前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
今回はミルキーの試験で終わりです。
二人分やろうと思ってたけど意外と長くなり、こうなりました。
あと、後半では速度操作能力の振り返りをしてます。
それしてなければ次行けたのでは...?
「ルールそのいーち!あたしが演奏魔法を発動させる。そしてあんたがタップダンスなり手拍子なりで、バフ効果を再現できたら合格。演奏魔法を全部教える」
ワンナが試験のルールを説明していく。なるほど、準決勝第二試合でクミリアがやってたことを再現すれば良いわけか。
「あっ、一応音楽は大会で一回も使ってないのを使わせてもらうよ。どっかで既にタネが割れてた...ってのを防ぐためにね」
「そこまで心配する必要はないけどな」
「ルールそのに!試験中、あたしはあんたに攻撃をし続ける。それに当たったらその時点で試験終了。演奏魔法は教えない」
「ふむ...音楽のデバフを受けてる状態で避けるってことだよな?」
「そ。速度操作...だっけ?それがあるなら避けるのなんて楽勝でしょ?」
「デバフの度合いにもよるけどな」
最初は演奏魔法の解析よりも、どれくらいの距離感で避けたらいいのかを気にする必要がありそうだな。ある程度避けれる見込みが立ったら解析を始めよう。
「ルールそのさーん!...はない!以上!簡単でしょ?」
「そうだな」
ルールその三を宣言する必要があったのかは謎だがな...
「んじゃ、始めようか。準備はいーい?」
「いつでも良いぞ」
「じゃあミュージックスタート!」
爆音が響く...!なんだこの音!わけわからん頭おかしくなる幾つもの曲が同時に流れてるみたいなカオスだ...!
「うっる...っと危ねぇ!」
思わずうるさいと叫びそうになってしまったが、ミルキーの回し蹴りが飛んできていたのを見て急いで回避する。
「音量もうちょいどうにかなんねぇのか耳死ぬ!」
「…音量はいつもこんなもんだよ?まぁ、普段よりも流してる曲の量は増やしてるけどね、ダミー用に」
「耳ぶっ壊れてんのか...ってか、会話はできるんだな」
爆音の中でも会話できるの、すごい違和感だ。というかなんか、身体が重い。音楽のデバフのせいかな。頭も少し回らなくなってきてる...いや、普通にうるさくて集中できてないだけかもしれないけど。
「あーもう耳慣れてきた。人体ってスゲェわ」
この世界に来てから、「慣れ」の力をすごい感じる。まだうるさいが、頭にガンガン来るのは無くなった。とりあえず、思考速度の加速と、移動速度の加速をしてミルキーのダンス攻撃を避け続けよう。スタミナ切れを起こさないように、うまく調整しながら...と。
「おっ、結構簡単そうに避けるね。ならもう少し...!」
「速くする気か?それなら速度操作で減速を...音量上げてんじゃねェ!」
バフとデバフ強めるって意味かよ!ますますうるせぇ!こうなったらさっさと解析して試験終わらせてやる!結局のところ理詰めでなんとかできるんだんなもん!
まず、この音楽は三つの要素でできている。一つはミルキーに対するバフの音。二つ目は俺に対するデバフの音。最後に、カモフラージュ用のなんでもない音。このなんでもないカモフラージュの音が幾つも重なり合っており、本命を包み隠している。
けれど、ミルキーや俺にちゃんとバフとデバフがかかっている以上、音はちゃんと耳に届いているはず。今の状態でも、聞こえる音全てを一つずつ再現していけば試験は達成できるだろう。
だが、それだと時間がかかりすぎる。なのでまずは、邪魔な音を削ぎ落としていくことから始めよう。特に、デバフの音から無くしていきたい。俺が見つけるべき音はバフの方。デバフの音は消しても問題ない。
そもそも、どうやってバフの音とデバフの音を使い分けているんだ?バフの音は俺にも聞こえているはず。そうでなければ試験にならないし、クミリアも真似できていないだろう。
考えられるのは三つ。一つは、音階。音の高さで対象を決めているという説。けれどこの可能性は低い。タップダンスなり手拍子なりで再現しろと言われたわけだし、音の高さまで再現しなければならないとは考えにくい。
二つ目。拍子の違い。三拍子とか四拍子とか、そういうので区別しているという説。でも、これも違うだろう。聞こえている音楽は全て四拍子だし、変拍子が混ざってるとかもなさそうだ。
三つ目。これが一番怪しいと思っている。その違いは、長調か短調か。イメージ的に、バフが長調でデバフが短調だろう。なんとなくだけど、ハ長調っぽい曲とイ短調っぽい曲が混ざっている気がする。
なので速度操作で音の振動数を解析し、ハ長調っぽいのとイ短調っぽいのをそれぞれ分けていく。
3778ページ下 黒 青 無音
イ短調っぽいのを解析すると同時に、その音を魔法の対象に設定して俺の耳に聞こえなくしていく。とりあえずこれで半分削れるはず...!
