前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8331字。

ルードの試験回です。


筋肉つよつよ盾使いさん

「そうこなくっちゃなァ!」

 

俺は弓矢を持ちながらルードに向かって走り出す。

 

『速射』

 

一秒で五本の矢を撃ち込む。しかし、何のバフもかかっていない矢では盾を貫くことができない。当たった瞬間に矢尻が砕けてしまう。

 

「じゃあこいつはどうかな!」

 

地面を蹴り、ルードと案山子の上を飛び越える。そして反応される前に矢を案山子に向かって撃ち込む。

 

「無駄だと言ったはずだ」

 

ルードは見もしないで矢を逸らした。任意発動じゃないっぽいな。案山子を中心に効果範囲を決めてるみたいだ。前に戦った、魔法拡散を使ってきた魔物の結界と似たようなものだろう。見たところ、範囲はかなり小さい。逸れ始めた瞬間にこっちも軌道変更の魔法を使えば簡単に当てられるだろうな。流石に理不尽だろうからやらないけど。

 

「その軌道変更魔法、使い方はいいけどもう少し練習した方が良さそうだね。その程度の練度じゃすぐ上書きできちゃうし、もっと速い攻撃なら曲がる前に当たる」

 

「指導ありがとよ。英雄に決まったら、もっと練習するとしよう」

 

そう言いながらルードは盾を持ち上げながら移動する。俺と案山子の間へと入る。

 

そのときに俺は見た。ルードの持っている盾。そこから、向こうの景色が透けて見えていたのだ。全身を隠しているのにどうやってこっちを見ているんだろうと思っていたが、こういう仕組みだったのか。

 

ただ盾を透かして見てるだけなら、まずはそこを潰してみよう。いつもやっていることができなくなったときの対応力を見ておきたい。

 

3780ページ上 黒のみ 筆記

 

五本の矢を取り出しながら、筆記の魔法で矢尻に魔法陣を書いていく。

 

「また弓矢か?」

 

「避けてもいいんだぜ?」

 

『速射』

 

五本の矢を撃ち出す。ルードはさっき俺が言った言葉で警戒をしたのか、避けずに盾で受け止めようとする。

 

「残念、ハズレだ」

 

矢が盾に命中する直前、矢に描き込んだ魔法陣が発動する。煙が一気に噴き出し、ルードの周囲を包む。

 

そしてもう一つ。盾に矢が命中したことで、さっきのように矢尻が砕け散った。それによって描いた魔法陣も崩れ去り、残っていた魔力が暴走を起こして軽い爆発のような現象が起こる。

 

「今のは避けるのが正解だ。煙幕と魔法陣の破壊によるギャンブル。喰らった感想は?」

 

「…面白い攻撃をするな神の使い。だが、何故追撃をしない?」

 

煙幕が晴れ、先の爆発を受け止めきったルードが聞いてくる。

 

「ちゃーんと壊れてるか確認したいからな」

 

「なに...⁉︎」

 

「さっきの爆発で煙幕が盾に張り付いたはずだ。もう透視できないだろう?」

 

煙幕魔法で出る煙は魔力と反応しやすい。魔力を流すことで固めたり、自由に動かしたりできるのだ。そしてさっきの爆発は、魔法陣の暴走で起きたもの。その時、同時に魔法陣の中に残っていた魔力は辺りに撒き散らされた。その魔力と煙幕が結合し、盾に張り付いたのだ。

 

「さぁどうする?まさかもう何もできないなんて言わないよな?」

 

「ハッ、馬鹿な。前に戻っただけだ。逆に視点が低くて違和感あったな」

 

盾を地面に突き立てながら、ルードは普通に立って頭を出した。

 

なるほど、軌道変更の魔法を覚えたときに一緒に覚えたのか。習得してから日が浅いとなると...あんまり意味なかったなこれ。まぁいつも通りに戻ったなら本来の守り方を見れるから、よかったといえばよかったのか?

