前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8407字。

準々決勝第三試合開始です。


略奪ダンス、不敗予知

2941ページ下 黒のみ 遠視

3207ページ上 黒のみ 集音

 

第三試合の開始と同時に、再度魔法を発動させた。これでよく見えるし、よく聞こえる。

 

…と言いたかったのだが...

 

「う...うるせぇ⁉︎」

 

耳に爆音が流れ込んでくる。頭が割れそうなくらいだ。とても試合を見ている場合じゃない。

 

「みんなは...無反応?聞こえてないのか...?」

 

3207ページ上 カスタム追加 青 集音

 

周りが反応していないということは、この音は集音のせいで頭に流れ込んでいるに違いない。そう考えてカスタムを発動し、音量を下げる...うん、これでちょうどいいな。

 

というかなんなんだこの音。音源は...ミルキーとやらか?ダンスしてるみたいに戦うって話だし、そのための音楽だろうか。ってかなんか体が変な感じするな。動きが鈍いというか。もしかして、音楽でバフやデバフをかけていたりするのだろうか。音って脳にも影響及ぼすからないわけじゃない。なんかル○オみたいだな。

 

「行くよワンナとやら!あたしのダンスに見惚れて死にな!」

 

ミルキーはステップを取りながらワンナに近づき、ブレイクダンスのようにグルグルと回転しながら蹴りを連続で放つ。ガチで真島○朗みたいだ。

 

ワンナは無言で後ろに2歩下がり、ミルキーの蹴りを避ける。それに合わせるようにミルキーは踊りを変え、さらに追撃を仕掛ける。

 

「ビートに乗るよ!」

 

手を替え品を替えながらミルキーは攻撃を続ける。見惚れるほどの連続攻撃。それを喰らっているワンナは防戦一方...ってわけでもなさそうだ。ギリギリのところではあるが、どの攻撃も回避に成功できている。というか、わざとギリギリで回避しているようだった。見た感じ、ミルキーは攻撃が当たりそうになった瞬間だけダンスの速度を上げている。ギリギリのラインを攻めてミルキーの加速を誘発、スタミナを減らそうという魂胆だろう。

 

「スタミナ削りなら無駄だよ!この音楽の中じゃ私はいつまでも動ける!疲れない!」

 

ミルキーがそう言うと、ダンスの速度がさらに上がった。倍以上の速さになった死のダンスがワンナを襲う。

 

「……っ」

 

ワンナは回避を続ける。ギリギリのところで避けているが、さっきと違って意図的ではなさそうだ。けれど、装備している短刀を使ってないわけだからまだまだ余裕がありそうではある。

 

「ほらほら奪ってみなよ!」

 

ミルキーが挑発をする。けれど、己の体を武器にしているミルキーから何を奪えというんだ。ワンナの奪う魔法は使えない。

 

「へへっ!お得意の略奪を使えないなら大したことないね!」

 

「っ...!」

 

ミルキーの蹴りがワンナの頬を掠めた。そして次は膝、腹と、頬への一撃を皮切りに攻撃が当たり始めた。

 

「いっつ...」

 

ワンナは腹に蹴りを喰らった瞬間、その勢いを利用して大きく後ろに下がりミルキーから離れた。

 

「逃げてるだけでいいの?このままじゃあたし勝っちゃうよ?」

 

ミルキーはブレイクダンスを中断し立ち上がると、ボックスステップをしながらワンナに話しかける。ずっと動き続けているけれど、それが何か魔法に関係しているのだろうか?一度止まると速度が元に戻っちゃう、みたいな...まぁ癖で動き続けているだけかもしれないが。

 

…なんかあれ見てると、新○島とカ○エラーを思い出すな。待機モーションかなんかなの?

 

「その短刀を使いなよ。それを使えばもう少し楽しい試合になるのに...」

 

ワンナは構えない。

 

「…使わないんだ。じゃあ勝っちゃうけどいいよね!」

 

「……武器は」

 

「…なに?」

 

試合が始まってから、初めてワンナがまともな言葉を話し出した。

 

「君の一番の武器は、なんだい?」

 

「あたしの一番の武器?うーん...この体って言いたいけど、どっちかというと音楽の方かな」

 

馬鹿正直に答えてるんじゃないよ。ってかほんとなんでみんな試合中に普通に会話してるの?ちゃんと集中しろよ。会話がトリガーになって発動する魔法とかだったらどうすんだよ。

 

「音楽がないとスタミナもたないし、バフとデバフがあるからこうやって戦えてる。ってなわけで身をもって体験してみな!」

 

