前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8376字。

サブタイトルでわかると思いますが、スライム戦です。


スライムって呼吸してるの?

「いってらっしゃいませー」

 

役所を出る。

 

「じゃあねカリヤさん。頑張ってねー!」

 

「じゃあな」

 

今回の依頼はステラと反対方向なので、ここからは別行動だ。それよりも前に本を返しに行かないといけないのだが。ステラについていくのに必死で忘れていたんだよな。

 

「さっさと返そう」

 

パパッと本屋まで移動して本を返す。そしたら、村の外に出る。

 

「それにしても、昨日の今日でまたあの森に行くとはな...」

 

昨日、俺が落ちてきてステラに助けられたあの森に、今日依頼で行くことになった。

 

「ってかあんのスライムまだいやがったんだな。すでに分裂していたのか」

 

今回の依頼の内容はこうだ。分裂して増えてしまったスライムの全滅、または森からの排除。あの森から退かすことさえできれば倒さなくてもいいらしいのだ。

 

「まぁ出来るだけ倒すつもりだけど」

 

スタミナと魔力の消費を抑えるために、能力を使わずに歩いて森へと向かう。

 

「でもスライム倒すの面倒なんだよなぁ。動かなくなるまで潰さないといけないのに、どんどん小さくなって狙いづらくなるし、時間経つと勝手にくっついてデカくなるし。どうやって倒せばいいかな...」

 

前は肉弾戦で駆除したが、今回は数が多い。全て倒し切る前にスタミナが切れるだろう。能力使いながらダガーで切り刻めばスタミナ切れする前に倒せるはずだ。もちろん数にもよるが。

 

魔法という選択肢もあるが、水弾は意味があるかわからない。火球は森の中だから使うわけにはいかないし、微風は論外。土流で土の中に埋めたらどうなるだろうか。試してみてもいいが、それを試すなら能力を使う方に魔力を残しておくだろう。魔法はあくまで保険だな。

 

「あっ、弓矢宿に置いてくればよかったな。どうせ使わないんだし」

 

スライムに弓矢は意味ないってステラも言ってたし、無駄な荷物になってしまうから置いてくればよかった。今から宿に戻るのも面倒だからやらないけど。

 

「ってかこの世界のスライムってめちゃ面倒だよな。ドラ○エみたいに倒したら消滅してくれたらいいのに。というかどの魔物も死体残るの生々しくてちょっと嫌なんだよな。素材だけ綺麗に残ってくれればいいのに」

 

返り血とかも普通に残るので、服がすぐに血で汚れるのが今のところ一番嫌だ。能力がもっと強くなったら、返り血の速度を遅くしたり自分の速度を加速したりして避けられるようになるだろうか。なんて贅沢な魔力の使い道だろう。

 

「よし着いた。森ってここであってるよな」

 

昨日来たばっかだが、ちょっと懐かしい感じがする。

 

「おわっと、魔物のお出迎えか」

 

猪の魔物が森に入ろうとする俺に向かって突っ込んでくる。

 

「よっ...と、ほれ!」

 

ジャンプして突っ込んでくる魔物の、そのツノの側面に左腕の盾を当てて軌道を逸らす。そして右手でダガーを逆手で持ち、魔物に突き刺す。

 

「そういえば盾初めて使ったな...よし、死んでる」

 

一応ちゃんと死んでいるのを確認してから森の奥に移動する。

 

「また来たよ...」

 

今度は二体魔物が飛び出してくる。スライムのせいで森の外側に追いやられているのだろうか。

 

「ああもう邪魔邪魔!」

 

自分の速度を加速させ、魔物の攻撃を避ける。

 

「今からお前らの住処を取り返してやるんだよ!邪魔すんな!」

 

ダガーをしまい、ロングソードを取り出す。そしてロングソードの側面で魔物の一体を思いきりぶん殴る。

 

「お前もだ!」

 

そのまま回転してもう一体の魔物も勢いよく叩く。

 

「ふぅ...そうだよな、さっきは突然すぎて思わず殺しちまったけど、こいつら無理に殺す必要ないんだよな」

 

こいつらもスライムのせいで森を奪われかけている、いわば被害者なのだ。こいつらを殺す依頼でもないし、わざわざ殺さなくてもいいのだ。死なないように手加減するのも面倒ではあるのだが。

 

「結構な速度で叩いたけど死んでない...よな?うん死んでない。じつは致命傷負ってて死まで秒読みとかはやめてくれよ?ちょっと申し訳なくなっちゃう」

 