 

「んじゃもっとやっていいよな」

 

弓矢をしまい、今度は鞭を取り出す。

 

「今度は鞭だ。変則的な攻撃...受け止めてみな」

 

手首のスナップを使いながら一気に鞭を振る。手元の速度だけを秒速42メートルに加速するだけで、先端の速度はとんでもないことになる。だからまずはこれで顔面でも引っ叩いて脅かしてやろうと思ったのだが...

 

「おおっ、まさか避けられるとは思わなんだ。すごいなオイ」

 

頭を横に倒して普通に避けられた先端速度音速いってそうな感じだったけど、人間に避けられるもんなんか?

 

「伊達に反射神経は鍛えてないんでな」

 

遠距離攻撃飛んできたときに対処する必要があるから、反射神経は鍛えられてるってことか。でも流石に音速は見えないと思うし...初動で攻撃する位置を気取られたかな多分。

 

「じゃあもっと速くてもいいわけだ」

 

ルードとの距離を縮める。3.5メートルの能力適用範囲内にルードと案山子がすっぽり入るような位置へと移動する。

 

「じゃあいくぜェ!」

 

スパンッと空気を引き裂く音を出しながら鞭は何度も盾に当たり続けた。流石に顔を出したら危ないと思ったのか、ルードは頭を引っ込めている。

 

4302ページ 黒のみ 念動

 

見えてないならチャンスだ。鞭を念動で動かして攻撃を続けながら、周囲を見る。

 

「この位置、この角度...ここ!」

 

247ページ左下 黒のみ 光弾

2170ページ下 黒のみ 跳弾付与

 

一発の光弾を指から放つ。それを、この大広場を囲んでいる結界に当て、付与した魔法の効果で何度も結界に反射させる。信じられないような軌道を描いたのち、光弾は案山子へと飛んでいく。

 

光弾は俺からギリギリ3.5メートルの場所にある。加速させれば、軌道変更でも追いつかなくなり命中するだろう。

 

「これで終わり...⁉︎」

 

範囲内にいるので、ルードの動きは手に取るようにわかる。ルードは盾から手を離し、すぐ近くから飛んできた光弾を腕を伸ばして受け止めたのだ。

 

「すごい根性だな。まさか身を挺して守るとは」

 

「ぐっ...盾使いなら当然だ。見習うといい」

 

「そうするよ」

 

盾を打ち続けている鞭を引き戻して念動を解除しながら言う。

 

「鞭はあんまし意味なさそうだし、次だ。魔法攻撃、全方位からくるんでよろしく」

 

1799ページ左上 黒のみ 路面凍結

 

地面に手をつき、地面を凍らせる。まずは踏ん張りを効かなくさせた。あんなデカい盾使ってるんだ。足が滑れば、使いにくくなるはず。

 

1527ページ左上 黒のみ 水膜

1749ページ右上 黒のみ 水噴

 

前にもやったように、足の裏に水の膜を纏わせてから噴き出させて高速移動をする。

 

4566ページ 黒のみ 閃光

 

高速移動をしながら閃光を撃ち込む。ルードはなんとか盾を振り回すことで閃光を盾に当てて受け止めるが、無理な動きと受け止めた時の反動でバランスを崩しかける。

 

1061ページ右下 黒のみ 風刃

1323ページ右上 黒のみ 火刃

 

ルードがバランスを崩しかけているうちに、ルードが弾いた木刀と俺が放り投げた木刀を拾い上げ、風と炎の刃を飛ばす。

 

「く、っ⁉︎」

 

倒れそうな姿勢から無理矢理盾を突き出したルード。しかし、盾を持つ手に十分な力がかかっていたとは言えず、さらに見えない風の刃によって力を込めるタイミングをもずらされたことでとうとう盾から手を離してしまい、地面に倒れ伏す。

 

「チェックだ!」

 

詰み一歩手前だ。このまま何もしないならさっさと近づいて斬り倒すまでだが...さぁ、どうでる?

