前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
本編とは一切関係ないんですが、これ書いてる今日がエンキルがサ終した日でした。
かなーりロスってます。
その影響もあって、書くのに五日間かかっており、不自然に前後の文体が変わってる可能性があります。
あらかじめご了承ください。
カノウ回続きです。
こいつホントやりやがった。なんだよ自分の腕切り落とすって。そんなん思いついたとしてもやるわけないだろ普通。というか、自分の腕切り落として自由だって叫ぶとか、どこの吉○吉影とシアーハ○ートアタックだよ。
だが、カノウがやったのは紛れもなく最善手。自らの右腕を切り落とすことで右腕以外の自由を確保し、尚且つ未来からの斬撃の原因作りも加速する。アクセルがやったのと同じだ。右腕に残っている魔力が切れないうちに全ての原因を作る必要があるため、何もしなかった時よりも早くなる。
「でも、剣なしで何ができる!」
自らの敗北原因を戦法に取り入れ、状況を打開してきた。それは凄いとしか言いようがない。でも、剣という武器を失ったカノウに何ができるというのか。
「俺にはまだこいつがある...!」
カノウの左手から火球が飛び出す。そういえばそんなのもあったな。カノウの勝利条件は俺に攻撃を一発当てること。剣で攻撃を当てることではないため、こういった魔法攻撃でも問題はない。
「今更こんな火球程度、当たるとでも思ってるのかァ?」
追尾するわけでもない火球なんて簡単に避けれる。数だけ多いが、正直追尾してくる青の光の刃の方が面倒だった。
「剣が返ってくるまでの暇つぶしでもやってんのか?魔力の無駄だな!」
右腕に残る魔力的に...あと三、四十秒で原因作りが終わるだろう。その後剣を回収すれば、三十秒くらいは剣を使えるはずだ。俺が負けるとしたら、そのラスト三十秒の間だ。もちろん、それまで油断していいというわけでもないため、集中力は切らさずに避け続ける。
「あと、誘導しようとしても無駄だ。そっちに近づくつもりはないんでね」
どうやら火球の弾幕の密度をうまい具合に操作して避ける方向を誘導し、勝手に空間を斬り裂き続けている剣の方へと移動させようとしていたみたいだが、俺は速度操作で弾幕の速度を加減速することで術者の想定していない隙間を作ることができる。見た感じこちら側には一回も斬撃を放っていなかったみたいだし、安心して避けられる。
「ほら早く当ててみろよ。このままだといつまで経っても...へ?」
カノウが真後ろに向けて火球を一発放った。
剣に引っ張られて勝手に動いている右腕に当たった。
大量の魔力が漏出し、剣が更に加速した。
「うせやろガチで狂ってんじゃねぇか!」
「勝てるなら何度でも狂ってやるね」
そう言いながら、カノウは原因作りがちょうど終わって落ちてきた剣を掴み取る。残り時間はあと五十秒。相当な時間短縮をしてきやがった。ただでさえチャート崩れてるのに想定外が多すぎる...!
「しかもここで初見の色かよ...!」
剣が緑色に光り出した。効果をすぐに特定しなければ負ける。
「もしあれが光の三原色を基にしているとしたら...」
赤は威力特化。青は数と追尾性。剣を強化するとしたら、あと何の要素が残っている?混ぜるとしたらどんな力が欲しい?今のカノウに必要な要素から、緑の光の力を導き出せ。
カノウは遠く離れた場所から剣を横薙ぎに振るう。あんな距離じゃ当たるわけない。となると、あの緑の光は...
「射程強化!」
それに気づくのと同時に、速度探知が見えない刃を捉えた。カノウの剣の延長線上に見えない刃が伸びていたのだ。見えない刃による射程の延長、それが緑。
「速度探知あってマジでよかった...ぜ!」
地面を転がるようにして見えない刃の下に滑り込む。俺の腰の辺りを狙っていたため、ギリギリではあったが滑り込む空間はあった。そして刃の側面に蹴りを叩き込み、上へと跳ね上げさせる。
「くっ...!」
見えない刃に引っ張られる形で、カノウの剣の切っ先が上へと持ち上がる。左手一本で持っている状態だからそのまま弾き飛ばせるかなと期待したが、そこまでには至らなかった。利き手じゃないのに支え切るとは...でも、少しは時間を稼げたな。
残り三十五秒
「青...緑...混色・空!」
空色...シアン...青と緑の合成色!射程延長と数が合わさると何になるんだ?わからんけど避けるしかない!
