前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8467字。

ちゃんと試合を終わらせて、次の人との会話にまで漕ぎ着けました。
まぁ、8000字くらいまではワンナとのくだりなんですけどね。


雷装合戦、略奪適性

「ヤッベェどうしよう...」

 

小声でボソッと呟く。控えめに言ってかなりまずい状況だ。まさか魔法図鑑を盗まれるとは...

 

「よくわかんないけど、その様子だと結構重要そうな物みたいだね。当たりを引いたかな」

 

おそらく、同時に幾つも魔法を発動させ続けていたため、自分でも気づかないうちに魔法図鑑が略奪の対象になっていたのだろう。

 

「魔導書ってやつかな...うわ、めっちゃ描いてある。これを使って魔法を発動していたのか」

 

魔法図鑑がなくても、魔法は使える。使えるのだが...いつもは魔法陣に魔力を流すだけで発動できていたところ、詠唱や魔法陣の筆記、スキルで発動する羽目になるため若干だがタイムロスになる。カスタムするのも面倒だし、同時に複数の魔法を操るのも難しくなる。

 

「でも、こういうのは開かないと使えないんじゃ...あの腰のポーチに入ってたんだよな?ということは特別製なのか」

 

魔法図鑑が盗られるかもしれないという可能性にもっと早く気づけていれば、もう少し対処の仕様があったものを...盗られるなら盗られるで、これを囮にして攻撃するとかしたかった。これ盗まれても、ワンナは使いこなせないだろうし。

 

「とても興味深い代物だけど、普通の魔法使うわけにもいかないからな...」

 

しかも厄介なのが、魔法図鑑の所有権とやらがワンナにあるせいで、魔法図鑑に触れることすらできないこと。おそらく、地面やワンナの皮膚を伝って魔力を流し込む、なんてこともできないだろう。魔力も俺の体の一部。普通に弾かれるだけだ。

 

「手塞がって邪魔になるだけだし、返してあげるよ」

 

その声を聞き、俺の意識は思考の海から現実へと戻ってくる。返すってどういうことだと思い前を見ると、ワンナがこっちに魔法図鑑を放り投げてきていた。ワンナの意図を考えるよりも前に、体は回収しようと動いていた。

 

「隙アリってね」

 

魔法図鑑に手を伸ばすが、物理的におかしい軌道を描いて俺の手から逸れていく。そしてその下から短刀を持ったワンナが滑り込むように近づいてきていて...!

 

「ア゛ァッッッ!」

 

ズバッと、右脚の太ももを斬られてしまう。

 

「クソッ!」

 

『重力発散』

 

俺とワンナのちょうど間に魔法を置き、斥力を利用して無理矢理距離を取る。痛みのおかげで一瞬だけ冷静になりうまく避けられたが、もしあとコンマ数秒遅ければもう片方の脚もやられていただろう。

 

「イッッテェ...」

 

着地と同時に右脚に激痛が走る。何気に異世界に来てから、事故とか落雷とか諸々を除いて初被弾かもしれない。ここまで出血したのは初めてだ...なんて、現実逃避してる場合じゃない。

 

『再生』

 

再生魔法を発動する...が、忘れていた。これ、治る速度めっちゃ遅いんだった...一瞬だけ速度操作使って治しきる。速度操作発動中に略奪使われなければ問題ないはずだ。

 

「治るの早いね。というか、魔導書無しでも魔法使えるのか...」

 

「…おめでとう、俺に傷をつけた初めての人間だ」

 

「それはどうも」

 

というかこいつ、急に攻撃始めてきたな。さっきまでずっと略奪使いながらの回避しかしてこなかったから、意表を突かれた感じになった。まぁ、略奪で大量に俺の武器を奪ったから、そろそろ行けるだろうってことなんだろうけど。

 