 

「ぐ、ぬうぅぅっっっ!」

 

ルードは地面に倒れながら盾を掴み、一気に地面を擦るように動かす。

 

1203ページ左下 黒のみ 水刃

 

何をやっているのかよくわからないが、気にせずに水の刃を飛ばす。凍ってるから直ぐには立ち上がれまい。

 

「っ...ハァッ!」

 

「んな⁉︎」

 

立ち上がって防いだ⁉︎凍ってるはずなのにどうして...あっ、なるほど。さっき盾を地面に擦り付けていたな。それか。

 

もちろん、ただ盾を擦り付けただけでは氷は剥がれない。けど、あの盾は直前に火刃を受け止めた。それによって熱を持っていたため地面の氷を溶かすことができ、立ち上がることができたのだ。

 

「機転が効くな。高得点だ」

 

「ありがとよ」

 

「今のに敬意を表して...もう一段階レベルアップだ。難易度上げるぜ」

 

4571ページ 黒のみ 触手・水

 

水の触手を背中から何本も生やす。

 

「止めてみな!」

 

凍った地面を高速移動しながら触手を動かして打撃を叩き込む。既にルードと案山子の近くの地面には氷はない。だからルードはしっかりと地面を踏み締めて盾で触手を弾いてくる。ただ受け止めるだけではない。受け流したり、小さめの触手は体で受けたり、弾いて別の触手に当てることでまとめて防いだりと、器用にいろいろな方法を使って触手から案山子を守っている。

 

ってか流石にここまで止められるとは思ってなかったな。もう二、三本触手増やすか...?

 

「いや、こうするか」

 

高速移動をやめ、持っていた木刀を片方だけ地面に置く。そしてもう一本の木刀を腰あたりまで持っていく。抜刀の構えだ。

 

ルードは少し不審がるが、迫り来る触手の攻撃から案山子を守らないといけないため注意を割くことができない。俺が何をしても、止めることはできない。

 

1203ページ左下 黒のみ 水刃

 

「『雷装』...水刃!」

 

一気に木刀を横薙ぎに振り、電流を乗せた水刃がルードに向かって放たれる。

 

「雷装...ガァッ⁉︎」

 

盾に水刃が直撃した。それによって金属製の盾に電流が流れ込み、持ち手を通して体に電流が走ったはずだ。そこに触手の連撃を叩き込む。

 

「離すんじゃねぇぞ盾!未知の痛みに怯むようじゃすぐ死ぬぞ!」

 

「っっっ!!!」

 

なんとか耐えきったようで、ルードはすぐに盾を握る手の力を強くして触手を弾き始める。

 

「耐えたならこれも当然受けれるよなァ!『雷装』!」

 

身体中に電流が走り出す。当然、背中から生えている水の触手にも電流は流れ始める。

 

「マジかよ...」

 

何が起きようとしているのか、ルードも理解したようだ。そしてそんなルードに向かって触手を叩きつけにかかる。

 

「クソが...!」

 

そう言いながらルードは触手を弾き続けていた。

 

「どうやってんだ...?」

 

体が痺れているような気配はない。でも、ちゃんと触手は弾かれている。盾が絶縁性じゃないのはさっきの攻撃でわかっているし、魔法でもないだろう。

 

「まさか...」

 

触手を叩き込みながらルードに近づいてみる。

 

「うっわマジかよ本当に人間か?」

 

ルードは触手と盾が当たる瞬間に、触手に向かって盾を投げていた。投げられた盾と触手同士がぶつかり合い、威力を相殺、その場に止まった盾をすぐさま掴み取りまた投げるのを繰り返していた。

 

確かに、盾に触れていなければ電流は体には流れ込まない。雷装の電流を水の触手に通しているから、水の電気分解に大半のエネルギーが使われているため威力もある程度落ちている。ほんの少しの空間でも空いていれば、空気を通じて流れ込むなんてこともない。同じような理由で、帯電するようなこともない。

 

だからといってこんなこと即興でやるなんてイカれてる。少しでも盾を投げる力を間違えたら終わりだ。強ければ触手を貫通して手元から離れてしまうし、弱すぎれば触手に押し負けて電流を喰らうことになる。何度も成功してるのは長年の経験がなせる技なのか...?