「ビンゴ!デバフ消えた!」
今対象にぶち込んだのがデバフの音だったみたいで、身体にかかっていた重みが消えた。デバフの音はイ短調で、4分の三拍子。とりあえず結果が出たので、長調か短調かでバフとデバフを指定しているという風に仮定していいだろう。
これからもイ短調のは全部消去していくとして...バフのはどうやって見分けようか。デバフは音を消せば分かったけど、バフはミルキーにかかっているものだから同じやり方で見つけるのは無理だ。
また理詰めで仮定に仮定を重ねて解き明かしていくか...思考速度最大で、邪魔になっているイ短調を消しながら考えよう。
…というか、仮にバフの音を見抜けたとしても、どうやって再現しよう。リズムを取るのはW○iのリズム○国やってたからある程度できると思うけど、BPMもまで再現しないといけないとしたら結構面倒だな...適当に物質生成でバチでも作って、念動で動かして地面でも叩こうかな。
いやでも待てよ?クミリアが再現してたやつ、そんなに複雑じゃなかったよな。タップダンスしながらでも戦えるくらいのレベルだったし、そこまで複雑ではないのか?まぁ曲が違うからめっっちゃ複雑で再現しにくいかもしれないけど、このミルキーの性格的にそんなことするとは思えない。
となると、バフの音は比較的再現しやすいはず。そこまで速くないし、長さも短めだろう。長くとも、四小節くらいまでにはループしそうだ。確かクミリアがやってたやつもそれくらいの長さだった気がする。
とりあえず、四小節以内でループしてるやつを探そう。あまりにもな速さでトレモロとかトリルしてるやつは除外して...っと。
「ちょっと!聞いてる⁉︎」
「…ん?ああすまん、ずっと考え込んでたわ」
ミルキーの蹴りをスレスレのところで避けながら答える。気がつかなかったけど、どうやらずっと喋りかけてきていたみたいだ。ちょっと怒ってるみたいで、心なしかミルキーの動きが速くなってる気がする。
「見りゃわかると思うが、既に俺のデバフは切れている。長くともあと二分くらいすりゃ終わると思うぜ」
「えっ、デバフ切れてるの?嘘でしょ?」
「ホントだ。まぁ確かに、能力で速度調整してるから分かりにくかったかもな」
「ずっと余裕そうに...ちょこまかとすばしっこい奴!」
「もっと速くすることもできるが、どうしたい?」
「…なんでしないのさ」
「こんな変則的な攻撃を受ける機会なかなかないしな。試すにはちょうどいい。これでも、意外とビクビクしながら避けてるんだぜ?」
速度探知がなければ、多分避けられてない。それくらい予想だにしない方向から攻撃が飛んでくる。横から、上から、下から、手や肘や膝が何度も飛んできて、俺の四肢や頭を狙ってくる。普通のダンスでできる動きじゃないぞこれ...どこでこれ習ったんだろ。自作だとしたらすごいけど、どういう経緯で戦闘用にカスタマイズしようと思ったのかが気になるな。演奏魔法が目的で来たけど、この戦闘方もちょっと教えてもらおうかな。
「よーし、こっから反撃タイムだ。よーく聞いとけ」
そんなことを考えている間に、二、三個それっぽいのを見つけた。とりあえずどんどん試してみて、潰していくか。
6991ページ 黒のみ 植物生成
5437ページ 黒のみ 植物操作
木の根っこを作り出し、それを使って拍子木の形に整形する。
4302ページ 黒のみ 念動
念動魔法で拍子木を動かす。とりあえず一つ目...!
カッ!カカンッ!カンッ! カンッ!カッ!カカッ!
「これじゃないか...次!」
カンッ!カカッ! カンッ! カカッ! カンッ!カッ! カカカンッ!
…あれ?体が軽く...
「って危ぐふっ⁉︎」
ミルキーの動きのキレが急に良くなり、俺の右肩に蹴りが突き刺さった。イッテェ...!
「試験しゅーりょー!」
演奏魔法を解除したみたいで、あれだけうるさかった音が一切聞こえなくなる。あー、静寂って美しい...って、そんなこと言ってる場合じゃねぇ!
