前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8290字。

アンデッド屋敷後編です。


死人は死んどけ

「二階はこの部屋で最後だな」

 

障壁と筆記の魔法陣は準備済みだ。扉を開ける。

 

「…誰もいないな」

 

「扉の裏には?」

 

「それは速度探知で確認済み」

 

「じゃあ門番だけか...」

 

部屋の前にアンデッドが一人立っていたが、既に壁に縛り付けて拘束済みだ。部屋の中に誰もいないのも確認したので、ゆっくり調べられるだろう。

 

「さて、門番がいたんだから何かあるって期待してもいいよなー?」

 

この部屋にたどり着くまでに5個ほど部屋を探索したが、アンデッドがたまにいるくらいで何もなかった。見つけた魔道具らしきものは、レストが持ってる単一乾電池っぽいやつだけだ。だいぶ薄味だけれど、魔道具が生成されること自体レアなことらしいし、一個手に入っただけでも幸運なんだろうな。これが本当に魔道具かはわからないけど。

 

「おっ、これなんかどうだ?」

 

置いてある家具と壁の間に落ちている何かを速度探知で見つけたので、家具を動かして取ってみる。

 

「これは...ペンかな?」

 

落ちていたのはペンだった。

 

「何か書くことで使える魔道具なのかな...とりあえずしまっておくとして、と。レストは何か見つけた?」

 

「いや、まだなにも。というかカリヤが部屋歩き回ればわかるんだから僕探さなくてもいいよね?誰か来てないから監視しておくよ」

 

「お、助かる」

 

レストは廊下を監視してくれるみたいだ。必要になるかはわからないけれど、確かに部屋の探索は俺の速度探知でやればいいし、やることないなら監視してくれる方がいいかもな。

 

「あと見てないところは...ここかな」

 

部屋の角に近づく。

 

「…ん?なんだこれ。壁の中に何かあるな...」

 

壁の中に箱状の何かがあった。

 

「あらよっと...何かな何かな?」

 

ダガーで壁を切り裂き、中にあったものを取り出す。

 

「た、宝箱...!」

 

いかにも宝箱って感じの箱だ。

 

「オープン!って開かねぇ...鍵付きか」

 

なんで壁の中にしまってある宝箱に鍵なんてかけてるんだよ。セキュリティー万全すぎだろ。

 

「鍵探さないとダメか...でも今まで探索した場所にはなかったし、鍵も壁の中に埋まってるとかなんかな」

 

少なくとも今まで探索した部屋にはない。隅まで探している最中に壁の中も確認できているから、壁や床の中にもないだろう。あるとすれば、廊下の壁や天井裏とかだろうか。

 

「レストー鍵探すぞー」

 

「無理矢理こじ開けられないの?」

 

「いやね?速度探知で中の構造もある程度わかるんだけどさ、特定の鍵じゃないと開かなそうなんだわ」

 

ディンプルキーとかいう、横に窪みがある鍵みたいなのじゃないと開かないみたいだ。それくらいならまだ複製しようもあるけれど、特定の魔法陣から流れる魔力供給がないと開かないため鍵を複製することは不可能だ。まぁニアとかいう世代最強の魔法使いなら開けられるのかもしれんが、今の俺には無理だ。

 

「ってなわけでしらみつぶしに廊下を歩き回るぞ。壁と、あと天井を全部探る」

 

「ちょっと思ったんだけどさ、魔力は平気なの?」

 

「魔力?あー...」

 

そういえば、不意打ちの警戒と部屋の探索のために常に速度探知を使っていたし、事あるごとに筆記を使ってたし、アンデッドと遭遇するたびに拘束を使ってたから結構魔力が減っている。

 

「まだいけるけど...一応一旦外に出て回復した方がいいかもな。普段ずっと魔力回復加速してたから感覚おかしくなってたわ...」

 