帰ってくる時に死んでたら埋葬してあげよう。とまぁそんなことは置いといて、森の奥に進む。

 

「スライム出てこいスライム。猪は来んな」

 

しばらく森の奥へと歩き続ける。

 

「全然出てこないな?」

 

まだ歩き続ける。

 

「一箇所に固まってんのかな?森の中心近くにいるって聞いてたんだけどなぁ」

 

歩く。歩く。

 

「それとも動ける限界まで小さくなって散らばってんのかな?」

 

歩く歩く歩く。

 

「本当にいねぇな。エンカウント率メタ○スライムかなんかなのか?」

 

シンボルエンカウントだからそんな関係ないはずなんだけどなぁ。青いから緑の多い森の中で目立つし、見落とすわけないと思うんだけど。

 

「…おいおい嘘だろ?森出ちったぞ?」

 

ついぞスライムどころか猪の魔物一体にも会うことなく森の反対側に出てしまった。

 

「どこいるんだスライム...戻るか」

 

森の方へと振り返る。

 

「…お前前にも背後取ってたよな。なんなの?そういう習性があるの?」

 

振り返ると、スライムの大群がいた。数は数えきれない。顔がないし、半透明なので境目が分かりづらくて数えられないだけだが、相当な数いる。前に戦ったやつの数十倍はあるだろう。

 

「この数倒すのは骨が折れるな...」

 

動かなくなるまで潰す。そして他のスライムに潰した個体を吸収させないようにする。これを繰り返さない限り、このスライム群は倒せない。さて、どうしようか...

 

「まぁいいや。まとめてかかってこい!」

 

ダガーを手に取り、能力を発動させて臨戦体制を取る。そしてスライムがどう動くのか観察しようとするが、あることを思い出す。

 

「そうだこいつ自分からは襲ってこないんだった。忘れてたわ」

 

ダガーを振り、一番手前にいたスライムを斬る。スパッと綺麗に斬れたが、斬れたスライムがそのまま近くにいた別のスライムに吸収される。

 

「ありゃ、うまくやらないといたちごっこになるだけか。なんとかして一体ずつ誘き出してから...およ?」

 

スライムの挙動がなんか変なような...

 

「おいおいちょっと待てちょっと待て!まとめてとは言ったけど纏まれとは言ってねぇ!」

 

先程、スライムが斬れたスライムを吸収したことで、ほんの少しだがデカくなった。そのせいで、そのスライムが別のスライムに接触しまた吸収。それが繰り返されることでどんどんデカくなっていく。

 

「ドラ○エのキン○スライムかよ!」

 

最終的に全てのスライムがくっつき、一体の巨大なスライムに変化する。

 

「どうしよこいつ...倒すにしてもデカすぎるし...こんなデカさじゃ一人だとキチいぞ?うん逃げよう。村で助けを呼ぼう」

 

とりあえず能力で加速して村までの道を塞いでいる巨大スライムの背後に回る。スライムは自発的に襲ってこないはずだし、このままなら安全に逃げれるはず...

 

「…えっ、なんで着いてくんの?」

 

まぁまぁな速度で走っているはずだが、ドスンドスンという音を出しながら巨大スライムが追いかけてくる。

 

「こいつ目ないはずだし...音か?」

 

バッと立ち止まり、少し横に足音を出さないように忍び足で歩きながら足元の石を拾い、反対側に放り投げる。

 

もしあの巨大スライムが音を頼りに近づいてきているってんなら、これで向こうに行くはずだが...巨大スライムは真っ直ぐこちらに向かってくる。

 

「音じゃないのか。じゃあなんでこっちに来るんだ?」

 

走りながら考える。なんでだ?なんで巨大スライムは真っ直ぐこっちに迫ってこれるんだ?何を感知して...まさか。

 

「こいつのせいか!」

 

鞄から小瓶を取り出す。前に倒したスライムの入った小瓶だ。これを狙って巨大スライムは俺のことを追ってきたのだろう。

 

「このまま村に帰るわけにはいかない...よな」

 

このままだと、村に戻る俺を追って巨大スライムも村に入ってくる。弓矢の村にスライムは相性が悪すぎる。村にたまたまいる冒険者を巻き込むしかないが、倒し切るまでにどれだけの犠牲が出るかわからない。

 

「こいつを投げ捨てればスライムはそっちに行く。そうしたら追ってこなくなるだろうし、俺も逃げれる...いや、追ってくるならこいつを利用すれば!」

 

方向転換する。向かう先は村じゃない。かといってこの森の中でもない。さらに奥、森の外だ。

 