空色に光る剣から放射状に光の刃が飛び出す。しかも、ビームのように途切れることなく伸び続ける。刃は目に見えるようになっているし、追尾することなく直進しているから消滅している効果もあるみたいだが...避けれる範囲が小さすぎる。
後ろに下がれば下がるほど、放射状に広がる刃の隙間は大きくなるけれど、試合場の大きさには限界があるため永遠には下がれない。刃もさらに増えていき、あと数秒もすれば人が立てるほどの領域はなくなる。
7801ページ 黒 青 未来跳躍
未来跳躍を発動し、まだギリギリ人が通れる程度の隙間が残っている上の方を通ってカノウの真後ろへと転移する。
「流石にここは安地だよなァ!」
剣から放射状かつ直線的に刃が飛んでいる以上、カノウの真後ろには刃は飛んでこない。まぁ、それはカノウもわかってはいるだろうが。
「赤...緑...混色・黄!」
光の刃を消し、振り向きながら剣を振り抜くカノウ。威力特化の赤に射程強化の緑。合体したら...一体どうなるんだ?想像ができない。
とりあえず地面を蹴ってカノウの周りを旋回する。距離を取るのではなく、剣の延長線上から逃れるように移動することで見えない刃の攻撃を避ける。
「ふんっ!」
だが、カノウはお構いなしに剣を地面と並行に振り切る。そしてそのまま一回転しようとする。回転切りだ。
「うわ何だこれ空間を切り裂いてる⁉︎」
カノウが一回転し切る前に空間の異常に気づいた俺は、跳んで剣を避けた。けれどこのまま着地するわけにはいかなくなった。黄色は空間の切断。切れた空間に足を踏み入れれば、どうなるかわからない。
4014ページ 黒 青 障壁
空中に障壁を設置、それを蹴ることで切れた空間から離れて結界に足をつける。回避はできたが、今ので妨害一回分を使ってしまった。これで十秒間妨害系魔法を使えなくなった。残り時間は十二秒。妨害魔法はもうほぼ使えないと見ていい。ここからは、結界を蹴っての移動と未来跳躍で回避するしかない。
「赤...青...緑...」
だが、それをカノウは許さない。
「混色・白」
純白の光が、カノウの剣から放たれた。
陽がほとんど沈み、暗くなっていた闘技場内が真っ白に染まる。
「…はは」
こりゃ無理だ。
「奥の手どんだけ残してたんだよまったく...」
全身を切り刻まれて、すぐに闘技場の効果で回復した俺は悪態をつく。
早すぎて目で追えなかったが、速度探知の結果と、身をもって味わったことで白の効果がなんなのか大体わかった。カノウの剣から、無数の見えない刃が飛び出したのだろう。空色の時のように放射状に飛び出した刃は、俺に向かって追尾してくる。その時に刃同士が重なり合ったら巨大化する。さらに、刃が通った軌道上は空間が切り裂かれていて...といった感じだった。紫と空と黄のいいとこ取りをしたのが白なのだろう。流石は光の三原色を全て混ぜた究極の白ってわけだな。
「あーあ、負けちまったなぁ...」
試合に負けてしまった。あと数秒だったから結構悔しい。あの時障壁で跳ぶんじゃなくて、重力操作で離脱しておけば...まぁ、赤が混ざっていたから障壁で受け止めることはできないけど、障壁で少しでも時間を稼いでから未来跳躍で飛べばまだ可能性はあったかもしれない。判断を間違えたな。
「まさか、こちらの手札を全て切ることになるとはな...」
右腕が綺麗にくっついたカノウがそう言いながら近づいてくる。
「でも負けは負けだ。大人しく魔法は諦めるよ」
いろんな効果のある光の剣の力は是非とも欲しかったが、試合に負けてしまったので教えてもらうことはできない。キッパリと諦めて...いや、効果はわかったわけだし、自分でやり方を探るのもいいな。別の魔法で代理できないかも試してみよう。とりあえず、いいアイデアにはなったな。
「……これを持て」
少し考えるような仕草を取った後、カノウが赤く光った剣を突き出してくる。
「…え?」
「あれを切るくらいにまで追い込まれたのは久しぶりだ。それも、攻撃することなくただ避けるだけでな」
カノウが少し笑いながら話す。
「これは俺からの敬意みたいなものだ。魔法は教えられないが、スキルを与えるのはいいだろ?全色持っていくといい」
