前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8535字。

ギルド+後夜祭です。
余談ですが、ガネル編は全部サブタイに読点つけようかなって思ってやってます。
そのせいでこんな長いサブタイに...


赤髪ギルド職員との出会い、後夜祭珍騒動

「ギルド行くか」

 

大会が終わり、やることがなくなった。最初は優勝した人を出待ちして接触しようかと思っていたけれど、後夜祭があるならその時でいいだろう。

 

というわけで、俺はギルドへと向かう。試合が濃厚すぎて忘れていたけれど、ガネルに来てからすぐに闘技場に入ったから、まだギルド行ってなかったんだよな。とりあえず、最低限冒険者の登録だけでもやっておかないと。

 

「ここ...だな」

 

道ゆく人にギルドまでの道を聞いて、歩くこと3分。ギルド前にたどり着く。立地はちょっと微妙だ。なぜか入り組んだ道の奥にあって、外からのアクセスがしづらい。まぁ、ガルムが良すぎただけかもしれないけど。あそこは冒険者ゾーンとしてまとめられてたし。外との行き来、楽だったな...

 

「よーし入ろう」

 

扉を開け、ギルド内に入る。広さは...王都のギルドよりも広いな。流石は冒険者の町。大会直後なため人はほとんどいないが、好都合だ。さっさと登録済ませて、空いてるうちに依頼書でも見て回ろう。

 

「どこも登録の列は左端なんだよな。わかりやすくて助かるわ...」

 

ちなみに、依頼書が貼られている掲示板も左の壁にあることが多い。登録をするのは町に来たときに限られるため、左端の列に人が並ぶことが少なく、依頼書を見たい人の邪魔になることがほぼないからだろう。ちゃんと考えて作られている。

 

「ってか、誰もいないな。人っ子一人いない...」

 

大会の影響で人員がそっちに流れていたりするのかな。でも、流石に一人ぐらいはいても良いはず...

 

「…ん?こんな時間に来るなんて珍しい...」

 

奥の方にあった扉が開き、そこから赤い髪の女の人が出てくる。

 

「すみません。今、係の人がほぼ出払っていまして...私が代わりに受付します」

 

代わりってことは、本来は別の部署なのだろうか。やってくれるなら助かる。

 

「許可証の提示をお願いします」

 

「はい。これ、お願いします」

 

黒い許可証を出して渡す。

 

「黒...やはり、神の使い様でしたか」

 

どうやら、だいぶ俺の人相が広まってきているらしい。普通に町を歩いていても、神の使いだと気づかれることが多くなっている印象だ。今も、許可証を見せる前から見当がついていたらしい。

 

「でも、だいぶ遅かったですね。てっきり大会初日、もしくはそれよりも前には来ると思っていたのですが...」

 

「情けないことに、日程を間違えていまして...まさか前倒しになっていたとは思っておらず、こんなことに」

 

「なるほど...登録終わりました。許可証をお返しします」

 

「ありがとうございます」

 

許可証を受け取る。

 

「今日はこの後、何をなさるのですか?」

 

「はい?」

 

なんでそんなことを聞くんだ?...依頼を受けるかどうか聞いてきてるのかな。

 

「今日は町の探検をしてから、後夜祭に参加するつもりです。大会上位者に会っておこうと思いまして。依頼書の確認は一応しようとは思っていますが」

 

「そうですか...少しお時間いただいてもよろしいでしょうか」

 

「いいですけど、なんですか?」

 

「これらの依頼書に目を通してもらいたく...」

 

そう言って受付の人が依頼書を3枚ほど見せてくる。

 

「これは?」

 

「どれも巨大化魔物の討伐依頼です。それも、この町の冒険者が何度も返り討ちに遭っているレベルのです」

 

「おおぅ...」

 

冒険者の町であるガネルの冒険者が返り討ちに遭うって結構やばいんじゃ...それも、何度もだろ?半端者が軽い気持ちで依頼を受けて返り討ちに遭ったってわけでもないだろう。それほど強い魔物ってわけだ。

 

「やばそうな依頼だな...」

 

「そうなのです。ですので、これ以上普通の冒険者グループに頼むのは難しく、神の使い様がこの町に来たら頼んでおけと上司に言われておりまして」

 

「なるほど...」

 

依頼書を読み込んでいく。返り討ちに遭ったとは言ったもののほとんどの人が生還しているらしく、巨大化魔物の情報が事細かに載せられていた。

 

「もちろん、無理にとは言いません。時間があるときでいいので、無理なくお願いします」

 

「わかりました。依頼書ってもらっちゃっても大丈夫ですか?きちんと読み込みたいので...」

 

「どうぞ」

 

もらえるみたいだ。依頼書3枚を受け取る。

 

「ありがとうございます。依頼書、読んでおきます」

 

「今後の神の使い様のご活躍、ギルド職員一同願っております」

 

それ言われると、やらないって選択肢無くなるよな...

