前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8508字。

ガルム回です。
戦闘も(ほぼ)なし!


盾の町、ガルム

「出発します」

 

0時、日の出と共にガルム行きの馬車が発車した。

 

三日間の出入り禁止が解け、カイスから外に出たいという人が多くいた。そのため普段よりも馬車が多く用意されていたのだが、このガルム行きの馬車にはほとんど人が来なかった。乗っていたのは俺ともう一人、真っ二つに割れて壊れた盾を持った男くらいだった。

 

そして魔物に襲われることもなく、ゆったりと馬車は進んでいき一時間もすればガルムに到着した。その間一言も会話がなかったのでちょっと気まずかった。

 

「到着しました。お降りください」

 

「ありがとうございます」

 

馬車から降りると、もうガルムの中だった。

 

「…盾の町だなんて言うもんだからどんな城郭都市なんだろうと思ってたけど、意外と普通だな」

 

なんかカリスに近い。木造建築多めで、申し訳程度に周りは石垣で囲われているけどそれまで。こんな町を魔王城と王都の間に置いてていいのかって心配になる。ほんとに守れるのかこれ?

 

「とりあえず宿探して...ギルドに行くか」

 

最初にやることはどこの町でも大体同じだ。やることやったらこの町の探検でもしようかな。

 

「あのーすみません。宿を探してるんですけどどこにありますかね?」

 

道行く人に聞いてみる。

 

「ん?冒険者の方?ここに来る人なんて珍しい...あっ、宿は向こうの道を少し行って角を曲がったらあるよ。看板があるからわかりやすいはずだ」

 

「ありがとうございます」

 

お礼を言ってから、教えてくれた方に歩き出す。

 

ってかここに来るのが珍しいってどういうことだ...?ガルムってあんまり行く人いないのかな。そもそもちゃんとした本場の盾を使いたいって人自体少ないのか。ただ保険として盾を使いたいなら別の町でもある程度のものは買えてしまうし、わざわざここまで来て買いに来る人がいないのだろう。しかも結構狭い町だし、言ってしまえば魔王軍の総攻撃を受け止める場所でもあるから外部の人間はあまり来たがらないのだろう。

 

「看板があるって言ってたよな...あっ、あれかな」

 

曲がり角を曲がって辺りを見渡すと看板を見つけた。どうやらこの町唯一の宿らしい。外から来る人自体が少ないからここ一つで足りるのだろう。まぁまぁ大きめだから泊まれないなんてことはなさそうだ。

 

宿の中に入り、チェックインを済ませる。荷物は...今日は町の外に出る予定ないから、武器類だけは部屋に置いておくとしよう。鞄だけは持ち歩いておく。

 

「よーしギルドに行こう」

 

宿の人にギルドの位置を聞いてからギルドに向かう。宿から意外と近くにあったので、1分近く歩くだけで着いた。宿は冒険者が使うだろうから、ギルドから近い位置に建てられたのだろう。

 

この町のギルドは、カリスとカイスのギルドを足して2で割ったような感じだった。他の建物のように木造建築だが、広さや規模はカイスぐらいだ。

 

「受付で登録してもらわないとな」

 

ギルドの中に入る。案の定空いているのでそのまま直接受付に向かう。

 

「許可証の登録お願いします」

 

カードを出して受付に置く。

 

「わかりました。承ります」

 

男の人が受付をしてくれた。受付員としては普通の態度のはずだが、サーマルのせいでこの感じでも聖人のように見えてしまう。

 

「黒のカード...もしかしてあなたが噂に聞く神の使いですか?」

 

「そうです」

 

「神の使い様がなぜこんな町に...っとと、処理が終わりました。カードをお返しします」

 

カードを返される。というかどの人もこの町に人が来たことを驚いてくるな。そんなに来ないのかよ。

 

「つかぬことをお聞きしますがなぜこの町にいらっしゃったのでしょうか。すみません少し気になりまして...」

 

「えっと...勇者が決まるまでの間にいろんな場所を回っておきたいというのが一つで、もう一つが勇者の仲間が選ばれるというのを聞いて見ておきたいなと思いまして」

 

「なるほどそれで...」

 

「聞きたいんですけど、この町から勇者の仲間が選ばれるのはいつなんですか?」

 

「明日ですね。この町の北にある大広場で行われる予定ですよ」

 

「そうですか...教えてくださりありがとうございます」

 

「いえいえ、仕事ですから」

 

「ではこれで」

 

「依頼は受けないのですか?」

 

