前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8128字。

準々決勝第一試合です。
…知らんやつ同士が戦ってるのって面白いんですかね...わかんないけど、楽しんでもらえるとありがたいです。


罠の線と、光る剣

2941ページ下 黒のみ 遠視

3207ページ上 黒のみ 集音

 

試合の開始と同時に、二つの魔法を発動した。一番上から立って見るよりは近いとはいえ、この距離はだいぶ遠い。遠くのものが近くにあるように見える遠視を使ってよく見えるようにし、集音で会話も聞き取れるようにした。会話も聞ける方がどんな戦いをしているのかわかりやすいはすだ。

 

「さぁ、かかってきな」

 

ミュラーが手をくいくいっと動かしてかかってこいと挑発する。よし、ちゃんと見えてるし聞こえてるな。

 

「その手には乗らない」

 

カノウがその場で剣を振り回す。すると、線のようなものがハラリと落ちた。

 

「よく見えるな」

 

「見えてはいない。気配を感じただけだ」

 

…もう罠を仕掛けていたのか。この大会では、試合が始まる直前にフィールドの状況が一度全てリセットされるらしい。前の試合で傷ついた床を直したり、かけられているバフを取り除くためのものだが、それによって試合前にあらかじめ罠を貼っておくことができなくなっている。そのはずなのにもう既に罠があったわけだから、このミュラーという男はほぼ予備動作なしに一瞬で罠を仕掛けられるのだろう。カノウはいつどこで仕掛けられるかわからない罠を避けることを強いられるわけだ。

 

「そしてこのルートなら...!」

 

ジグザグに走ってミュラーまで近づくカノウ。その走りには一切の迷いがない。全て見切っているというのだろうか。

 

「そこっ!」

 

十分にミュラーに近づいたカノウは、剣を赤色に光らせながら振り下ろす。

 

「わざと隙を見せたのがわからねぇみてぇだなぁ!」

 

ミュラーが二歩後ろに下がる。それによって赤色に光っている剣は空を切るが、もう一歩大きく踏み込めば届く距離だ。十分追撃可能。けれど、カノウはすぐに後ろに下がる。

 

「面倒な罠だな...!」

 

「一歩でもそこから動いてみな。どうなるかは...説明の必要もないだろう」

 

「チッ...!」

 

カノウがピタリと動きを止める。よーーく目を凝らすと、カノウの周囲にめちゃ細い線が張られていた。ハイエ○ファントの結界みたいだ。少しでも動いたら線に触れてしまい、罠が発動してしまうだろう。

 

「動けなくたって...!」

 

カノウの剣が今度は青色に光り出した。すると剣先から光の刃のようなものが飛び出してミュラーの方へと飛んでいく。光の刃は罠の線を幾つも引き裂いていく。それと同時に罠も発動していくが、どうやら張られていた線に沿って魔法が飛んでいく仕組みになっているみたいで、カノウ自身に危害は加えられない。

 

「そんな攻撃、当たるとでも?」

 

ミュラーが軽々と光の刃を避けながら言う。

 

「攻撃じゃねぇよ」

 

カノウの剣の光が収まった。そして先の光の刃のおかげで生まれた少しの空間を利用して剣を動かし、周囲に張られている線を切り落とす。カノウの言うとおり、攻撃ではなく現状からの回避のための布石だったのだ。

 

…あれ?なんで罠が発動しないんだろう。最初の時もそうだ。あの剣で切った線からは罠が発動しない。けれど、さっきの光の刃は罠を作動させていた。剣本体に魔法を解除する仕組みが仕掛けられているにしても、それならなぜ追撃しなかったのかが気になる。罠の発動条件がわからない。それがわかるかどうかが、勝敗を分けることになりそうだが...カノウは既にわかっているのか?

 

「最初に言っておくべきだったが...忘れていたよ。俺にお前の罠は通用しない」

 

「なら罠以外でいこう」

 

ミュラーの周りに線が張られる。一応身の安全は確保しておこうという魂胆だろう。

 

「罠以外だぁ?じゃあお前の周りにあんのはなんだってんだ」

 

「ああ、これは罠だよ。本命は...これさ」

 

線を張り終わったミュラーは懐から一枚の紙を取り出した。この角度で見ているからわかったが、その紙には魔法陣のようなものが描かれていた。お札...か?

