前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
準決勝第一試合開始です。
「ハァッ!」
準決勝第一試合の試合開始と共に、カノウが剣を金色に光らせながら何もない周囲に向かって振った。
「一撃で敗北は御免なんでな。先手を打たせてもらった」
未来へ飛ばす金色の斬撃。それを全方向に置いておくことで、アクセルの超高速攻撃を先んじて封じたのだ。
「金色は...未来に斬撃を送るんだったっけか。確か、あらかじめ飛ばす秒数を決めておくんだろ?斬撃が発動するのを待ってから攻撃すれば済む話だな」
確かにそれもそうだ。斬撃を空撃ちするのを待ってから攻撃すればいいだけ。指定された秒数より前に突撃するのも手だが、万が一の可能性を考えると待った方が得だ。わざわざ突っ込む意味がない。
「何度も空撃ちして、無駄に魔力を消耗するのを待つことにするよ」
…魔力って聞いて思い出したけど、もうカノウ魔法使えるんだな。魔力切れを起こしてからまだそんなに時間かかってないはず。聖域の中とはいえ、加速なしだと魔力が全快になるには時間がかかるはず...未来や過去に斬撃を送るなんてすごい魔法を使っている以上、短時間で魔力が回復しきるほどの魔力総量だったというのも考えにくい。
多分だが、ポーションをがぶ飲みしたんだろう。ポーションを飲んで魔力を最大まで回復しきったのだ。ポーションのデメリットである魔力回復阻害も、もともと闘技場の阻害があるので、実質ないようなものだ。ノーリスクでポーションを使える。どうりで回復が早いわけだ。
「魔力切れを待とうってんなら無駄だ。今回のこいつは任意発動なんでな」
「任意発動?そんなのできるのか」
「少々威力は落ちるがな。逆に言えばデメリットはそれだけ。待ち構えるにはもってこいだ」
「任意発動ねぇ...なら、君が反応できない速度で叩けば終わりだな!」
俺以外の誰の目にも追えない速度でアクセルが走り、カノウの左腕をバシッと蹴りつけた。左腕に擦過傷のようなものができ、血が滲む。
「ありゃ、意外と硬いな」
「防御魔法は幾重にも重ねがけしているのでね。ミュラーの反射はダメージを強制させるものだったから意味をなさなかったが、普通の攻撃ならちゃんと使える。それでも、防御魔法を突破してここまでの傷をつけられたのは驚きだがな」
カノウが傷口を軽くなぞると、傷口を覆うように白い膜のようなものが貼られた。あの魔法は俺も知っている。これ以上の傷の悪化を封じ、物理・魔法保護をつけながら少しずつ治していくタイプの治療魔法だ。傷が浅いため、これで問題ないと判断したのだろう。
「私なら傷つけられる。もっと数増やすから、覚悟しておけ!」
アクセルが、走っては蹴り、走っては殴りを繰り返すようになった。どの攻撃も、止まらずに走り抜けながらすれ違いざまにやっていた。金色の斬撃を喰らわないための速攻。時たまタイミングをずらしてリズムをずらし、カウンターを取らせないための努力もしていた。そのためなかなか斬撃を当てることができず、そのあまりにもな連続攻撃で、少しずつカノウの体に生傷が増えていく。
「痛え...が、無駄だ。さらに硬くなるだけでしかない」
治療魔法の効果で傷口に物理保護がかかるため、アクセルの連続攻撃が少しずつ効かなくなってくる。有効打を放つには真っ向から攻撃する必要があるが、そうすると斬撃を喰らってしまう危険性が高くなる。ハイリスクは確実。対して、リターンがどれくらいかはわからない。防御魔法をどれだけ突破できるかによって変わるため、予測が難しい。よって、この選択を取るのを躊躇してしまうだろう。
「そして...もう目も慣れてきた!」
アクセルが真横から突っ込んできた瞬間、そこに向かって金色に光る剣を振った。すんでのところで避けることに成功したアクセルだったが、あらかじめ設置されていた、過去から飛んできた斬撃が爪先に掠ってしまう。
「あらら、ちょっと喰らっちゃったか」