「今日はこの町を探検しようと思ってまして。依頼は明日から受けようかと」

 

「わかりました。この町に冒険者が来ることは少ないので、多くの依頼が溜まっています。ぜひご協力お願いします」

 

「あっ、そうなんですか。わかりました。明日からよろしくお願いします」

 

受付から離れる。一応どんな依頼があるのか見ておこうかな。時間あるし。

 

「……討伐系が多いな。盾ばっかで攻撃できる人が少ないから余ってくるんだろうな...ん?なんだこれ」

 

依頼書を見ていると、ちょっと気になることが書いてあった。

 

「報酬の2割を渡すことを条件に熟練の盾使いのサポートを受けられる...?面白いなこれ」

 

あんまりにも人が来ないから、ソロの冒険者でも依頼を受けてもらえるように工夫してるんだなぁ...この町の盾使いなら安心して防御を任せられるだろうし、結構いい制度かもしれない。依頼の難度と報酬の量的に2割持ってかれても、他の依頼を受けるよりも得をできるようになっている。よく考えられてるな。俺は速さを生かして避けるのが基本戦法だから使うことはないだろうけど。

 

「かなり報酬量多いし、結構稼げそうだな。なんだかんだ穴場だ」

 

多分このギルドにいる二、三人の冒険者は報酬がいいからいるんだろうな。

 

「もうそろそろ外に出よう」

 

今日はもうギルドに用はない。外に出る。

 

「さーて探検を始めましょうか」

 

まずは何も考えずに北の大広場とやらに行くとしよう。そこから探検を始めた方がわかりやすく回れるだろう。

 

「北は...こっちか」

 

太陽の位置から方角を割り出し、北に向かって歩き出す。比較的狭い町かつ道があまり入り組んでないので、道なりにしばらく進むだけで北の大広場に着くことができた。

 

「確かに広いなここ。何もない...」

 

大広場と言うのだからそれなりに広いんだろうなとは思っていたが、まさかこの町の中に野球をできるくらいの大きさの広場があるとは...なんでここに何も建てないんだろう。魔王軍の侵攻を防ぐ上で大切な何かがある場所だったりするのかな。

 

「よーしここから探検スタートだ。どこから行こうかなー」

 

北の大広場から伸びている道は3本。真っ直ぐ反対側の門まで通る道と、俺がさっき通ってきた左の道と、反対側の右の道の3つだ。

 

「右から行こうかな。最後に左行ったらそのまま宿に戻れるし」

 

そう言いながら右の道に向かって歩き出そうとしたその時だった。後ろの方から足音が聞こえた。はて、誰もいなかったはずだが...と思い後ろを振り向く。

 

「…へ?」

 

後ろに魔物がいた。小さなゴブリンとでも言うべき魔物だ。

 

一瞬思考が止まるも、すぐに動き出す。

 

次の瞬間には能力を発動させて秒速42メートルの蹴りを叩き込んでいた。魔物は勢いよく吹き飛んでいき、北の門から町の外へと飛んでいく。

 

「な、なんで町の中に魔物が⁉︎」

 

北の門がなぜか開きっぱなしだし入ってきちゃったのか⁉︎いやでも町の中は聖域なはずだ。魔族が先導してなければ基本的に入ってこないはず。まさか魔族の仕業か...?

 

「……ってあれ?」

 

そこで俺は違和感に気づいた。能力を使ったことによってほんの少し魔力を消費した。その魔力を回復させるため回復速度を加速させたが、普段よりも本当に微妙ではあるが遅かったのだ。

 

「なんで...?」

 

2133ページ上 黒のみ マナ探知

 

魔法を発動させると、視界が切り替わる。見えたのは視界のほとんどを埋め尽くす青い点。そしていくつかの赤い点だった。

 

「まさか...ここ、聖域じゃない?」

 

後ろを見る。まさかこの町全部聖域じゃないのか?と思ってしまったが、そんなことはなかった。どうやらこの大広場だけが聖域ではないみたいだ。大きな聖域のうち、ここだけ丸く刳り貫いたかのようにぽっかりと穴が空いているかのようだった。

 

「だから建物建ててないのか」

 

魔物は聖域以外の場所だと、無から自然発生する可能性がある。町と町の間に休憩所がないのと同じで、建物の中で魔物が生まれるのを防いでいるのだ。

 

「面白い地形だけど...これが防衛にも役立ってるんだろうな多分」

 

