前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8004字。

ワンナと戦います。


速度操作と、魂の痛み

「よく来てくれたね。時間ぴったしだ」

 

昨日ワンナに言われた通りの場所までやってきた。昨日あらかた探索したとは言っても、まだ慣れない道なので少し迷ってしまい時間ギリギリになってしまった。もう少し早く出ればよかったなと反省している。

 

「手続きは既に済ませてある。中に入ろう」

 

「わかった」

 

闘技場へと入っていくワンナの後ろについていく。

 

「ああそうそう。ちゃんと他の人の予定聞いてきたよ。全員オーケー。今から説明するけどいいかい?」

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

どこぞの死亡フラグみたいになってしまったが、別にそういう意図はない。

 

ワンナからアクセルを除いた残り6人と会う日時を聞く。どうやら、この3日間の間に全員と接触できるそうだ。中には、もともとあった予定を蹴ってまで俺と会う予定を差し込んだ人もいるらしい。そんなに神の使いと戦いたかったのだろうか。

 

「とまぁこんな感じだが...かなり詰め詰めのスケジュールだが大丈夫かい?」

 

「平気だ」

 

「…そういえば、昨日は丁寧語だったのに今は普通にタメ口になっているな」

 

「あの時はものを頼もうって時だったからな。それに、勝敗がついていない人とは対等なんだろ?ならタメでも問題ないと思ってな」

 

「ああ、それが正しい。たとえ子供が10とか20とか上の冒険者と話す時でも、基本タメ口だ。他の町でやったら怒鳴られるだろうけどな」

 

「タメでもそんなに怒られたことないけどな」

 

「それは君が神の使いだからだろう。そうじゃなきゃ怒られるさ」

 

「会ってきた人がみんな優しかったってのもあるだろうけどな多分」

 

「運がいいんだね」

 

「悪い奴にも何回か会ったけどな。実際標的にされたことあるし」

 

「それはご愁傷様...よしついた。上ろう」

 

二人で試合場に上がる。

 

「小さな闘技場だけど、ここもあの大会の時のように、試合が終わればその瞬間に回復される。手加減なしの全力が出せるってわけだ」

 

このガネルには、ここと同じような感じの闘技場が至る所にある。大会で使われることが多いが、こうやって個人で申請して使うこともできるのだ。回復効果もあるから、気軽に戦闘ができるのがいいな。流石は冒険者の町...って、俺このセリフガネルに来てから何回言った?まだ来て2日なのに十回以上行った気がする...

 

「準備はいいかい?」

 

「いつでもいいぞ」

 

「そうか...さぁ、試合開始だ」

 

その宣言と共に、結界のようなものが試合場を囲むように貼られた。

 

「そして質問だ。君の一番の武器はなんだい?」

 

「それ、略奪の発動に必要なのか?」

 

「必ず言わないといけないってわけじゃない。ただ、これを言っておくと発動しやすいというだけさ。平常時だと、自分の一番の武器がなんなのか認識していないことの方が多い。質問すれば、たとえ口には出さずとも心の中で自ずと考えてしまうからな」

 

「なるほどな。ついでに会話が続けば暗示をかけて思考誘導もしやすいってか」

 

「おや、どこで暗示のことを?」

 

「試合中の会話全部聞いていたからな」

 

「なるほど、手の内はあらかたバレているというわけか...それで、君の一番の武器は?」

 

「言う必要もないね。俺の一番の武器は最初から決まってる。お前も予想がついてるだろ?」

 

「予想はついてるけど...君の代名詞は結構あるからな。神速だとか雷装だとか爆発魔だとか...どれを取れるかまではわからない」

 

神速...音速のアクセルよりも俺遅いのに、神速だとさもアクセルよりも速いみたいになっててちょっと語弊があるような...あっ、神の使いの速度だから神速か。納得。

 

「最初のだ最初の。あと、爆発魔は忘れてくれその二つ名は不本意だ」

 

「そうなのかい?...まぁそれはそれとして、遠慮なく盗ませてもらうよ!」

 

手をこっちに向けるワンナ。盗まれた瞬間がわかるように速度探知使っておこーっと。

 

………

 

……

 

 

「っっっっ!!!」

 

「ちょ、君大丈夫かい⁉︎」

 

し、心臓が...痛い...!

 

いや...違う...!心臓じゃない...でも、苦しい...!