 

「…あっ」

 

なんか急に思い出した。カイスのギルド職員のサーマルから、ガネルのギルドで妹さんが働いてるから、もし会ったらよろしく言っておいてってなことを言われてたんだった。確かキネットって名前だったはず。どんな容姿かは聞いてないけど、赤い髪だし多分妹さんだよな?

 

…小言言いまくる嫌な妹だってこともサーマル言ってた気がするけど、全然そんな感じしない。礼儀正しい良い人って印象の方が強いな。姉にだけキツいこという感じかな?あんなだらけた姉を持ったら、そうなるのも仕方ない気がするけど。

 

「どうされました?」

 

あっ、無駄に思考速度加速させてた。思考の加速が癖になってきていて、いつのまにか少しものを考える時にでさえ無意識に加速しているようになっていた。あっ、と呟いてしまってから受付の人に反応されるまでの間にさっきの思考を全部やってるって思うと、だいぶ加速が速くなってきたなぁ...としみじみ思ってしまう。

 

「少し思い出したことがありまして...つかぬことをお聞きしますが、あなたの名前、もしかしてキネットというのでは...?」

 

「そうですが...どうして私の名前を?」

 

「以前カイスに滞在しておりまして、そこでサーマルというあなたの姉を名乗る人に会い、あなたの話を聞いたんですよ」

 

ほんとに姉なのかわからないし、こう言っておいた。流石に本当だろうけど。サーマルなら勝手に姉を名乗っていても不思議じゃないっていう謎の信頼がある...自分で言っててあれだけど、かなり酷いこと言ってるな。

 

「そうですか、姉さんが...姉さんはなんと言っていましたか?」

 

「会ったらよろしく言ってくれ、と」

 

「それだけですか?」

 

「そうですけど...」

 

ほんとによろしく言っといてって言われただけなんだよな。何か伝言を頼まれたってわけでもない。

 

「それだけのために神の使い様を使いっ走りにしますかあのバカ姉は...!」

 

ワナワナと拳を震わせるキネット。かなーり怒ってるな。やっぱし、姉にはキツい感じか。

 

「使いっ走りって...ガネルに来たらついでにお願いという感じだったので、そんなに怒らないであげてください」

 

「いいえ、ちゃんと怒ります。後でテレパスでこっ酷く叱っておきます」

 

「テレパス...念話ですか。たまに連絡してるんですか?」

 

「毎日話してます」

 

毎日話してんのかよ。よろしく言っておいてってのはなんだったんだ...というか、そんな遠い距離を念話で話せるって結構すごいな。双子だから繋がりやすいのかな?

 

「神の使い様もうちのバカ姉に振り回されたりしたこと絶対ありますよね?聞きましたよ。ご飯を奢らせたみたいな話」

 

「あーそんなことありましたね...大丈夫ですよあれくらい。そこまで懐にダメージはありませんでしたし」

 

「大丈夫ならそれで良いのですが...今後こんなことが起こらないよう、改めてキツく言っておきます」

 

ほんと、しっかりした妹さんだなぁ...サーマルとはえらい違いだ。頭の良さとか、礼儀良さとか、そういうの全部サーマルから吸い取って産まれてきたんだろうな多分。

 

「出来るだけ姉には優しくしてあげてくださいね...俺の顔に免じて許してやってください」

 

「…そこまで言うのなら...神の使い様、優しいのですね」

 

「自分、兄弟も姉や妹もいない一人っ子なんで、どういう関係性が兄弟姉妹として普通なのかわからないんですけど...やっぱ家族なら大切にしたほうがいいと思うんです」

 

俺なんか17で死んじゃった親不孝者だからさ。もっと家族と過ごしておけばよかったなと後悔をすることが、異世界にきてからも何度かあった。いつ死ぬかわからないのは地球も異世界も一緒。家族を大切にするのは、今からでは遅い。遅い分、より濃く大切にする必要がある...ってのが俺の持論だ。

 

「家族は大切に...ですか。あの怠け癖をなんとかしてくれれば、考えてもいいんですがね」

 

少し笑いながらキネットは言う。

 

「神の使い様。今日はありがとうございました」

 

「感謝されることなんて俺は何も...」

 

「あなたとお話ができ、新しい価値観を持つことができました。姉さんが言っていた通り、あなたと話すのは楽しいですね」

 