なんてことないかのようにアクセルはそう言いながら、履いていた靴を脱いで行き裸足になる。靴の先が切れてしまい、使い物にならなくなったためだ。そして見える素足には傷はない。
「あの程度じゃ傷すらつけられないのか...流石に威力落ちすぎか。要改善だな」
「いやいや、十分だろう。私でなければスパッと足の指が飛んでいてもおかしくないさ。これ以上の強化は蛇足ってものだ」
「人が魔法使って耐えられるものを魔物が耐えられないわけないだろ。人一人斬れなきゃ、魔物は斬れない」
「…見切ったんだろう?任意発動を止めればいいじゃないか。人力で目押しすればいい」
「無茶言うな。それなら...こうするまでだ」
一瞬にして、カノウの周囲の空気が切り刻まれた。無数に設置されていた過去からの斬撃が、同時に発動したのだ。
「なんのつもりだい?」
「一度全て解除しないと、切り替えられないのでね」
カノウがそう言うと、剣が黒色に光り出す。過去に飛ばす斬撃を放つつもりだ。
「これで行くとしよう」
「その刃は剣を振らせなければ無力!奪い取ってくれる!」
カノウの周囲を守っていた斬撃の壁がなくなり、ここからは遠慮なく攻撃ができる。だが、まずは剣を剥ぎ取ることにしたようだ。剣が振れる限り未来から飛んでくる斬撃は止まないし、武器を失えばその後が楽になる。一石二鳥だし、それを十分に実行可能な力を持っているから、やらない理由がなかった。
アクセルはジグザグに走ってカノウに近づく。軌道を読まれないためだろう。だが、未来から飛んできた斬撃が薄く肩を切り裂く。ほんの少しの傷しかつけられなかったが、ここで初めてカノウがアクセルに傷をつけた。
「こんな傷ないも同然!無駄無駄!」
アクセルがカノウに十分に近づき、剣に手を伸ばした。
だがしかし、なぜかアクセルの手は剣に触れることができなかった。
「なに...?」
手をまじまじと見ながら不思議そうな顔をするアクセル。
「それ、持ち主以外触れられない感じかい?」
「違うよ。そんな大したものじゃない。ただ...」
黒く光る剣を握り、構えながらカノウが言う。
「俺はこの剣を試合が終わるまで黒く光らせる。そして、今送り込まれてきた斬撃は、試合が終わる最後の最後まで放たない。言ってる意味がわかるか?」
「…なるほど、そういうことか」
アクセルがつぶやく。
「つまり、未来であの場所で剣を振ることが確定している以上、剣を手放すことは有り得ないってことか」
…そんなのあり?
「でも、それなら君から剣を奪って私があの場所で振ればいい」
「残念だけどそれはできない。黒の光は、剣が僕の手から離れた瞬間に消え去る。お前の魔力で起動することもできない。矛盾が発生してしまう以上、この剣が俺の手から離れることはない」
過去に斬撃を送り込むには、送られてきた斬撃が発生してからその原因を作り出すまでの間、ずっと黒い光を纏わせ続ける必要がある。既に未来から斬撃が送り込まれている以上、その原因が作られるまで黒い光は必ず纏わりつく。そして光を纏うには、カノウが触れている必要がある。故に、カノウの手から剣が離れることはない。
「この斬撃...避けられるかな!」
避けようのない未来からの斬撃がアクセルを襲う。いくら速く動いたところで、これは避けられない。今現在、どの辺りを通っていたのかを記憶しておけば、未来でその位置で剣を振ればいいだけ。現在から未来に飛ばす金色の斬撃はその性質から命中するかは不確定だったが、こっちは未来から既にわかっている過去に飛ばすのだから当たらないわけないのだ。
「まぁ避けられるわけないよな。ってか硬えなお前!」
未来から送られてきた斬撃の位置を覚え、アクセルへの攻撃と同時に原因を作りながらカノウが叫ぶ。最初の一回の位置さえ斬らなければ、未来は確定し続ける。それ以外はいつでもやっていいのだ。
「どれだけバフ積んでやがんだお前!」
「これ生身って言ったら君、驚いてくれるかい?」
準々決勝のときにも同じようなことを言ってたな。定型文なのか?