「……いいのか?」
「ああ。持っていけ」
「おぉ...ありがとうカノウ!貰うよ、この力。絶対に役立ててみせる!」
こうして俺は、色彩剣装というスキルを手に入れたのだった。
「よーし。試し打ち、行きますか」
ワンナやカノウたちと戦った次の日。俺はガネルの南西の山岳地帯に来ていた。今日は二人と戦う予定があるが、いずれも八時以降なので時間が空いていた。そのため、依頼を消化すると共に昨日新たに得た力を試そうという魂胆だ。
「よーっす!また会ったな」
そして目の前にいるのは、以前ガルムで受けた依頼で戦った巨大トロールだった。
「お前、前よりもデカくなったなぁ...」
トロールは前に戦った時よりも巨大になっていた。転移の魔族に転移させられた後、これまた別の魔族に魔素を注入されて巨大化させられたのだろう。まさかガネルの方に来ているとは思わなかったが...
「今回は討伐だから...最初から本気で行かせてもらおうか」
3751ページ上 黒のみ 演奏
演奏魔法を発動し、自らにバフをかけ、トロールにはデバフをかける。
「うるせぇだろ?ほら来いよ」
そう挑発すると、トロールが腕を振り下ろしてくる。演奏によるバフもあってさらに速度が上がった俺なら、こんな攻撃を避けることなんて朝飯前だ。
「お前の武器、もらおうか」
9931ページ 略奪
魔力を半分使い、トロールの一番の武器を盗み取る。
「変身能力か...再生能力はダブってて盗めなかったみたいだな」
トロールから奪ったのは変身の力だった。できれば再生能力の方を奪いたかったが、俺が使ったことある回復魔法と同種だったみたいで盗むことができなかった。だが、武器を一つ奪ったのは事実。結構なアドバンテージだ。
「せっかく盗んだんだし、一回使ってみて...いや、やめておこう」
これ、変身しても服はそのままなタイプだ。下手に巨大化しようとしたら服が弾け飛ぶやつ。使う前に気づけてよかった...
「よし、さっそく色彩使ってみるか」
ロングソードを抜く。こいつを使うには、ある程度の長さがないといけないのでダガーでは無理なのだ。
「まずは...『色彩剣装 原色・青』」
ロングソードに青い光が纏わりつく。
「一個ずつ試させてもらうぞ。大人しく的になれ!」
切っ先から光の刃を飛ばす。巨体のトロールは避けることなぞできるわけもなく、四方八方から切り裂かれる。
「…やっぱ、面倒だなその再生能力」
この程度の傷だと、つけた側から回復されてしまう。魔素もほとんど流出していないだろう。青は数に秀でているけど威力に乏しい...と。
「威力なら当然赤だよな。『色彩剣装 原色・赤』」
色を赤に変え、自慢の速度を活かして一瞬でトロールのもとまで近づく。
「おらよっと」
ズバッとトロールの脚を引き裂く。すごいなこれ。一切の抵抗なく降り抜けた。一度刃が入ったらスゥーっと肉を引き裂けた。ギコギコはしない...って、それは元からか。
とにかく、これが赤の力。防御突破、攻撃特化の、当たれば必殺の刃。流石にこの大きさだと致命傷にはならないけど、だいぶ大きな傷をつけられた。この感じ...もしかして、回復阻害も入ってるのかな?再生自体はしているみたいだけど、治りがさっきと比べて極端に遅かった。
「強い代わりに、当てるのは自分の実力ってのがネックなんだろうけど...赤に関しては俺の方が使いこなせそうだな」
速度操作のおかげで当てるのは容易い。練度的に赤以外の色はカノウの方が上手く扱えるだろうが、赤だけなら俺に分があるだろう。というか、普通に強いからメインウェポンにできそうだな。あまり使ってこなかったロングソードが日の目を見ることになりそうだ。
「じゃあ次は...っとと、危ない危ない」
上から来ていたトロールの腕の振り下ろし攻撃を避ける。脚を切ったのでその場から動くことはできないはず。変身することもないので、そのまま腕のリーチよりも遠くまで距離を取ることで安全を確保する。
「距離取ったから緑だな」
『色彩剣装 原色・緑』
光が緑色に変わる。あっ、長さは自分で決めるのか。じゃあトロールに届くくらいの長さに...