「いえいえそんな...あ、感謝するくらいなら、その神の使い様って呼び方をやめてほしいです。ちょっとむず痒いので、名前でお願いします」

 

「ではカリヤ様」

 

「様付けもやめてほしいです。呼び捨てか、さん付けで」

 

「ではカリヤさんと呼ぶことにします...姉さんは呼び捨てなんでしょうね」

 

「そりゃもう当然のように。というか、最初からタメ口だったな...」

 

最初にサーマルと会ったときのことを思い出す。サボってたところを引っ張り出されていたな。今思うと、給料がいいから仕方なくやってる感じだったんだろうな。カリスに左遷するぞって言われたとき喜んでたけど、給料減るってのを聞いた瞬間に手のひら返してたし。

 

「ああ、やっぱり...」

 

頭に手を当ててため息を吐くキネット。気苦労が絶えないな...ちょっとカワイソス。今度カイスに行く機会があったら、もう少しちゃんとしてやれとサーマルに言っておこう。

 

「…あっ、すみませんずっと引き止めちゃってました。仕事中だろうに...」

 

キネットは本来ここの受付の担当ではない。係員がいないから代わりにやってくれてるだけだ。話し込んじゃったけど、迷惑だったろうな。反省。

 

「別に構いません。残っていた仕事はすぐに片付くものばかりですし...ほら、ちょうど皆が戻ってきたところです。いい暇つぶしになりました」

 

スッとキネットが立ち上がる。奥を見ると、確かに何人か職員が戻ってきているところだった。

 

「普段は依頼受付をやっていますので、機会があればまたお話ししましょうね」

 

そう言って、キネットは裏へと消えていった。

 

「…聞いてたよりも良い人だったな」

 

後ろを見ると、冒険者の人たちもちらほら入ってきていた。混む前に、依頼書見ておかないと。

 

「えーっとなになに...?おお、知らない魔物ばっかだ。こりゃ楽しくなるぞ...!」

 

俺は近くにある依頼書から、一つずつ読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後夜祭の始まりだー!!!」

 

うおおおお゛お゛っっっ!!!

 

雄叫びに近い歓喜の声が辺りから響いてくる。

 

「スゲェお祭り騒ぎだな...こんなの見るの初めてだ」

 

どこを見渡してもどんちゃん騒ぎだ。普通にうるさい。祭りってこんなのだっけ...いや、後夜祭ってのは名前だけで、ただ騒いで楽しみたいだけか?

 

「飲み食い無料なのは嬉しいけど...どこ見ても酒しか置いてねぇな。食べもんは全部喉渇くものばっかだし...」

 

いっぱい食べていっぱい飲めってことなんだけど、もう少し未成年に配慮してほしい。異世界だから飲んでも良いなんてふうには考えたくない。この世界で普通に二十歳になったら飲むんだ...めちゃフラグっぽいけど、そのフラグは必ず断ち切ってやろう。

 

「自前で水持ってきててよかったな...」

 

実は俺、普段は水しか飲まない。毎日朝食は牛乳、運動の時はスポドリと例外はあるが、ほぼ水だけだ。お茶はほとんど飲んだことない。苦味強くてお茶苦手なんだよな...だから、お茶しか出ない飲食店は辛かった。この世界、まだお茶っ葉があまり浸透していないみたいで、カリス以外だとほとんどお茶を見かけない。結構パラダイスだったりする。

 

けれど、たまに地球に存在しない飲み物出される時があるので、こうしていつもスキットルに似た形の容器に水を入れて持ち歩いているのだ。魔法でいつでも水を作れるので、水筒を持ち歩く意味は特にないがなんとなくだ。

 

「っとと、飲み食いするのは後だな。とりあえず上位組を探さないと」

 

俺が後夜祭に参加したのは、大会上位者と接触するため。準々決勝からの8人とは接触したい。

 

「確か、選手が集まってるって場所があったはず...」

 

基本的に、選手も一般人もどこで飲み食いしてても問題なくなっているが、暗黙の了解のように選手が集まっているところがあるという話を、後夜祭が始まる前に仕入れていた。あくまで暗黙の了解なので、必ず行ってはいけないわけではないという話も聞いた。だる絡みしなければ大抵許してくれるそうだ。明確な理由があるなら尚のこと許してくれるらしい。まぁ、そこで神の使いという身分を振りかざすつもりはないが。普通に頼むつもりだ。

 

「この辺...だよな?」

 

この辺りで集まってると聞いたのだが...人混みをかき分けながら進んだからもしかしたら位置がずれている可能性もある。選手の人たちを目視できれば早いんだけど...