…そうか、そもそも俺の戦い方が悪かったのか。対人戦の経験が少ないせいで、直近の、というかほぼ唯一と言っていい対人戦であるルードやレストとの試験の時のように、相手を見定めるような戦い方をしてしまっていた。略奪の効果は〜とか、そんなものワンナに勝ってから聞けば良いのだ。今ここで全て解き明かす意味はない。

 

これなら通るかだとか、これは効かないかだとか、そんなことをいちいち試す前に最初から最大火力で打ち込めば良い。全力を持って、相手を叩きのめす。変に色々考えるよりも手っ取り早いし、全力で戦わないとか失礼に値する。

 

「悪かったな」

 

「…何がだい?」

 

「ついついガルムでやった試験みたいに戦ってたわ。そうじゃないよな。これは試合なんだ。全力で挑まないとダメだ」

 

「手を抜いていたのか?」

 

「そんなつもりはない。ただ、心のどこかで自分の方が上だっていう慢心があった」

 

『植物生成』

『製作』

 

木を作り出し、それを使って二本の木刀を作り出す。

 

「ここからは、神の使いではなく普通の人間、仮谷幸希として戦わせてもらう」

 

速度操作はもう回復にも使わない。あれは神からもらった力であって、俺の力ではない。正真正銘、自分の努力と幸運で手に入れた力だけで戦う。

 

「全身全霊、かけさせてもらう!」

 

二本の木刀を、腰の位置で構える。

 

「『雷装』『水刃』!」

 

電流を流した水の刃を二本飛ばす。そしてそのまま前へと走り、水刃を回避したワンナに追撃できるように準備しておく。

 

「触れたらやばいよねそれ!」

 

ワンナはそう言いながら持っていた鞭に電流を流し、それを使って水刃を弾き飛ばす。

 

『未来跳躍』

 

「そして反撃...消えた⁉︎」

 

ワンナはそのまま鞭を振って俺を叩こうとするも、俺は一秒前に未来跳躍を発動しており、一秒間消失する。

 

「オラよっ!」

 

そして真横に転移し、脇腹に木刀二本を叩きつける。

 

「っ...!」

 

脇腹を叩かれたワンナが、苦しそうにしながらもダガーを振ってくる。いつもならすぐに未来跳躍を発動して回避するが、それは速度操作を使っているからできること。それがない今では、リキャストの一秒と発動までの一秒が痛い。その間に斬り裂かれる。

 

『重力生成』

 

そこまでの思考を未来に跳ぶ前に終えていたので、すぐに重力を俺の背後に置きながら地面を蹴って跳ぶ。

 

今度の重力は引き寄せる方。当然、ワンナも引き寄せられてしまう。だが、ワンナは無理な体勢でダガーを振ったタイミングだったため、重力によってさらにバランスを崩して地面に倒れ込む。その間に俺は、重力で引っ張られながらも綺麗に体勢を保ちながら距離を取る。

 

「くっ...!」

 

無事に距離を取れたので俺が重力を消そうとしたその時、ワンナがこっちに手を向けてくる。略奪が発動し...体に走る電気の感覚が消えた。雷装を盗られたな。いいね、計算通りだ。

 

『触手・水』

 

水の触手を出し、歩きながら全方位からワンナに向かって叩き込む。

 

「あっぶ...ない...!」

 

ギリギリ避けることができる隙を作って攻撃してみたが、ワンナはしっかり見極めて避けている。けれど、かなり苦しそうだ。

 

「それも...もらうよ!」

 

触手が消え失せる。水で見えづらくなっていた視界が開け...ワンナには、空中に浮かぶ大量の魔法陣が見えたことだろう。

 

「うそでしょ...」

 

幾つもの魔法が同時に発動される。今度は一筋の隙もない。

 

「やばっ⁉︎」

 

ワンナの背中から水の触手が飛び出して、辺り一帯に滅多矢鱈に振り回される。触手の操作に慣れていないため、適当に振り回しているだけだろうがそれでも大部分の魔法を弾かれてしまった。

