前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8384字。

クミリアと戦います。


未来予知と、不敗の跳躍

「未来予知...使えるような、使えないような、そんな性能してるな...」

 

ゴモンに反撃流を教わった次の日。俺はネオンと戦い、一瞬で勝利して未来予知の魔法を教わった。

 

なぜ一瞬で勝利できたのかというと、単純に相性の問題だった。ネオンは心を読む魔法を扱えるが、この世界の人間には俺の心を読むことはできない。そもそもの言語が違うため、読んだとしても意味がないのだ。まぁ仮に読めたとしても、ネオンが回避行動に移る前に攻撃を叩き込めたとは思うが。

 

心を読めないことを悟ったネオンはすぐさま未来予知を発動しようとした。いや、発動したのだろう。俺が攻撃の構えに入った瞬間に降参したのは、負ける未来しか見えなかったためだろう。

 

未来予知は、発動した瞬間に術者主観の時が止まる。そして三秒後までの未来を見ることができる。

 

未来を見たら、二択の選択を迫られる。一つは、その未来を選択すること。見た三秒の未来の通りに、全てのものが動き出す。術者は何もしなくとも、勝手に未来をなぞっていく。

 

もう一つの選択肢は、見た未来を蹴ること。つまり、パスをすることだ。その場合、また別の未来を見ることになる。そしてまた選ぶかパスするかの二択を迫られて、パスすればまた別の未来を...と繰り返していく。

 

見れる未来には限りがあり、百個までしか見ることができない。そして、さっきの未来の方がよかったなといって戻ることはできない。出来るだけ良さそうな未来を選ぶ必要があるわけだ。今見た未来、その一個先に最高の未来があるかもしれないし、その先はずっと敗北しかない未来かもしれない。妥協が肝心である。

 

さらに、その三秒は最高でも、確定した三秒が経ったその後に死ぬ可能性もあるため、一見良さそうな未来でも実は詰んでいたなんてこともザラらしい。ここら辺が使い勝手の悪い点だ。裏目が十分にあり得るのがなかなかに面倒であり、これなら全てパスして自力で動く方がいいんじゃないかとと考えてしまう。

 

百個目の未来をパスすることもできるのだ。その場合、即座に意識は未来予知発動時の状態に戻る。見た百個の未来をもとに動くことができるが、勝手に体が動くことがないため自力で未来を掴み取る必要がある。ほとんどの場合、動き出しが遅れてそのまま攻撃を受けることになるらしい。

 

ネオンは、百個の未来全てが敗北に繋がるものだったら、即座に降参するようにしているみたいだ。俺との試合で降参したのも、これが理由である。

 

結論、未来予知ってよりかは未来確定。使えるけど使えない。使うとしたら、百個全てパスして未来を見ることだけに使うだろう。ネオンには悪いが、あまりいい収穫にはならなかった。

 

「時間まだあるけど...もう待ち合わせの場所に行っておこうかな」

 

アクセルを除いた、大会上位者最後の一人。この町の英雄となったクミリアと会うため、俺は時間前だが闘技場へと向かうことにした。

 

「…ってか、あの闘技場も私用で使えるんだな...」

 

待ち合わせ場所は、最後の大会で使われた闘技場だった。一番広いらしいけど、なんか使う気が引けるっていうか、あの舞台を個人のために使っていいのかと思ってしまう。

 

「クミリアどれくらい強いんだろうな...絶対まだまだ力隠してるだろうし、慎重に攻撃しないとダメかな多分...」

 

「クミさんがなんだって?」

 

……ヒェッ

 

「そんな驚かないでくれよ。こっちまでビックリしちゃうじゃん」

 

「どうしてここに...?まだ時間じゃないはず...」

 

いつのまにか横に立っていたクミリアに聞く。

 

「入ってた予定が突然無くなっちゃってね。先に行って待ってよと思ってたんだけど、そしたら君を見つけたわけさ」

 

「クミリアは俺と会った記憶ないはずだけど、どうして俺だと...?」

 

俺がクミリアと会った時は、たしか泥酔状態だったはず。それプラスワンナの略奪で心を奪われてたりしてたから、その時の記憶なんてないと思うんだけど...