 

「…まさか、あそこじゃないだろうな」

 

何処もかしこも騒がしいが、その中でも一際騒がしいところがあった。聞いたことある声が混じってるし、もしかしなくてもあそこだろう。後夜祭を楽しんでいる騒がしさではなく、なんか言い争ってるというか、なんというか、そんな感じの騒がしさだった。できればあんまり関わりたくない。周りの人も同じように思っているようで、そこから少し距離を取っていた。だから近づきやすいのだが...やっぱあんまり行きたくない。

 

「まぁ行くしかないんだけど...何やってんだあれ」

 

周りから避けられており、空いている空間に出る。そこで見たのは...なぜかワンナに後ろから抱きついているクミリアの姿だった。

 

「…何あれ?」

 

何度見てもよくわからない。目を擦っても変わらない。幻覚でもないみたいだし...信じられないが現実のようだ。

 

「よくわかんないけど...接触するか。あのー、なんかお取り込み中のところすみませんが、ちょっと良いですか?」

 

わちゃわちゃしてる7人の集団に近づきながら声をかける。アクセルはいないみたいだった。どこか別の場所にいるのか...そもそも、後夜祭に参加してないのかもな。なんかそんな気がする。

 

「ごめんそれ後!君が誰なのか知らないけどこいつ引き剥がすの手伝ってくれ!」

 

ワンナにそう言われる。

 

「…それはいいんですけど、そもそもなんでそんな状態に?」

 

抱きついてるクミリアの背後に回りながら聞く。

 

「こいつが心を奪ってみてくれと何度もせがんでくるから仕方なくやったらこのザマだ!」

 

「あー、そういう...なら、返却すればいいんじゃ?」

 

「したさ!でもこいつ酒飲みまくってたせいで馴染むのに時間がかかってんだ!」

 

「それはご愁傷様で。それじゃあちょっと失礼して...引っ張りますね。ふんっ!」

 

腰あたりを掴んで思いっきり後ろへと引っ張る。

 

「ぐぬぬぬ...こいつ力強すぎんだろ!」

 

全力で引っ張ってんのに全然離れねぇ!

 

「びくともしねぇから加速も出来ねぇし...!というかバフかけてやがる⁉︎執着心凄すぎんだろ!」

 

心奪われてる状態かつ、酒飲んで泥酔状態なのにどうして魔法使えんだよおかしいだろ。

 

「まずはかかってるバフを無くさないとどうにもなんねぇぞ...盗めたりしないのか?」

 

「意識飛んでるようなものだから無理だ!早くなんとかしてくれ貞操の危機だ...!」

 

そこまで行くとは思えないんだけどな...なんかずっと抱きついてるだけだし、どっちかっていうと妹を甘やかしてるような感じに見える。心を奪われたからといって必ずしも恋愛感情を抱くってわけでもなさそうだ。

 

「そんなに言うならもうちょい頑張ってみるけど...魔法使えばいけるかな?」

 

なんの魔法使えばいけるかな...水膜で滑りやすくして、重力操作で後ろに引っ張りながら加速してみるか。出来なかったら他を試そう。

 

「ちょっと濡れるかもしれんが我慢してくれ」

 

1527ページ左上 黒のみ 水膜

 

クミリアが触れている部分に、水の膜を張る。

 

「うわなんかビチャビチャする!」

 

悪いとは思うけど、真っ先に思いついたのがこれだったんだよな。ごめん。

 

7713ページ 黒のみ 重力...

 

ちょっと待て。今気づいたんだが、この絵面不味くね?男が女性の腰に手を回して後ろに引っ張ってるってのも十分不味いけど、何よりもやばいのは...百合を引き剥がそうとしてる男って図だ。過激派に殺される...!

 

確かにね?俺も百合は好きだよ?見たらてぇてぇって言うし、あら^〜とかよくコメントもした。でもね、それはあくまで漫画ゲームアニメとかのはなしでね?現実で見たらちょっと違うなってなるわけよ。ワンナ嫌がってるし、そこはちゃんと頼まれたんだからやってやらないとダメなわけで...百合乱暴好きだけど...まぁ、なんだ。俺は悪くない。

 

7713ページ 黒のみ 重力操作

 

心の中で言い訳をし終えたので、改めて重力操作を発動し、クミリアにかかっている重力を全て後ろに向けて引っ張る。

 

「これで加速すれば...よし!」

 

速度操作のおかげで、なんとかクミリアを引き剥がすことができた。

 

「まだだ!なんでも良いから動けないようにしてくれ!」

 

まぁ確かに、まだ心戻ってないなら押さえつけていた方がいい...のかな?また剥がすのめんどいし、拘束しておくか。

 

2007ページ下 黒 赤 拘束

 

一応カスタムで強化した鎖でクミリアを縛りつける。これもやっぱ絵面酷いけど、頼まれたからね、しょうがないね。

 

「…よし、流石に動けないみたいだな。よかったよかった」

 

これでダメだったら魔法復唱して鎖増やそうと思っていたけど、問題なかったみたいだ。

 

「た、助かった...」

 

めっちゃ安心したような声を上げるワンナ。そんなにか...