速度探知は魔力消費少なくて、回復速度を加速すれば消費を回復が上回るからずっと使う習慣がついてしまっていたが、もう少し考えて使った方がいいかもしれない。魔力を回復できない場面もこれから何度か起こるだろうし、今のうちにちゃんと慣らしておかないと...そのために来たのに何やってんだ俺。

 

まぁ勇者は聖域を作り出せるみたいな話を聞いた覚えがあるし、そこまで気にしなくてもいいのかもしれないが。分断の可能性を考えて一応気にしておく。

 

「大丈夫?一回出たら全部元に戻ってたりしない?」

 

「うーん...どうだろ。リセットされるのかな?」

 

「前に、ダンジョンによってはそういうこともあるってこと冒険者に聞いたことあるんだよね」

 

「あそっか、あのサポートの...」

 

何気にレストの情報網すごいな。実家の店の客からも情報を得てるし、それが結構役に立ってるのはいいことだ。レストのこの性格だと人の輪に入りやすいのかな。

 

「もしリセットされたら面倒だな...これまでの時間を無駄にしたくないし、探索続けるか」

 

「魔力はいいの?」

 

「やばくなったらポーション飲みゃーいいしな」

 

ポーションのデメリットである魔力回復阻害も、元々回復しないのだから関係ない。こういう場ではがぶ飲みしてもいい。一つ新たな知見を得た。

 

「そっか。じゃあ次どこいく?」

 

「とりあえず天井裏かな。レスト、盾で天井に穴を開けてくれない?」

 

「わかった」

 

レストは盾を展開して天井に向かって投げつけた。半透明の部分が、触れた箇所を手当たり次第に魔力結晶に変換していく。

 

「こんな感じでいい?」

 

盾をキャッチして腕に付け直しながら言うレスト。

 

「オーケーありがとレスト。ってかナイスキャッチだ落としてたら床が抜けてたな」

 

「そんなことよりも...あんなに削り取ったのに何もないよ。天井裏、全部埋まってるんじゃない?」

 

そう言われて上を見ると、レストの言う通り何もなかった。まだ壁があるだけだ。全て壁で埋め尽くされていてもおかしくはない。

 

「一応確認するか」

 

地面を蹴って削り取った天井付近まで跳ぶ。そして落下速度を減速させてうまい具合に留まる。

 

「近くにはない...か」

 

半径3.5メートルには何もないのが速度探知でわかった。これを繰り返して天井を調べていくってのは非効率的なので、一発で全部調べることにした。

 

3731ページ下 黒のみ 反響探知

 

「久しぶりに使うなこれ...うん何もない!」

 

天井から手を離し、床に降りる。

 

「天井には何もなかったわ。何か埋まってるとかもなし」

 

「じゃあ鍵はどこにあるんだろうね?」

 

「あー...もしかしたらあれかも。屋敷の前に塀と門があったじゃん?そこから出なければ外に出ても問題ないんじゃない?鍵は屋敷の外にあるのかも」

 

門を超えたら雰囲気が変わった。ってことは、門の内側からがアンデッドが作り出した場所だということ。そこで、門から出なければ屋敷のリセットも起こらないんじゃないかと思ったわけだ。まぁそもそもリセットされるのかはわからないし、屋敷の外に出ただけでリセットされるのかもしれないけど、それはなったら考えよう。

 

「一旦外に出てみようぜ」

 

「そうだね」

 

階段のところまで戻り、一階に降りる。

 

「……ん?」

 

「どうしたの?」

 

「いや...なんかここ空間あるなって思って」

 

エントランスのど真ん中の床、その下に謎の空間があるのを発見した。ここ、通ってなかったんだな。最初来た時すぐ左に曲がっちゃったし、階段を登る時も、右の廊下から壁沿いを歩いて登っていったからど真ん中を通ることがなかったんだろう。外に出るために最短距離を通ろうとしたため、速度探知の端が謎の空間に引っかかったのだ。

 