「持っててくれよ俺のスタミナ...!」

 

能力を使って森の外へと走る。俺が速く走るのに追随して巨大スライムも加速する。よし、ちゃんと追いかけてきているな。

 

「あともう少しで...出た!」

 

森の外に出る。あともう少し森から離れないとな。

 

「おら!ついてこいスライム!」

 

スタミナが切れる限界近くまで走る。なんとか走り切り、森から結構離れたところまで逃げることができた。

 

「ここまで逃げればもう大丈夫だろ...」

 

俺が立ち止まると、ドンっと巨大スライムも立ち止まる。

 

「よーしいい子だ。さーてスライムやい!こいつが欲しいんだろ?」

 

小瓶を取り出すと、巨大スライムが飛び跳ねる。意外と感情あるんだな。顔ないから分かりにくいけど。

 

「こいつが欲しいならそこで待ってな。今出すからなー待ってろよー」

 

小瓶の蓋に手をかけながら、少しずつしゃがんでいく。

 

「いくぞーいくぞー、今開けるからなー...隙あり!」

 

地面に手をつく。

 

「土よ、流動しその形を変えよ!」

 

巨大スライムの真下の地面が液状化する。そのまま巨大スライムを土の中に沈めていく。

 

「よし、これなら...まずっ⁉︎」

 

地面の液状化が解除され、巨大スライムが半分地面に埋まる。

 

「魔力切れ...やられた!」

 

巨大スライムの、地面に埋まっていない上側が分離して動き出す。

 

「そうだよこういう時のためのこれだよ!マジックポーション!」

 

鞄から急いでポーションを取り出し、蓋を開けて一気に飲み干す。うっ、お腹がチャポンチャポンになる...!でも、力が漲ってくる感覚が身体中を駆け巡る。

 

「よし!土よ、流動しその形を変えよ!」

 

再度魔法を発動して地面を液状化させる。液状化した地面はそのまま巨大スライムを飲み込んでいく。そして完全に飲み込まれたのを確認してから魔法を解除して液状化を止める。

 

「これで...倒せたかな。呼吸してんのかわからないからこれで死ぬかはわからないけど、とりあえず出てくることはないだろ多分」

 

まぁ、万が一スライムが地面から出てきた時のためにここから離れておこう。急ぎたいところだが、スタミナがもうほとんどないので走ることはできない。仕方ないので、ゆっくりと歩き出す。

 

「これで依頼完了だな。死んでなくても、森から出したから依頼は達成してるしね」

 

森からスライムを排除した時点で、依頼は既に達成していたのだ。わざわざ魔力を使い、ポーションまで使って土流で埋めたのは、ただ単に小瓶のスライムを手放したくなかったからだ。さっさと手放していればもっと早く終わっていたのだが、この選択に後悔はない。

 

「…迂回するのもめんどいし森の中突っ切るか」

 

魔物が出てくるかもしれないが、村までの最短ルートはこれなのでそのまま森の中に入る。スタミナも少しずつ回復してきているので、村まで走ることはできなくてもロングソードを振るくらいはできるだろう。

 

「それでもエンカウントするのはやめてほしいけどな...」

 

『仮谷よ。村に戻るまでの間に魔力を使い切っておくのじゃ』

 

うわ、なんか急に神託降りてきた。

 

「なんでですか?」

 

『お主、さっきポーションを飲んで魔力を回復させたじゃろ?』

 

「そうだな」

 

『ポーションで得た魔力が体の中に残っている限り、どれだけ待っても魔力が回復しないんじゃ』

 

「えっと...どゆこと?」

 

『本来なら魔力は自然に溜まっていく。周りの聖素の量によって速さは変わるが、どんなに少なくても少しずつ回復していくんじゃ。けれど、ポーションを飲んで得た魔力が残っているとそれができなくなる。ハッキリ言って異物じゃからな』

 

「異物のせいで回復を阻害しちゃうのか。だから村までの間に使い切っておいた方がいいってわけか」

 

そんなこと知らなかった。ってか魔力自然に回復していくんだな。いや、よくよく考えてみたら魔力切れした後しばらくしたら使えるようになってたから、自然回復してるのはちょっと考えればわかることだったな...ん?なんかちょっとおかしくね?