「や、やられちまった...!」
試験失敗...?いやでも、さっきの感覚は...
「いやー、まさかあんなに混ぜたのに解析されるとは思わなかったよ」
「ということは...?」
「試験合格!演奏魔法について教えてあげるよ」
「よっしゃ!」
ほんとよかった。最後喰らっちゃったから、不合格になるかと思ったわ。
「ギリギリだったな...喰らうつもりなかったのに」
「ああ、あれは気にしなくていいと思うよ。バフが私にもかかったからだろうしね」
「あそっか、長短の対象指定をしてないからミルキーにもバフがかかってたのか...ってあれ?バフって確か重複しないんじゃないっけ?」
同じ魔法によるバフは、一人に何度もかけることはできない。別の人がその魔法を使ったとしても、同じ魔法であるならば重複になってしまい無効化されてしまう。だから俺の再現したバフはミルキーにはかからないはずだが...
「それはただ単にバフをかけてなかっただけだね。バフなしでどれくらい動けるかなーって試してたんだ」
「あっ、そういう...」
じゃあ途中で加速したの、普通にペースを上げただけだったのね...バフなしであれってヤバくね?
「じゃあ早速教えるよー。はいこれあたしが使ってる魔法陣」
懐から一枚の紙を取り出すミルキー。これに魔力を通して魔法を発動させているのだろう。
「……あれ?これ知ってるな」
なーんか見覚えある魔法陣だと思ったら、3751ページ上の演奏魔法だこれ。
「えっ?あっ、知ってるんだ」
「あんまり使ったことないけどな...これ、ただ単に音を出すだけの魔法だよな?バフとかはどうやってんだ?カスタム?」
「ふふん!重要なのは演奏じゃなくてね...曲の方なんだ♪」
「曲?曲そのものにバフ効果があるってことか?」
「そうそう」
マジで?そんなの聞いたことないぞ。
「この曲を聴いたら人体にいい影響を及ぼすってやつと、悪影響を及ぼすやつがあってね。原理としては原初の魔法に近いかな」
原初の魔法。遥か古代では、呼吸法なり体温なり、人体の内外問わず様々な要素を最適の状態に調節することで魔法を発動していた。その労力を軽減するために発明されたのが呪文と魔法陣なのだが...話がずれたな。
原初の魔法に原理が近いってことは、おそらく曲が耳に入ることで身体が何かしらのゾーンのようなものに入るのだろう。それによって魔法が勝手に発動し、強制的にバフやデバフがかかると...面白いな。
「で、その肝心な曲は?...まさか、演奏魔法だけ教えて終わりってわけないよな?」
確かに俺は演奏魔法について教えてほしいって言ったけど、流石に教えてくれるよね...?
「もちろん。そんなケチなことしないよ」
よかった。
「って言っても、曲は普通に覚えるしかないから大変だよ?楽譜家にあるけど、持ち出し厳禁だからその場で全部覚えてもらうことになるけど...」
「写すのもダメか?」
「うん。多分ダメ」
「うーん...まぁ、多分大丈夫かな」
記憶の定着速度加速させればいけるだろ多分。魔法図鑑を暗記した時みたいにやるだけだ。
「そ?それならいいんだけど」
「あ、そうだ。できればでいいんだけど、ダンスの方も教えて欲しいなーって。というか、その戦い方どうやって身に付けたの?」
「お爺ちゃんが教えてくれたんだ。あたしの家アーティスト一家でね。みんなやってるのは違うんだけど、今でもキレッキレで動けるのに憧れて習い始めたんだ」
「へー。そのお爺ちゃん歳いくつ?」
「92」
「エグぅ...」
エラくアクティブなお爺ちゃんだな...