具体的にどうやって使うのかはわからないけれど、きちんと聖域の形に沿って壁を作るのではなく、町の中にこんな危ない場所を入れるように壁を作ったのには何かしらの理由があるはずだ。

 

「盾の練習場にも使われてるのかな、すぐに聖域に入れるから安全だし。でも待てよ?ここで勇者の仲間を決めるんだよな。実践形式で決めるってことなのかな?」

 

なかなか面白そうだ。明日が楽しみになる。

 

「っとと、そろそろ行かないとな。ここにいても何もできないし」

 

一度考えるのをやめ、右の道へと歩いていく。

 

「この道は...飲食系が多いな。食材に調理道具に定食屋に...ここでまとめて買えるようになってるんだな」

 

ここで食べるのもよし、何かを買って作って食べるのもよしって感じだな。まとまっているからいろんな場所を往復する必要がなくてちょっと楽だ。

 

「そういえば料理作りたいって言ったままやってないな...そうだな、今日は町から出ない予定だし、時間も余るだろうから後でやろう」

 

宿の調理台を借りる...のはできるかわからないから、北の大広場でやろうかな。あそこなら周りに迷惑をかけずにできるだろう。地面に草は生えていなかったから燃える心配もないし。唯一の心配といえば、匂いに釣られて魔物どもが来るかもしれないってところだが...まぁその都度倒せばいいだけだな、うん。

 

とりあえず、後のためにいろいろな店を物色しておく。調理道具系は自分で作る予定なので、良さそうなものの形だけを見る。次元収納はまだ使えないので、色々買って持ち歩くことはできない。だから一度自分で作り、製作スキルで材料だけあれば作れるようにするのだ。製作スキルの成長にも繋がるし、一石二鳥だ。

 

「…やっぱ調理器具とかは地球のものを参考にしたほうがよさそうだな。使い慣れてるし、ハッキリ形覚えてるし」

 

この世界には魔法があるから、地球のものよりも高性能だったりするものももちろんあるが、地球の現代科学も舐めてかかることはできない。科学に裏打ちされた鍛治技術によって作り出された包丁は魔法技術で作られたものよりも精巧で切れ味も良く使いやすかったりする。まぁ物にもよるが。

 

神様がなにかしたのかは知らないが、俺の地球での記憶は産まれた直後から死ぬ寸前までの目が覚めている間の全てが残っている。一人暮らし時代での自炊の記憶もきちんと残っているので、その時使っていたものの形は覚えている。もっとも、電化製品系は軒並み使えないので前みたいな料理はできないが。テレビやネットで得た知識を駆使して火を使って料理するとしよう。

 

「食材は...うん、普通に使えそうだ」

 

異世界でも、普通に地球のものと同じような食材が存在する。調味料類は異なってたりはするが、食材そのものはあまり変わらない。ラーメンだとかパスタだとか色々あるのはすでに知っているから、そこまで驚きはしない。

 

でもよくよく考えると、魔力だとか魔物だとか魔法だとか、地球と違うことがいくつもあるのに食文化はそこまで大差ないのって違和感だよな。地質とかも違うだろうし、ここまで似通うのはちょっと変だ。どんな確率だよ。

 

…まぁ全く知らない食材しかなかったり、見た目がヤバいゲテモノ料理しか存在しないとかではないから、この世界に来れて運がよかったなと考える方がいいだろうな。異世界食文化ガチャとかやりたくない。この世界は多分URレベルだろう。

 

「…こんなもんでいいかな。あとで買いに来よう」

 

とりあえず一通り見て回ったのでここらで切り上げて先に進む。横に細かい脇道がいくつかあって気になったが、まずは大通り3本から見ようと決めているので後ろ髪を引かれながらも歩き続ける。

 

「……門に戻ってきたな」

 

どうやらこの大通りは食に関する店しかないみたいだ。ギルドに行くときに通った道と比べると、だいぶ人通りも多かった印象だ。地元の人が多く利用しているのだろうな。

 

「よーし次は真ん中行くか」

 

南の門から北の門へとまっすぐ伸びている道に向かって歩き出す。

 

「……もしかして...民家しかない?」

 

歩きながら周囲を見渡してみるが、どこの建物も看板のようなものはない。表札のようなものしかない。この世界には苗字の概念がないっぽいけど、表札には世帯主の名前を書いてるのかな。

 

「この大通りは民家しかないのかな?」

 

この大通りは南北両方の門に直接通じている。有事の時にはすぐに移動できた方がいいから、ここに密集しているんだろう。なんか他の町と比べると、随分と効率を求めた町のように感じる。

 

