前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8141字。

レストの試験回です。


怠け者の戦闘センス

「よっしゃかかってこーい」

 

コアリクイの威嚇みたいなポーズを取りながらレストは言った。

 

「それじゃ遠慮なく」

 

そう言いながら木刀を持ち、秒速13メートルというゆっくりめの速度で走って近づく。遠慮たっぷりだ。

 

「オラァッ!」

 

「よっ」

 

「っ⁉︎」

 

木刀でレストに切りかかったと思っていたら、いつのまにか横の結界の壁に激突していた。何が起こったのかわからない。

 

「も、もう一度!」

 

さっきと同じ速度で走り、レストに向かって木刀を振る。それと同時に、思考速度や反応速度を最大限まで加速しておく。まずは何が起こったのかを知りたい。

 

思考と反応の加速により、時間がスローモーションになったように感じる。

 

ゆっくりと振られる木刀。そしてそれよりも早くレストの左腕は動いていた。

 

木刀が左腕の盾を滑るように当たる。そして次の瞬間、真横に向かって吹っ飛んだ。木刀が盾から離れた瞬間に、その方向に向かって謎の推進力が生まれたのだ。

 

今度はちゃんと認識できていたので、結界に激突する前に体勢を整えて着地する。

 

「その盾、ヤベェな」

 

今レストが使った盾は受け流す方だろう。てっきり俺のやつと同じだと思っていたが、効果が全然違う。俺のはあそこまで吹っ飛ばない。攻撃を受け流しやすくなるってだけで、あんなノックバックするようなものではないのだ。見た目は似ていたが、全くの別物のようだ。こうなると、もう一つの盾はどうなんだと気になってくる。

 

「そう?」

 

「ああ、やばいよ。合気道でも受けたのかと思ったわ」

 

「あいき...?なにそれ」

 

「気にしなくていい...よ!」

 

最高速度まで引き上げて一瞬でレストの真後ろまで移動し、木刀を背中めがけて振る。

 

「後で教えてよ。気になるし」

 

レストはノールックで右腕を動かし、木刀を右腕の盾で受け止めた。その瞬間、木刀が俺の手を離れて真上に吹っ飛ばされる。

 

「こっちはカウンターかよ...!」

 

地面を蹴って飛び、吹き飛ばされた木刀を掴み取る。

 

「どう?面白い?」

 

「そうだな、面白いし面倒!」

 

こいつ意外と強い。最高速度の攻撃に防御が間に合っている時点で普通じゃない。それに加えて、受け流しでノックバックする左腕の盾と、カウンター型の右腕の盾。どっちで受け止めてくるのかをきちんと見極めなければ自滅してしまう。まずはその二つの盾を攻略するとしよう。

 

5001ページ 黒のみ 融合解除

 

同質融合で一本にした木刀が二本に分離される。それを一本ずつ持ちながらレストに向かって落下し、木刀を振る。

 

「よいしょっと」

 

レストは左腕の盾を使って一本、二本と木刀を滑らせていく。二重のノックバックを受けた俺は結界まで吹き飛ばされる。

 

「それを待ってた!」

 

72ページ右下 黒のみ 跳躍

 

魔法を発動させながら、結界に両足をつけてすぐに蹴る。跳躍の魔法の原理は地面を蹴るときに足に返ってくる反作用を何倍にも増幅させるというものだ。つまり、作用が大きければ大きいほど、増幅される反作用も増すということだ。

 

二重のノックバックでの加速をそのまま増幅させて壁から飛び立つ。そしてレストに向かって左右から木刀を振る。二本に戻したのはこのためだ。

 

「危ない」

 

そう言いながらも、レストは左右から迫り来る斬撃を冷静に盾で受け止め、弾いてくる。しかも弾く向きを調節されてほぼ真下にノックバックされたため、体勢を整える暇もなく地面に激突する。

 

「か..はっっ!」

 

「よいしょっと」

 