そう言いながらミルキーは側転やバク転をしながらワンナに近づく。そのまま飛び蹴りでもかまそうという魂胆だろう。

 

「そうだな、体験させてもらうとするよ」

 

そうワンナが言った瞬間、ブツッと音楽が止まった。

 

「ぶへらっ⁉︎」

 

音楽によるバフが無くなったためか、回転の勢いがなくなりミルキーは顔から地面に激突した。

 

「な、なんで音楽が...?」

 

「そんなに聞きたいなら、私がかけてあげるよ」

 

ワンナのその言葉と共に、再び音楽が流れ始める。

 

「あたしの魔法⁉︎なんであんたが使えるの!」

 

「そんなの、奪ったからに決まっているじゃないか。こんなこともわからないなんて、君は単細胞かい?」

 

「演奏が使えない...スキルでもダメ⁉︎なんでなんで⁉︎」

 

「私の略奪は物質以外にも効果を発動できる。魔法も例外じゃない」

 

「え、演奏がなくったって...あたしにはまだダンスが残ってる!」

 

気を取り直してミルキーが踊りながら蹴りを放つ。音楽でデバフをもらっているためか、さっきよりも速度が落ちており、どことなく動きがぎこちなくなっていた。

 

「へぇ、じゃあ今度はそれももらおうか」

 

ワンナがそう呟いた途端、ミルキーの体が硬直した。回転していた体はその動きを止め、力無く地面に倒れ込む。

 

「お...踊れない...?」

 

「君からダンスのスキルを奪った。少なくとも、この試合が終わるまで君は踊れない」

 

すごいな。物質として存在している武器や魔法魔法だけでなく、スキルまで奪えるとは。

 

「あ、あたしはスキルで踊ってるわけじゃない!自分の技術で...!」

 

「スキルってのは体の記憶、慣れ、その人の経験に他ならない。それを奪ってしまえば、たとえ自力でやっていたことでもうまく出来なくなってしまう。言ってしまえば、君はダンスの技術を覚え始めるその前の状態に戻ったらわけだ」

 

「う、嘘だ嘘だ嘘だ!そんなことできるわけない!」

 

「できるさ。そして、奪ったのだから私がそれを使うこともできる」

 

今度はワンナが踊り出した。そのキレは、先ほどまでのミルキーのそれとなんら変わりない。ミルキー以上でも以下でもなく、全く同じだった。

 

動揺していたのもあってか、今まで自分が使っていた技をことごとく喰らってしまうミルキー。冷静だったならば、攻撃パターンを読んで避けることもできただろうが...この状況で冷静になれと言うのは少々酷だろう。

 

「自分のダンスに見惚れて...倒れな」

 

最後に放たれたワンナの蹴りがミルキーの側頭部に突き刺さり、その意識を刈り取った。

 

地面に倒れ込むミルキー。傷ついていた体は、全て痕も残さず回復した。

 

試合が終わった。

 

二人に向けられた拍手が鳴り響くなか、ワンナは自分の足で試合場から出て、ミルキーは担架に乗せられて出ていった。

 

すぐさま第四試合の準備がなされ始める。そして俺は第四試合が始まるまでの間に、さっきの第三試合について考えていた。

 

「盗む魔法...略奪か。あれめっちゃ欲しいな」

 

少し気になっていたミルキーが負けたのは残念だが、勝った人の方を考える方が自分にとってより得になるだろう。なにしろ、この大会で優勝した人が英雄になるのだ。仲間になるかもしれないのは勝った人。実に合理的だ。

 

略奪の効果は大体わかった。まず盗めるものには、物質として存在しているものだけでなく、魔法やスキルといった技術も含まれている。肉体的な技能はスキルを盗むことで封じ、魔法はスキルだけでなくその魔法に対しての適性ごと盗んでいるのだろう。

 

魔法は詠唱すればほとんど誰にでも発動できるものだ。だがしかし、稀に発動できないものがいる。それは適性が全くない人。ミルキーは演奏の魔法が使えないと言った。適性ごと盗まれていなければ、こう発言することもないだろう。また、ワンナが意のままに魔法を使えていたことも、適性を奪っているという仮説の信憑性を高めている。盗んでも適性無くて魔力が足りず発動できませんでした、じゃ欠陥品すぎるしな。

 

そして略奪の発動条件...というか、対象に取れるもの、それはその人が自分の一番の武器だと認識しているものだろう。剣だったら剣を、魔法なら魔法を、体術ならその経験やスキルを、それぞれ盗むことができる。

 

