前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8355字。

今回で黒幕暴いて一件落着まで行きます。


黒幕は誰だ?

「大体こんなもんか」

 

手をパンパンと払いながら言う。足元には、手足を拘束魔法で出した鎖で縛られ、口を適当な布で開けなくされていた男3人が転がっていた。

 

「意外と弱かったな。あくまで工作員で、戦闘は得意じゃないってことかな」

 

この男たちはレストの部屋から盾を盗み出した3人だ。いずれも逆行視点で見た顔と同じなのは確認済みである。服装は黒ずくめというわけではなく、町に溶け込めるような普通の服をしていた。この方が印象に残りにくいし、外にいるところを見つかっても冒険者だと思われてスルーされるから、工作員としては正解なんだろう。

 

「いや、普通にカリヤが速すぎただけだと思うけど」

 

「そう?ルードにもレストにも対応されたばっかだからちょっと感覚狂ってたかな...」

 

最近戦った人であるルードとレストを基準にしていたため、普通に対応されると思ってしまっていた。そりゃ普通の人は目で追うことすらできないよな、秒速42メートルなんて。二人ってやっぱ異常なくらい強かったんだなぁ...

 

「っとと、そうだこんなこと話してる暇ねぇわ。尋問...拷問?どっちでもいいけど始めないと」

 

鞭を取り出す。やっぱ拷問するなら鞭だよな。視覚的な効果もあるだろうし、死なないくらいの痛みを与えやすい。

 

「いいかーお前ら。この状況はよーくわかってるよな?これからいくつか質問をする。もし答えなかったり、嘘をついたりしたら...」

 

地面を鞭で叩く。スパンッと空気を裂く音が鳴り響く。

 

「こうだから、ちゃんと真実を答えろよ。じゃあまず一つ目の質問だ。この3人の中でリーダー的ポジションなのはどいつだ。答えろ」

 

「んんー!んー!」

 

「あっ、口塞いでたんだった...」

 

答えられるわけねぇや。どうしよ...

 

「じゃあリーダーは3回パパパっと瞬きしろ」

 

そう言うと、一番左の男が瞬きを3回した。こいつがリーダーみたいだ。

 

「よし、じゃあお前だけ布外す。以降の質問は全てお前が答えろ。魔法の詠唱とか、妙な動きをとった瞬間に顔面に鞭叩き込むんで馬鹿な真似はすんなよ。残りも二人もだ。わかったな」

 

左の男の布を取り外す。

 

「かはっ、はぁっ、はーっ」

 

「うわよだれべっとべと...汚ね」

 

布をポイッと投げ捨てる...が、隙間風に流されて真ん中の男の顔面にへばりついた。すまん事故だ許せ。

 

「ん゛ー!」

 

「…仲間のためを思うなら無駄な抵抗はするなよ。じゃあ次の質問だ。お前ら3人以外に仲間はいるか?」

 

盗みに入ったのはこいつら3人だと確認は取っているけど、他に仲間がいないとも限らない。一応聞いておく。

 

「…いない」

 

「仲間とは思ってないだけとかはないよな?質問を変えよう。半径100メートル以内に、お前の顔見知りはいるか?」

 

「そんなの知ってるわけ...イ゛ッッ⁉︎」

 

バチンと鞭で叩く。

 

「嘘はいけないねぇ。嘘ついたらどうなるか、ちゃんと言ったはずなんだけどなぁ...」

 

嘘を見抜く魔法、魔法図鑑4982ページに乗っている、虚偽看破。かつてミレアが使っていた魔法だ。ミレアのはパッシブスキルに魔改造されていたけれど、俺のは普通の虚偽看破だ。発動後、周囲の人物が嘘をついたときにそれを見抜くことができる。嘘をついていることだけしか見抜けないのが弱点だが、どんな嘘をついたのかは鞭で叩いて吐かせればいい。

 

「で、知ってるんだな?誰が何人いるんだ、答えろ」

 

「ふ、二人...お前らが来る少し前に用を足しに外に出ていった」

 

「なるほどね。ちょっとレストこいつら見ててくれ。潰しに行ってくる。あっ、鞭渡しておくわ。暇だったら叩いていいぞ」

 

レストに鞭を渡す。

 

「叩かないよ...」

 

ボソッとレストが呟くのを無視して俺は小屋を出る。

 

「ってか、まさかこんな小屋があったなんてなぁ...」

 

ここはシレンの穴のすぐ近く。ちょっとした窪みに造られた小屋で、少し遠くから眺めても見えない位置にあった。聖域ではないため魔物の攻撃を受けており、少しボロボロではあったが形を保っているだけまだマシだろう。隙間風が入ってきてさっき事故起きたけどな。

