前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
勇者の仲間の呼び方は英雄に決まりました。
英傑だとブレ○イになるし、賢者だとティ○キンになるせいでそれっぽい候補が軒並み潰されてて困った結果です。
「……ふわぁ...よく寝た...」
昨日は陽が沈む前に寝た。カイスでの戦争後も色々ありすぎて十分休めてなかったのもあって、次の日の2時くらいまでぐっすりと寝ることができた。地球の時間に換算すると19時間くらいは寝たのかな?...寝過ぎだな。
「お腹減ったな。朝食の時間は...過ぎてるか。外で何か食べてこよう」
既に宿の朝食の時間は過ぎている。寝巻きからいつもの服に着替えた俺は、宿を出て食関連の店が集まっている大通りの方まで行って適当な店に入って朝食を取る。
「…そういえば今日は勇者の仲間...英雄だったか。英雄が選ばれる日だったな。後で北の大広場に行ってみるか」
この世界の言語では、勇者と共に旅をすることになる者たちを表す言葉は一つの固有名詞であり、神から授かった翻訳能力がうまく働いていなかった。暫定的に『勇者の仲間』というふうに翻訳されていてそう言えば通じたが、昨日寝る前、神に毎回言うのめんどくさいと文句を言ったらアップデートがかかった。これからは『勇者の仲間』改め『英雄』だ。ちょっと言いやすくなったな。
そんな英雄が今日選ばれる。昨日小耳に挟んだが、確か3時くらいに試験のようなものが始まるとかだったはずだ。もうそろそろ3時。ちょうどいい時間だ。
「ごちそうさまでしたっと...それじゃ行くか」
会計を済ませて店を出る。
「おーだいぶ人集まってるな...空いてるところないかな」
北の大広場の近くに多くの人が集まっていた。見物人だろう。その人たちは誰一人として大広場の中には入っていない。聖域の中で安全に見物するみたいだ。
「んー...隙間ないな。いっそ空中に障壁でも置いて上から見るか...?」
その方がいいかもしれない。実際、見物人のうち何人かは近くの建物の屋根の上から見てるわけだし。
「ちょっと目立つけどやるか...」
魔力を魔法図鑑に流し込む。そして4014ページの黒い線と青い線に...と考えてやろうとしていたときだった。
後ろから肩をトントンと軽く叩かれた。
「ん?」
後ろに振り向く。
「あなたは...昨日の」
そこには、ギルドで受付をしていた男の人がいた。
「こちらに来てください」
「…?わかりました」
なんか呼ばれたのでついていく。大広場を囲む見物人の外側をぐるりと回って移動していく。行き先は...北の門あたりか?
「ま、まさかこの流れは...」
なんかこの流れ前にもあったぞこれまた面倒ごとに巻き込まれるやつだ...!
今更逃げることもできない。大人しくついていく。
「ここでお待ちください」
なんか控室?みたいなテントのところまで連れてこられた。そこには数人のギルドの制服を着た職員と、各々形の違う盾を持った男が二人いた。もしかして英雄候補か?
「あの、俺は何をすれば...」
俺をここまで連れてきたギルド職員がどこかに行こうとしたので、引き止めて聞き出す。何かしらに協力させられるのにはもう何も言わない。でもせめて何をして欲しいのか言ってほしい。何でこの世界の人はとりあえず連れてきてから説明しようとするの?その前に説明してくれよ。
「すみません、説明を忘れていました」
うん、忘れないで?
「昨日うちの上司の方に、神の使い様が英雄選抜を見学なされるという話をしたところ、折角ならば協力してもらえと言われまして...直接会ったお前なら連れてこれるだろうと頼まれた次第です」
「なるほど...それで、具体的に俺は何をすれば?」
「神の使い様にはあそこにいらっしゃるお二人の試験相手になってほしいのです」
「試験相手?」
「試験内容は、大広場中央にある案山子の防衛、それを人と見立てて守るのです。そして神の使い様には、案山子を破壊するために攻撃をしてもらいたいのです」
「俺が案山子に攻撃しようとするのを、盾を使って止める...それがうまくできた方が英雄になるってわけか。俺がいなかったらどうなっていたんだ?」
「その時は案山子の中に埋め込まれている、魔物を引き寄せる魔法陣を起動することで魔物を呼び、試験に利用します」
なるほど、聖域じゃない事を利用しているわけだな。
「そして最後に、神の使い様に二人のうちどちらが英雄として選ばれるべきかを決めていただきたいのです」
「……へ?」
お、俺が...選ぶの?