「教えるのはいいけど、魔法とかじゃないただの体術だから一朝一夕じゃ無理だと思うよ。何日か通う感じ?」
「うーん...あっ、いいこと思いついた。一回奪ってみていい?」
「……奪うって?まさかワンナの略奪魔法のこと...?」
「うん」
「使えるの...?」
「一応」
「……まぁいいけどさ。ちゃんと返してよね!」
「そりゃ返すさ。というか、十分経ったら勝手に返却される」
「へー、そうなんだ」
あっ、これ言わない方が良かったやつだ。ごめんワンナ。
「じゃあ盗ませてもらうぞ」
9931ページ 略奪
ミルキーからダンススキルを盗み取る。やっぱ魔力消費多いねぇ...ずっと使ってれば多少は効率良くなるだろうけど、流石にワンナ並みにはならないだろうなぁ。
「盗むのはいいけど、それでどうやって覚えるの?確か、スキルを覚えようとしても盗んだスキルと統合されちゃうんじゃなかったっけ」
確かに、そんなことを試合中にクミリアが言っていた。さっきワンナからも聞いたし、確認済みだ。というか、ミルキーはどこで知ったんだろう。ダンススキルと演奏魔法を渡した時に聞いたのかな...うん、多分そうだろう。なぜもう一度盗みに来る必要があるのかを聞いて、説明されたんだろうな。
「ああ。これでスキルを得ることはできない。でも...」
『ダンス』
スキルを発動。勝手に動き出す体に身を任せ、思考に意識を集中させる。
「やった動きを全て記憶すればいいだけだ」
「えぇ...」
ダンスをしながら速度探知を発動し、体全体がどう動いているのか、筋肉はどう動いているのかなどを、細かいところまで確認していく。筋肉の動き方を見てその動きを真似できるかって言われるとちょっとアレだが、感覚として掴みやすくなるのだ。しばらくやってたら、ある程度身につくだろう。
「悪いなミルキー。十分...いや、七分待ってくれ」
「よく喋れるね...」
「それ、お前が言うのか?まぁスキルで動いてるだけだから、口動かしても動きに支障ないしね。自力でやってて普通に話せるミルキーの方がスゲェって」
「というか、七分で覚えるって本気?全部やる気なの?一回やったら覚えられる感じの人?」
「質問多いな...本気だし全部やる。一回やったら覚えられるってのはちょっと違うかな。速度操作で記憶の定着速度を加速して覚えてる」
「そんなこともできるんだ...ちょっと聞いてもいい?カリヤさん...だっけ。その速度操作って、具体的にどんなことができるの?」
「んー...色々できるからなぁ。説明してって言われるとちょっと困るな...あっ、答えたくないってわけじゃないぞ。自分でもこんがらがって所あるから整理するわ」
いい機会だし、ここらで一回出来ること整理しておこう。人に教えると理解深まるって言うしね。
「…うん、まとまった。まず、基本的な加速の最大値は秒速53メートルくらい。まぁこれは初速度が遅い場合で、元々の速度が速かったらさっきの限界を超えて加速できる。追加で43メートルくらいはいけるね」
「…頭こんがらがってきた」
「今のでか...まぁなんだ。めっちゃ速くできるって覚えてくればいい。流石にアクセルよりかは遅いけど、多分クミリアよりかは速いはず」
「あの人速いよね。あんな速度で動ける人初めて見たよ」
「前に見た時はもっと速かったぞ。音の速さに達してたな」
「嘘でしょ...?」
「ところがどっこい」
「音かぁ...ちょっと想像できないね」
そりゃそうだろう。というかちょっと思ったんだが、この世界音の速度って解明されてるんだろうか。そういうこの世界の常識を調べようと思ったのに普通に忘れてた。カリスでやった本屋の本読み尽くすやつも、結局王都以降やってないし。いい加減この世界の常識覚えないと。
「続き話すぞ。さっきは加速の話したけど、俺は減速もできる。減速には限界がない。というよりも、速度がゼロになるのが限界って言った方がいいか」
「完全に動けなくできるの?」
「理論上ではな。さっきの加速は一瞬で最高速度にできたけど、減速はそうはいかない。ゆっくりとしか速度を落とすことはできないんだ。さっきのワンナの攻撃の時を例にすると...あれを完全に動けなくするのに3分はかかるかな」
「うーん...それが長いのか短いのかわからないね」
「長いな。でも、この能力は成長する。加速の最大値は伸びるし、1秒あたりの減速の度合いも大きくなる。それに能力の適用範囲だって...あっ、言い忘れてた」
そういえば範囲のこと言ってなかったな。
「まぁさっきの試験で薄々気づいてると思うが、この能力は俺以外にも対象に取れる。能力の適用範囲は...今は半径4メートルにギリ届かないくらいかな。あっ、半径って言ったけど、完全な球じゃない。自分の指の先とか、頭のてっぺんとか、足先とか、そこから4メートル弱伸びてる感じ」