 

「い゛っ⁉︎」

 

だが、小さい弾丸サイズの魔法は触手の隙間を通り抜け、ワンナに命中する。小さい分威力も弱めだが、それなりのダメージにはなったはずだ。痛みで触手も解除されていた。

 

よし、もっと魔法陣を...チッ、盗まれたか。

 

魔法陣を描くのに使っていた固定万年筆が盗られた。これはガルムにいたときにアンデット屋敷で手に入れた魔道具で、インクをその場で固定させることができるのだ。固定することで何をしても消えない線を描けるのだが、それを応用すると空間に線を描くこともできる。筆記魔法で空間に直接魔法陣を描くのが苦手だったが、この魔道具のおかげでできるようになった。まぁ、盗まれちゃったけど。

 

『路面凍結』

『水膜』

『水噴』

 

地面を凍らせ、水を足から噴射して滑るように高速で移動する。凍らせたのはワンナの動きを封じるため。下手に動けない状況を作って判断を鈍らせたところを狙う。

 

『威力増大』

『研磨』

『斬撃強化』

『物質強化』

 

木刀に何個もバフをかけ強化し、高速移動の勢いも乗せてすれ違いざまに叩きつける。

 

「い゛っつ゛ぅ...これが君の本気か...もう、短期決戦するしかない!」

 

ワンナが雷装を発動する。凍った地面にもその電流が流れ出したため、すぐに路面凍結を解除して感電から逃れる。

 

「それを使うのを待ってたよ」

 

『同質融合』

 

まず、二本の木刀を一つに融合させる。

 

「『雷装・剣』」

 

融合した木刀に、電流を流す。身体に流す雷装は使えなくても、こっちは使える。

 

「お前はこれを、盗めない」

 

「…っ⁉︎」

 

ワンナが雷装を発動した時点で、持っているダガーにも電流は流れ込んでいた。不慣れによる制御失敗のせいだ。凍った地面に電流が勝手に流れていたことからもそれはわかる。

 

そして、剣に流れたということは、雷装・剣のスキルを得たということ。自分が既に持っている魔法、スキルは盗めない。つまり、俺のこの雷装・剣が盗まれて封じられることはないわけだ。

 

「そして俺はこいつに全信頼を寄せる。宣言しよう。これが、今の俺の、一番の武器だ!」

 

水墳で滑るように移動し、ワンナに肉薄する。そして一気に木刀を振り抜く。

 

「くっ...!」

 

なんとかワンナはダガーを滑らせるように当てて軌道を逸らす。そして鞭を捨て、結構前に放り投げていたもう一本のダガーを手元に戻して防御用に構える。

 

「こっからは消耗戦だ。先にお前のスタミナが切れるか...お前が攻撃喰らって負けるかの二択しかないがな」

 

雷装状態の木刀は、同じく雷装状態でないと受け止められない。普通のダガーや、肉体で受けたら痺れてしまうからだ。

 

そして、雷装を使っているということは、スタミナがみるみるうちに減っていくことを意味する。ここで、さっきわざと隙を残しながら触手を放ったのが効いてくるわけだ。あれでだいぶ消耗しているはず。少なくとも、俺より早くスタミナ切れを起こすだろう。

 

別に、ただ盗めないスキルを使って攻撃するなら、火装・剣でも十分だった。あれも、盗めないという点だけ見れば同じ。けれど、それだとスタミナを削るという目的が果たせない。火装は雷装無しでも受けられるからな。

 

ここまで全部思い通りに行っている。このまま攻撃し続ければ、直に勝てるだろう。

 

「もう一つ追加!私が逆転するを入れさせてもらう!」

 

「無理だな。現に、雷装の加速があっても防御が間に合ってない」

 

たまに飛んでくる反撃は水噴で避け、動き回って四方八方から木刀で殴っていく。既にワンナも疲れてきていて、動きが鈍くなってきている。電流の追加攻撃は雷装で防がれているから無意味になっているが、それでも着実にダメージを叩き込めている。

 

「っと、ここで交渉だ。試合だからといって人殺しはしたくない。このまま殴られ続けて一度死ぬのも嫌だろ?降参してくれやしませんかね」

 

試合を終わらせる方法は二つ。降参させるか、死の直前までに追い込むこと。試合が終わった瞬間に蘇生が入って無傷の状態にまで戻るが、人殺しの感覚は掴みたくない。だから降参してほしいのだが...