 

「何も盗めてないし...何がどうなって...」

 

「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅーっ」

 

少しずつ...落ち着いてきた...でも、まだジンジンする...

 

「どう見ても大丈夫じゃなさそうだ...一度試合を止めて休憩するかい?」

 

「そ、そうしてくれ...」

 

「救護室に運ぶ。歩けるかい?」

 

「肩貸してくれ...」

 

「ああ、当然だ」

 

ワンナの肩を借り、試合場から出て救護室へと向かった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気分はどうだい?」

 

救護室のベッドで横になっていると、だいぶ痛みが引いてきた。

 

「…だいぶマシになったよ。ありがとう」

 

「私はここまで運んだだけさ。感謝されるほどのことはしていない」

 

十分ありがたいんだけどな。

 

「そんなことより...何が起こったんだい?私が略奪を使った瞬間から苦しみ始めたように見えたけれど...」

 

「さっき、盗めなかったって言ってたよな?盗むはずだったのは速度操作のはずで、そして盗もうとしたらこうなったってことはつまり...どういうことだ?」

 

『速度操作を盗ませようとしたからじゃ』

 

おっ、神さまおひさー。それで、なんで速度操作を盗まれそうになったらめっちゃ痛くなったわけ?

 

『速度操作能力はお主の魂に刻み込んでおる。それを盗むということは、お主の魂の一部を抜き取ることと同義。そのため完全に盗まれることはなかったが、魂が少しの間じゃが引っ張られた。それがさっきの痛みの原因じゃ』

 

あー...なるほど、原理はわかった。ありがとう神さま教えてくれて。

 

『今後も同じようなことがもしかしたらあるかもしれないからの。今のこのタイミングで説明できてよかったぞい』

 

同じ経験をするのは勘弁願いたいがな...

 

というか、速度操作は盗めないのか。速度操作だけが使えない状況になることなんて珍しいし、同じ力を持つ相手と戦うことなんて普通じゃできないからやってみたかったんだがな...特に後者の方は、フロートにコピーされるなどして十分にあり得ることだから試したかったんだけど、できないってんなら仕方ない。

 

「…おーい、本当に大丈夫かい?もしかして意識が朦朧としていたり...」

 

「えっ、あっ、大丈夫だ。もうピンピンしてる」

 

神さまと会話してて現実に意識が向いてなかった。いらない心配させちゃったな...

 

「あ、あと痛みの原因に心当たりがあったわ」

 

「なんだい?やっぱり、略奪のせいだったりするのかな」

 

「速度操作能力は神から授かった力だから、特別な力で守られてる。だから盗めない。でも、引っ張られはするみたいで、それが痛みとして現れるって感じだ」

 

神さまに言われたことを、うまく噛み砕いて説明する。魂に刻まれてるうんぬんは多分言っても解らないと思うし、こんなもんでいいだろう。

 

「そうなのか...試合はできそうかい?」

 

「多分。ようは、速度操作が一番の武器だって考えなきゃ良いだけの話だろ?」

 

盗めるのは一番の武器だと思っているものだけ。文字通り、考えようによっては意図的に別のものを盗ませることも可能だ。万が一のためにも速度操作は基本使わないようにする必要はあるだろうが、そういう訓練だということにしてセルフで封じておこう。

 

「そういうことを聞いたわけではないのだが...その調子ならできるんだろう。戻ろうか」

 

「おう」

 

ベッドから降りて、装備をつけ直していく。

 

「…先ほどから気にはなっていたのだが、やたら装備多いな。ダガーに剣に、鞭に盾に弓に...私と戦うために色々持ってきたのかい?」

 

「ん?これが基本装備だ。手数は多い方がいいしな」

 

「そう言って器用貧乏になった人を何度も見てきたのだが...君は大丈夫そうだね」

 

「弓以外は誰に習ったってわけでもない我流なんだけどね。上手くやらせてもらってるよ」

 

「師匠がいたのかい?」

 

「ああ。子供だけど、弓の才能はピカイチでね。多分...というか、絶対カリスの英雄になるだろうさ」

 

「それはすごい。良い師匠を持ったな」

 

「とは言っても、弓はあんまり使うことないんだけどな。走って切った方が早いし」

 

ステラには悪いが、速度操作と弓矢はあんまり相性が良くないからな。加速したら威力向上に射程増加、DPSも上がるけど、どうしても矢の範疇を出ない。矢の残り個数にも気を配らないといけないし、近づけない魔物と戦う時くらいにしか使えない。