「これは...階段?こっから下に階段が伸びてるみたいだ」

 

屋敷の入り口側から下方向に階段が伸びていた。隠し部屋発見だな。

 

「家主っぽいアンデッド今まで見てなかったけど、ここにいるのかな?」

 

「かもな。こんな隠し部屋にいるくらいだから確実にいるだろ」

 

今日のの探索、こうだろって予想したことほとんど外してきてるけどこれは流石にあってるはず。アンデッドがいなくとも、何かいいものがあるに違いない。

 

「でもどうやって入るかだよな...魔法陣っぽいの近くにないし、他の部屋か?」

 

謎解き開始だ。ゲームだとこういう階段を出すスイッチとかは結構遠めの部屋か外にあるはず...

 

「いや待て、普通にレストの盾で削ればいい話か。頼む」

 

「頼まれた」

 

レストは盾についていた結晶をいくつか取り外してから盾を起動し、俺が指差した部分の床を吸収した。

 

「うわ、本当に階段がある...これっておかしくない?この下って本来なら地面があるはずだよね?」

 

「確かに。いやでも改めて考えてみると、そもそも外から見た大きさと中の大きさが全然違うし、空間が歪んでるのかもな。塀の中一帯が異界化してるのかもしれないし」

 

「へー。結構あるのかな、こういうこと」

 

「この前行ったシレンの穴のダンジョンも空間が歪んでるって聞いたぞ。あるところはあるって感じなんだろうな」

 

そんな会話をしている最中も、レストは盾で穴を広げていった。人が入れるくらいの大きさになってきた。

 

「こんなもんでいいだろ。ありがとレスト。降りよう」

 

現れた階段を降りていく。壁に灯りがついているおかげで、階段の下まで見通すことができた。階段の先に一つの扉が見えた。

 

「うっわ明らかにボス部屋やんけ...」

 

「絶対何かいるよね。僕が扉開けようか?」

 

「頼む。入る前に探知だけしとくわ」

 

段取りを決めながら階段を降りていく。

 

ガコンッ!

 

「えちょっ⁉︎」

 

階段が急に坂になった。滑り台に乗っているみたいに扉に向かって滑り落ちてしまう。

 

「ド○フかよ...!レスト盾の準備頼む!」

 

速度操作で滑り落ちる速度を少しずつ落としながらレストに指示をする。下を見ると、いつのまにか閉まっていたはずの扉が開いていた。このままだと扉の先に突っ込んでしまう。

 

「カリヤ逆!加速最大!」

 

「っ、りょ!」

 

言われるがまま速度を最大まで加速させて扉の向こうに一気に飛び込む。部屋はとてつもなく広く、秒速42メートルでも数秒移動できるくらいの広さはあった。

 

「止まって!」

 

「おう!」

 

速度操作を一度解除し、速度をある程度まで戻す。そして再度発動し、坂を滑り落ちるときに得てしまった速度をゆっくり落としていく。

 

「ふぅ...突入完了。ってかなんで加速させろなんて...なるほど」

 

飛び込んできた扉の方を見ると、なぜレストがあんなことを言ったのかわかった。扉に向かって、無数の、避けるのが不可能なくらいの弾幕が飛んでいっていたのだ。

 

「初見殺しだな...滑り台で無理矢理入場させたところをあの弾幕で潰すわけか。よくわかったな」

 

「なんとなく嫌な予感がしたんだ。あと、来るよ」

 

そう言ってレストは右腕の盾を起動しようとする。

 

「ダメだ使うな!」

 

レストの前に出ながら叫び、飛んできた氷の塊を俺の持つ盾で逸らす。

 

「なんで前に...!」

 

「ここがどこか忘れたのか!そいつは使っちゃダメだ!」

 

「…っ!」

 