 

「降参するわけないだろ?人間の姿をした魔族だと思って切ればいい。人の形だから切れないってのも困るだろう」

 

…確かに、そう言われるとそうだな...

 

「まぁ、抵抗はさせてもらうがな!」

 

ワンナの背中から水の触手が生えてきた。それは今の俺にとって、唯一の負け筋であり...無数にある勝ち筋の一つだった。

 

「いい選択だ」

 

触手に流れている電流から逃れるために、全力で後ろに滑るように移動する。

 

「だが無意味だ」(^U^)

 

『火球』

 

火球をワンナに向けて放つ。火には水とばかりに触手を当てて消化しようとするが、目的は既に達している。

 

「ドーンッ...てね」

 

火球が、触手が電気分解されて発生していた水素と酸素に着火、爆発する。土煙が舞う。

 

…視界が晴れてきて、見えてきたのは、無傷でやれやれと手を上げているワンナの姿だった。

 

「…今のが爆発魔と言われている所以か。避けれないね」

 

あの近距離での爆発は触手があっても避けられず、まさにお手上げ状態だったわけだ。

 

「まぁ奇襲性高いからな...その二つ名だけは勘弁したいがな。犯罪者感がハンパない」

 

「確かにそうだな。神の使いとは思えない二つ名だ」

 

少し笑いながら言う。笑ってくれるだけまだマシだな。笑えないやつが一番まずい。

 

「それで...知りたいのは略奪魔法のことでいいのかい?」

 

ワンナが元の調子に戻り、そう言ってきた。そうそう、これを聞くために戦ったのだ。

 

「ああ」

 

「…おっと、その前に盗んだものを返さないとな」

 

盗まれていた魔法やスキル、武器と魔法図鑑を返却される。お帰り魔法図鑑。お帰り雷装。

 

「これで全部だな。それで、略奪魔法なんだが...手に入れた経緯から説明するがいいかい?」

 

「頼む。その方が理解しやすい」

 

「わかった。まず...」

 

しばらく、ワンナから話を聞いた。

 

要約すると、そもそも略奪魔法は物質転移の派生魔法らしい。ワンナの家は、代々物質転移の適性値が以上なほどに高いという特性があったらしく、子供の頃から物質転移魔法を教えていたそうだ。

 

そしてワンナがまだ物心ついてないくらいの子供の頃のある日、親から渡されていた物質転移の魔法陣が書かれた紙でまさかのお絵描きをしていると、偶然略奪魔法の魔法陣が完成していたという。こうなると、略奪魔法はカスタムされた物質転移魔法と言っても差し支えないだろう...そのはずだった。

 

予期せぬ新カスタムが開発され、ワンナの家は大騒ぎ。急いで効果の解析が行われた。分かったのは、これはカスタムされたわけではなく、略奪という全く違う新魔法だったということ。その事実に、さらに大混乱。しかも使いこなせたのが、家で歴代最低の物質転移の適性値を叩き出したワンナだけだったことで、一気に家庭内ヒエラルキーが変わった。

 

…まぁ、ヒエラルキーの話は関係ないが...別の魔法なため、必要な適性が違ったのだろう。ワンナは略奪魔法の適性値が、物質転移魔法とは打って変わってバカ高かった。これは俺の推察だが、おそらく、魔法陣を描けたのも偶然ではなかったのだろう。なるべくしてなったのだ。