 

「そんな遠くに行ってないはずだけど...探知するか」

 

3441ページ下 黒のみ 俯瞰視点

 

両目を閉じ、真上からの視点に切り替える。すると、今俺が立っているところから見て、ちょうど小屋の方から二人の男たちがこちらに向かって歩いてきているのが見えた。

 

「見える位置に武器は持ってない...隠し持ってるかもな。不意打ちで仕留めるか」

 

小屋の壁に張り付き、相手から見えないギリギリのところから覗く。そして二人がこっちに来るのを待つ。

 

5114ページ 黒のみ 思考共有

 

「よっ」

 

魔法が届くくらいの距離まで近づいてきたので、思考共有で大量の思考を叩き込み身動きを封じる。

 

2007ページ下 黒のみ 拘束

 

動けなくなってる男たちに向けて魔法を発動し、手足を鎖で拘束する。そしてさっきの3人にやっていたみたいに、適当な布を口に咬ませて話せないようにしておく。魔法はスキルでも発動できてしまうため、完全に拘束することは不可能だが変に喋らせておくのも面倒なのでこうするのだ。

 

「よし、動けないうちに運ぶか」

 

4302ページ 黒のみ 念動

 

念動で鎖を持ち上げて移動させる。小屋の前まで運び、扉を開けて中に入れる。

 

「よーしお前ら。お仲間の登場だ。一時的に頭パーになってるけどな」

 

横になっている男たちの隣に雑に放り投げておく。

 

「よし拷問再開だ」

 

レストから鞭を受け取る。

 

「お前らの依頼主を教えろ。言わなかったら...わかるな?」

 

「……」

 

「俺だってよぉ、こんなことしたくないんだぜ?吐けば終わるんだ。さっさと言いな」

 

「た、多分...ルードだ」

 

「…多分ってどういう意味だ。なぜ確証が持てない?」

 

「直接会ってるわけじゃないんだ」

 

「じゃあどうやって指令を受けてるんだ?」

 

「水晶玉を通じて連絡してるんだ。声はルードのものだし、見えてる姿もルードだが、偽造なんていくらでもできるから本人かはわからねぇ」

 

なるほど...これだとルードを追及してもシラを切られるだけだな。どうやって黒幕だと証明すればいいんだろう。

 

「でも、姿や声は誤魔化せても魔力だけは誤魔化せない。俺らの持つ水晶玉と、依頼主の持ってる水晶玉は対になっていて特定の魔力でしか使えない。俺らの水晶玉にルードの魔力が反応すれば証明になるはずだ」

 

おっ、勝手にゲロってくれた。嘘はついてないみたいだし、これならルードを捕らえられそうだ。

 

「なるほどな、じゃあ最後の質問だ。今回受けた指令がどんなものなのか言え」

 

「レストの家に忍び込んで、盾を盗み出しシレンの穴に投げ捨てろと言われた」

 

「それだけか?」

 

「あとは、もし作業を遂行しても連絡してくるなと言われたくらいだ。いつもは必ず報告しろと言われるんだが...今思えばちょっと変だったな」

 

「変ってなんだ?」

 

報告しないことはあんまり変ではないと思う。普段と違うとはいえ、今回やったことを考えると関与を疑われないように連絡は慎むはずだ。警察の捜査が入ってるときに連絡が来たらまずいしな。

 

「おかしいだろ?それしか言われなかったんだ。いつ盾を回収するのかとかいつまで待機していればいいのかとかそういったことの指令が一つもなかったんだよ」

 

「後で追って連絡するとかも言われなかったのか?」

 

「なかった。それに、ルードはいつも一回の連絡で最初から最後まで指令を伝えてくる。こんなアバウトな指令は初めてだ」

 

こいつら、今回の指令に結構な違和感を抱いているらしい。普段の指令がどんなのか知らないから、俺たちには何が変なのかよくわからないが。

 

「こっちから連絡することもできないしで、俺たちで考えながら色々やる羽目になった。ロープで盾を回収できるようにしたのも俺たちで考えたんだぜ?」

 

「…は?もしかしてルードは普通に盾を投げ入れろって命令してきたのか?なんの細工もなしに?」

 

「ああそうだ。でも回収できないと困るだろうし、一応俺たちで勝手にロープつけて回収できるようにしてやったんだ」

 

…どういうことだ?シレンの穴にただ投げ捨てるだけだと、回収なんてできっこない。なんでルードはそんなことを?これだと、最初に考えていたルードの動機が成立しない。盾を回収しなければ、英雄に代わりになることは難しくなるだけなのに...