「…うわあっぶねぇ!」

 

何しようとしてるんだろうと思って速度探知でレストの動きを探知してみたら、今まさに踵落としをするために足を振り上げているところだった。そして次の瞬間には足を振り下ろしていたので、即座に速度操作で減速させて地面を転がり回避する。

 

「やけに攻撃的だなお前...!」

 

「…守るなら大元を潰した方が早いでしょ?ずっと守り続けるよりも、早く終わるんだ」

 

「……確かにそうだけどさ」

 

「まぁいつもは守ってる人が大体倒してくれるから、こっちから攻撃することは少ないんだけどねー」

 

「さいです...か!」

 

体勢を低く保ちながら一気にレストに近づき、足を薙ぎ払うように木刀を振る。

 

「よっ」

 

「っ、マジかよ...!」

 

こいつ一瞬だけジャンプして木刀に乗り、そのまま押さえつけてきやがった!なんつー判断力だよ!そしてそれを可能にする身体能力もヤベェ!バフがあるとはいえこんなことされるとは思わなかった。

 

「く、オラァッ!」

 

木刀を手放し、顔面めがけて一気に蹴りを放つ。

 

「顔はやめてよ顔は...痛いじゃん」

 

最高速度で放った蹴りは、右腕の盾で受け止められた。カウンターによって斜め下に弾き飛ばされる。

 

「ぐっ...!」

 

『速射』

 

地面を転がりながら弓矢を取り出し、トンッと地面を蹴って空中に跳びながら五本の矢を放つ。

 

「返ってくるけどいいの?」

 

五本の矢は全て右腕の盾で受け止められてしまった。次の瞬間、全ての矢がこちらに向かって飛んでくる。

 

「チィッ!」

 

落下速度を加速させることで、なんとか跳ね返ってきた矢を避ける。

 

「物理はなんでも反射できるのか...なら魔法だ!」

 

魔法図鑑に魔力を流し込み、魔法を発動する準備をする。

 

4566ページ 黒のみ 閃光

 

閃光が俺の手から飛び出し、案山子を貫かんと飛んでいく。

 

「案山子は動いてくれないの面倒だなぁ...」

 

そう言いながらレストはすごい速度で案山子の前に立ち、閃光を左腕の盾で弾いた。

 

「いつもなら勝手に避けてくれるのに...」

 

「いや、ちゃんと守ってやれよ」

 

「…?やってるじゃん」

 

「今の話してるんじゃなくて...ああもうめんどくせぇ!」

 

7535ページ 黒のみ 物質転移

 

さっきレストに踏まれた木刀を転移して手に取る。

 

「これでも喰らっとけ怠け者!」

 

1061ページ右下 黒のみ 風刃

1323ページ右上 黒のみ 火刃

 

木刀を振り、いつもの風と炎の刃を飛ばす。

 

「僕が...怠け者?」

 

ポカンとしながらもしっかりと盾で弾いている。しかも、見えないはずの風刃の方だけ逸らすのではなく右腕の盾で跳ね返してきた。こいついいセンスしてやがる。

 

「ってか魔法も弾けんのかよ...!」

 

6991ページ 黒のみ 植物生成

5437ページ 黒のみ 植物操作

 

跳ね返ってきた風刃を避けてから地面に触れ、木の根っこを何本も作り出す。そして植物操作でそれらを振り回す。

 

「うわわっ」

 

「ゆるい声出しながら弾くんじゃねぇ!」

 

出してる声とやってることのギャップが酷すぎる。バフをかけて加速し、迫り来る木の根を全て打ち落としているのだ。普通に速い。初めて王都に来た時くらいの俺ぐらい速い。

 

…なんとなくだが、まだレストは本気を出していないような気がする。その場を凌ぐのに必要な分の力だけを引き出しているような、そんな感じがした。

 

「お前もうちょっと本気でやったらどうだ?このままじゃ防戦一方だぞ!」

 