 

「…と、経緯はこんなところかな」

 

「物質転移の派生系だったのか...確かに、効果は似てるよな」

 

物質転移でも、人の物を盗むことはできる。実際に、俺もやられたしな。ただ、大会のパンフレットで物質転移とは原理が違うって書いてあったのを見ていたから、全くの無関係だと思ってしまっていた。似て非なるものだったんだな。

 

「…あっ、魔法陣あるんだよな?ちょっとこの紙に書いてくれない?」

 

新魔法が誕生する時って、魔法陣よりも先に呪文の方が完成することの方が多いって前にリヒトに聞いたことがある。だから魔法図鑑に載せるのは厳しいなと話を聞く前は思っていたのだが、嬉しい誤算だ。

 

「いいぞ...これでいいか?」

 

「おう、ありがとう」

 

やったぜ。略奪魔法ゲットだ。さっそく魔法図鑑に紙を合成して...と。

 

「発動はいつも魔法陣でしているのか?」

 

「ああ。呪文はまだわかっていなくてな。頭の中で魔法陣を毎回作っている」

 

「リキャストはあるのか?」

 

「リキャスト...?」

 

あっ、普通に伝わってないだけだこれ。

 

「リキャストってのは、再発動できるまでの時間のことだ。で、あるのか?」

 

「ああ、そのことか。それはないよ。ただ、相手の一番の武器の対象が変わるまでは使っても意味がないってだけさ」

 

「あっ、そういうこと...」

 

奪われた物をそのまま一番だと思い続けていたら、別の物を盗まれることはない...その方法、試合中に気づきたかったな。

 

「質問は以上か?」

 

「とりあえずは」

 

「なら、一回試してくれないか?対象は...これでいいだろう」

 

ワンナが短刀を見せながら言う。確かに、俺が盗めるものってそれくらいしかないか。スキルも魔法も既に持ってるものばかりで盗めないしな。

 

「わかった」

 

魔法図鑑を開き、一番後ろのページを捲る。

 

9931ページ 略奪

 

魔法陣全体に魔力を流していく。これは...確かに相当魔力持ってかれるな。足りるかこれ...?

 

「ギリ...いや、意外と余裕あるな。出来たわ」

 

ひとまず発動に成功。へぇ、こんな感じなんだな。発動したら、狙う相手を決めて...あっ、必ずしも手を向ける必要はないのね。ただ、視界に入れる必要はあるのか。決めたら、引っ張るようなイメージで...!

 

「よし取れた!」

 

魔力半分持ってかれたけど、ちゃんと短刀を盗むことができた。というか、思っていたよりも魔力使わなかったな。魔法拡散のように、ほぼ全部持ってかれるのを覚悟していたのだが...そのせいであんまり使ってないように感じただけか。半分持ってかれるとなると実用性は乏しい。よほど困った時の切り札くらいにしかならないな...そうだ、魔族相手に使ってみるのが良さそうかも。フロートの模倣能力を奪って何もできなくしてやれば...そう考えると、コストに合ったリターンに感じる。

 

「…まさか、使えるとは思わなかった」

 

ワンナが少し驚いたような声を出す。

 

「私しか使える者はいないと思っていたのだが...魔力はどれぐらい使ったんだ?」

 

「えーっと、ちょうど半分くらいだな。と言っても、魔力量だいぶ増やしてきたから適性があったのかはわからないけど」

 

「いや、前に今代最強の魔法使いが訪ねてきて、試させてくれと言われてやらせたが使えなかった。魔力量が歴代最高と名高い老人も来たけど、同じく使えなかった。ただ魔力が多いだけじゃ使えない。ある程度の適性はあるんだろう」

 

「俺に略奪魔法の適性が...?」

 

さっきワンナが言った人たち。前者はおそらくニア、後者は知らない人だな。その人たちでもダメだったということは、確かに俺に適性があるのだろう。

 