 

よくわからん。何か策があるんだろう。もしかしたらレストに負けた腹いせでやってるだけかもしれないしな。黒幕の正体はハッキリしたんだから、気にせず追い詰めるとしよう。

 

「情報提供ありがとよお前ら。妙な真似せずちゃんと話してくれて助かったぜ」

 

他の4人の口に咬ませていた布を取り外す。顔にへばりついて悲惨なことになってるやつも取ってその辺に捨てておく。

 

「すまんな。鎖はまだ外せないけどこいつくらいは外してやるよ」

 

「ぷはぁっ...やっと息が...」

 

「よだれやばい...」

 

「うぅ、頭が...」

 

「さっきのなに...」

 

4人それぞれ別の反応をする。うち2人は思考共有のほうに反応していたけど。

 

「じゃあこれからカイスに戻る。触手で掴むからちょっと乱暴になるが、我慢してくれ」

 

4571ページ 黒のみ 触手・水

 

背中から触手を出し、5人を掴む。

 

「えっ、なになにこれ⁉︎」

 

「よーしレスト行くぞー。あっ、レストも触手に掴まる?」

 

「走りたくないからお願い」

 

「はいよー」

 

レストも触手で掴む。

 

「よし出るぞ」

 

小屋の外に出る。その後触手を動かして一人ずつ外に出していく。

 

「今から走るからなお前ら。うるさいから叫ぶんじゃねぇぞ」

 

そう言ってから一気にカイスに向かって走る。物理保護をかけるため3.5メートル以内に入れないといけないのはちょっと面倒だが、こうしないと速度に耐えきれなくて触手が分離して掴めなくなり、どっかに飛んでいってしまうからな。こいつらがいないとルードが黒幕だと証明できない。

 

あと、男たちの叫び声は聞こえなかった。口を開くと風が入ってきて声を出すこともできないのだから当然ではあるのだが。

 

そのまま俺たちは秒速42メートルでカイスまで走り続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし到着だ。めちゃ疲れた...」

 

ようやっとガルムの門のすぐ前にやってきた。レストだけ触手から下ろす。

 

「お前らは突き出すまでこのままな。もうちょい我慢しててくれ」

 

風を浴びまくってぐったりしている男たちに言う。

 

「へ、へへ、触手...いい」

 

うわキッモMがおる。鞭で叩いたら喜びそうだけどやめておこう。俺はSMをしたいわけじゃない。同じSMなら俺はポケ○ンの方をやるぞ。

 

「レスト、警察とルードを呼んできてくれないか?このまんまだと俺入るわけにはいかないし」

 

「わかった、呼んでくる」

 

レストがたたたーっとガルムの中に入っていく。そうして5分くらい経つと、レストが戻ってきた。

 

「呼んできたよ。大広場で話聞くって」

 

「わかった」

 

なんだろう、晒し上げでもするのかな。とりあえず前を歩くレストの後ろを、触手で5人を運びながら歩く。まぁまぁ多くの人に見られてざわついたが、気にしないでおく。市中引き回しの刑やってる気分だ。

 

そうして真っ直ぐ大通りを歩いていくと、大広場にたどり着く。そこにはいかにも警察ですみたいな制服を着た人が数人おり、中央には縄で縛り付けられて座っているルードがいた。えっ、もう拘束されてるの?仕事早すぎんだろ。

 

「なんでもう捕まってるの?俺、呼んできてって言っただけのはずなんだけど...」

 

「警察呼ぼうとしたら何があったか聞かれたから、盾盗られて黒幕がルードだって言ったらこうなった」

 

「それだけでこれか...」

 

「ルード捕まえたかったんだろうね。ずっと証拠がなくて無理だったところに僕たちが来たから、めっちゃ喜ばれたよ」

 

「本当かどうかわからない情報にここまで釣られるのか...ちょっと不安だ」

 

話が早くて助かったけど、こんなんじゃいくらでも偽情報に振り回されるぞ。絶対詐欺に引っかかるタイプだ。

 

「とりあえずルードに話しにいくか...」

 

ルードの近くまで歩く。

 

「なんだって俺がこんな羽目に...⁉︎お、お前らの仕業か!」

 

「はいルードさんこいつらに見覚えはありますかー?」

 

触手を動かしてルードの少し前に5人の男たちを下ろす。

 

「っ...知らないな。誰だこいつら」

 

「そんな嘘意味ないぞ。もう既にこいつらはゲロってるんでな」

 

「へへ、すんませんルードさん。流石に神の使いに抵抗するのは無理でしたわ」

 

「嘘ついたら鞭で体を...ぐふ、受けてればよかったかも」

 