 

「流石に人間離れしてるというか...ちょっと引くな。ってかどうしよこれ」

 

これを耐えられるだなんて思ってもみなかった。雷装するとスタミナごみるみるうちに削れていっちゃうし...一旦やめるか。

 

雷装を解除し、触手も引っ込める。

 

「今のを耐えられるとは思ってなかったわ。すごいな」

 

「今のは合格ってことでいいのか?」

 

「いや、それはレストの試験もやらないとわからないけど...」

 

「あんな怠け坊主にできるわけないだろ?こんなこと。やる意味ないから」

 

「そのセリフは俺が魔力切れなりスタミナ切れなりを起こしてから言うんだな。まだ試験は終わってないぞ」

 

3776ページ下 黒 黄 音撃

 

指パッチンをして、指向性を持たせた音の塊を飛ばす。

 

「っっっ!!?」

 

「今度は盾を使っても防ぎにくい、もしくは防げない魔法な。試験としてどうなのかはわからんが...一応やっておくぞ」

 

だから手始めに音撃をかましてみたが...返答がない。これ、結構やられてる?まぁかなり、というか相当デッカい音だし鼓膜やられてもおかしくないか...?

 

6972ページ 黒のみ 洗脳操作

 

「あーー」

 

適当に声を出して洗脳の魔法をかけてみるが...洗脳時特有の頭痛が起きない。やっぱりこれ聞こえてないな。流石に破れてるわけじゃないだろうけど、一時的に難聴になるくらいの騒音だったか。ちょっと悪いことしたな。

 

「予定変更、普通の魔法使うか」

 

5710ページ 黒のみ 水分操作

 

さっきまでは思考共有でも使ってどうなるか試そうかと思っていたが、取りやめて水分操作を発動する。必要な水分は、水の触手をルードが盾で弾いたときに辺りにばら撒かれているので問題ない。周囲の水分を操作して、氷柱をいくつか作る。

 

2170ページ下 黒のみ 跳弾付与

 

作り出した三本の氷柱に跳弾付与の魔法をかける。そしてドーム型に貼られている結界を見て大雑把に計算し、右と左と上にそれぞれ一本ずつ射出する。

 

「く..そがアっ!」

 

叫びながらルードは盾で氷柱を横から叩き粉砕していく。先端を受け止めるだけでは跳弾付与の効果で弾き飛ばされるだけだ。それがわかっていて横から叩いている。耳がやられているのに、この判断ができるのはすごいな。

 

「それじゃ今度は...囲むよ」

 

5710ページ 黒のみ 水分操作

 

もう一度氷柱を作り出し、一回上に打ち上げてからルードと案山子の周囲を囲むように突き刺していく。

 

「リング完成...デスマッチの開始だ!」

 

少し前に地面に置いた木刀を掴み取り、氷柱の方に跳んで中に入り込む。

 

1900ページ右下 黒のみ 威力増大

2102ページ上 黒のみ 研磨

1900ページ左下 黒のみ 斬撃強化

1774ページ右下 黒のみ 物質強化

 

「っ!」

 

「オラァッ!」

 

二本の木刀にバフをかけてから勢いよく盾に叩きつける。自身の体重や重力による落下速度も合わさり威力が出たのか、ルードの足が半歩だけ下がる。

 

「念願の物理攻撃だ!耐えてみやがれ!」

 

何度も何度も木刀を振り、盾に叩きつける。物質強化のおかげで最初のように壊れることはない。安心して振り続ける。

 