また、盗めるのは一つだけではない。演奏とダンスを両方盗めていたからな。おそらく、その瞬間に一番だと思っているものを盗む、という感じなのだろう。演奏を盗られたミルキーは、ならば自分の武器はもうダンスしかないと思った。実際、似たようなことを言っていたしな。それによって略奪の対象が移り、再発動できるようになったというわけだ。

 

まぁ全部俺の妄想でしかないけれど、多分あってると思う。略奪の持続時間とかはわからないけど、流石に永続的ではないだろうな。もしそうだとしたらあまりにも強すぎる。時間制限があり、任意で返還することもできる、と言った感じだろう。無制限に奪えるとしたら...魔族かな?って疑いたくなるな。

 

「……ってか今思ったけど、参加者の中にフロート混じってたりはしねぇよな...あいつならやりかねないぞ...」

 

ヤベェ考えを思いついてしまったけれど、十分あり得る話だ。フロートじゃない魔族が紛れている可能性も十分あるけれど、紛れ込んでいて一番厄介なのはフロートだ。

 

他の魔族なら、ぽっと出の新人が好成績を叩き出しすぎて違和感をもたれるだろう。英雄に選ばれるほどにまで上り詰めようとするとどうしても不自然な点が出てしまう。つまり、疑えるチャンスが多くあるというわけだ。

 

けれど、フロートだとある一定の成績を残している奴になり変わってしまえばいいだけ。順当に成果を上げていた奴が、そのまま順当に英雄になったっていうふうに周りから見られ、違和感が少なくなる。というか、わざわざそんなことしなくともこの大会で優勝した奴になり変わればそれで終わり。誰にもバレずに勇者パーティーの仲間入りだ。

 

「…優勝した人と後で接触しておこう。速度探知でもしかしたら見分けられるかもしれないし...」

 

そんなことを呟いていたら、どうやら試合の準備が終わったようで、すでに試合場に二人の男女が立っていた。

 

「始めようか」

 

女の方、クミリアが腕をぐいと伸ばしながら言う。

 

「いつでもいいですよ。宣言も必要ありません」

 

男の方、ネオンは目を閉じて言う。その腰には長い剣がぶら下げられていた。刀...みたいだな。あんなの持ってるってパンフに書かれていなかったが...初出しだろう。周りの人も、なんだアレって感じで見ていた。

 

「面白いものぶら下げてるね。なに?ぶち砕いちゃっていいやつ?」

 

「やめてくれ。特注品で結構高かったんだ」

 

「そう。じゃあ壊さないであげるよ」

 

その言葉と共に、クミリアは走り出して拳を振る。俺やアクセルから見ると遅いとしか言えない速度だったが、普通の人と比べると速い。カリスに来て少し経った時くらいの俺よりかは速い。目測で大体秒速17メートルくらいってところか?

 

「無駄ですよ」

 

その拳を、ネオンは必要最小限の動きで避けていた。心を読んで、どこに攻撃してくるのかをあらかじめ察知していたのだろう。

 

「せいっ!はっ!」

 

バフをかけて強化された拳や蹴りが幾度となく放たれるが、その全てをネオンは避ける。放たれる前に避けているものがほとんどだ。少なくとも、この速度では当たらない。

 

「隙だらけですよ...」

 

回し蹴りの後隙を狙いネオンが抜刀、居合斬りを放つ。

 

「隙ってなんのこと?」

 

そう言いながらクミリアは一瞬で体勢を立て直し、肘と膝で挟み込んで居合斬りを受け止めた。

 

「すき...好き?愛の告白でもしたかったわけ?ちょっとそういうのクミさん困っちゃうな〜」

 

「そんなのではない」

 

「またまた、そんなこと言っちゃって〜...でも、あんたじゃダメだね!」

 

クミリアは刀から膝と肘を離し、その直後に蹴りを放って刀の持ち手を弾き飛ばした。

 

「クミさんはねぇ...伴侶にする人は自分より弱い人って決めてるんだよね」

 

「その心は?」

 

「ずっと守ってやりたいからね!」

 

「なら俺はそもそも対象外だ」

 

そう言いながら跳び上がるネオン。弾き飛ばされた刀を空中で掴み取りそのまま斜めに振り抜くと、切っ先から水の刃が飛び出した。おそらく水刃だろう。

 

「自分の方が強いって言いたいわけ?勝ってから言ってよね!」

 

クミリアが軽いジャブを放つ。すると急に水刃が弾け飛んだ。まさか、ジャブの風圧で吹き飛ばしたのか?