そのため、腕を目一杯伸ばし、指もピンと張って伸ばすと、若干だが通常時より能力の適用範囲が広がる。これを活用したことはまだないが、ちょっとしたテクニックだ。
「あとは...加速してるものには、加速に耐えられるだけの物理保護がかかるって感じかな。これがないとミスって何かにぶつかっただけで死ぬから、結構重要」
ただこれ、速度操作で加速した速度に耐えられるくらいの物理保護しかないから、別のバフスキルとかで加速すると保護が足りなくなったりする。今のところは問題ないが、もっと加速できるようになった後に魔法で更に加速するときは、ちゃんと魔法で保護を上乗せする必要がある。
そして、雷装で加速するときにはもっと気をつけなければならない。なぜかは知らないが、雷装発動中は1.5倍の速度になるので、元の速度が速ければ速いほど危険域に突っ込みやすいのだ。ついうっかり物理保護かけるの忘れちゃいましたってなったら、走っただけで風圧で身体が吹っ飛ぶと思う。吹き飛ばされるという意味ではなく、バラバラになるという意味でだ。おぉ、こわいこわい。
「あっ、身近すぎて速度探知のこと忘れてた。俺、さっき言った能力の効果範囲内のものの速さがわかるんだ。速度ゼロのものでもゼロという情報を得れるから、実質的に周囲4メートル弱にあるもの全ての位置がわかるってわけだ」
「へぇ...あっ、だからどれだけフェイントいれたり、視界に入ってない方から攻撃しても避けられたのか」
「そういうこと。まぁ全てのものとは言ったけど、光は流石に追いきれないし、意図的に情報を得ないように排除してるものもあるけどな。空気の動きとか、自分の身体の中のこととかは意識しないとわからない」
空気の動きとか身体の中とか、そんな情報が常に頭の中に入り続けていたら、流石に思考速度加速してるとはいえパンクする。
「他にも、俺以外の人とか生物の内部は、速度は探知できるけど操作するには直接触れないとダメだったりする。これは能力が進化すればいずれ触れなくてもできるようになるはずだ」
「あー...難しいけど、なんとなくすごいってことだけわかったよ」
というかちょっと思ったんだが、頭に手を当ててうーんうーんと考えているミルキーと、めっちゃ踊りながら自身の力について話している俺...傍目から見たらヤベェな。何やってるのかまるでわからない。俺がこの現場見たらとりあえず通報すると思う。ここが闘技場の中で、誰も見ていないのが不幸中の幸いだな。
「……っ⁉︎ちょっと待ってあんた!」
急にミルキーが血相を変えて俺に話しかけてくる。
「なんだ?」
「あんたさっき、能力範囲内なら全部わかるって言ったよね⁉︎」
「お、おう...他にも感じ取れないものはあるけどな」
「ってことは...ってことは、さ。もしかしてなんだけど...」
ミルキーはさささっと後ろに下がり、俺から距離を取りながらギュッと体を抱きしめるように縮こまる。
「体型服の上から全部丸わかり...ってこと...?」
「………」
「その沈黙はなに...?答えてよ...」
「………」
「黙ってるってことは...!」
「………あんまり考えないようにしてたんだけどな...」
「やっぱり!け、けだもの!」
「ケダモノ言うな!しゃーねーだろそういう力なんだから!」
一応武器隠し持ってないか確かめたりできるんだから戦闘には役立つんだぞ!
「でもでも!実質これまで会ってきた人全員裸にひん剥いたのと同じでしょ!」
「言い方ァ!」
なんて人聞きの悪い!そりゃ誤解だ...誤解?確かに、わかってしまうのも事実なんだよな...
「体型だなんてそんなもん道行く人が透視魔法使って見てるかもしんないんだから今更気にすることか⁉︎」
「それはないよ!だってそんなことしたら男の人の裸も見えちゃうからやる人いないもん!」
「それは俺だって同じだ!俺だって見たくもねぇもん見てんだよ...!」
誰が好きで男のモノ見るんだよいい加減にしろ!ってかこんな話したくねぇ!
ギャーギャーギャーギャーと叫び合う俺たち。
その後、楽譜を見させてもらうためにミルキーの家にお邪魔させてもらうことになったが、ミルキーは決して俺から4メートル以内の距離に入らず、楽譜も男の執事の人に運ばせていた。
めっちゃ警戒された...と、悲しくなりながら俺は楽譜を覚える羽目になった。
あれ?ワンナがミルキーから演奏魔法盗んだとき、そのまま曲流してなかった?と思ったあなた。
本来なら、曲を知らないので魔法を盗むだけでは使えません。
でもあのときは、音楽が一番の武器という認識をミルキーがしていたため、演奏魔法と曲の記憶を同時に盗むことができました。
武器の条件さえ満たせば記憶まで盗めるって強くね?
あと、カリヤくん今まで会ってきたキャラの体型全部把握しているという衝撃の事実。
そこには当然ステラとかフレアミレアも含まれてるわけで...普通に犯罪では?
うらやまけしからんとか言ってられんぞこれ。
なんて設定を作ってしまったんだ...