 

まぁ使おうと思えば使えるが...それダガーで良くねってことになるのがほとんどだ。鞭も似たようなもんだし。なんならロングソードもあんまし使ってないし...まぁいつか必要になるだろうから持ち続けるけど、次元収納使えるようになったらダガー以外はしまっておこうかなと思ってたり、思ってなかったり...ラジバ○ダリ。

 

「久しぶりにこいつらも使ってやるか...そういえば、さっきの私と戦うために、ってのはなんだ?」

 

「私と戦うときは、幾つも武器を持っておくのがセオリーのようになっていてね。てっきりそういうことなのかと思っただけさ」

 

略奪対策か。確かに、武器を幾つか持っておけば、一つ盗られてもすぐサブ武器に切り替えて戦える。そんなつもりはなかったけど、戦う前からちょっとしたアドを得ていたみたいだ。

 

「まぁ、全部盗んでみせるけどね」

 

「その前に勝つさ」

 

話しているうちに、試合場まで戻ってくる。

 

「再開しよう。準備はいいかい?」

 

「オーケーだ。速度操作は少しの間封じさせてもらうが、いいか?」

 

「全力の君と戦えないのは残念だが...仕方ないな」

 

「認識の操作に慣れたら使うさ。それじゃあ始めよう」

 

「了解。再会だ」

 

結界が貼られる。

 

「もう一度聞こうか。君の一番の武器はなんだい?」

 

「もう答えないぞ!」

 

ダガーを引き抜き、速度操作無しの素の走りでワンナに近づく。

 

2102ページ上 黒のみ 研磨

 

バフを左のダガーにだけかける。

 

「まず一つ、盗ませてもらうよ」

 

ワンナの手が動き、略奪が発動する。

 

「片方だけか...!」

 

俺の持つダガーと、ワンナの握るダガーがぶつかり合う。バフを片方にだけかけたため、今一番の武器の認識が左のダガーだけになった。おかげで、二本とも盗られるという状況にはならなかった。ワンナの方に研磨のバフはあるが、ダガーの技量自体はこっちの方が上なので押し切れるだろう。

 

「そっちも...盗る!」

 

「チッ!」

 

前にかけていた体重を後ろに引き戻し、そのままバックステップをして距離を取る。その時にはもう右のダガーも盗まれていた。

 

「こんぐらいの策じゃ流石に突破できないか」

 

「想定が甘いな。メイン武器は盗んだ。次はどれを使う?」

 

「んじゃ、次はこいつでも使おうかね」

 

鞭を取り出し、ヒュンッと素振りをする。空気を叩く音が響く。

 

「流石に思考を誘導したりだとか、認識をズラすだとかは完璧には出来ないけど...何が一番の武器って認識になるのかはあらかたわかってきた」

 

そもそも一番の武器ってのはなんなのか。一番なのに、なぜ変動するのか。それがわからなければ対策のしようもなかったが、さっきのダガーを盗まれた時ので大体わかった。

 

今この瞬間に、一番頼りにしている武器。それが一番の武器の定義だ。バフをかけた一本目のダガーは、わざと盗ませるという目的を与えて自ら頼った。二本目を盗られたのは、これがなければワンナのダガーに対抗できないと考えてしまったから、条件に引っ掛かってしまったのだろう。一番強いと思っている武器ではなく、これがあれば状況を打開したり、対抗したりできると考えた武器。こんなところだろう。

 

「まぁ逆に利用してやろう、とかできるほどわかったわけでもないんだけどな」

 

「……?」

 

俺の話を黙って聞いていたワンナが、一瞬だが表情を変えた。困惑の表情だった。

 

「思考誘導できないだろ」

 

「暗示防止...?なんの魔法だ...?」

 

多分俺の思考が日本語で行われてるから、この世界の言語で誘導しようとしてもできないんだろうな。

 

「あいにく、教えるつもりはない!」

 

『火装・鞭』

 

走りながら鞭に炎を灯し、火の粉を舞い散らせながら振る。がしかし、速度操作無しで走っていたため若干距離が足りず、先端はワンナの鼻先から数センチ手前を通って空振りになる。やばいな、いつも距離感掴むのは速度探知でやっていたから、ないと戦いにくい。

 

「なら片っ端から武器を奪い取っていくだけだ!」

 