「なんで俺が選ぶの...?」
「神の使い様は勇者様や英雄たちと共に旅をすることが確定しています。背中を預けることになるであろう仲間は、自分の手で選ぶのが一番良いと当ギルドは判断しました」
…確かに、そう言われるとそうだな。相性の良い人を選んだ方が戦いやすい。そもそも、俺が旅をしているのは英雄候補に会っておきたいからというのもあるし、決められるに越したことはないな。
「でもいいんですか?俺が選んじゃって。そもそも自分、速さで避けるのが基本なんで盾使いとコンビネーション取るとかないんですけど...普通に耐えられた時間だとか判断力とかの結果で選んだ方がいいと思うんですけど」
俺に合う人だったからといって、他の英雄たちや勇者と相性が良いとは限らない。俺の一存だけで決めるのもちょっと違う気がする。
「いいんですよ。悩んだら性格で決めちゃってください」
「…そんなんでいいんですか?」
「二人の実力は結構拮抗していて、普通に試験をやっても同じくらいの結果になる予定なので」
「そうなのか...あの、時間があればでいいんですけど、二人のこと話してもらえませんか?出自とか性格とか戦いかたとか...そんなんでいいので」
「わかりました。時間はあるので話してしまいますね」
ギルド職員から、少し先で座っている二人のことを聞き出す。
まずは俺から近い方。少し歳を取っている、おじさんのような見た目だ。しかし見た目に反して歳は28。老けてみえる容姿をしているな。
そんな彼の名前はルード。この町で代々長をやっていて、他の町との貿易を取りまとめている名家の出らしい。名家だが、別に豪邸というわけではなく普通の民家らしいが...それは置いておこう。その実力は本物で、一カ月前まではほぼ一強だったらしい。
使っている盾は大盾。大きく重い盾を鍛え上げられた筋力を活かして振り回し、味方を守る鉄壁の盾だ。依頼の同行も多く行なっており、ほとんどの依頼を冒険者に傷ひとつつけることなく終わらすという功績を残している。盾一筋なため魔法を使うこともなく、攻撃手段には乏しい。万が一の時には盾で押し潰したり弾き飛ばしたりして攻撃を加えるらしい。
もう一人、テントの端の方で地べたに座りこみ眠りこけているのが、レストだ。歳は17。なんと同い年だ。
彼は普通の家の出だ。親が盾使いだったということもなく、実家は飲食店らしい。というか、さっき俺が朝食を食べてきたところだった。そういえばもうすぐ店を閉めて行かないとみたいなことを言っていたような気がしないでもない。
使っている盾は二つ。両方とも、腕につけるタイプのやつだ。片方は俺が昨日買ったやつに似ている。多分同じやつだ。こっちは受け流すのに特化しているものなので、もう片方は受け止めるのに特化しているものになっている。二種類の効果の違う盾を駆使して守る盾使いらしい。
そして彼は多くの魔法を使うらしい。火装や氷装のような盾に属性を付与する魔法や、自らの身体能力の強化などを使うようだ。動きまくって守るタイプらしい...寝ているところを見る限り、想像できないが。あと回復魔法も使えるため、ある程度無理をしてでも守ることができる。さらに小さなナイフを持っており、万が一の時にはそれで反撃をするのだという。さっき言った属性付与を使って盾に属性を付与し、盾で攻撃することもたまにあるらしい。ナイフを取り出す暇もない時の最終手段らしいが。
とまぁこのように器用に色々なことができるため、ここ数ヶ月でメキメキと実力を伸ばし、つい一カ月前にはルードと並ぶほどの実力者になったみたいだ。やっぱり寝ている姿からはそんな実力があるなんて微塵も思えないけど。
「こんなところでしょうか」
「教えてくださりありがとうございます」
「いえいえ、都合も考えずに連れてきてしまったのですから、これくらいの協力は当然です。では、頑張ってください」
そう言ってギルド職員は去っていった。
「…ってかヤベェ武器置いてきたんだった!」
見るだけだと思ってたから忘れてた。どうしよう。
「時間は...まだギリ余裕あるな。急いで取ってくるか!」
懐中時計を取り出して確認すると、ただいまの時刻は2時55分。今から行けば間に合う。
7801ページ 黒 赤 未来跳躍