「それが本当だったらな。あと、誘導しようとしても無駄だ!」
どうやら、アクセルは逃げる方向や攻撃をする方向を少しずつずらしていき、カノウの立ち位置を誘導して最初の斬撃の原因を作らせようとしていたみたいだ。
「過去に送るかどうかは俺の任意だ。誘導したところで発動しなければいいだけ!」
「そいつは嘘だな。発動は任意じゃなくて強制だろう?未来から飛んできた位置で振れば、否応無しに発動する。全く同じ軌道を描く必要があるから発動していないだけなはずだ」
なにその情報知らない。一方的に断言しているけど、どこにそれを見抜く材料があったのだろう。
「嘘は通じないか。どうしてわかった?」
「…適当に言ってみるものだな」
適当かいな。よくもこうスラスラと言えたもんだ。
「まぁこれでよくわかった。誘導して斬らせるのは無理そうだな」
カノウに蹴りかかりながらアクセルがつぶやく。誘導はもうやめたみたいで、完全に攻撃にシフトしていた。
「ならやることは一つ。さっさとこの試合を終わらせて、試合後に斬らせる!」
あ、そうか。試合が始まるときにフィールドのリセットがされるが、試合が終わるときにはそれはない。次の試合の開始以降の未来から過去に斬撃を飛ばすことはできないけれど、試合終了から次の試合が始まるまでの間に飛ばすことは可能だ。未来から飛んでくる斬撃にやられる前に、試合を終わらせてしまえばそれでいい。
「さっさと卒倒しろ!」
未来から飛んでくる斬撃を喰らいながら拳を振るうアクセル。この速度でこの距離、当たらないわけがない。
けれど、なぜか当たらなかった。
「…変だな。なぜ当たらない」
蹴りや拳を何度も放つが、なぜかどの攻撃もうまく当たらない。当たったとしても、ほんの少し掠るくらいだ。決定打にならない。
「当然だ。俺はこの試合で気絶することはない」
「……なるほど、未来が確定しているからか」
「次の試合が始まれば、過去に斬撃を送り込めなくなる。けれど、次の試合が始まるまでの時間はとても短い。君が床を壊したときも、そこまで長い時間はかかっていなかった。そんな短時間で、気絶した俺が意識を取り戻すことはできない。万一回復したとしても、既に剣はこの手から離れているだろう。故に、この試合で俺は気絶することはない」
「なら、意識を飛ばさずに一撃で葬るのみだ!」
拳を大きく振りかぶり、胸めがけて勢いよく突き出す。今までの試合の中で一番速い。ゴモンとの試合と比べても最速。そんな拳が、心臓を貫かんとカノウの胸に向かって放たれていた。
「無駄さ」
「っ⁉︎」
拳が急に右に逸れ、アクセルは空を殴りつけることとなった。音速に近い速度の拳振られたことで、ソニックブームが発生して轟音が鳴り響いた。
「うるせぇ...が、なんとか避けられた」
カノウは左手で耳を押さえながら、動揺してすぐそばで固まっているアクセルに向かって剣を振る。ギリギリのところで避けられはしたが、突き出していた右腕に剣の切っ先が掠ったようで、血が滴れる。
「飛ばした斬撃じゃ威力不足だったが...直接当てりゃバフで押し切れるな。勝ち筋が見えてきた」
カノウはバッと剣を振り、剣に付いた血を飛ばしながら言った。
「君...なかなか狂ってるな。まさか、頭を身代わりにするとは思わなかった」
アクセルの拳がなぜ逸れたのか。それは、未来が確定しているために起きた、世界の修正力のせいだった。
なんとカノウは、自身の胸に向かって飛んでくるアクセルの拳に対して顔面を突き出したのだ。あんな拳を顔面に喰らえば、気絶することは避けられない。しかし、カノウがこの試合で気絶することは絶対にない。よって、拳は強制的にカノウの顔面から逸れ、空気を殴ることになったのだ。
アクセルも言ったが、正直に言って狂ってる。外れるってのが分かっていても、音速に近い速度で飛んでくる拳に顔面を突き出すなんて、並大抵の精神状態ではできないだろう。拳に合わせられる技量もそうだが、とても普通じゃない。これが準決勝まで勝ち上がってきた猛者の実力...ってことなのか?