 

「ワンナから容姿とか装備について聞いてたんだ。いろんな種類の武器を持っているから見たらわかるって言われていたけど、確かにわかりやすかったね」

 

「ああ、なるほど...」

 

確かに、その条件に合うのは俺くらいだわな、うん。

 

「いい機会だし、話しながら一緒に向かわないかい?」

 

「断る理由がないな。それに、俺もちょっと話したいことがある」

 

「なになに?なんの話?」

 

「いやまぁ、将来仲間になるわけだし、交流を深めておきたいって話さ。特に話題があるわけじゃない」

 

「そうなの?じゃあクミさんから話題を出してあげようかなー」

 

なんだろう。

 

「後夜祭のとき、クミさん気がついたら鎖で拘束されてたんだけど何があったのか教えてくれる?」

 

「ああ、あの時か...ワンナに抱きついて離れなかったから無理矢理引き剥がして拘束魔法で縛りつけた。俺が来る前の出来事はあまり知らないけど、とりあえず、ゴモンが引き剥がそうとしたら抵抗されて吹っ飛ばされたってのは知ってる」

 

「えっ、そんなことが...後で謝っておかないと」

 

とまぁ、そんな話を色々しているうちに俺たちは闘技場にやってきた。

 

「ほんと、よくこの闘技場個人で使えるな」

 

「広いけど、扱いは他の闘技場と変わらないからね。そんなに値段も変わらないんだ」

 

「へー」

 

中に入り、試合場までの階段を登る。

 

…何か忘れてるような。

 

「……よし、じゃあ始めようか!」

 

「………あっ、思い出した。ちょっとタンマ!」

 

「なに?何を思い出したの?」

 

「やろうと思ってたことを思い出したんだ。ちょっと一回魔法使ってみてくれない?少しでいいから魔力を減らして欲しい」

 

「いいけど、何のために?」

 

「魔力の回復速度を見るためさ」

 

「うーん...それになんの意味があるのかよくわからないけど、それなら一回外に出ないとダメだね」

 

「えっ、なんで?」

 

「なんでって、ここだと魔力回復しないし」

 

「…あそっか」

 

闘技場の中にいると魔力回復阻害のせいで魔力回復しないんだった。普通に忘れてたわ。

 

「ごめん、一回外出ようか」

 

外に出る。

 

「で、魔力消費すればいいんだっけ?」

 

オーラのようなものがクミリアを包み、すぐに消える。

 

「これでいい?」

 

「おう...うん、問題ないな。戻ろう」

 

「今のって何の意味があったの?」

 

試合場に戻るまでの間にクミリアが聞いてくる。

 

「フロートって名前の魔族がいてな」

 

「うん?」

 

「そいつは他者の姿形、記憶、魔力や魔法適性、スキルなど全てを模倣できるんだ。本人と全く変わりないから、そこら辺にいるただの一般市民がフロートであるという可能性を捨てきれない」

 

「…もしかして、クミさんがその魔族なんじゃないかって疑ってたわけ?」

 

「ああ」

 

「ちょっとそれ酷くない?」

 

「酷いとは思うが、必要なことだ。人を信じるには、まず疑う必要がある。疑って疑って、何もかもを疑って怪しいところが一つもなかったとき、やっと信じることができる。疑える箇所があるのに信じるってのは、真に信頼してないことに等しいと、俺はそう思っている」

 

「ちょーっとその生き方楽しくなさそうだからクミさん嫌だなー。で、魔族じゃないってさっきので確信できたの?」

 

「ああ。さっき全て疑うと言ったが、今回はたった一つ調べるだけで済むからな。魔力回復を見れば一発だ」

 