 

「決勝、早くとも準決勝あたりで出そうと思っていたのだが、まさかこんなところで切り札の一つ目を切る羽目になるとはな」

 

ミュラーが紙に魔力を流し込んだらしく、魔法陣に色がつく。

 

「何が何だかわからんが...動かねぇならこっちから行かせてもらう!」

 

カノウの剣が青く光り出し、光の刃がミュラーに向かって射出される。光の刃は、ミュラーの近くにある罠の線を引き裂いて作動させながら、全方位から襲いかかっていく。光の刃と、作動中の罠のせいでミュラーは動けないはずだ。どう避ける?

 

「リターン」

 

ミュラーの持つ紙が、その言葉とともに一瞬にして燃え尽きた。次の瞬間、光の刃がさっきまで通ってきた軌跡を描きながら戻っていく。

 

「面白い魔法だな。こんなのを隠し持っていたとはな...」

 

自分めがけて戻ってくる光の刃を見ながらカノウは軽く笑う。

 

「だが所詮使い捨て。他にもあるんだろう?さっさと出しな」

 

カノウは横に数歩歩いて光の刃を避けながら言う。

 

「出させてみろよ。お前くらいならリターンだけで十分だ」

 

2枚の紙を取り出すミュラー。その紙に書かれている魔法陣は両方ともさっきの紙のと同じだ。

 

「そうか、なら宣言しよう」

 

剣を黒く光らせながらカノウは言う。

 

「5秒後、お前のその胸を切り裂いてやろう」

 

「罠は張り直した。この状況でどうやって...んぐっ⁉︎」

 

ミュラーの胸に横一文字に傷が走る。血潮がピシャッと地面にばら撒かれる。

 

「なんで...!」

 

動転するミュラーに向かってカノウは走り出し、黒く光る剣を横に振った。その追撃はバックステップによって避けられてしまったが、ミュラーに与えたダメージは大きい。

 

…この闘技場の結界のおかげで、この闘技場内でつけられた傷は治るってのがわかっていても、流石にこうも血が飛び散ると心配になってしまう。この試合の勝利条件は、相手に降参をさせるか、死の直前まで追い込むこと。どちらかの条件を満たした瞬間に傷は全て治るため、本当に死ぬことはない。でもやっぱ怖い。

 

「クソ...今の斬撃はなんだ。何が起こった...!」

 

それは俺も知りたい。斬撃を飛ばしているわけではないことだけはわかる。ミュラーの張った罠の線は一切切れていないのだ。斬撃残留の類でもないだろう。ミュラーは動いていないから、元から残っていた斬撃に自分から当たりに行ってしまったわけではない。だがそうなると、突如として斬撃が発生したとしか考えられない。いったい、なんの魔法だ?

 

「さぁな。だが、これでお前は動かなければならなくなった。選べよ。一方的に切られ続けるか、それとも切り札とやらを切るのか」

 

「あまり使いたくねぇってのに...!」

 

ミュラーが懐から一枚の紙を取り出し、魔力を流してから燃やす。一瞬しか見えなかったが、その紙に描かれていた魔法陣は回復魔法のものだった。胸の傷が治る。

 

「回復ねぇ...無駄だな。すぐに傷つくだけだ」

 

ズバッとミュラーの右肩から左の脇腹まで大きく傷ができる。カノウに予備動作はない。あるとすれば、剣が黒く光っているくらいか。

 

「チィッ!」

 

後ろに下がりながら5枚の紙を一気に取り出し、魔力を流してから無造作に投げ捨てるミュラー。火や水、土など、5種類の魔法が飛び出す。それによってカノウの追撃から逃れようとする。

 

「無駄さ」

 

「な、なに...⁉︎」

 

5種類の魔法が全て弾け飛んだ。カノウからまだまだ距離があるうちにだ。さっきの突然斬撃が発生する謎の魔法で切ったのだろう。火の魔法が、剣で切られたみたいに歪んでいたから多分あってるはず。

 

「どうやら、一回だけの使い切りという条件をつけることで、魔法の威力を上げてるみたいだが...お前、センスないよ」

 

カノウはそんなことを言いながら少しずつミュラーの方に歩き、剣を素振りする。

 

「なん...だと...?」

 

「これが切り札?罠の方がよっぽど怖ぇよ。自分にあってない方法を切り札にするのはやめておきな」

 

確かに、それは俺も思う。下手になれないことをするよりも、罠という才能があるのだからそれをもっと突き詰めるべきだと思う。もっとも、罠が突破されかかっているから焦る気持ちも十分わかるが。

 

「こんなんじゃどうせ他の切り札も大したことねぇんだろうな」

 

「言ってろ...」

 

傷を治しながら周囲に罠を張り直すミュラー。さっきから張っているのは自らの動きについてくる罠の線。罠なのに移動できるのはすごいと思うが、これではまた謎の斬撃で切られるだけだぞ?どうすんだ?