「流石に二回目は勘弁だがな」
「ならちゃんとそのまま受け止めてくれ!」
離れた距離から一気に駆け出して飛び蹴りを胸めがけて放つアクセル。さっきの拳は上から狙ったが、今度は下からだ。顔を差し出して妨害するのは無理だろう。
「嫌だね。こいつで受けよう」
飛び蹴りに合わせて、今度は剣を突き出したカノウ。そしてそれを避けるかのように飛び蹴りの軌道が変わり、アクセルはあらぬ方向へと飛んでいった。
「くっ...そうか、その剣が壊れることも許されないのか。未来が確定しているというのは本当に面倒だな」
足が壁に突き刺さったアクセルが、なんとか足を引っこ抜きながらそう言った。剣が壊れてしまうと、未来で斬撃を送り込むことができなくなってしまう。そのため剣を盾として使うことで、相手の攻撃を必ず逸らすことができていた。
「未来から過去に斬撃を送り込む...やってること自体は時間操作だけど、それをここまでの相手の行動制限に応用できるのは普通に感服するよ。君は強い」
手を叩いてカノウを称賛するアクセル。
「それは、降参ととっていいかい?」
「そんなわけないじゃないか。君は確かに強い。けれど、おそらく決勝では勝てない。どちらが上がってくるかはわからないけれど、どちらでも君は負けるだろうね」
「そんなことはないさ。俺は全て倒して頂点に立つ」
「無理さ。ワンナが勝ち上がれば、その剣か魔法を奪われる。武器の認識をすり替えれば少しは耐えられるだろうけど、やがて手札を全て盗られて負ける。クミリアが上がってきても負ける。あの子は底が見えない。未だ誰にも見せていない切り札で心臓をぶち抜かれて終わりじゃないかな」
「…それは、やってみないとわからないだろう」
「やってみる?君はここで負けるんだ。そのチャンスすらやって来ずにね」
アクセルが再度走り出し、カノウに近づく。
「無駄だ。逆に斬り倒してやる!」
向かってくるアクセルに合わせて剣を真横に振る。タイミングが完全にあっており、このままいけばお互いがぶつかる寸前のところで剣が刺さることだろう。
しかし、剣は掠りもしなかった。剣に触れそうになったその直前、アクセルの体が急に加速したのだ。そしてその勢いのまま足払いをかけ、うつ伏せにカノウを転ばせる。普通だったら今ので足が吹き飛んでいてもおかしくないが、なんとかまだ繋がっているのはかけられた防御魔法のおかげだろう。もっとも、ここまでぐちゃぐちゃになっているのなら、千切れていた方がまだマシだった気もするが。
「君の未来確定を利用させてもらった」
そう言いながらアクセルはうつ伏せに倒れているカノウの背中に足を乗せる。
「その剣を壊そうとすれば、壊れるのを防ぐために押し退けられる力が働く。横から迫ってくる剣に拳を放つことで押し退けられ、その力を推進力にしてさらに加速したわけだ。いい方法だろう?」
「くっ...!」
「このまま意識を奪わずに一瞬で殺し、試合を終わらせるのもいいが...何が起こるかわからないからな。懸念材料は取り除くとしよう」
アクセルは背中に足を乗せながら手刀を作り...