 

「恐ろしい拳だな。さすが不敗」

 

空中でなんとか身を翻して迫り来る空気の塊を避けたネオンは、やれ恐ろしいといった感じで肩をすくめる。

 

「そう言うあんたは心が読めるんだっけ?ならこれはどう?」

 

クミリアがさらに加速し、ネオンに近づく。

 

「加速したところで心を読めば...っ⁉︎」

 

クミリアが左腕を引き、拳を放つ構えを取る。そして拳が放たれる前に右に避けたネオン。しかし、すぐさましまったといった表情を浮かべながら無理矢理倒れ込む形で後ろに下がった。その鼻先をクミリアの右拳が掠めていき、風圧で傷がつく。

 

「当たらなかったか...今のフェイント見切るなんてすごいね!強いじゃん!」

 

「完全に左の構えだったのに直前で右に変えた...⁉︎体ぶっ壊れるぞ普通!心を読めてなかったらモロに喰らってたな...」

 

俺も見ていたが、かなり無理のある動きだった。既にある程度の速度が出ていた左の拳を一瞬で止めて、体を捻り右拳を突き出していた。俺なら速度操作の解除と再加速で似たようなことができるが、あれを人力でやろうとすると相当な負荷が関節や筋肉にかかるはずだ。肘を痛めても不思議じゃない。

 

「人より丈夫なのが取り柄なんでね」

 

「だとしても今のやつを何回もやるのはおすすめしないな」

 

「心配してくれるの?敵の心配してる暇なんて無いと思うよ」

 

「無駄だと言っているんだ。フェイントの有無が直前にしかわからないとはいえ、避けられる範疇ではある。何度やっても無駄。体を壊すだけだ」

 

フェイントの有無に限らず、まずは一発目を避けれる位置に移動する。フェイントがないならそれでよし。あればもう一歩動いてなんとか避ける。ってな感じを想定しているのだろう。あの感じだとフェイントをかけるかどうかは、本当に寸前まで決めてないみたいだから反射神経の勝負になるだろう。うまく避け切り、かつ体勢が整っているときが攻めに転じるチャンス。カウンターもできなくはない。

 

「壊さないと思うけど...まぁめんどくさいからいっかやらなくて。別の方法で突破しよーっと」

 

目を閉じて軽く跳びながらクミリアがつぶやく。そこにネオンが刀を振るも、ひょいと避けられていた。目閉じながら避けてたぞ。気配だとか風の動きとかを感じ取ったのかな?

 

「心を読むのなら...そうじゃん、何も考えなければいいんだ」

 

「何も考えないなんてことは不可能だ。たとえ狂化を使ったとしても思考はしている。先を読むことは可能だ」

 

「狂化はクミさん使ったことないな。味方を巻き込みかねないってのが怖くてね。守る力が欲しいのに狂化なんて本末転倒さ。友人は使いこなせていたんだけどね。まったく、愛の力ってのはすごいねぇ...羨ましいよ」

 

…狂化を使いこなせていて、愛の力...か。もしかしなくても、それってログ、メリッサ夫婦のことだったりしない?違ってるかもしれないけど、共通点が多いな...

 

「あークミさんも早く結婚して伴侶を守って生きていきたいな〜」

 

「…無駄な思考で攻撃の思考を覆い隠そうとしても無駄だぞ?」

 

「えっ?あっ、ごめんごめんそういうんじゃないんだ。ダメだないつのまにか頭がピンクに...」

 

額に手を当てて反省しているかのようなポーズを取るクミリア。ネオンはまたしてもそこを目がけて刀を振るも、サラッと避けられてしまう。何かに気を取られていても、攻撃だけは見えているらしい。

 

「えーっと、なんの話だったっけ...あ、そうだ。何も考えなければいいって話だったね」

 

「話すなら勝手にしろ。俺も勝手に攻撃しておく!」

 

そう言いながらネオンは刀を振り、果敢に切り込んでいく。

 

「クリアマインド、って知ってる?」

 

振られる刀を弾きながら聞くクミリア。刀を弾く拳はとても繊細な力加減がなされていた。刀を砕かないでくれというネオンの願いを律儀に守っているのだろう。

 

ってかクリアマインド?アクセルシ○クロでもするの?もしかして、光速にまで達して心を読まれても避けられない攻撃をしようってんじゃ...そんなわけないか。普通に明鏡止水のことだろう。

 

「感情の浮き沈みを無くし、心を落ち着かせる技術のことなんだけど...これを極めると、こんなことだってできる」

 

一分、と本当に小さくつぶやいてからクミリアは宣言した。

 

「『明鏡止水(クリアマインド)』」

 

クミリアが今までに見せていない妙な構えをとる。なんか、こう...形容できない構えだ。別に冒涜的なわけではない。何かに例えるのが難しい構えなだけだ。

 