 

「お前の言うとおりだな...慣れないことをしても、自滅するだけか...」

 

罠の線の数がどんどん増えていく。

 

「なら、これまで通りやるまでだ!」

 

全力でカノウに向かって走っていくミュラー。その動きに合わせてわなの線もカノウに迫ってくる。

 

「おいおいマジかよ...!」

 

カノウもまさかミュラーがこうくるとは思ってなかったみたいだ。当然だろう。罠は待ち構えるもの。そのイメージが強すぎて、自分からこちらに迫ってくることなんて想定するわけがない。

 

本来の罠ならこんなことできない。けれど、ミュラーは動かない罠と、動く罠を使い分けられるらしい。動く罠を自らに貼り付けることで、自らを爆弾のように変えて突撃することができる。触れたら発動する罠がこちらに迫ってくる以上、相手はただ避けることしかできないはずだ。

 

「やるしかねぇか...!」

 

そうカノウがつぶやくと、剣が金色に光り出した。

 

「2...いや1!」

 

金色に光る剣をその場で2回、十字に剣を振る。そして罠に引っかからないように全力で後ろに逃げ始める。

 

「待て!」

 

逃げるカノウに追いつくため、ミュラーがさらに走りを速めたその瞬間だった。

 

ミュラーの体に十字の傷が突如として作り出された。

 

「これは...まさか⁉︎」

 

歩みを止め、まずは傷を治すミュラー。どうやら、あの斬撃の正体がわかったみたいだ。

 

そして気づいたのは俺もだ。

 

まず、金色の光を纏っているとき。そのときに放たれた斬撃は、未来を切る。未来跳躍のように、あらかじめ飛ばす秒数を決めてから剣を振ることで、その秒数後に放った斬撃がもう一度発生するのだろう。

 

そして黒色の光を纏っているとき。これは金色の逆。そのときに放たれた斬撃は、過去を切る。おそらく、黒い光を纏っている間だけ、未来から斬撃が飛んでくるようになるのだろう。そしてその斬撃が飛んでくる原因を作るために、その場所に移動して剣を振る必要がある。最初に未来から斬撃が飛んできた時は、追撃に見せかけた横一文字の一閃を放つことで原因を作り出したのだ。もう一度謎の斬撃が飛んできた時も、魔法が切り裂かれた時も、どちらもその後剣を素振りしていた。両方とも、過去に斬撃を飛ばしていたのだ。

 

「未来と過去を切る剣...か」

 

「気づいたか。だが、気づいたところで何ができる」

 

今度は黒色に剣が光り出す。過去へと飛ばす斬撃。金色の未来に飛ばす斬撃は、そこに近づきさえしなければ喰らうことはない。けれど、未来から過去に向かって飛んでくる斬撃は防ぎようがない。一方的に喰らうしかない。

 

「それはどうかな」

 

「なに?...なるほど、そういうことか」

 

カノウの周りに大量の線が設置される。動かない線だ。

 

「これでお前は動けない。未来で斬撃を放てなければ、過去に飛んでくることもない!」

 

なるほど確かに、未来で剣を振るからこそ過去に斬撃が飛んでくるのだ。未来で剣を触れない状況にあれば、斬撃が飛んでくることはない。

 

「どうだかな。すぐに抜け出して切ってやるよ」

 

「そのハッタリには乗らない。今ここで俺が切られていないのが、お前が剣を振れなかった証拠だ!」

 

「過去に飛ぶ斬撃が来ないことで未来を予測するか。こりゃ面白い考え方だ」

 

カノウがニヤリと笑いながら言う。

 

「そんなの、こいつを使わなければいいだけだ。未来は確定しない」

 

剣の光が収まる。

 

「確かに、それを使わないならお前がこの罠を抜け出して俺に斬りかかれる可能性は存在することになる。だが、どうやって抜け出す?四方八方の罠。逃れられるわけがない」

 

そう言いながらミュラーはカノウに近づく。

 

「このまま俺が近づけば、お前は否が応でも線に触れることになる。動いても動かなくても、お前はもう終わりだ」

 

ミュラーは歩みを止めない。このまま仕留め切るつもりみたいだ。

 

「これを忘れたか!」

 

カノウの剣が青く光り出し、剣先から光の刃が飛ぶ。張られていたいくつもの罠の線が切り裂かれる。

 