「どうして?」

 

「聖域の中に魔素は一片たりとも存在していない。つまり、魔族が聖域の中で魔力が回復することはないのさ。少しずつ回復したなら、その人は人間確定ってことになる」

 

あくまで重要なのは、『回復したこと』ではなく、『少しずつ回復した』というところなんだけどな。フロートなら魔力を複製することで、聖域の中でも魔力を回復することはできる。けれど、それだと一瞬で回復してしまう。魔力回復速度もゼロのままだ。速度探知があれば、その些細な違いも見抜くことができる。まぁ、この説明をクミリアにする必要はないな。

 

「そもそも俺は大会に魔族が選手として紛れている可能性を考えていてな。他にも、優勝した人が襲われて成り代わってるっていう可能性も考えていたから、こういう対応を取らせてもらったわけだ。疑って悪かったな」

 

「いいよいいよ別に。確かに、英雄の中に魔族が紛れてたとかなったら怖いもんね。そんな可能性を考えて動いてるなんてすごいよ」

 

「フロートの情報がもっと広まってたら、同じことを考える人も出てくるさ。すごいってほどでもない。心配性なだけだよ」

 

「今まで会ってきた人全員にやってきたの?」

 

「いや、ちゃんとやったのは初めてだ。これ思いついたの数日前だし、今のところ危惧してるのは英雄に成り代わってることだけだからね。いちいち全員にやるのめんどいし、今やっても後日成り代わってる可能性あるからキリないし」

 

「確かに。どうするの?」

 

「定期的に抜き打ちでテストするしかないね。もちろん、他の仲間にもやるつもりだ」

 

レストと勇者以外の人はちょくちょく調べる必要があるだろう。なぜ二人が例外なのかというと、まず、勇者の力はおそらくコピーできない。聖剣を保有してる=本人となる。そして、レストには盾がある。あの盾は魂を識別しているため、姿形や記憶、魔力をコピーしたとしても盾は触れられないはず。まぁ、あくまで憶測でしかないから一応ついでに調べるとは思うが。

 

「そっか、仕方ないねー...そろそろお話は終わりにしよっか」

 

「確かにそうだな。そろそろ始めよう」

 

試合場に戻ってきてからも話し続けていた俺たちは、戦いの準備を始める。クミリアは準備運動をし始め、俺は背負っていた鞄を放り捨て各種装備を確認していく。

 

「さっきから気になってたんだけど、そのポーチって何入ってるの?戦いに必要な物?」

 

「試合が終わったら教えてやるよ。今から戦うってのに自分の戦力明かすわけないだろ?」

 

「じゃあ後で教えてねー」

 

「ああ、教えてやる...って、また話してんな。緊張感...」

 

ちゃんと気ぃ張れよ俺?相手はアクセルの速度に反応してカウンターを叩き込める猛者中の猛者だ。どれだけの手数があるのかも不明。慎重にいっても負ける可能性の方が高い。それなら、様子見無しでバンバン攻撃を仕掛ける方がマシ。普段とは違う戦法を取るのだから、ちゃんと集中しないとダメだ。

 

「すぅー...はぁー...んよし、準備はいいかクミリア?」

 

「うん。いつでもいいよ。試合開始だ」

 

結界が張られる。試合開始。

 

その瞬間に俺は駆け出し、クミリアに近づきながら拳を構える。

 

「遅いね!」

 

クミリアは当然のように俺の動きを認識し、カウンターの蹴りを放つ。だがしかし、俺もその蹴りは見えている。

 

『反撃流』

『接触不動』

 

「想定通り!」

 

「動けな...反撃流⁉︎もう習得したの⁉︎」

 

蹴りが当たる直前に、スキルで反撃流を発動する。拳を構えていたのは攻撃のためではなく、すぐに反撃流の構えに移るための予備動作だったのだ。

 