「重っ!伸ばした分重量かさむのかこれ...案外使い勝手悪いな」
両手で支えてなんとかロングソードを振り抜くが...威力は普通に斬った時と変わらないみたいだな。すぐに再生されたし、威力にはあまり期待できない。カノウが緑を振り回せていたのは、試合場が狭かったのと、必要な分だけ伸ばして重量の増加を抑えていたからだろう。あまりにも遠距離の時は普通に弓矢なり魔法なりを使った方が良さそうだ。
「次は...黒!」
『色彩剣装 無彩・黒』
剣を黒く光らせる。そして斬撃を設置するイメージを浮かべて...未来からの斬撃を放つ。
「奇襲性は高いけど、これも威力は据え置きだな。原因を作り終えるまで、色を変えるのも解除もできないのが弱点か...未来確定に使うのは要練習だな」
トロールに近づき、未来から放たれた八つの斬撃と同じ箇所でロングソードを振る。これ、飛んできた斬撃の位置を覚えてなかったら、剣の強制力に頼らないと一生解除できない状態になるな。気をつけないと...まぁ、とりあえずこれで別の色に変えられるようになったわけだが...あっ、いいこと思いついた。
トロールの頭の上に登り、斬撃は飛ばさず、まずは普通にロングソードを振る。そして刃がトロールに当たる直前に未来からの斬撃を放ち、その直後に原因作りを兼ねた斬撃を加える。
未来からの斬撃と、普通の斬撃。ほぼズレのない二重攻撃。これは結構使える気がする。すぐに原因作りを終わらせるためその後の行動に制限がかかることもなく、一度の振りで二度攻撃ができる。タイミングを少しずらせば、振られる剣を見て相手が回避をしようとした瞬間に未来からの斬撃を与えて動きを止め、その後の攻撃を当てるといった動きができそうだ。
「これも要練習だな。極めれば使いやすそうだ」
『色彩剣装 光彩・金』
黒から、綺麗な金色へと光を変える。過去から未来に飛ばす斬撃だが...これもさっきのと同じ使い方できそうだな。
「こいつも当てる努力が必要なやつだな...ほい、ほいっと」
数度切り裂いては過去からの斬撃を浴びせる。過去と言っても、ほんの数瞬前なんだがな。とりあえず、似たような使い方はできるみたいだ。
「うーん...あんま使わないかな。秒数決める必要あるし、ちょっと面倒だ」
カノウは任意での発動ができるみたいだけど、俺のはスキルによるものだから時間指定でしか使えない。やっぱ、魔法として覚えたかったなぁ...