「無駄だ。その手にはもう乗らない」

 

光の刃を軽く避け、剥がれた箇所の罠の線を張り直す。動ける隙を与えない。本気で潰しにかかっている。あと二、三歩歩けば、もう線に触れるだろう。カノウは絶体絶命だ。

 

「そうかよ...」

 

カノウの剣を握る手の力が強まる。

 

「近づいてきてくれてありがとよ。これで俺の勝ちだ」

 

そうカノウが言った瞬間、カノウの体から大量の真っ白な光が溢れ出す。

 

「なっ、目眩し⁉︎」

 

万が一を考えて後ろに下がるミュラー。そしてすぐに罠の線を周囲に張り巡らせる。

 

がしかし、張ったはずの線はすぐさま切れてしまい罠が発動し、無駄撃ちで消滅してしまう。

 

「これはまさか...排出光⁉︎」

 

排出光だと?なぜ魔力を全て使い切ってしまう魔法を今、このタイミングで?

 

「お前の罠の線は、お前自身の魔力以外の魔力に反応する!」

 

そう言いながら、カノウが光の中から飛び出してきた。

 

…なるほど?だからミュラーは線に触れても問題ないし、魔力の込めていない、光っていない剣だと罠を作動させずに線を切り落とせたのか。魔力が込められている状態だと作動してしまうから、赤く光らせていたあの時は追撃しなかったのか。そして、排出光で生み出した光は魔力を帯びている。その光が全ての線に触れることで、全ての罠を無駄撃ちさせたのだ。

 

「くそっ!」

 

ミュラーが凄い勢いで線を作り出し、罠を設置していく。あっという間に数百を超える量の罠が至る所に敷き詰められた。到底通り抜けられる隙間などない。

 

「無駄だ!今の俺は魔力ゼロ!お前の線を素通りできる!」

 

その宣言どおり、カノウは張り巡らされた線の中をそのまま走り抜けていく。

 

本来なら、魔力を全て使い切ったところで、すぐに魔力の回復が始まり罠に引っかかるようになってしまうだろう。けれど、ことこの闘技場においては、そうはならない。

 

この闘技場には、魔力回復阻害のデバフがかけられているのだ。中に入ると、たとえ観客席であろうと魔力回復阻害の影響を受ける。レストと入ったあの屋敷の中のように、自然回復が一切行われないため加速させることもできない。こんなデバフがかかっているのは魔王城での戦闘を想定しているからだろうが、それがカノウの決死の攻撃を成り立たせていた。

 

「これでしまいだ!」

 

「…っ⁉︎」

 

カノウがミュラーに斬りかかる。罠が効かないとわかっているミュラーは急いで紙を取り出そうとするが、焦ってしまったためか地面にばら撒いてしまう。俺みたいに魔力操作に長けていたならば、足から地面を通して発動できただろう。だが、ミュラーにそこまでの魔力操作はできないはずだ。紙に触れていた今の一瞬で魔力を流せなかったことからもわかる。

 

「やるしか...!」

 

ミュラーは罠の線を地面に落ちた紙に向かって飛ばした。線を使って魔法陣に直接魔力を流す気か?...それができるならなぜ最初からやらない?遠距離から魔法陣を起動する方法があるなら、これも罠として利用できたはず...

 

「チッ!」

 

カノウは素早くミュラーから距離を取る。魔法陣が起動する、そう思ったのだろう。

 

だが、紙はなんの反応も示さなかった。魔法陣に色はつかないし、紙は燃えない。

 

「ここでブラフか!」

 

思わず声に出てしまった。絶体絶命のタイミングでこれができる胆力がすごい。見習いたい。

 

「時間稼ぎは無駄だ!」

 

ブラフだったことにカノウも気づいたみたいで、再度ミュラーに向かって走り出す。もうブラフは通用しないだろう。ここから取れる手は...ブラフだと思わせておいて本当はできる、というD○O対承○郎の時の磁石みたいなことくらいか?本当に糸を通して魔力を流せるなら、一気に形成逆転できるだろう。残る可能性は...隠しているらしい他の切り札を切るくらいだな。

 

「これで本当の終わり...!」

 

カノウが剣を振る。ミュラーは避けない。

 

皮膚が一気に切り裂かれた...双方の皮膚が。

 

「「かはっ...!」」

 

お互いに血を出しながらよろける。

 

「な、なにが...今更新技かよ...!」

 

「新技じゃねぇよ。最初から...試合が始まった瞬間から使ってたさ。糸の弱点に既に気づかれてたみたいだったからな」

 