カスタムをした未来跳躍を発動させる。3秒のチャージ時間の後、消失する。3秒後、移動可能な最大距離である126メートル先の位置に転移した俺はそのまま走って宿に戻った。
「えっとえっと必要なものは...まず鞄は要らないから置いておいて、魔法図鑑の入ったポーチはもうつけてて、ダガーは...怪我させるとやばいから持ってかないでおこう。木刀でも作ればいいし」
いるものといらないものを選別していく。最終的に残ったのは、魔法図鑑とそれを入れたポーチ、弓矢、鞭、盾だった。
剣の類はさっき言った通り、植物生成の魔法を使うなどして木刀を作ればいいので持っていかない。弓矢はその場で作ることがすぐには出来ないので持っていく。いろんな攻撃パターンがあった方がいいので、鞭も持っていく。盾は...まぁ一応だ。投げつけるとかして意表をついた攻撃ができないこともないし。
「よしこれでオッケー早く戻んないと」
宿を出て、急いで走る。
7801ページ 黒 赤 未来跳躍
チャージ時間である3秒間でギリギリまで走り、消滅する。転移後、俺は既にテントの中に戻ってきていた。
「ギリギリセーフ...!」
懐中時計を見ると、59分だった。なんとか間に合ったな。
「そうだ木刀一度作っておかないと...」
6991ページ 黒のみ 植物生成
5437ページ 黒のみ 植物操作
植物生成で手から小さな木を生やし、植物操作で切り取って圧縮し木刀の形に成形していく。
「よし、完成っと」
一旦木刀は消しておく。生成魔法で作り出したものはいつでも消せるから便利だ。製作スキルに登録したから素材さえあれば作れるようになったし、やっぱこのムーブ強いな。生成魔法と製作スキルの相性が良すぎる。
「時間です。お二人は準備をお願いします」
さっき話していたのとは別のギルド職員が二人に話しかけていた。椅子に座っていたルードは立ち上がり、テントから出ていった。レストは眠り続けていたが、ギルド職員に叩き起こされて外に連れ出されていた。マイペース...で済ませていいのか?
「俺はまだなんですか?」
呼ばれてないからまだなのかな。
「ああ、あとで呼ばれるので大丈夫です」
「わかりました」
呼ばれたら出ればいいのね。おけ。
二人がテントから出ていくと、少しだけ歓声が上がった。そして、その歓声が収まったのちに二人の紹介が始まった。といっても、二人ともこの町の住人なので紹介自体は簡素だ。さっき聞いた話よりも内容は薄い。
「そして!本来なら魔物を誘き寄せて行う英雄選抜試験ですが...今回はこの方に協力してもらいます!」
おっ、俺の出番かな?
「神の使い、カリヤ様です!」
うん、ずっと我慢してたけどやっぱり様付けはやめてほしい...身分の証明とかが簡単だからそこは助かっているけど、ちょっとこそばゆい。まぁこうでもしないと、どこかの町の英雄候補を蹴落とすことでしか勇者の仲間に加われないからしょうがない。
一応キリッとした表情をしながらテントから出る。こういう場で雰囲気を出すのはちょっと慣れてきた。
さっきみたいに歓声が上がるかと思っていたが、そこまで歓声は上がらなかった。それよりも、どうしてこんな町に?って感じだった。
「あっ、昨日のにーちゃんだ!」
「シチューのにいちゃんだ!」
とまぁこんな感じで子どもからの認知度は昨日の一件で爆上がりしていたが、神の使いだったことまでは知らなかったみたいだ。
「おかーさん、かみのつかいってなに?」
…まぁ存在自体知らない人ももちろんいるわな。子どもならとくに。
「彼はこの英雄選抜試験の試験官です!お二人には、彼の攻撃からこの案山子を守り抜いてもらいます!」
ほんの少ししょぼんとしている俺を置いておいて話は進んでいく。
「さて、意気込みを聞いてみましょう!ルードさん!自信のほどは?」
「神の使いだろうとなんだろうと守り切る。それが俺のやるべきことだ」
「何が来ようとも守り抜く!くぅ〜いいですねぇ!」
なんかこの声の人やけにハイテンションだな。魔法で響かせてるからどこから話してるのかはわからないけど。
「さてさて!次はレストさんです!意気込みは?」
……レストは答えない。
「…あのー聞いてます?」
「……ん...?もしかして僕に聞いてた?」
「名前呼んでましたよね...?」
ほんとにマイペースだな。っていうか天然?
