...いっただっきまーす」

 

サーマルがパスタを食べ始める。

 

「…随分と美味しそうに食うなお前。お腹空いてくるわ」

 

「食べる?」

 

「いや、いい」

 

「そう?美味しいのに...」

 

「ってかパスタ食べたことないんだな」

 

「うん。山暮らしだったし」

 

「へー俺と一緒だな」

 

一応俺は人里離れた山奥に住んでいたという設定だったはずなので話を合わせておく。

 

「あんたは食べたことあるの?」

 

「まぁな」

 

「へー...私、九ヶ月くらい前にこの町に来てギルド職員になったの。それまであまりこういうご飯食べれてなくて...」

 

…意外と過去重そうだな。なんかこう...イメージと違う。

 

「それで、自分で稼いでこの町のご飯全種類食べるのが夢みたいな感じなんだよね」

 

「でもお前よくサボってるじゃん」

 

「…まぁそうだけど」

 

「それに今俺の金で食べてるよな?人の金で食う飯は美味いか?」

 

「美味しいよ?」

 

「そういうこと言ってるんじゃなくて...」

 

「ほら、人間の作るご飯って大体美味しいじゃん?なに食べても美味しいから止まらなくて...」

 

「人間の作るってお前人間じゃないみたいに言うなおい。魔族かー?」

 

「ち、ちちちち違うわ!検査でも魔族じゃないってでたし!」

 

「そりゃそうださっき魔族は見つからなかったって自分で言ってたもんな。ってことはなんだ?お前は狼にでも育てられたのか?」

 

「ちょっと言ってる意味がよくわかんない」

 

ありゃ、伝わらないか。伝わらないってことは似たような言葉もこの世界には存在しないんだろうな。未だに何があって何がないのかわからない。

 

「あっ、そういえば聞いたよ。あんたも色々大変だったんだってね」

 

「ん?確かに大変だったな。ゆっくりしようと思ってたらリヒトに引っ張られて平原直すの手伝わされたし、サーベル運ぶのもやったし、ついでに解析の手伝いもやらされたし...いい時間潰しにはなったけどさ」

 

この三日間、日中はほとんどリヒトと一緒にいた気がする。空いた時間は魔法の鍛錬を手伝ってくれたし、庭も使わせてもらえたから感謝はしてるけど。なんならさっきギルドに行く前はリヒトの家にいた。なんかニトラスも来ていたので、一緒に挨拶は済ませておいた。

 

「大変だったねぇ...ご馳走様でした。じゃあ会計よろしく!」

 

「はいはい」

 

サーマルの食事代を払った。まぁまぁ高いの買ってくれちゃってこの野郎...

 

「それじゃあここらへんで...また会うときがあればよろしくなサーマル」

 

「じゃーねー...あっ!言いたいことあったの忘れてた!」

 

言いたいこと?なんだろう。

 

「まだ愚痴残ってたか?」

 

「違う違う...あんた、これからガネルに行く予定ある?」

 

「ガルムの次にガネル行くけど...なに?」

 

「いやね?ガネルにあるギルドで私の妹が働いてるのよ」

 

「あー...キネットさんだっけ?」

 

「そうそう。もし会ったらよろしく言っといてー」

 

「覚えてたら言っておくよ。じゃあな」

 

「ちゃんと言ってねー」

 

サーマルと別れた。

 

「…お腹減った。俺もご飯食べよ」

 

俺は宿に戻った。




今回、実質サーマル回でしたね。
そしてさらっとカリヤくんの財布の中身を減らしにかかるサーマルさん。
まぁあんまり深いことは考えてないので、タダ飯できてラッキーくらいにしか思ってないですけどね。
ちなみに後日、ご飯中に話したことをキネットに話している時にそのことを言ったら、珍しく褒められるという裏描写があったりなかったり...

次回はガルムに行きます。
多分本当です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。