左手のダガーを遠くへ投げ飛ばし、その後略奪を発動させるワンナ。だが、盗めたのは炎だけだった。

 

『氷装・鞭』

 

「鞭がなきゃ盗んでも意味ねぇよなァ!」

 

再度鞭を振ると、氷の結晶を軌道上に舞わせながらワンナに迫る。

 

「っ...!」

 

迫り来る方向に向けて、勘でダガーを向けたワンナ。運良く鞭とダガーがぶつかり合う。けれど、鞭の勢いに押し負けてダガーがすっ飛んでいく。というか、氷装使っててよかった。なかったら切断されてたわ。

 

あとやっぱり、技量までは盗めないみたいだ。クミリアが試合中に言っていたけど、今のダガーの使い方で確信が持てた。この感じだと、鞭を盗られてもワンナは使いこなせないだろう。盗まれても問題ない。本命を盗まれる前の一妨害として利用しよう。

 

「でもまずは...!」

 

すっ飛んでいったダガーを回収するために走る。回収できる武器は回収したい。自前の反応速度でダガーの落下地点まで全力ダッシュ、地面にワンバウンドしたところをキャッチ...っ⁉︎

 

「取り損ね...いや、弾かれた⁉︎」

 

掴もうとしたら、急に跳ねたダガーの軌道が変わって持ち手部分を弾いてしまう。明らかに物理を無視した動きだったため、これは確実に魔法の影響だと判断する。

 

「まさか、解除されるまで触れることすらできないのかよ...!」

 

「正解だ。それの所有権は私にある。誰にも盗らせない」

 

「おまっ、盗んどいて何言ってんだ!」

 

「あと、とりあえずそれももらうよ」

 

鞭に纏われていた冷気が消え失せる。それに加えて、今さっき俺が弾いてしまったダガーもワンナの手元に戻っていく。そんなこともできるのか。

 

『雷装・鞭』

 

「ならこいつも受け取れ。その身にな!」

 

高圧電流を鞭に走らせ、そのまま振る。今度は叩くのではなく、巻き付ける形でだ。

 

「んぐ、うぅぅっ...!」

 

綺麗に鞭がワンナの腰に巻きつく。高圧電流で痺れており、さらに腕ごと巻きつけたためしばらくは動けまい。そこから動けるようになるには、まず雷装・鞭を盗み、その後鞭そのものを盗んで手元まで転移させる必要があるだろう。これで二妨害。やりたいことができる。

 

「初出し魔法...行くぜェ!」

 

鞭を手放し、弓を取り出して数本矢を持つ。速射の構えだ。そして魔法図鑑に魔力を流す。

 

9930ページ 黒のみ 跳弾鏡射

 

雷装・鞭を盗み、あとは鞭を盗むだけとなっているワンナの頭上に一つ、周囲にも幾つかの鏡が現れる。

 

『速射』

 

五本の矢を、一秒のうちにワンナの頭上にある鏡に向かって放つ。

 

「どこに撃って...⁉︎」

 

鞭を手元に転移させながら上を見るワンナ。動けるようになったみたいだけど...避けれるかな?

 

頭上の鏡に命中した矢が、斜めに反射してそれぞれ別の方向に飛んでいく。そして銃の跳弾のように幾つもの鏡を経由し、四方八方からワンナに向かって同時に飛ぶ。

 

「くっ...!」

 

跳弾を経た矢のため、ほんの少し速度が遅くなっている。それを見越してワンナはすぐさま動き出す。まず、避ける先にあった矢をダガーでなんとか逸らす。そして後ろから飛んでくる矢を鞭を振ってなんとか弾こうとする。

 

「技量不足だな」

 

だがやはり、鞭の扱いに慣れていないため、運良く一本は弾いたもののそれまで。残る三本がワンナの背中に迫る。

 

「っ、よし!」

 

しかし、次の瞬間には、飛んでいた三本の矢全てがワンナの手に握り込まれていた。おそらく、三本全てを一つの攻撃として捉えていたため、一回の略奪で全て盗られてしまったのだろう。

 

「…というか、略奪ってリキャストあるのか?」

 

今の三本を丸ごと同時に盗めた以上、避けずとも五本の時から普通に盗めたはず。それをしなかったってことは、ある程度再発動に時間がかかるってことだ。実際、雷装・鞭と鞭そのものを盗むのに少しだけタイムラグがあったしな。さっき氷装・鞭とダガーを同時に回収したのも見たが...一度盗んだものを手元に引き戻すのは普通にできるのだろう。