 

「魔力は聖素さえあれば少しずつ回復していくんだろ?だったらなんで魔力切れ起こした後すぐに能力を使えるようにならないんだ?加減速は無理でも速度探知くらいなら少ない魔力でも使えるだろ?」

 

『ああ、その話か。それなら簡単じゃ』

 

「というと?」

 

『魔力切れを起こしたら、完全に魔力が回復し切るまでは魔法を使うことができないんじゃ』

 

「そうなのか...戦闘中に魔力切れを起こしたらヤバそうだな」

 

なんかオーバー○ォッチ2のイ○リーの回復みたいな性能してるな。

 

『じゃからポーションは魔力切れを起こした時の緊急処置にすぎん。ドーピングは時と場合を見極めてやるんじゃ』

 

「いやドーピングって言うなよ。やりづらくなるじゃん」

 

まぁ保険として村に戻ったら何個かポーションを買っておこう。断じてドーピングではない。

 

「…そうだ。一つ聞きたいんだけどいいかな?」

 

『なんじゃ?』

 

「能力でさ、魔力の回復速度を早めたりってできない?」

 

『あー...多分できるぞい』

 

「じゃあスタミナの減少速度を遅らせることは?」

 

『それは...どうだろう。やってみなきゃわからんのう』

 

「そっちは厳しいってわけか。でも一応魔力が回復しきったら試してみるか」

 

もしこれらを本当にすることができたら、魔力は常人よりも長続きするし、物理での戦闘も長時間することができる。たとえ勇者であってもこんなことはできないだろう。俺が勇者たちを死の運命から変えるというのなら、誰にもできないことをできるようでなければ話にならない。勇者に一部分でも勝てるところがなければ、ただのお荷物になってしまう。

 

「おっ、森抜けた。説明ありがとな神様。魔力使い切っておくわ」

 

『微風』

 

微風のスキルを発動させながら能力を使い、手から噴射する風の速度を加速させながら村まで歩く。これなら効率よく魔力を無駄撃ちできるだろう。

 

「どれくらい持つのかなこれ...ポーションの回復量を調べるのにちょうどいいな」

 

微風は流れ続ける。加速しようともほとんど他の物質に影響を及ぼさない風が手から吹き出し続ける。

 

「……流石に村までは持たないか」

 

村に着くほんの少し前、手から出ていた風が止んだ。なんとなくの肌感覚だがポーションでの魔力回復量がわかったのでいい収穫になった。あとは魔力回復しきった後に、魔力回復の速度をいじれるかの実験をするだけかな。

 

「そういえば俺の魔力量ってどんぐらいなんだろ。MP量みたいなの調べられたりしないのかな?」

 

ステータス画面とか出せないから現在のスタミナとか魔力量とかがわからないのがちょっと困る。まぁそんなステータスウィンドウが急に空中に出てきたら逆にびっくりするけど。

 

「この世界レベルの概念ないっぽいし、成長とかしないのかな...それともなんかの修行を積めば成長するとかなのかな?筋力とかも自力でつけないといけないみたいだし、修行は必要かもなぁ」

 

「おっ、カリヤじゃないか。お疲れ様」

 

独り言をしていたら、いつも通り衛兵の仕事をしているヨイさんに声をかけられる。

 

「ヨイさんもお疲れ様でーす」

 

門を通り、村の中に入る。とりあえずまずは役所に行って報告しないとな。

 

「あっ、移動速度加速する分の魔力残しとけばよかった。移動が面倒すぎる」

 

速く動けるってのに慣れたせいで、普通に歩いているだけでほんの少しイライラが溜まってくるようになってきた。ランニングシューズとか自転車を手に入れる前のポケ○ンくらいめんどい。

 

「まぁいいや。着いたし」

 

役所についた。さっさと報告して、本屋寄って宿に戻ろう。

 

「すみませーん。報告しに来ましたー!」

 

「お疲れ様です。スライムの件ですよね」

 

「はい。討伐できたかは...わからないけど、とりあえず森からは追い出しましたよ」

 

「そうですか。すみません、報酬は確認が取れてからになっちゃいます。明日、日が昇ったら確認の部隊を行かせるので、明日の昼頃に報酬の受け取りに来てください」

 

「ああ、そうなんですか。わかりました。あっ、もしスライムが森にいたら報酬ってどうなりますか?」

 

ちゃんと確認してないから、もしかしたら分裂した個体が残っている可能性があるんだよな。

 

「もしいたら少し報酬は減っちゃうかもしれません。でも、数が減っていることが確認できれば、ある程度は出しますよ」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「一応聞いてもいいですか?一人でどうやってスライムを倒したんですか?今後の参考になるかもしれないので、話していただけると嬉しいです」

 

「それなら...これを使ったんですよ」

 

スライムの入った小瓶を見せる。

 