ルードは防戦一方だ。まぁ盾使いなのだから当然だが。けれど、氷柱によって動ける範囲が狭くなっているため、逆に守りやすいみたいだ。俺は動ける範囲が少ないため、いつもの高速移動による撹乱はできない。その代わり、攻撃の速度を加速させて目にも止まらぬ連続攻撃を加えていく。

 

「もういっちょ!」

 

5002ページ 黒のみ 同質融合

 

二本の木刀を一本に融合し、バフが二重にかけられた木刀を作り出して真横から一気に振り抜く。

 

「っ!」

 

「とった!」

 

ついに盾がルードの手から離れ、横に吹き飛んでいく。盾はすぐ近くの氷柱に当たり、跳ね返って案山子のちょうど足下のところまで滑っていく。

 

「これで終わり「ぬうっ!!」ぃっ⁉︎」

 

素手になったルードに木刀を振ろうとした瞬間、捨て身のタックルを喰らってしまう。鍛え上げられた肉体によるタックルは思いの外重く、すぐ後ろの氷柱に背中を叩きつけられる。

 

「う、動けん...!」

 

氷柱に押し付けられていて、両腕も固定されているため身動きをすることが一切できない。動き出しを制限されているため加速することができないし、できたとしてもこの力に押し負けてしまう。抜けるには魔法を使うしかない。

 

「そのポーチ怪しいな」

 

「ちょっ⁉︎」

 

氷柱に押さえつけられながら魔法図鑑の入ったポーチを取られてしまった。そのまま地面に放り捨てられる。

 

「これで膠着状態だ。俺はあんたを押さえつけることしかできないし、あんたも何もできない。試験終了か?」

 

「…勝手に決めるな」

 

4566ページ 黒のみ 閃光

 

落ちていたポーチから閃光が飛び出す。速度操作の範囲内なので、軌道変更の効果が出る前に案山子を貫いた。

 

「な...に?」

 

「試験終了だ。手を離してくれ」

 

そう言うと、ルードは大人しく俺を押さえつけている手を離した。もう耳は聞こえているみたいだ。そして、それと同時に大広場に貼られていた結界が解除される。

 

「何で魔法が...?ポーチは取ったはずだ」

 

「もう少し遠くに捨てられてたらやばかったけどな。近くだったから助かった」

 

速度操作の範囲内にポーチがあったため、魔法図鑑の閃光のページを探知できた。そして足、靴から地面に魔力を流し、地面を通してポーチの中の魔法図鑑に魔力を流したのだ。

 

「ごめんなさいルードさん。耳壊しちゃったし、結構生意気なこと言っちゃって...歳上なのに」

 

5092ページ 黒のみ 再生

 

ポーチを拾って腰につけ、魔法図鑑に魔力を流し込む。そして再生の魔法をかけ、速度操作で加速させながら謝る。試験とはいえ、流石にやりすぎた感がある。

 

「いいんだ。耳が聞こえなくなるのはいい経験になった。それに、神の使いとして舐められるわけにはいかないんだろう?だから威勢のいいことを言った。わかっているつもりだ」

 

「ルードさん...」

 

や、優しい!盾の使い方上手いし、咄嗟の判断力もよかった。透視の魔法を封じられても守れていたし、盾を失っても一人なら自らの筋力で押さえ込める。普通にめちゃクソ強い。まだレストの試験をやっていないが、ほぼ決まったようなもののように思える。

 

「傷の手当てをしてくれてありがとう。君のような強い人と一緒に戦っていけたら嬉しいよ」

 

そう言いながらルードは大広場から移動し、テントの中に入っていった。

 

「カリヤ様。ルードさんの守りはどうでしたか?」

 

ギルド職員が魔法で声を辺りに響かせて遠くから聞いてきた。試験前に実況してた人とは声が違うな。外されたのか。

 