「さて、次は混色だな」
『色彩剣装 原色・赤』
『色彩剣装 原色・青』
「原色の赤、原色の青...混ぜて混色の紫!」
二色を混ぜて紫に変える。混色は単体でスキルになっていないから、発動までに時間がかかってしまう。盤面をひっくり返せる程度の力はあるが、時間がかかるのは少し嫌だな。
まぁ、時間がかかるのは魔法として使った場合でも同様みたいで、カノウが大会で混色を使わなかったのも、時間がかかってその間にやられるからって理由らしい。確かに、そんな隙を晒してたらアクセルに土手っ腹ぶち抜かれるな。防御として使える金や黒を使うしかなかったわけだ。
「紫の使い心地は...と」
切っ先から紫色の光の刃が大量に飛び出す。だが、それらは一回も合体することなく直進してトロールに命中していく。
「自動追尾だから、敵が動かなければ刃同士がぶつからなくて合体も起こらないのか...んで、合体しないと威力は少し上がった程度なんだな」
合体しなければ赤ほどの威力はない。回復阻害もないみたいだし、赤の要素はほとんど消えてしまってるみたいだ。多人数相手だったり、回避が上手い敵相手にしか使わなそうだな。
『色彩剣装 原色・青』
『色彩剣装 原色・緑』
「原色の青、原色の緑...混ぜて混色の空!」
光を変え、空色を作り出す。
「効果発動...っと」
切っ先から放射状に光の刃が伸び続ける。自分のいる方を除いた、上下左右前方を光の刃埋め尽くし、全てを引き裂いていく。
「重みはないけど...動けないのか」
緑のときとは違い、いくら刃を伸ばしても重くはならない。けれど、刃が空中に固定されているため、剣を動かすことが一切出来なかった。必ず片手は剣に触れていなければならないので、かなり行動が制限されてしまう。
「近距離は無敵だけど、遠くなる程薄くなる..か」
遠ければ遠くなる程、刃の壁の密度が少なくなるため発動と同時に距離を取られたら当たらなくなってしまう。時間と共に刃は増えていくが、遠いと当たらないのは変わらない。こちらに迫ってくる敵、もしくは身動きできない敵に対して使うのが良さそうだ。
空の唯一の弱点は背後がガラ空きになることだが、これは速度探知で確認すれば問題ない...
「…いや、これダメだ。処理できん」
空色の光を消し、伸ばした刃を消滅させる。これ以上刃が増えると、速度探知で得られる情報量が多くなりすぎて脳の疲労がえげつなくなってしまう。少なくとも、今の最大加速ではここいらが限界といったところか。探知を使わなければもっと長時間使えるだろうが、それなら別の色を使った方が早そうだ。
「次は赤と緑...麺類食べたくなってくる色だな。あと初代やりたくなる」
『色彩剣装 原色・赤』
『色彩剣装 原色・緑』
「原色の赤、原色の緑...混ぜて混色の黄!」
色を混ぜ、黄色を作り出す。そういやこれと青も初代の色だな...とまぁそれは置いといて。
「空間を切り裂く力...何気に一番いい組み合わせなんじゃねぇのこれ?」
見えない刃を伸ばし、一気に振り抜く。重みは緑の時と変わらない。そして、赤の威力特化が混ざったことで生まれた空間を引き裂く力によって、トロールの体が一気に真っ二つになる。
「回復阻害は消えてるっぽいけど...似たようなことにはなってんな」
縦に真っ二つにされたトロールは、右半身が主体みたいでそこから再生を始めようとする。けれど、再生した側から引き裂かれた空間に接触し抉り取られて消失する。
「ありゃブラックホール的な何かなのかな...それも吸引しないタイプの」
かなりやってることはエグいが、結構な威力だ。今のところ、回復阻害が消えている以外の欠点は見つからない。紫や空が欠点多めだったのを見ると、相当なアタリだな。
「空間の裂け目は十秒で無くなる...か。もっと短くてもいいくらいだな」
十秒間残存する防御不可能の攻撃。オーバーキル気味だ。こっちの行動も阻害されてしまうから、もう少し短い方が嬉しい。こう、一瞬だけ引き裂けるようにならないもんかね...カノウならカスタムできるのかな?