それをカノウの右肘に突き刺した。ドバッと勢いよく血が飛び出し、肘から先が分離する。
声にならない声が、耳につん裂くように響いた。思わず耳を塞いでしまうが、集音で音を集めてるためほとんど意味がなかった。
「確かこの剣、君の手が離れたら光が消えるんだろう?そう自分で言っていたよな。だったら離さなければいい。腕ごともらえばそれでよかったんだ」
未来確定は、斬撃の原因を作れなくなる要因しか制限できない。それ以外ならどんなことでも妨害することはできない。肘から先を切断することも、腕にカノウの魔力が残っており剣に魔力供給を行うことができるため、普通に行うことができたのだ。
もし切断した拍子に手から剣がすっぽ抜けたら、なんて可能性を考慮する必要はない。そんなifが起ころうとすれば、そもそも切断することすらできないからな。切断できた以上、絶対に手から剣は離れないし、その状態でも原因を作ることができるということになる。
「さて、魔力がなくならないうちに斬ろうか」
アクセルは落ちているカノウの腕を持ち上げ、カノウの手の上から剣を握り込んだ。握り方が少々不自然だったが、手から剣が離れないように強制力が働いたからだろう。
「…ところで、どこら辺で斬撃が飛んできたんだったけか。正確な位置がわからん。君、覚えているかい?」
倒れて苦しんでいるカノウにそれ聞く?なかなか鬼畜だぞやってること。
「流石に答えてはくれないか。なら、こいつに任せることにしよう」
アクセルはそう言うと、そのまま自力では一歩も動かなかった。なぜ『自力で』とつけたかというと、剣がアクセルを引っ張るかのように動き出したからだ。
腕に残っている魔力は、血と一緒に急速に流れ出てしまう。剣の黒い光を維持するために必要な魔力も、すぐに尽きてしまうだろう。だから剣が勝手に動き出した。矛盾が起こるのを防ぐために、自ら動いて未だ作っていなかった原因を斬って回っていたのだ。
「…ふむ、これで最後か。君の剣には大いに翻弄されたが、対処もやってくれたから助かった」
最後の一太刀を放った瞬間、剣から黒い光が消え去った。矛盾防止の強制力で動いていたのだから、同時に消えるのは当然とも言えるな。
「できれば黒と金以外にも見せて欲しかったのだが...特に赤が気になるな。ミュラーとやらに対して使おうとしていたよな。あれはどんな効果だったんだい?」
「お、教えられる、ほどの...余裕、ある...わけ...」
「そうか、なら、試合が終わった後に教えてくれ」
倒れているカノウのもとまで剣を引きずりながら歩くアクセル。
「この剣と、私の拳、どちらで終わらせてほしいか言え。ああ、何もせず失血死で終わらせてもいいぞ。どれで試合を終わらせようか」
「そう...だな、それなら...」
残った左手を使い、なんとか仰向けになったカノウ。
「道連れ、しようや」
カノウの口の中から、とても小さな炎の球が飛び出した。
ものすごい極小の球。遠視を使っていてもギリ見えるか見えないかってレベルの大きさだ。
俺とカノウとアクセル、その他にこれを見れた人はどれくらいいただろう。
そして、これを認識できた人にしか、この後の出来事は理解しえないだろう。
極小の火の球は、その大きさとは打って変わってとてつもない量のエネルギーを内包していた。本来なら数メートルクラスの大きさになるほどの熱量を、直径一ミリにもみたないほどの大きさにまで圧縮されていた。
それが一気に解放されたらどうなるか。想像に容易い。
蓄えられていたエネルギーが瞬間解放され、猛烈な熱が周囲に撒き散らされた。
「うおわアッツ!」
観覧しているこっちにまで熱が届いてきて、熱くて思わず目を閉じてしまう。確か、観客席まで被害が行かないように結界が張ってあるはずだけど...貫通してきたのか。どれだけやばいんだ今の。
「いやー流石に危なかったね今のは!」
アクセルの大きな声が響いてきた。熱はもう過ぎ去ったので、目を開けて試合場の方を見る。
「でも、熱より早く下がれば問題ない。少しは喰らうけど、爆心地ほどではない。あのままじゃ危なかったけど、ここなら十分耐えられた」
地面にはまだ熱が残っているだろうに、裸足で歩いて中央まで戻ってくるアクセル。その目には、完全に傷が治癒したカノウの姿が映っていた。
「でも、なんでわざわざ声出したんだい?何も言わずにやっていれば不意打ちできて、もしかしたら私を倒せていたかもしれないのに」
カノウに向かって問いただす。声が本当に不思議に思っている感じだった。
「…不意打ちは俺の流儀に反するからな」
一度はちぎれ飛んだ右腕や、ちぎれかけた左足の調子を確かめながらカノウは答える。
「未来から飛んでくる不可避の斬撃で不意打ちしまくっといて何を言っているんだ君は...まぁいい。いい攻撃だった。やっていて楽しかったよ。ありがとう」
アクセルが手を差し出す。
「…ああ。こちらこそ、良い経験になった」
自らの足で立ち上がってから、カノウはアクセルの手を取り握手をした。
これにて、準決勝第一試合が終わった。
第一試合開始と言ったが、第二試合をやるとは言っていない。
ってなわけで、今回は分割しました。
意外と8000字行けちゃったんですよね。
その分次回が心配ですが...まぁ頑張ります。