「ハッ、これなら勝ったも同然だな」
「おおっとここでルードさんが挑発ぅ!」
ちょっとうるさいぞこの人別の人に変えてほしい。ってかなんでギルド職員やってるんだこの人。もっと別のいい仕事あったでしょ。
「うるさい...」
流石にレストもうるさかったらしい。ボソッとつぶやいた。
「えっと、何だっけ...意気込み?聞きたいの?」
「ええそうです!意気込み、ありますか?」
「うーん...神の使いがなんだー僕なら神の攻撃すらも防いでやるぞー...とか?」
「……飛び出したぞ大胆不敵な言葉がっ!!神であろうと勝つと宣言しました!」
多分そんな深く考えてないと思うぞそんな囃し立てるようなもんじゃないって。
「やっぱりうるさい...」
ほらまた言われてる。
「さて!お二人から意気込みを聞いたところで...カリヤ様!何か言いたいことは?」
おおぅ突然聞いてくるなこいつ。言いたいことか...
「試験になるように手加減するんで。二人とも最善、尽くしてくださいね?」
これくらい言ってもいいだろう。この二人何故か案山子を守り切れるつもりでいるみたいだし。やろうと思えば青のカスタムをした未来跳躍で背後に回って案山子を切るだけで終わってしまうから、本気出せば勝負にすらならないと思うんだよね。二人の実力を知ってるわけじゃないからどうとも言えないけど。
「負けじとこっちも挑発だぁ!面白くなってきたぞぉ!」
うん、この人は闘技場とかの実況やってればいいと思う。ほんとなんでギルドの職員やってんだ。あと、面白がってんの多分お前だけ。周りの観客見ろよちょっと引いてんぞ。
「では!まずはルードさんの試験です!結界を発動させますので、周囲の見物人たちは大広場の中に入らないようにしてください!...レストさんも離れて!」
「…あっ、僕が先じゃないんだ」
「テントの中で順番言いましたよね⁉︎」
「別のこと考えてたから...テントに戻ればいい?」
「そうですですので早く離れてください!」
「はーい」
レストがテントの中に戻っていく。多分すぐ寝るんだろうなぁ...
そんなことを考えていると、辺りの風景が歪んだ。転移の兆候かと思ってしまったが、さっき言っていた結界とやらだろう。歪んだ風景は少ししたら元に戻った。
「おぉ、壁になってる...」
大広場をぐるりと囲んだドーム状の結界、この中で試験を行うようだ。
「お二人とも、準備はいいですか?」
「問題ない」
「いつでもいいぞ」
「では行きましょう!勇者選抜試験!開始!」
ギルド職員の合図で、試験開始が告げられた。
「もう始めていいんだよな?」
6991ページ 黒のみ 植物生成
『製作』
二本の木刀を作り出す。
「御託はいいから早くかかってきな」
「んじゃ、いくぞ」
さっきも言った通り手加減をする。秒速42メートルについてこれるわけないしな。手始めに15メートルくらいから始めるとしよう。
バッと走り出し、ルードの周りを回って後ろに回り込む。そして木刀を振る。
「遅いな」
ブンッと盾が振られて木刀が受け止められる。盾自身の重量もあって威力も強く、木刀は真っ二つに折れて先端が飛んでいった。
「折れたぁ⁉︎」
ってかさらっと見切られてる⁉︎ちょっと遅くしすぎたか?