「どうやってかは知らないですけど、スライムはこいつの位置がわかるみたいなんですよね。着いてきたんで森の外に誘き寄せて、土魔法で地面の中に埋めました」

 

「なるほど...それなら安全に駆除できますね。ありがとうございます。今後の参考にさせていただきます」

 

「いえいえ、役に立てたなら嬉しいです」

 

そう言って役所を出る。ハッキリ言って偶然が重なった結果の勝利だったので、あんまり感謝されても困るんだよな。

 

「よし本屋行こう」

 

もうそろそろ夜だ。陽が沈むとほとんどの店が閉まってしまう。本屋も例外ではない。

 

パパッと本屋に行き、本を借りて鞄に入れる。

 

「まだもう少し時間あるな...ギリギリ間に合うか?」

 

懐中時計を取り出して時間を確認する。夜まであと十分といったところだ。道具屋まで急げば閉店前に着くだろう。間に合うならポーションを買い足したりしたいが...

 

「多分間に合わないかな。本持ってるし。急いで行って結局間に合わないませんでしたとか無駄でしかないし」

 

今日はもうすでに三回冒険をしに行っている。疲れも結構溜まっているし、これ以上疲れるようなことはしたくない。

 

「ご飯の時間はまだもうちょいみたいだし、先にお風呂に行っておこうかな」

 

自分の部屋に鞄を置き、着替えの服を持って大浴場に向かう。

 

「うわ、また貸切状態だ。この世界の人はいつ風呂に入ってるんだ?」

 

未だにこの世界の時間感覚がわからない。来て二日で何がわかるんだって話だけど。

 

「まずはかけ湯して...と」

 

置いてある桶で湯船のお湯を掬い体にかける。

 

「お湯には...ダメだ。まだ体が拒絶してる。寝る前にはまだ入れないか」

 

寝起きに入るのはOKだが、寝る前はダメらしい。意外とトラウマは深いようだ。

 

「しゃーねぇ。ちゃんとした風呂は朝入るか」

 

昨日と同じようにかけ湯しまくって体を洗い流していく。

 

「これでいっか」

 

大浴場から出て脱衣所に入る。そして置いてあるタオルで体を拭いていく。

 

「あっ、微風で髪乾かそうと思ってたのに魔力切れで出来ねぇじゃん。明日試そう」

 

ゴシゴシとタオルで頭を拭いていく。綺麗に拭かないと自然乾燥になって髪の毛が傷んでしまう。ドライヤーが欲しい。

 

「んー...あっ、もうそろそろでご飯じゃん。行かないと」

 

髪の毛を拭き終わって着替えも着て、最後に懐中時計をつけようとした時見えた時刻で、もうすぐご飯の時間になると知る。

 

「ご飯ご飯ー!」

 

昼間来ていた服を、洗濯籠に入れる。この宿、洗濯までやってくれるのだ。ほんと優良宿すぎる。

 

「今日の晩飯は何かなー?」

 

食堂に入る。

 

「あっ、カリヤさん来た。もうすぐできるので席に座ってお待ちくださーい」

 

言われたとおりに席に座ると、すぐに料理が出てきた。もうすぐって本当にもうすぐだったな。

 

「いただきまーす」

 

ご飯を食べる。

 

「飯うまー!」

 

やっぱ美味しい。

 

「…でもやっぱナイフとフォークとスプーンだけじゃ食べにくいな。箸が欲しい」

 

今度自分で作ってみよう。箸くらいなら適当な木の枝をうまく整形すれは作れるだろう。

 

「でもやっぱうまー!」

 

疲れで若干テンションが狂っているような気がしないでもないが、気のせいだと思っておこう。

 

「ごちそうさまでした!」

 

あっという間に食べ尽くし、食への感謝を告げる。そして自分の部屋にさっさと戻る。

 

「よしもう寝よう」

 

もう既にめっちゃ眠い。よくよく考えれば今日はもう20時間以上起きてるんだよな。朝になる前の5時間と、日中の15時間。地球では、6時に起きて23時近くに寝ているから、起きてる時間は大体18時間。元の感覚が残っているうちは、この世界で普通に生活してるだけでとてつもない眠気に襲われてしまう。早くこの世界の生活習慣に慣れていかないとな。

 

「うん、本は起きてから読もう。明日も一日頑張れるように...おやすみ!」

 

誰もいない部屋で一人おやすみを告げ、ベッドに転がり込む。

 

明日は何をしようかなと考えているうちに、いつのまにか俺は眠りについていた。




相変わらず神様が都合のいい説明役に収まっててちょっと笑う。
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