 

「本当に助かったよ君。ありがとう」

 

「いえいえ」

 

「他の人らは、飲んでてまともに動けないやら、力が足りなくて引き剥がせないやら、反撃喰らって伸びてるやらで役に立たなかった。君が来てくれて本当に助かったよ」

 

うわホントだ。クミリアが目立ちすぎて気づかなかった。よりによってゴモンが反撃喰らったのかよ...南無三。あと、クミリアをツンツンするのやめときなさいミルキー。心配してるんだろうけど、ゴモンがやられたの見てよく近づけるな...いや待て、顔真っ赤だ酒飲んでんのか。なんとなく子供だと思ってたけど、成人してたのか。

 

「そういえば、なんの用だったんだい?助けてもらった恩だ。ある程度の頼みは聞くつもりだが」

 

おっ、やっと本題に入れそうだ。

 

「えっと、今日から大会の試合を見たんですけど、皆さんお強かったので使ってた魔法とかスキルを少しでもいいので教えてもらいたいなと思いまして...」

 

「…なるほど、それは難しい願いだな」

 

「厳しいのは承知の上です。それでもなんとか...!」

 

「そもそも教えても君に使いこなせるかわからないというのもあるが、私は恩もあるし構わない。だが、他の人がちゃんと教えてくれるかはわからないな」

 

今まともに話せるのはワンナくらいだ。この感じだと、ワンナ以外の人と今このタイミングで交渉するのは無理そうだな...

 

「…ん?君、もしかして...神の使いのカリヤかい?」

 

あっ、気づいた。

 

「…ふむ、それなら...君に良いことを教えてあげよう」

 

「良いこと?」

 

「この町のルール...と言った方がいいかな。まず、この町は完全実力主義だ。強いやつが上。それはつまり、勝敗が決まっていなければ上も下もないということだ。たとえ神の使いでも、勇者だとしても、まだ戦ったことのないやつとはイーブンな関係になる」

 

それ結構珍しいな。冒険者の町だからかな?

 

「そして、だ。勝負して勝ったやつは、負けたやつから力を授かれる。魔法やスキルなどの、物ではないものに限られるがな」

 

そういえば、ワンナとクミリアの試合の中で、勝者が敗者から教えを請うことがある的なことを言っていた気がしたな。大会外でもそうなのか。

 

「つまり言いたいのは...知りたいのなら戦って勝ってみろ、ということだ。相手が神の使いなら、みんな喜んで相手してくれるだろう」

 

「なるほど。単純明快でわかりやすい」

 

「他の人には私から話を通しておくよ。空いている日がいつか聞いておく」

 

「ありがとうございます」

 

「明日、この町の一番南西にある闘技場に来てくれ。そこで落ち合おう...聞き忘れていた、君の予定は大丈夫かい?」

 

「大丈夫です。来たばっかなんで予定まだ決めてないので」

 

「そうか。じゃあ、さっき行った場所に2時集合にしよう。そこで他の人の予定を話す。その後、私と勝負だ。いいね?」

 

いきなり明日勝負か。早いな。

 

「わかりました。では明日」

 

ワンナのおかげで用が済んだので、昼間取った宿に戻ることにした。良い人だったなワンナ。略奪魔法の使い手との戦闘か...ちょっと楽しみだ。

 

「…ふぇ?なんでクミさん縛り付けられてるの...?」

 

あっ、ようやくクミリアの意識が戻ってきたようだ。まぁそんなことは今の俺にはあんまし関係がないし、このお祭り騒ぎから早く抜け出したかったので、拘束魔法を解除してその場からスタコラサッサと立ち去ったのだった。




やっとカリヤくんキネットとご対面。
まさか魔族だとはつゆほども思ってないんでしょうね...

次回から、大会上位者との戦闘をしたり、巨大化魔物の依頼をしたり、クミリアと接触したりといった展開になると思います。
ガルム編が少し短かったので、その分ガネル編は長くなる見込みです。
20話近くあったカイス編を超えるかも...?
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