「…?盾使いなんだから当然じゃない?それに試験だし...ナイフ使って欲しいの?」

 

「そうじゃねぇ!ちゃんと本気出してくれねぇと試験にならねぇつってんだ!」

 

「ほんき...本気?」

 

「属性付与の盾とかあんだろさっさと見せてくれ!見せないならさっさと終わらせちまうぞ!」

 

「属性...あっ、これのことね」

 

ボォッと盾が燃え出す。火装だな。

 

「木には炎...だよね?」

 

そう言いながらレストは燃え盛る盾で木の根を弾いていく。

 

「…あんまり燃えない?」

 

「水分量多めなんでな。そうそう燃えねぇぞ」

 

植物生成の段階で中に大量の水分を含んでおいたので、火装くらいの熱ならそうそう燃えることはない。燃えたとしても表面だけ。中身にまでは影響を及ぼさないので、植物操作で操作し続けることができる。

 

「えーじゃあこれで」

 

両方の盾と炎が消え、今度は冷気を纏い始めた。氷装だ。

 

「こーおれ」

 

左腕の盾が迫り来る木の根を捉え、斜めに滑らせる。その瞬間に木の根は凍りつき、ノックバックの勢いで根本から折れてしまう。折れた木の根はそのまま結界に激突し、粉々に砕け散る。

 

「おっ、いい感じ」

 

レストはそのままの勢いで迫り来る何本もの木の根を凍らせながら弾き飛ばし、粉々に打ち砕いていく。

 

しまったな。水分を増やしすぎて凍りやすくなっていたようだ。木の根が全てなくなる前に別の攻撃方法を考えておかないと...

 

「これでおーわり。次は?」

 

「こいつだ」

 

俺は木刀を一本投げ捨て、既に構えをとっていた。

 

3776ページ下 黒 黄 音撃

 

パチンっと指パッチンをする。指向性を持った音の塊がレストに向かって飛んでいく。

 

「ああ、これうるさいよね」

 

レストは右腕の盾を前に突き出した。まさか音を反射する気か?ってか音も反射できるのか?いや、そもそも盾の大きさ的に全部は防げないはず...一部だけ反射して俺も道連れにってか?一応避けておくか。

 

「そっち」

 

そうレストが言った瞬間、盾を俺の方に向けてくる。すると、こちらに向かってものすごい暴風が吹き込んできた。

 

「あっっぶねぇ!」

 

速度操作で迫り来る音の塊を認識し、ギリギリのところで避ける。

 

「お前マジかよ⁉︎ヤッベェぞやってること!」

 

レストの盾のすぐ近くに風が纏わりついていた。さっきの暴風はその盾の風を解放したものだろう。

 

そして、音とは空気の振動。当然風の影響を受ける。だから風上に向かって叫ぶと声が遠くまで届かなかったり、風に乗って音が逸れたりといったことが起こる。

 

けれど今のは異常だ。音が進行方向から120°近く方向転換してそのまま届くなんて普通じゃない。音撃のことは知っているみたいだから既に対策済みだったということなのか?盾の反射と暴風、それに加えてそもそも音撃によって音が塊になっていたからできた...ってことかな?訳わからないことに変わりないけど。

 

「んー...そう?」

 

「ぼんやりしやがって天才ちゃんが...!」

 

持っているもう一本の木刀を両手で握り、足を開いて腰を低くしながら居合斬りの構えをとる。

 

1203ページ左下 黒のみ 水刃

 

「『雷装』...水刃!」

 

一瞬で木刀を振り抜き、電流を込めた水刃を飛ばす。

 

「やばそう...」

 

一気に体勢を低くするレスト。両腕の盾に水を纏わせながら右腕の盾を地面につけ、お互いの盾の水を繋げながら左腕の盾を斜め下に向ける。そして左腕の盾で水刃を斜め下に滑らせて吹き飛ばす。

 

「電流が流れてない...⁉︎」

 