「うーん...ノーコメントで。レストの試験をやった後にまとめて話します」

 

公平にやるならこの方がいいだろう。ここでルードが好印象だったことを言えば、ただでさえぼんやりとしててやる気なさそうなレストの気力がさらに削がれてしまうだろう。やるなら、出来るだけコンディションいい状態で戦ってもらいたい。

 

「そうですか...わかりました。では次はレストさんの試験です。出てきてくださーい」

 

周囲の見物人の注目がテントに集まる。

 

…がしかし、レストは一向に出てこない。

 

「し、しばらくお待ちください...」

 

そんな声が聞こえてちょっとすると、何人かのギルド職員がテントの中に入っていく。多分寝てたんだろうなぁ...

 

そしてそれから一分後、レストが誰かに突き飛ばされたかのような感じでテントの中から出てきた。

 

「寝てたのに...もう時間?」

 

くわ〜とあくびをしながらこちらに歩いてくるレスト。髪の毛も最初に見た時よりボサついている。ってか改めて見て思ったけどこいつ背高いな。寝てるときは丸まってたからよくわからなかったし、ルードの試験前に会った時は若干猫背気味だったから、ちょっと高いなくらいにしか思ってなかった。190代後半...いや、もしかしたら2メートルいってるかも。ホントに同い年か?この差はいったい...

 

「……あっ、盾忘れた」

 

「えっ」

 

うっわマジじゃんこいつ盾持ってねぇ。

 

「何しに来たんだよお前...」

 

「だって急かされたし...取ってこよ」

 

そう言いながらレストはテントに戻っていった。

 

「………大丈夫なんかなぁ...」

 

めっっちゃ心配だ。体細いし、木刀で叩いたら盾の上からでも腕の骨を折ってしまいそうだ。自分でバフをかけるらしいから、そこまで心配する必要はないのかもしれないが。

 

「…最初は遅めでいくか」

 

強いってギルド職員から聞いてるけど、やっぱり信じられない。あのぽやーっとした感じを見て、信じれるって人がいたら挙手してほしいわ。ってなわけで最初は速度操作での加速を出来る限り抑えることにした。大体秒速13メートルくらいに。

 

「準備できたよー」

 

レストがテントから出てきた。

 

「本当に大丈夫か?何か忘れてたりしない?」

 

「大丈夫。盾は持ったし、ナイフも...あっ」

 

「取ってこーい!」

 

「今日忘れ物多いな...」

 

またレストはテントの中に戻っていった。

 

「………はぁ、心配だ」

 

レストを選ぶ候補に入れて大丈夫なんかな...なんかもし英雄に選ばれても、忘れ物なりなんなりと戦闘面以外の問題起こしそう。よほど強くなければ選ばないぞ俺...

 

「今度こそ準備できたぞー」

 

「本当に準備できてるんだよな?もう一回確認!」

 

「えー...盾二つ、ナイフ一本、魔力満タン。うん、多分問題ない」

 

「そうか。試験始まった後にアレがないってなっても止めないからな?」

 

「いいよ別に」

 

レストはぐい〜っと腕を伸ばしながら言う。

 

「お二人とも、準備はよろしいですか?」

 

ギルド職員の声が聞こえる。

 

「大丈夫だ。少なくとも俺はな」

 

「こっちもだいじょーぶ」

 

「では、結界を起動します。周囲の見物人は大広場に入らないようにしてください。繰り返します。周囲の見物人は大広場に入らないようにしてください」

 

2回の警告ののち、大広場に結界が張られる。

 

「それでは英雄選抜試験、レストさんの試験を始めます!」

 

「よっしゃかかってこーい」

 

レストのほんわかとした声が試験開始の合図となった。




ルードがここまで強かったら流石に先行は負けフラグを折ってくれるでしょう。
よっぽどのバケモノが後攻にいなければ...ですけどね。

次回はレストの試験回です。
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