そしてその構えをとっているクミリアを見たネオンが、目に見えて動揺する。

 

「心が...思考が、読めない?まさか、本当に思考を絶つ奴がいるとはな」

 

一度大きく距離を取るネオン。心が読めなくなったため、相手の行動を先読みすることができなくなった。ここからは心を読む魔法なしで、自力で回避や攻撃をしなければならない。状況を整理し、体勢を立て直すなら距離を取るのは正解だろう。あのまま突っ立ってたら不意の攻撃を避けることができないしな。

 

けれど、その距離は一瞬で詰められてクミリアの下段キックがネオンの左足にめり込んだ。

 

「んぐっ⁉︎」

 

集音魔法が骨を砕く音を拾う。ゴリグシャッ、と嫌な音が響き思わず顔を顰めてしまった。

 

クミリアはそのまま足を振り抜き、ネオンの足を曲がってはいけない方向へと曲がらせた。ちぎれ飛んでいないのが奇跡に見える。

 

「く、この...!」

 

左足が機能しなくなり、バランスを崩して倒れ込みながらもネオンは刀を振るう。

 

パキンッ

 

あっ、刀が折れた。振られた刀、その刃に対して垂直に3度拳を叩き込んで打ち砕いたのだ。

 

今までは意識的に刀への攻撃の威力を抑えていたけれど、明鏡止水で思考を止めていたためそのストッパーが外れた。結果、壊さないでくれと頼まれていたのに刀を壊してしまった。

 

「高かったのに⁉︎これじゃほぼ狂化と変わらないじゃないか!」

 

ネオンが悲痛な声で叫ぶ。なんなら狂化よりタチ悪い気がするなこれ。狂化はまだ制御できる可能性を秘めているけれど、こっちはもう完全に手がつけられない。思考していないんだから、誘導することもできないしな。敵味方の区別がついてるのかも疑問だ。

 

「いつっ...これでも喰らっとけ!」

 

地面に倒れたネオンは、最後の足掻きとして折れた刀を脚に突き刺そうとした。

 

だがしかし、クミリアはさっと足を上げて折れた刀を避けると、そのまま手を踏みつけた。

 

「くっ...はは、もう終わりだな」

 

これ以上の抵抗は無駄だと考えたようだ。

 

「もう俺の勝つイメージが浮かばん。未来は既に俺の負けで確定しているらしい」

 

踏まれていない左手は上げるネオン。

 

「出し惜しみしないで未来予知使っていればよかったのかな...ま、今更後悔しても遅いか」

 

えっ、未来予知できるの?なにその魔法知らないんだけど。めっちゃ教えてほしいkwsk。

 

「降さン゛ン゛っっっ!!」

 

ネオンの背中にかかと落としが突き刺さっていた。

 

「      」

 

無言で力尽きるネオン。完全に降参しようとしてたのに、クミリアが何も考えていないせいで追い討ちかけられてたな。おいたわしや...南無三。

 

ネオンの傷が全て治癒された。気絶したことで、試合が終了したのだろう。

 

そしてその背中めがけて拳を振りかぶるクミリア...って何やってんの⁉︎まさか、試合が終わってることに気づいてない⁉︎おい待て試合終わってんのにあんな拳叩き込んだら本当に死んじまうぞ!

 

「止めねぇと...!」

 

流石にやばそうなので、急いで止めに入ろうとした。その時だった。

 

「…はっ」

 

拳がネオンに当たる直前に止まった。クミリアの意識が戻ってきたのだ。

 

「…あれ、これもう試合終わってる?もしかして追撃しようとしてた?ご、ごめんなさい!もう少し秒数短くするべきだった!」

 

ネオンに勢いよく頭を下げる。秒数...そうか、発動前に一分って言ってたのは、スキルの効果時間を事前に決めるための宣言だったのか。思考しないから自力で解除することができないため、事前に決めるしか方法がなかったのだろう。

 

「って刀も壊しちゃってる⁉︎ほんとごめんなさいごめんなさいごめんなさい...」

 

準々決勝第四試合は、気絶している敗者ネオンに、ひたすら土下座して謝る勝者クミリアという、なんとも不思議な光景で終わった。




第三試合開始と言ったが、第四試合をやらないとは言っていない。
ってなわけで二試合を一話にまとめました。
サブタイトルで予想ついてた人もいるのでは?
相性の関係上、どうやっても8000字以上の試合にできなかったんですよね...おそらく、次回も二試合分やると思います。

誰が決勝に上がるかは...出してる情報量の違いでなんとなく検討がつきそうだと思いますが、予想しながら次回を待っていてください。
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