…そんな馬鹿な。確かに、雷装水刃による電流は直接浴びせるときよりも弱くなっている。金属製の盾と表面に纏った水があり、地面につけている状態ならば、電流は無理して人体を通ることなく水を伝って地面へと流れて消えていくだろう。

 

でも、なんでそれができたんだ?この世界では雷は天の怒りと呼ばれていて、原理や性質がちゃんと理解されていないはずだ。地面に流せば安全とか、そういった知識もあんまりないはず。仮に知っていたとしても、それを一発で成功させられるか?普通。

 

「なんで地面に流せば大丈夫だって知ってるんだ」

 

「うーん...なんとなく?」

 

勘かよ...

 

「でもいいこと聞いた。天の怒りは地面に流せばいいのね」

 

「知ったところでどうにもならん!」

 

7535ページ 黒のみ 物質転移

 

投げ飛ばした木刀を手元まで転移させ、二刀流状態に戻す。

 

「『雷装』!『雷装・剣』!」

 

秒速63メートルの速さでレストに近づき、木刀を目にも止まらぬ速さで振り続ける。

 

「ねぇ、言葉にしないと発動できないの?その雷装って」

 

「ただのカッコつけだ。ってか普通に防いでんじゃねぇ!」

 

雷装を付与した木刀は普通に盾で受け止められていた。しかし、ノックバックやカウンターはない。盾に大量の土のようなものがついているので、それが雷装を防いでいるのだろう。それと同時に、盾自身に触れているわけではないので盾固有の機能も発揮できていないのだ。

 

「触ったらダメなんだよね?これ」

 

「その時点でほぼ試験は終わったものだと思っとけ!」

 

「じゃあもっと頑張らないとね」

 

「っ、マジかよ!」

 

こいつさらに加速しやがった!流石に俺よりは動きは遅いけど、防御だけはきちんと間に合っている。しかも、盾に木刀が当たるたびに弾き飛ばされそうになる。盾の効果じゃない!普通に腕力で押されてる!

 

「まだ力隠してたんかよ...!」

 

「意外と遅いね」

 

「なめんな!」

 

88ページ左上 黒 緑 俊敏

88ページ左下 黒 黄 加速

 

バフの魔法でさらに加速し、木刀の連続攻撃を与える。

 

「……流石に...やばいかも...!」

 

「っ、もっと!」

 

2149ページ下 黒のみ 疾風佩帯

 

風を纏い、その力を利用してさらに加速をする。

 

「オォラァッ!」

 

「ちょっと...どいて!」

 

ドンっと地面を踏みつけるレスト。それを無視して木刀を振ったが、突然足元から土の壁が盛り上がってきて真上に跳ね飛ばされる。

 

「エス○ードかよ...!」

 

回転しながら斬撃を放つとかは流石に出来ないので、速度操作で回転速度をうまく調整して着地する。

 

「ふぅ...危ない危ない」

 

「まだそんなん隠し持ってたのかよ...」

 

雷装や、いろいろかけておいたバフを解除しておく。ちょっと使いすぎてスタミナがだいぶ削れてしまった。今思えばルードと戦った後休憩取ってなかったし、疲れるのも当たり前か。深呼吸をしてスタミナ回復に努める。

 

「もうビリビリは終わり?」

 

「ああ、結構疲れるんでな」

 

「へー...試験はまだ続くの?」

 

「もうすぐ終わらせてやる!」

 

レストに向かって、速度操作だけで出せる最高速度で走る。

 

「無駄...また逸らすよ」

 

「そいつはどうかなァ!」

 

速度を落とすことなくレストのすぐ近くまで接近し、木刀を勢いよく振り下ろす。それに合わせるようにレストの腕が動き、盾で待ち構える。

 

「…なんてね」

 

「っ...⁉︎」

 

「オラァッ!」

 

「んぐっ⁉︎」

 

一気に体勢を低くして、蹴りを土手っ腹に叩き込む。うめき声を上げて、お腹を押さえながら後退りするレスト。

 