もう回復の紙がないのか、手で傷口を軽く抑えながらミュラーは言う。

 

「過去と未来の斬撃は特殊すぎて発動しなかったが...普通の斬撃なら使える。お前の攻撃は、そっくりそのままお前にも跳ね返る!」

 

反射の魔法...か?傷を相手にも与える部分だけ見ると、ナルミが使っていた魔法に近いように思える。どうやら傷をつけた瞬間、相手の体の同じ位置に同じ傷がつくようになっているみたいだ。

 

「そして、だ。お前は俺よりも小柄な体型だ。同じ大きさの傷をお互いが受けるとなれば、お前の方が深く内側まで傷が刻まれることになる。つまり、お前は攻撃すればするほど追い詰められていくわけだ」

 

双方回復魔法は使えない。一度ついた傷は試合が終わるまで治せない。

 

「選べ。降参するか、立ち向かうか」

 

「そんなもん...決まってるだろ」

 

剣を握るカノウの眼に力が宿る。

 

「そうか、そうだよな...なら」

 

ミュラーが両腕を広げて待ち構える。

 

「根比べと行こうか!」

 

カノウが剣を振る。その度にお互いの体から鮮血が舞い、地面に血の跡を残す。

 

何十と薄い傷がつけられていく。ミュラーの言う通り、これは根比べだ。どちらが先に試合続行不可能になるか、諦めたり気絶したりするかの根比べ。

 

カノウの方が、一回の傷は大きい。けれど、ミュラーよりかは痛みに対する耐性があるだろう。

 

絶対に負けられない、意地と意地の張り合い。その結末は...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に倒れたのは、カノウだった。

 

バタリと地面に仰向けになって倒れ込むカノウ。剣は手放していないが、腕も足も動かせていない。傷の痛みのせいで動けなくなっているみたいだ。

 

「勝負あったな」

 

そう言うミュラーも、足がふらふらだ。あと一回でも攻撃すれば、軽く叩くだけでも倒れてしまうだろう。

 

「いや、まだだ...」

 

空を見上げながらカノウはつぶやく。

 

「この状況でまだ勝負がついていないと言うか...」

 

「ついてねぇよ。まだ俺たちの傷が治ってねぇってことは、降参してないし、死ぬ寸前でもないってことだ。まだ、終わってない」

 

「なら、今すぐに終わらせてやるよ」

 

ゆっくりと倒れているカノウに向かって歩くミュラー。蹴りの一発でも叩き込むつもりなのだろう。

 

「ああ、これで終わる...お前がな」

 

カノウは空をハッキリと見つめていた。まるで、そこに何かがあるかのように。

 

「ブラフだな。お前は魔法が使えない。上に何があるという」

 

「信じない...か。残念だ、燃えてろ」

 

それは空からやってきた。

 

それはただの火球。なんて事のない初歩的な魔法。

 

だが、重力に引かれて終末速度にまで加速した火球は、確かにミュラーの体に命中した。

 

当然、その火球で受けた傷もカノウに跳ね返ってくる。

 

だがしかし、ミュラーはカノウよりも先に倒れてしまった。

 

ミュラーの負けで試合は終幕した。

 

双方の傷が完全に治癒された。

 

「……はぁ、やられたか」

 

傷が治り、疲れも全て消えてなくなったミュラーだが、疲労感だけは抜けなかったみたいで、カノウと入れ替わるように地面に転がった。

 

「まさか、排出光の瞬間に火球を撃っていたとはな...」

 

「そうだ。光に包まれるあの瞬間なら、誰にも気づかれることなく魔法を空へと打ち上げることができる。万が一試合が長引いた時の保険だったが...ほとんど偶然みたいなもんだ。ほんの少しでも位置が違えば、タイミングが違えば、勝っていたのはお前だ」

 

「だが現実で勝ったのはお前だ...俺に勝ったんだから、必ず優勝しろよ」

 

「ああ、言われなくとも」

 

カノウがミュラーを引っ張り上げ、立ち上がらせる。そしてそのまま握手をした。

 

拍手と大歓声で、第一試合を戦った二人に賞賛が送られた。




だいぶいい戦いを作れた気がします。
読者からすると誰だこいつらって感じだと思いますけど、作者もほとんどそう思ってます。

あと何話かはこんな感じで、カリヤくんが心の中で解説をしながら戦いを見る形式になります。
面白くなってるかはわかりませんが、頑張って書きますんでよろしくお願いします。
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