「ってか、だいぶ小さくなったな」
空間の裂け目が消えたことでトロールの再生が始まった...のだが、半分以下のサイズになっていた。当然だ。体を真っ二つにして、十秒間再生した側から削り取ったのだから、体の中にあった魔素の相当量が失われているだろう。
「こりゃ白はオーバーキルだろうけど...試し打ちしないとな。どれくらい魔力使うのかも調べないとだし」
『色彩剣装 原色・赤』
『色彩剣装 原色・青』
『色彩剣装 原色・緑』
「原色の赤、原色の青、原色の緑...三原色混ざり、全てを包む原初の純白となる!」
三原色が混ざり、あの時俺を負けへと追いやった白色の光が剣から放出される。
「混色の白。これで終わりだ」
光の速さ...とまではいかないが、その後は恐ろしく早く終わった。速度探知の存在と、直接受けた経験が無ければ何が起こったのかわからなかっただろう。トロールの体は一瞬で貫かれ、一片も残さずに消滅した。おそらく、空間の裂け目に飲み込まれて消えたのだろう。
昨日の考察は正しかった。放射状に伸びた刃は合体を繰り返しながら追尾し、空間を引き裂きながら獲物を追う。色彩剣装の中で、まさに最強の一撃と言えるだろう。
「流石に連発はできないよなぁ...」
最強だが、それに見合った魔力消費量だ。この感じだと、魔力最大の状態で五回が限界だな。それなりの回数使えるが、味方を巻き込む危険性もあるし、使いどきには気をつける必要があるだろう。
「残る欠点は...いや、まぁこれは色彩剣装全部に共通することだけどさ」
一応辺りを見渡し、さっきのトロールが実は逃げ延びていたりはしないか、新たな敵が近づいてきていないかを確認しながら呟く。といっても、盗んだ変身能力が勝手に変換されているので、トロールが実は生きてるってのは考えにくいが。
「使い慣れてないこいつを使わなきゃならないってのが、やっぱ一番のネックだな...」
俺はロングソードをしまいながら、誰に聞かせるわけでもなく呟いた。
「転移させる前に消し飛ばされてしまいましたか...」
赤い髪の女、キネットが空から神の使いの様子を伺いながら呟く。
「まさかあそこまでの力を得るとは...厄介ですね」
オリジナルなら対処のしようもあったけれど、神の使いは速度操作とやらがあるせいで光の剣の発動までの時間を短縮できるため、対処が難しい。加えて、略奪とかいう魔法まで扱える始末。手に負えなさすぎて頭が痛くなる。
「彼女に頑張ってもらうしかありませんね...私も、できる限りの妨害をしなければ」
ギルド職員としての立場をフルに使い、人間どもを撹乱させる。魔族の頭脳は私なのだ。こと情報戦において、私にできないものはない。
「ひとまずは...受付に戻りましょうか。これ以上は怪しまれてしまうでしょうし」
今は仕事を抜け出してきている状態。姉さんのように咎められることがないよう細心の注意を払ってタイミングを身図らい、かつ根回しをして少しの不在は許されるくらいにはなっていますが、流石にそろそろ限界。仕事が回らなくなって何人かが慌てふためいていることでしょう。なぜいないんだと反感を買われる前に戻りましょう。
ガネルの門のすぐ近くに転移をする。
「お疲れ様です」
なんて事のないように門番に声をかけ、ガネルへと、聖域の中へと、人間の巣へと入っていく。
善良な一般ギルド受付員、キネットとして。
普通にクソ強い略奪と色彩剣装がある中で、いまいち強そうって思えない演奏魔法ですが、このバフとデバフ、かなーり特殊なものなのでとある条件下で猛烈に輝くことになるんですよね。
その出番がいつになるのかはまだわかりませんが...頭の片隅にでも覚えといてください。
あと一個補足なんですが、色彩剣装に刃渡り何センチ以上という条件は基本的にはありません。
正確には、スキルだとある程度の長さが必要だけれど、魔法でカスタム有りで使えばその条件がなくなる、といったものですが。
ワンナが準決勝で短刀で使っていたのを見事に忘れているカリヤくん...もとい、作者。
本文を直すのが無理だったので、後書きで後付け設定を加えました。
すんません。