「こういうこともできちゃうんだよねぇこの能力。どう?初めてやってみたけど」

 

フェイントをかけたら見事に引っかかってくれた。まぁ、予想できるわけないのだが。

 

木刀を振り下ろし、そこにレストの盾が突き出される。しかし、お互いが接触する直前、俺の動きが完全に止まった。速度操作を解除したのだ。速度操作を解除すると、操作する前の速度に一瞬で戻る。その性質を利用して盾のカウンターを避け、意識外の攻撃である足蹴りを、腕を上げていて防ぐのに時間がかかる腹に向かって叩き込んだのだ。

 

今まで使ってこなかったが、俺の速度に相手が慣れてきたタイミングでこのフェイントを使えば、結構な確率で刺さるだろう。そしてそれを一度喰らえば最後、そのまま突っ込んでくるのか、それともフェイントで来るのかの二択を相手は迫られることになる。緩急をつけた攻撃は大体強いのだ。

 

「うぅ...痛い...」

 

「もうすぐ終わらせるって言っただろ?有言実行してやるよ」

 

『二の矢』

『氷装・矢』

『雷装・矢』

 

木刀を投げ捨て、弓を取り出し二本同時につがえて撃ち込む。

 

「どっちも弾く...!」

 

「そうはいかない」

 

4700ページ 黒のみ 軌道変更

 

レストが矢を弾く前に軌道を変え、すぐ足元の地面に突き刺す。

 

「凍って...ない?」

 

氷装の矢で凍りついた瞬間に雷装の矢で電気分解しているから、凍っていないように見えるのも当然だ。

 

「でもやばそう...!」

 

レストは身の危険を感じたのか、刺さっている二本の矢を蹴り飛ばしてへし折る。

 

「もう遅い!」

 

1978ページ左上 黒のみ 炎弓

 

無を弓につがえる動作を取ると、炎でできた矢が生み出される。

 

「終わりだ!」

 

炎の矢が発射される。矢はまっすぐレストの足元にある矢の刺さった跡の方に飛んでいき...

 

投げられた盾で真上に弾き飛ばされた。

 

「み...」

 

見切られた⁉︎流石に有名だったか爆発魔の噂!

 

いやでも盾が片方なくなった。今のうちに攻め切る!

 

「『雷装・盾』!ソイヤァッ!」

 

左腕につけている盾を取り外し、電流を流してから投げる。

 

「真似っこ...?どこ狙ってるの?」

 

盾はあらぬ方向に飛んでいく。空中にいる状態で適当に投げたからそれは仕方ない。

 

「結界で跳ね返させて回収するわけでもないみたいだし...」

 

そう言いながらレストは自分で投げた盾を回収する。こいつ、投げて矢を逸らすだけじゃなく、結界に当てて自分のところに戻ってこさせるなんて...やばいとしか言いようがない。

 

「こうすんだよ!」

 

6773ページ 黒のみ 磁力操作

 

投げられた金属製の盾を磁力を操作することでその軌道を変え、背後から案山子を直接狙う。

 

「ビリビリが飛んできてる...⁉︎」

 

土を纏った盾で電流を纏った盾を弾き飛ばすレスト。しかし、弾いても弾いても電流を纏った盾は案山子に向かって進み続ける。

 

「めんどう...!」

 

「ならさっさと諦めな!ほれ追加だ!」

 

『雷装・矢』

 

二本矢を取り出して電流を流し、勢いよく投げる。これも磁力操作で動かす。雷装用の金属製の矢尻の矢だからちゃんと動いてくれる。

 

「増えた...こうなったら...!」

 

「ん?ってあっぶねぇ!」

 

こいつさらっとナイフ投げてきやがった!試験だってこと忘れてねぇかオイ!