気づいてくれたみたいだ。ここは屋敷の中。右腕の盾を使って魔法を吸収しようとすれば、屋敷も削ってしまいかねない。そしてこの部屋は地下にある。空間が歪んでいるため地下があるが、実際にはこんな地下空間は存在しない。魔法吸収で屋敷を削ったら、もしくは使った瞬間に空間の歪みが正されて地面の中に埋められるなんてことになりかねない。

 

一階や二階の時は、もし空間の歪みが直ったとしても地上に放り出さられるだけだから気にせずにやっていたけれど、地下でそのギャンブルをするわけにはいかない。魔法を使う奴相手に魔法吸収を使えないのは痛いが、そういう練習だと思ってレストには頑張ってもらおう。

 

「あいつがこの部屋の主か...」

 

さっき氷の塊を撃ってきた、前方少し先にいるアンデッドを見る。

 

「ここ、困った時用のシェルターかなんかだろ?そんなところにいるお前はこの屋敷の主人確定だよな?」

 

巧妙に隠された階段。俺たちは正規の手順を踏まずに侵入したが、本来なら見つけることすら難しいはず。トラップもあったし、ここはセーフハウス的な部屋なはずだ。そしてここに隠れるのは屋敷の主人くらいだろう。使用人が隠れる場所でもあるまい。おそらくこいつが、この屋敷を作り出したアンデッドだ。

 

「お前潰さねぇとここから出してもらえないみてぇだし、さっさと潰してここから脱出させてもらうぞ」

 

こいつを無視してこの部屋から出ることはできない。探索は諦めて、こいつを倒すのに集中しなければならなくなった。

 

1203ページ左下 黒のみ 水刃

 

「『雷装』...水刃!」

 

一気にダガーを振り抜き、飛ばした水の刃に電流を乗せる。

 

「…蒸発か」

 

水の刃はアンデッドまであと1メートルくらいの位置で消滅した。一瞬だが沸騰したように見えたので熱操作の類だろう。

 

「じゃあこれ!」

 

1061ページ右下 黒のみ 風刃

1323ページ右上 黒のみ 火刃

 

二本のダガーを何度も振り、炎と風の刃を飛ばす。あれが本当に熱操作なら、炎は止められても風までは止められないはず...

 

「ぼ、暴風⁉︎」

 

急に部屋の中に暴風が巻き起こった。炎と風の刃は風に乗ってこっちに飛んでくる。

 

「カリヤ!」

 

十分避けられる攻撃ではあったが、レストが二種類の刃を盾で受け止めて守ってくれた。

 

「ありがとうレスト」

 

「いけそう?」

 

「ああ、余裕だ」

 

こいつの使う魔法がわかった。

 

「なぁアンデッド!お前の魔法、熱の吸収と放出だろ?合ってるなら返事してみな」

 

例えるならば、NEE○LESSの第○波動。対象から熱エネルギーを奪い、放出する。氷の生成に、水の蒸発。暴風は熱を利用した気圧差。全部説明がつく。

 

「……ああ」

 

やっと喋ったな。今までにあった屋敷のアンデッドらは一人も喋らなかったから、ちょっと新鮮な感じがする...と思ったけど、多分あいつらは厳密にはアンデッドではないのだろう。こいつが作り出した屋敷の付属品といったところか。屋敷の生成と共に使用人や他の住人も生成されただけなのだ。だから喋らなかった。

 

「だが、それがわかったところでどうなるというのだ侵入者よ。この屋敷に忍び込んだお前らを、みすみす逃すと思っているのか?」

 

「それにしてはビクビクこんなところに閉じこもってるだけだったじゃないか。死人は大人しく死んどけ」

 

レストの後ろから一瞬で移動し、アンデッドの背後に回り込む。

 

「オラァッ!」

 

その勢いのまま飛び蹴りを放つ。

 

がしかし、アンデッドの体を包むように氷の壁が作り出された。

 

「ハッ」

 

『雷装』

 

「それはもう経験済みだ!」

 