『製作』
折れて飛んでいった木刀の一部の方に走り、製作スキルを使って一つに戻す。
「速いと聞いていたが...意外と遅いな」
ルードは盾を地面に突き立てながらそう言った。
「手加減してるっつーの」
でも手加減って難しいな。あの感じだともう少し速くしたほうが良さそうだけど、あまりにも速くしすぎるとアレだし...いやまぁ止められるかもしれないが。
というか俺、何気に人と戦うの初めてなんだよな。人の形をした魔族とは二、三回戦ったことあるけど...ってなわけでより一層加減の仕方がわからない。魔族と戦った時は全力で殺す気でいけたけど、その勢いを今ここで出すわけにはいかないし。回復魔法があるから少しぐらい傷を負わせても大丈夫だろうけど、骨までイカれちゃ俺の力じゃまだ治せない。うまい具合に少しずつ速度を上げていって、反応できない速度あたりでキープしようかな。
「遅いと言ったな。これならどうだ?」
さっきのからほんの少し加速させて、秒速18メートル。一旦横に走る。
ルードは盾を動かしながら、俺と案山子の間に立ち続ける。直線的に攻撃しにいっても防がれるだけだ。ってかルードはどうして俺の位置がわかるんだ?全身を巨大な盾の裏に隠していて、顔を覗かせているわけでもない。視界は盾で塞がれているはずだ。
なんで見えているのかはわからないが、さっき考えたことをとりあえず行動に移す。まずはルードの方に方向転換してまっすぐ走る。そして木刀を振る...のではなく、壁として立ち塞がる盾を蹴り、空中に跳ぶ。そして盾の上から木刀を投擲する。
「無駄だ!」
「無駄じゃないんでね」
見えていないはずなのに、ルードは盾を振り上げて木刀を弾き飛ばした。だが、それによって盾が地面から離れる。もう一度地面に突き立てられる前に着地してルードに向かって走り、持ち上げられている盾を斜め下から勢いよく加速キックをお見舞いする。
グイッと盾がさらに持ち上げられ、下にバランスを崩しかけているルードの足が見えた。一気に体勢を低くして、もう一本の木刀を足めがけて振る。
しかし、その木刀はルードがジャンプをしたため空を斬る。けれど、ジャンプをしたということは、着地するまで自由に身動きすることできないということ。戦闘において、跳ぶことはできるだけ避けた方がいい。その後の攻撃を避けるのが難しくなるからだ。
そして俺はその隙を見逃さない。横薙ぎに振った木刀を、手首のスナップを利用して投げる。狙いはもちろん案山子。この試験は案山子に俺の攻撃が一度でもクリーンヒットすればその時点で終わりだ。これで終い。投げられた木刀は案山子向かって飛んでいく。
が、案山子の直前で急に木刀の軌道が変わり、逸れていった。
「今のは...軌道変更か」
着地したルードに盾で押し潰されそうになったので、一旦避けながら聞いてみる。
「ああ。ついこの前覚えたばかりだがな」
ルードが魔法使うなんてことギルド職員から聞いてなかったからもしやと思ったけど、やっぱり最近覚えたばっかだったのか。
「魔法も意外と使えるもんだな。今まで使ってこなかったのを後悔するよ」
「ってことは魔力は少ないわけか」
「減点対象か?」
「さぁ?他の能力次第だ」
「そうか...だが言っておく。俺に飛び道具は通用しない」
「なるほど...じゃあ、飛び道具で攻めてやるよ」
木刀を一旦そこらに放り捨て、弓矢を取り出す。
「通用しないと言ったはずだが...」
「まぁもともといろんな武器を使うつもりではあったからな。剣と弓と鞭と魔法...全部試すまで潰れるなよ?」
攻略法のアイデアが次々に湧いてくる。全部試してもなお耐えきったとしたら、十分合格点だろう。途中で終わってしまったなら、英雄になるのは少し厳しくなる。どんな敵からも誰かを守れるのを証明してもらおう。
「言ってくれるな...さっさと来な。全て守り切る」
「そうこなくっちゃなァ!」
俺は弓矢を持ちながらルードに向かって走り出した。
レストと同い年だって本文でカリヤくんが言ってますけど、この世界での17歳なんで普通に年上なんですよね。
この世界の一日は地球換算で30時間なので、一年は大体456日くらいの時間になります。
なのでレストは地球換算すると21歳くらいになるんですよね。
この世界の13か14歳くらいでやっとカリヤと同い年くらいになるという...何で一日は30時間なんてちょっと面倒な設定作ったんだ?
あとカリヤくん、人と戦ったことないとか言ってたけど、王都で依頼受けてたときに犯罪集団の追手を返り討ちにしたことあるの完璧に忘れてますねこれ。
…はい、書き終わって次の日に思い出しました。
こういう試験で先行は負けフラグだけど、はたしてルードはそのジンクスを乗り越えられるのか...次回にご期待ください。