 

「リキャストってなんだい?」

 

「答える気はない...か。まぁいい。あると仮定して、手数で押させてもらう!」

 

99ページ右上 黒のみ 火球

247ページ左下 黒のみ 光弾

4566ページ 黒のみ 閃光

 

魔法を複数同時に発動し、いつでも撃ちこめるようにする。これなら、一つ二つ盗まれたとしても、最後の一つは当たるはずだ。

 

「この鏡みたいなの、かなり厄介だな」

 

「だろ?一応言っておくけど、二、三個の魔法を掛け合わせたものだから一回の略奪じゃ盗めないぜ」

 

嘘である。あの鏡にかけられている魔法一つ盗まれただけで、この跳弾鏡射は無効化されてしまう。

 

跳弾鏡射は、物質生成、念動、軌道変更の三つを掛け合わせた複合魔法だ。三つの魔法陣を一つに纏めて一枚に描き、同時に発動できるようにしたわけだ。

 

効果としては、物質生成で作り出した鏡に軌道変更の魔法を付与、念動で鏡を敵の周囲に移動させる、というものだ。鏡に向かって飛び道具を放つと、別の鏡に向かって反射する。それを繰り返して敵の意識外から命中させるのが目的である。

 

これを作ろうと思ったきっかけは、ガルムでのルードの試験。あの時俺は跳弾付与の魔法を使って結界に反射させたが、それを普通の戦いの中でできないかと考えたわけだ。

 

そこで参考にした...というか、ちょっとパクったのは、風のカース○ノンの攻撃。あいつ、体力半分減ると子機みたいなの出して、ビームを反射しながら攻撃してくるんだよな。それを魔法で再現した。ちなみに、鏡である意味は特にない。反射する物って言ったらやっぱ鏡だよなって安易な理由で決めた。魔法を付与するだけだから、全然別の物で代用できる。でも鏡の方がイメージしやすいしね。なんとなく反射しやすい気がする。

 

「もしかしてこの魔法、将来仲間になるであろう君の師匠のために作ったのかい?」

 

「おっ、わかる?」

 

ワンナの言う通り、この魔法はステラのために作ったと言っても過言ではない。

 

弓兵は基本的に敵よりも高いところにいる方が強い。上から敵の位置を観察でき、そのまま矢を撃てるからだ。遮蔽物の影響も受けにくく、味方に射線を塞がれることも少なくなる。けれど、勇者パーティーとして動くとなると、高台を取ることは難しくなる。敵と同じ高さで戦うことを強制されることも多くなるだろう。

 

そこで先の跳弾鏡射だ。これがあれば、ステラは敵の上に浮いている鏡目掛けて矢を撃てばいいことになる。横に撃つ必要がなくなるため、フレンドリーファイアすることがなくなる。ミスショットしても、鏡を動かして反射させれば当てることができる。わざと頓珍漢な方に撃って、反射させるのも良いだろう。

 

とまぁこんなふうに戦略の幅が広がるわけだ。今度ステラに会ったら教えようと思う。俺が使うのも良いけど、多分ステラ自分でやりたいって言うだろうしな。お膳立て全部したよハイ弓撃って、じゃ嫌な気分になると思うし。

 

「なら...弾を減らす!」

 

こちらに手を向けてくる。略奪を発動するつもりだろう。どれが盗られるかわからないが...それを確認するよりも前に魔法を放つ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そうして魔法を放とうとしたその時だった。

 

腰にいつもあった重みが消えた。

 

「えっ...?」

 

発動だけさせておき、近くに溜めて置いていた閃光や光弾、火球が消滅した。魔法の制御を失ったのだ。

 

重みが消えたことと、魔法の制御を失ったこと。一見無関係に思える二つだが、これは揺るぎないとある事実を示していた。

 

「…なんだ?この本」

 

ワンナが、一冊の厚い本を持ちながら言う。

 

「……そうなるかぁ...」

 

そう、俺は今、魔法図鑑を盗まれたのだ。




えー、本来は一話で終わらせるつもりだったんですが...次から次へといいアイデアが出たせいで長くなりました。
次回では少なくともちゃんと決着つけて、次の人と戦い始めるくらいまでは進めると思うんでオナシャス!

…やっぱり最近テンポ悪くなっとる。
初期のスピーディーさはいずこに...
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