おいM、お前は喋んなくていい話がややこしくなる。

 

「こいつらのことなんか知らないと言ってるだろ?諦めろだなんだと言われても、俺は無実なんでな」

 

「んじゃ、こいつに魔力を流してもらおうか」

 

あらかじめ回収しておいた水晶玉を取り出す。

 

「な、なんだそれは...」

 

わかりやすく動揺するなこいつ。

 

「それを伝える義務はこちらにはない。お前は言われたとおりこいつに魔力を流せばいいんだ」

 

ルードは無言で首を横に振り、拒否してくる。

 

「拒否権がお前にあると思うなよ?あと、壊そうだなんて思うな。壊したり拒否すればその時点で犯人確定ってことになるだろうな。なんせ、お前はこれが何か知らないんだろう?何なのかわからないのに拒否するだなんておかしいじゃないか。拒否する理由がない。無実を証明したいなら喜んで協力してくれるはずさ」

 

「ぐぬぬ...!」

 

「これからお前の頭にこれを押し付ける。ちゃんと魔力を流せよ?」

 

水晶玉をゆっくりルードに近づけていく。

 

「…その必要はない」

 

おっ、自白きた?

 

「認めるんだな?」

 

「ああ、認めるよ。俺とこいつらとの繋がりをな」

 

そうルードが言うと、周囲を囲んでいた警察官たちがグッとガッツポーズをした。

 

「俺はこの水晶玉を通してこいつらに色々と命令していた。過去にそいつら警察が俺のところに来た事件の大半は俺が関わっている」

 

「…妙な言い方するなお前。俺が認めて欲しいのは盾を盗んだ件についてなんだが」

 

ルードはこいつらとの繋がりだとか、過去に起こった事件だとかしかまだ認めていない。俺が一番知りたい、盾を盗んだ一件については一切言及してこない。

 

「…?何の話だ?」

 

心底不思議だという感じにルードは言った。

 

「こいつらはお前に命令されて、レストの家から盾を盗み出した。そしてここから南にあるシレンの穴にそれを捨てろとも言われたようだ。俺はその件でお前を呼び出してこうなったわけだが...」

 

「…俺は盾を盗めだなんてこと命じた覚えはないぞ?」

 

ポカンとした顔で言ってくる。

 

「…でも、この水晶玉はお前の魔力と、こいつらの魔力でしか使うこともできないんだろ?こいつらは確かに命令された。嘘を見抜く魔法で証明済だ。命令できるのはお前しかいない」

 

「そんなこと言われても、やってないもんはやってないとしか言いようがないんだが...」

 

「じゃあ俺たちが朝、レストの家から出てきたときにすぐ前にいたのはなんでだ?待ち伏せしてたんじゃないか?」

 

「それはあのとき言ったじゃないか。会合の帰りに偶然通りかかっただけなんだって」

 

ダメだ頭が混乱してきた。とりあえず虚偽看破使って嘘かどうかわかるようにしておくか?

 

「自白も取れた。連れて行け」

 

「ハッ!」

 

「えっ、ちょ」

 

警察官の一人が指示を出すと、二人ほどルードに近づき無理矢理体を立たせる。

 

「何すんだ!」

 

「これから署に連行する」

 

まだ聞きたいこと何個かあるのに勝手に連れてかないでくれる⁉︎

 

「俺が盾なんて盗ませるわけないだろ!あのなぁ、俺は親父に言われて指示を出してただけだ!こいつらを使うのはあくまで家のため!自分のために人を動かすわけないだろうが!」

 

縛られているものの、元々の体のスペックがいいので身じろぐだけで警察の腕を軽く跳ね除けた。

 

「盾を盗んだ?それで英雄に成り代わろうってか?そんなことするわけないだろ!英雄ってのは最強がなるべきものだ!俺は負けたんだ!英雄はこいつで決まったんだ!俺が行ったところでこいつより上手くできねぇよ!盾を盗むなんてそんなくだらねぇことやるわけねぇ!」

 

ルードは怒鳴って捲し立てる。

 

「大人しくしろ...!」

 

「嫌だね!俺はやってねぇんだよ!」

 

警察官が数人がかりで暴れるルードを取り押さえようとするも、力の差が歴然すぎて全くの無駄だった。

 

そして、俺はそれを見ながらあることを考えていた。

 

もし、ルードの言ってることが全て真実だとしたら?下に転がっているこいつらの言ってることも真実だったら?

 

ルードは命令をしていない。けれど、ルードにしか使えないはずの水晶玉からは確かに指令が飛んできた。その両方を成立させる可能性はないのか?考えろ。

 

姿形、声は似せられても、魔力は真似できない。だから水晶玉はルードにしか使えない。その前提がおかしいのか?