…あっ、もしかして俺に適性があるの、転生者だからかな。

 

適性は親から子に受け継がれる。親がよく使っていた魔法だと、初期の適性は親よりも高くなる。それなりに使っていたものだと、現状維持で受け継がれる。そして一回も使っていなかった魔法の適性は、いらないものとして削ぎ落とされてしまう。略奪魔法はワンナが見つけるまで発見されていなかったのだから、ほぼ全ての人に適性がないのも納得である。

 

もちろん、さっき言った法則が当てはまらない時もある。突然変異のように、一代で適性がまるっきり別のものになってしまうという場合だが、それは結構稀な例だ。ワンナがそれに該当するだろう。

 

そして俺はもっと稀有な例だ。そもそも、この世界においての親が存在しないのだからな。俺の体は神がゼロから創り出したもの。言ってしまえば、適性の積み重ねが全くないまっさらの状態なのだ。例えるなら、ポケ○ンで努力値を振ってない状態みたいな感じだ。

 

前にリヒトに魔法の適性を確認してもらった時に、全てが平均値と言われた。俺はその時、全ての人の平均と思っていたのだが、実際には適性が100段階中全部50という意味だったのだろう。

 

結論として、俺には得意な魔法がない代わりに、苦手な魔法もない。だから略奪の適性がある、というわけだ。あっ、それなら「すなお」とか「きまぐれ」の方が例えとしてはあってるか。っと、話が何度か脱線したが、そんな感じだろう。

 

「…まぁ、君に使ってもらえるならこの魔法も喜ぶだろう。何度も使えば、直に必要魔力量も減ってくる。存分に役立ててくれ」

 

「ちょっと思ったんだけど、ワンナってどれくらいの魔力で使えるんだ?」

 

盗んだ短刀を返却しながら聞いてみる。適性バカ高いとは聞いているけど、実際どのくらいで使えるんだろう。

 

「ほぼゼロ」

 

「………」

 

ハッキリ言うもんだから、聞き間違えとは考えられなかった。ほぼゼロだとすると、盗んだ魔法に魔力を注ぎ込めるから略奪使いとしてはとても嬉しいだろう。

 

「…うそーん」

 

でも、こんな声出ちゃうの仕方ないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が神の使いでオーケー?」

 

「オーケーだ」

 

ワンナと別れてから二時間後。俺は別の闘技場に足を運んだ。そこには、ミルキーがいた。

 

「確かに、後夜祭で見た顔なような...酔ってたからわかんないや!」

 

あっ、やっぱ酔ってたのか。どう見ても中高生くらいの子供しか見えないけど...普通に成人してるか、この世界だと酒飲んでいい歳がもう少し下になっているかの二択だな。

 

「で、あんたは何を知りたいの?ダンス?それとも演奏の方?」

 

「演奏の方だ」

 

「そっか。じゃあ試験内容を説明しまーす!」

 

「試験?試合じゃないのか?」

 

「あたしなんかが戦ってもどうせ勝てないしね。勝手に決めちゃったけど大丈夫?」

 

「別に良いけど...戦ってみないとわからないぞ?」

 

「いやいや、勝てない人には何したって勝てないって。ワンナさんと戦って身に染みてわかったからさ」

 

あー...自分の力全部取られて自分の力を使われて負ける、なんて経験したらそうなるか。というか、トラウマになりそうだなそれ。

 

「理解した。こっちは教えてくれと頼んでいる側だからな。そちらの言うことに従うよ」

 

「オッケーじゃあ説明しまーす!」

 

ミルキーの試験説明が始まった。




前書きに書いた通り、なんとか書き切りました。
次に戦う...というか試験ですが、戦うのはミルキーです。
ちょっと特殊な感じになるので前もって書いておきますが難産難解確定です。
出来悪くても許してね...

あと、ニーサン(^U^)出したのはなんとなくです。
無意味というセリフに勝手に手が動いていた...
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