「んー本当に民家以外なさそうだな...さっさと次行くか」

 

さっさと北の大広場まで歩く。一応チラリとどこかに店がないかと見てはみたが、やはりどれも民家だった。

 

「よし、次は左の道だな」

 

左の大通りに入る。他の二つの大通りと比べると少しだけ細くなっていた。そこまで多くの人が行き来することを想定していないのだろう。

 

そしてこの道は冒険者向けの店が多く並んでいた。それにはギルドやこの町唯一の宿があることからもある程度予想はついていたが、中でもやはり盾が多いみたいだ。

 

「盾買おうと思ってたんだよね...適当に入ってみるか」

 

避けるのが基本戦法なため盾を使うこと自体少ないが、それでもちょくちょく使ってはいるため消耗している。そもそもこの盾はカリスで買ったものだし、傷ついているなら本場のものに変えたほうがいいだろう。もし戦闘中に盾が壊れでもしたら、いざという時の防御手段が一つ減ったことになるからちょっと困る。

 

「いらっしゃいませ」

 

店の中に入ると、少々小柄な女の人が店番をしていた。

 

「冒険者の方...ですか?」

 

…そうか、今鞄しか持ってないからわかりにくいか。

 

「そうです。ちょっと盾見させてもらっていいですか?」

 

「どうぞどうぞ」

 

一応許可をもらってから壁にかけられている盾を見ていく。

 

「どんな盾をお探しなんですか?」

 

「えっと、前に使ってたのがこんな感じの腕につけるタイプので...あっ、これみたいなのです」

 

前に使っていたのと似たようななのを指差す。

 

「なるほど...大きさとか重さとかに希望はありますか?軽いのがいいとか、できれば大きめがいいとか」

 

うーんどうしよう。軽い方が楽だから軽いのは確定だけど、大きさはどうしようかな...前と同じでいいか。同じ感覚で使えるならその方がいいだろうし。

 

「大きさはえっと...このくらいで、重さはできれば軽めの方が嬉しいですね」

 

手で大きさを示しながら言う。

 

「うーん...それなら旦那の店にあるかな?」

 

「旦那の店?」

 

夫婦で別々に店をやっているのか?

 

「あっ、えっと私のこの店は初心者向けと言いますか、他の町でも売っているような既製品が多めなんです。旦那の店はもう少しピーキーな性能を持った盾を扱っていまして、お客さんの欲しいものは恐らくそっちにあるかと思います」

 

「なるほど...わかりました。その店に行ってみますね」

 

「旦那の店は、この大通りを真っ直ぐ行った奥の曲がり角のところの角地にあります。あと、もしそこでもいいのがなかったら私の父の店に行ってみてください。時間はかかりますが、オーダーメイドで作ってくれるのでおすすめですよ」

 

「何から何までありがとうございます。では」

 

店を出る。いい人だったな店員さん。

 

「角地にあるって言ってたよな...あっ、その前にここ入ろ」

 

雑貨屋のような店が見えたので入る。カイスでの戦争の時から買いたかったけど、時間がなくて買えなかったものを買うことにしよう。

 

「よし買えた。これで便利になる...!」

 

買ったのは腰に巻くウエストポーチだ。そこに魔法図鑑を入れる。

 

なぜこれを買ったのかと言われたら、魔法発動までの手順を一つ減らすためだ。今までは背負っている鞄の中に入っていたため、中身が動いてしまって魔法図鑑の位置が常に変わってしまっていた。そのため速度探知で魔法図鑑の位置を調べるという手順を踏む必要があった。

 

けれどこれなら位置を固定できる。向きも変わらない。手順を一つ減らすことができる。さらに、皮膚に近いため鞄に入れていた時よりも魔力を流しやすくなっている。魔力ロスも減らせるのだ。

 

ついでにこれは先行投資でもある。将来、次元収納を覚えたら荷物はそこにしまうことになる。けれど、魔法を使うには魔法図鑑を持ち歩く必要がある。体に直接括り付けると動くのに邪魔になる。そこでこのウエストポーチの出番だ。これに入れて常に持ち歩けば、戦闘中にいちいち次元収納を発動させて魔法図鑑を取り出すなんてことをしなくても良くなる。未来のための投資だ。

 

「よし、じゃあ盾買いに行くか」

 

寄り道も済んだところで、盾を買うために目的地である角地の店まで歩く。

 

「角地だから...この店でいいんだよな?」

 

とりあえず入ってみよう。

 

「おう、いらっしゃい!」

 