 

となると、考えられる可能性は...

 

「みんな、一旦止まってくれ。ルードも警察もだ。落ち着け」

 

そう俺が言うと、ルードも警察官も動きを止めた。そしてこちらの方を見てくる。

 

「ルードに復唱してもらいたいことがある」

 

そう言いながらルードに近づく。

 

「…なんだ?」

 

「俺は盾を盗めと命じていない、と言え」

 

4982ページ 黒のみ 虚偽看破

 

「俺は盾を盗めと命じていない...これに何の意味がある?」

 

「…なるほど」

 

嘘はついていない...か。

 

「今ので確証を得れた。ルード、お前は盾の一件になんの関係もないんだな」

 

「…そうだとさっきから言ってるだろ」

 

「では、誰が盾を盗めと命令したのですか?」

 

そばにいた警察官が聞いてきた。

 

「あくまで推測なんで、それが正しいかはわからないんですが...前にカイスでとある魔族と戦ったことがあるんです。名前はフロート。能力は模倣。物品の複製だけでなく、人の姿形をも真似することができます。さらにはその人の記憶や性格、魔力まで複製可能です」

 

「そのフロートとかいう魔族がルードの姿形と声、魔力を模倣して水晶玉で指令を出したと?」

 

「そういうことです。さっきの復唱に嘘はありませんでした。また、今回の命令はいくつか違和感があったそうです。盾をシレンの穴の中に落とし、回収困難な状態にするのが目的だったのでしょう」

 

「確かに、それなら筋は通るが...」

 

「まぁ最初に言った通り、フロートの仕業かどうか確証があるわけではありませんがね。どっかの誰かがルードを一時的に洗脳して指令を出させば、さっきの復唱に嘘がなくても問題ないんで」

 

あくまでルードが命じていないと思っているだけだ。ルードを洗脳したり、命じた記憶を奪ってしまえば嘘ではなくなってしまうのだ。

 

「ってなわけで盾の件にはルードは関わってないと思います。なんでその容疑だけでも無くしてもらえませんかね?」

 

「まぁいいだろう。だが、極刑は免れないだろうな。命令しただけとはいえ多くの事件に関与している。表に出ていない問題もあるだろう。これから洗いざらい話してもらうぞ」

 

「ああ、それならいくらでも話してやるよ」

 

ルードは大人しく警察に連行されていった。盾を盗んだ黒幕と思われるのがよほど嫌だっただけで、捕まること自体は別にいいみたいだった。盾使いとしての誇りはあったんだろうな...

 

「そいつらも連れて行け」

 

既に拘束済みの5人の男たちも連れて行かれた。

 

「今日はありがとうございました!」

 

まだ残っていた警察官たちが一斉に俺とレストに向かって頭を下げてきた。

 

「おかげさまで、ルードを捕まえることができました!感謝してもしきれません!」

 

「いえいえ、こっちは盾を取り返さなきゃいけなかっただけで、ついでに犯人を取り押さえただけですから」

 

「それを感謝してるんですよぉ!」

 

うわ泣いて喜んでる人いる。そんなに捕まえたかったんだなぁ...

 

「それよりも、このままここにいていいんですか?まだ仕事残ってますよね?ルードの家も調べないといけないでしょう?」

 

「そ、そうですね。では我々はこれで...そうそう、レストさん。盾以外にも盗まれたものなどはありませんか?侵入されたときに壊されたものがあるなら、こちらで補填させていただきますが」

 

「それなら頼みます。こいつの部屋ボッロボロに荒らされてるんで」

 

「わかりました。後で署のものが向かうと思うので、家の前でお待ちください。では」

 

そう言って警察官たちは立ち去っていった。

 

「だってさ。よかったなレスト」

 

「うん。これを機にベッドいいやつに買い替えてみようかな」

 

「の、のんきだなぁ...まぁそうだな。それぐらい前向きな方がいいか。盾も取り返したし、犯人も捕まったし、一件落着だな」

 

「そうだね。戻ってきてよかった...」

 

盾を軽く撫でるレスト。

 

「それじゃ、言われた通りに家の前で待つとするか。どうせ事情聴取されるだろうから、俺もついていくよ」

 

俺たちはレストの家に向かった。




今回、かなりテンポ良く行けた気がします。
少し前の自分だったら絶対二話に分けてると思うんですよね...これくらいの話をこれからも書きたいけど、多分無理でしょうね。
展開遅くなっても、絶対読んでくれると信じて書き続けるので、改めてこれからもよろしくお願いします。
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