氷の壁を急速に電気分解してアンデッドに蹴りを叩き込む。少しだけ威力が落ち方向も逸らされてしまったが、腐りかけの脆い体には十分な威力であり、左腕が肩ごと吹き飛んだ。

 

「熱操作だけなら、カイの方が何倍も上手かったな。ただの氷の壁ならないも同然だ」

 

絶対零度領域の突破がどれほど大変だったか...カイや、それをコピーしたフロートは風の操作はしていなかったけれど、やろうと思えばできるだろう。このアンデッドがやっているのは熱量の吸収と放出。ゼロから熱量を作ったり、熱量を消失させているわけではない。吸収と放出が必ず交互にくるし、見極めるのは簡単だ。

 

「お前、古代の魔法使いなんだろ?現代に負けてるぜお前」

 

「テメェ...!」

 

アンデッドはこちらに手をかざして炎を飛ばしてくる。だが遅い。眠っちまうような遅さと言うべきか。避けるのは容易かった。

 

「次は吸収だろ?」

 

「お前を凍らせてやる...!」

 

アンデッドは俺を凍らせようと躍起になっているみたいだ。こちらに手をかざそうとするも、俺が速すぎて追いついていない。

 

「手を向けねぇとダメとか弱いな。もう一本もぎ取りゃ終わりか」

 

超高速で移動し、アンデッドの右腕をへし折るタイミングをはかる。両腕がなくなればあの魔法は使えなくなるだろう。

 

「まずは動きを...!」

 

展開を変えてきた。アンデッドは氷や炎を大量にばら撒き始めた。だんだん動ける範囲が減っていく。特に、アンデッドの周りは密度が濃すぎる。これでは近づくことすらままならないだろう。

 

「お前の視界まで塞いでんぞ。戦闘は苦手か?そうだよな、怯えて隠れることしかしてこなかったんだもんなァ!」

 

「馬鹿に...するな!」

 

暴風が吹き荒れた。飛んできていた氷と炎の軌道が変わり始める。

 

「そうカッカすんなよ。ランダム性に賭けるのは面白いけど、おかげで上がガラ空きだ。レスト!」

 

「うん!」

 

レストは俺の意図を汲み取り、左腕の盾を開放して上に投げた。

 

「何を...?」

 

「いいね!これで終わりだ!」

 

『雷装』

 

秒速63メートルの速さで跳び、投げられたレストの盾に飛び蹴りを放つ。

 

そして俺の足がレストの盾に限界まで近づき、表面に張られている薄い膜のようなものに触れた瞬間だった。

 

攻撃の方向が逸らされ、ものすごい勢いで吹き飛ばされる。その先にいるのは、アンデッド。

 

盾の効果でさらなる加速をした飛び蹴りは、肩どころか胸から脇腹にかけてまで丸ごと打ち砕き、塵とした。

 

「はぁ...はぁ...はぁ、ふぅ...」

 

呼吸が乱れる。足と肺が痛い。肺が痛いのは、レストの盾のスタミナを吸収する効果のせいだろう。足が痛いのは、超高速で地面に着地したからだろう。速度操作中は物理保護がかかるとはいえ、盾の力で加速した分のエネルギーは受け止めきれなかったようだ。

 

「大丈夫?カリヤ」

 

レストが魔法で盾を手元に引き戻しながらこちらに向かって歩いてくる。

 

「あ、ああ。なんとかな...」

 

息はだいぶ整ってきた。足はまだ痛いが、一応歩けそうだな。

 

「早く出よう。屋敷が形を保てなくなって消滅する前にな」

 

アンデッドは地面に伏せってピクピクしているが、まだ死んでいない。心臓を破壊していないためまだ動ける。けれど、両腕を根本から消し飛ばしたため傷はとてつもなく大きく、その傷から大量の血液が流れ出していた。

 