威勢のいい男の店員さんの声が聞こえた。一応あの店の人の旦那さんか確認とっておくか。

 

「あの、すみません。あなたの奥さんからこの店の方がいいだろうと言われて来たんですけど...えっと、このくらいの身長の」

 

「お?そうか、どんな盾が欲しいんだ?」

 

よかった、合ってるみたいだ。

 

「腕につけるタイプの、このくらいの大きさで、できれば軽めのが欲しいんですけど...ありますか?」

 

「それなら...こいつはどうだ?」

 

店員さんが壁の高いところにかかっている盾を取って持ってくる。

 

「見た目は他の町で流通してるのと変わんねぇが、質は比べられないほどの一級品だ。持ってみな」

 

店員さんが盾を俺の左腕につけてくれる。

 

「…うわ軽っ⁉︎」

 

金属でできているはずなのに、めっちゃ軽い。これならずっと腕を振っていても疲れない気がする。

 

「だろう?盾の中に魔法陣が仕込まれていてな、見た目よりも軽くなっているんだ」

 

「すごいなこれ...」

 

「だがちと弱点があってだな。そいつは受け流すのが専門だ。直接受け止めるのは止したほうがいい」

 

そりゃそうだ。直接受け止めようとしたら腕に直接衝撃が走って最悪折れかねない。

 

「中にもう一つ魔法陣があってな。受け流すのは得意なんだが、その分受け止めた時の耐久性が損なわれてしまったんだ」

 

なるほど、たしかにピーキーな性能をしているな。

 

「あと、つけた瞬間に少し魔力を持っていかれる。魔法陣の効果を起動するために必要なんだが、もちはいいから一度の消費で長時間効果は持続するから安心してくれ。とまぁこの盾の説明はこんなところだが...どうだ、買うか?」

 

「買います」

 

魔力の消費はデメリットにすらならない。魔力量は随分多くなっているし、加速させれば直ぐに回復できる。

 

「わかった。値段はそこに書いてあるとおりだ」

 

「…ピッタリは出せそうにないな。お釣りもらえます?」

 

「問題ない。お釣りお釣り...はい、お釣りだ。毎度あり!」

 

新しい魔法の盾を手に入れた。やったぜ。

 

「…お腹減ったな。食材買ってご飯作ってみるか」

 

店を出た俺はいつものように独り言を言う。本当に癖と化していて直せそうにない。

 

俺は一度南の門のところまで戻り、そこから左の食の大通りに向かう。そしてそこでいくつか食材を買い込む。袋は適当な小瓶を延性付与で大きくさせて代用した。

 

食材を買い込んだら北の大広場に行き、そこでいくつか用意をする。火は植物生成の魔法で焚き木を作ってから適当な火の魔法を使って調達した。包丁は金属生成と流体金属を利用して作り出し、他の調理器具も同じようにして作る。

 

今回作る料理はシチューだ。鞄に入ってる非常食のパンと合わせて食べることにした。なぜかこういう野原とか地面の上で作る料理で真っ先に思い浮かぶのがシチューなのだが、ポケ○ンのタ○シのせいかな多分。シチュー混ぜてる絵を見過ぎて刷り込まれている気がする。

 

食材を切って水は魔法で作り出して煮込んで...火加減は熱操作なり速度操作なりで調節できるので、焚き火でやっているとは思えないくらい簡単にできた。

 

魔物が匂いに釣られて寄ってくる...ってことはなかった。その代わりにこの町の子供が釣られて何人かやってきた。そこまで多く作ったわけではないが、皿とスプーンを作って少し分けてやった。しばらくこの町で過ごすのだ。子供たちと仲良くしたら、大人からも好印象を抱いてくれるだろう。いざこざは起こしたくないので、いい人だと思ってもらえるようにしなければ。

 

……結局自分の分が少なくなってしまい、もう一度食材を買いに行くことになった。そして戻ってきたら子供が増えていた。ここは聖域の外なので一応子供たちには大広場の外で待ってもらい、完成したシチューを分けて一緒に食べた。

 

子供たちには好評だったが、調味料が違うため自分の口にはほんの少し合わなかった。いつか、地球の調味料を作り出してやろうと心に決めたのであった。




料理シーンは、作者が学校の授業と家庭科の課題くらいでしか料理をしたことがないのでほぼほぼカットになりました。
料理小説じゃないしね、いいよね。

次回は勇者の仲間を決める回です。
いちいち勇者の仲間と書くの面倒なので、次回までに特別な名称を考えておきます。
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