 

「ナイフ投げるのヤメロォ!」

 

「ダメだったか...痛いけど仕方ない」

 

「今度は何だ...?」

 

また何か攻撃してくるかもしれないと思い身構える。

 

「っっっっ!!」

 

「うっわマジか」

 

飛んでくる電流付きの盾。それをレストは土の盾で弾かず、無理やり掴み取った。盾に付与されていた電流が即座に流れ出す。

 

「根性あるな...」

 

「ぅぅぅ...もういらない!」

 

珍しく強い感情をあらわにしながら盾を投げ飛ばす。俺の近くに落ちたので、磁力操作で回収しておく。

 

「これで僕も...!」

 

レストの盾に電流が走り始める。

 

「なるほど、それが目的か」

 

電流を纏った盾で何度も迫り来る二本の矢を叩き落とすレスト。雷装を手に入れるために盾を素手で掴み取るなんて驚きだ。確実に手に入るかどうかなんてわからないはずなのに...

 

「いいね、面白い」

 

「はぁ、はぁ...」

 

「でも、使いこなすのはまだ無理だろうね」

 

レストに近づく。

 

「はぁ、はぁ、な...なに...?」

 

「もっとスタミナを増やさないとな」

 

「あふぅ...」

 

レストがその場でぐでんと倒れこむ。スタミナ切れを起こしたのだ。

 

雷装は使っている最中、どんどんスタミナが減っていく。速度操作を使えば、そのスタミナが減る速度に干渉して早くスタミナ切れを引き起こすことができる。通常の運動程度ではまだ操作することはできないが、いずれできるようになるだろう。これも俺だけができる戦法の一つだ。

 

「いろいろあったが...これで試験終了だな」

 

案山子まで近づき、その頭を軽く小突いた。それと同時に、大広場に貼られた結界が解除される。

 

「ほらー、起きろーレスト」

 

地面でうつ伏せになっているレストに近づき、軽く肩をゆする。

 

「無理言わないで...スタミナないんだから...」

 

「あそっか。ちょっと深呼吸してな。回復速度を上げてやる」

 

「それよりも寝かせて...眠い...」

 

「それだとこの後の進行に支障きたすからさ。ほら、肩貸すからとりあえず立ち上がろう?」

 

「無理...」

 

「そんなこと言うなよ魔法で無理やり立たせんぞ?」

 

「やめて...」

 

レストは全く動こうとしない。はて、どうしたものか...

 

「カリヤ様。一度休憩にしますので、テントにお戻りください。英雄選定は休憩の後でということで」

 

どこからか声が聞こえてくる。なんだ、休憩取ってからなのね。俺も疲れてたからちょっと嬉しい。ってかそれなら無理に起こさなくてもいいか...?

 

「わかりました」

 

テントに向かって歩き出す。

 

「まって」

 

その足をレストが掴んできたため転びかける。

 

「連れてって...」

 

「はぁ、わかりましたよ。最初からそう言えばよかったのに」

 

レストを背負い、テントまで歩く。意識のない人間を担ぐと重く感じるというが、スタミナ切れで力が抜けきっているため同じような状況となり重く感じる。背丈に比べると軽い方ではあるが、それにしても重心が後ろに...

 

「…寝てるし。ったく、しょうがないな」

 

そのまま寝ているレストをテントまで運び、そこら辺に放り投げておいた。

 

さて、二人の試験が終わったわけだが...どっちを選ぶかはもう決まった。

 

この休憩が終われば、英雄が決まる。

 

将来の俺の仲間が決まる時が、迫ってきていた。




ルードとレスト、それぞれの強さをちゃんと表現できたかが不安です。
ある程度カリヤ君の力を制限させないと試験にならないので、どんな結果でもカリヤより弱く見えてしまうという問題があったんですよね。
鎌鼬の魔法を使えば一発で案山子に傷をつけられますし、未来跳躍ならもっと楽で、勝とうと思えば一瞬で勝てるので。

まぁどっちが選ばれるにしても、ちゃんと彼の成長する姿も書けたらいいなと思ってます。
未来の自分の文才任せですがね。
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