アンデッドは、吸収した魔素を血液に乗せて全身に流していく。心臓を破壊すれば血液の循環が止まるためアンデッドの活動も止まるが、これは血液が無くなった場合でも同様だ。この傷だとあと一分もすれば活動停止するだろう。

 

「すまん肩貸してくれ。治るまで頼む」

 

5092ページ 黒のみ 再生

 

レストの肩を借り、部屋を出て階段を登る。再生が間に合い、途中で足が回復したので加速して走った。

 

そして俺たちが屋敷を出て門から飛び出した瞬間、屋敷は消滅した。

 

「ふぅ...ギリギリセーフか」

 

後ろに振り返り、さっきまで屋敷があったところを見る。そこには、先程倒した死体が倒れていた。

 

「なんだ、地下にいても地上に戻されるのか。魔法吸収使ってもよかったじゃん...」

 

無用な心配をしてしまった。あとやはり、最後のアンデッド以外は本物のアンデッドじゃなかったみたいだな。そうでないと、ここに死体が残っていないとおかしい。

 

「まぁいいや。魔道具の確認しようぜ」

 

「そうだね」

 

俺とレストは懐や鞄にしまった魔道具らしきものを取り出そうとする。残っていれば魔道具確定だが...

 

「あっ、やっぱりこれ魔道具だったみたい」

 

レストが乾電池っぽい形のものを取り出す。ひとまず一つ目。

 

「俺のは...これだけか」

 

残っていたのはペンだけだった。

 

「まさか宝箱は魔道具じゃないとは...なんで壁の中に隠してたんだよわけわかんねぇ」

 

なんで比較的見つけやすい位置にあったペンが残って、壁の中というよく探索しないと見つからない位置にあった宝箱が消えるんだ。普通逆だろこういうの。

 

「くそ、中身が何だったのかだけでも知りたかったな...」

 

「どうせ持ち帰れなかったんだからいいんじゃない?」

 

「気になるもんは気になるでしょうが...だって考えてもみろよ。鍵探すためにわざわざ天井に穴あけて探知まで使ったんだぜ?それ全部が無駄になったんだぞ?それに、その無駄に使った魔力が残ってれば帰りも楽だったのに...」

 

「…どういうこと?」

 

「さっきの脱出で魔力使い切っちゃった☆」

 

もともと魔力はだいぶ削れていた。戦闘で使った魔法は水刃、火刃、風刃と比較的魔力消費が少ないものだが、雷装や速度操作、探知で持続的に消費してしまっていたところに、足を治すために再生も使ってしまったため、ちょうど屋敷を出たタイミングで使い切ってしまったのだ。

 

「…えっ」

 

「ってなわけで帰りは徒歩だ。二時間歩くぞー!」

 

「い、いやだ!早く帰りたい!」

 

「ちょっ、なにを...⁉︎」

 

レストが俺の鞄の中に手を突っ込み出した。な、何する気だ⁉︎

 

「これ飲んで走ろうカリヤ!」

 

「む、むり、無理矢理飲まそうとすんのやめろ咽せるから!あと急にアクティブになるんじゃねぇ!」

 

その後、結局抵抗することができず無理矢理ポーションを飲まされて走る羽目になった。飲み物飲んだ直後に走ったせいで気分も悪くなった。

 

なので、ガルムに着いたときに腹いせと仕返しとばかりに頭を叩いてやろうとしたが、それを左腕の盾で受け止められ弾き飛ばされた。スタミナが底をつき、俺は地面に倒れ伏すのであった。

 

「あっ、ごめんつい癖で」

 

それが意識を失う前に聞いた最後の言葉だった。




最近、「回収」という単語を打ち込もうとすると、予測変換の最初に「壊獣」と出てしまい入力ミスすることが多くなりました。
逐一修正はしていますが、もしかしたら修正漏れがあるかもしれません。
なんのゲームしてるかバレる予測変換ですね...

手に入れた魔道具はいつか出します。
いつ出すかは未定ですが、楽しみに待っていてください。
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