クミリアの目の前で立ち止まった俺にクミリアの蹴りが刺さる。ただの蹴りとは思えないほどの激痛が走るが、クミリアの武器である衝撃操作はこれで無効化できた。増幅した衝撃を全て足から地面へと受け流していく。

 

「一発には...」

 

補助魔法により硬直しているクミリアを逃がさないため、足を離すわけにはいかない。そして蹴りは左肩に命中しているため、左肩や腕は動かせない。足を離さず、右手一本で攻撃する必要がある。

 

「ちょっ、まさか...!」

 

その方法を俺は知っている。ドンッと右手で足を叩き、反撃に使う衝撃を溜め込む。

 

「一発ってね!」

 

右拳を側頭部に叩き込み、溜め込んだ衝撃を流し込む。

 

「っぐう...って、まだ動けない⁉︎」

 

「足さえ離さなきゃ永遠に止められるって、バランス崩壊必至のバグみてぇな挙動だよな...もっかいいくぜェ!」

 

足を叩いて衝撃を溜め込む。この方法だと少し威力は落ちるが、何度も攻撃することができる。なんでゴモンはこれ大会でやらなかったんだろうと思ったけれど、一発には一発を返すという己の教義に従ったが故なのだろう。まぁ俺は容赦なく叩き込むが。

 

「っっっ...!」

 

今度は俺を蹴っている脚の膝に拳を叩き込む。このまま倒し切れるとまでは思わないけど、削れるだけ削りたい...!

 

「もう一ぱアッツ⁉︎」

 

クミリアの拳に青い炎が纏わり付き、その熱さに思わず飛び退いてしまう。そうだよな、体が動かないだけで、普通に魔法は使えるんだもんな。

 

「いやー、結構やられちゃったからね...こっから反撃させてもらうよ!」

 

クミリアがこちらに向かってダッシュしてくる。十分反応できる速度だ。普段なら、下がって拘束魔法使ってから遠距離攻撃するだろうが、反応できるなら攻めに回った方がいい。日和ったら負けだ。

 

1527ページ左上 黒のみ 水膜

1749ページ右上 黒のみ 水噴

 

いつもの魔法で滑るように移動し、ダガーを抜いてすれ違い様に脇腹を切り裂こうとする。

 

「っとと、あっぶね」

 

反応速度ヤベェな。今のに反応して回避からの蹴りを放てるのか、こりゃ普通の攻撃じゃ反撃されて終わりだな。近距離攻撃するなら拘束してからやるか、未来跳躍で背後に回ってからやるしかなさそうだ。

 

「いや、同時にやりゃあいい話じゃねぇか!」

 

2007ページ下 黒 赤 拘束

5000ページ 黒のみ 魔法復唱

 

まずは大量の鎖でクミリアを拘束しに...って、避けられたな。面倒な...

 

4983ページ 黒のみ 虚像生成

 

確定命中する魔法を使い、まずはクミリアに幻覚を見せる。俺がその場で立ち止まり、反撃流の構えを取っている姿が見えていることだろう。これは拘束を当てるための行動であり、反撃流にどのように対応するかを見るための行動でもある。

 

「これは...偽物!」

 

っ、これも見抜くのかよ気配でも感じ取ってんのか?

 

「くそッ、ならこいつ!」

 

3776ページ下 黒 黄 音撃

 

指パッチンで音の塊を飛ばす。

 

「よっと」

 

チッ、これも避けるか...ただ、これでクミリアが風や空気の流れでものを見てるのがわかった。これだと、未来跳躍で背後に飛んでも対応されるな。

 

こうなりゃ、全方位から同時に攻撃するしかない。避けられない攻撃で包んでしまおう。

 

9930ページ 黒のみ 跳弾鏡射

4566ページ 黒 青 閃光

 

鏡をクミリアの周囲に設置し、閃光を高速射出する。閃光は鏡で反射を繰り返し、クミリアの逃げ道を塞ぐ。

 

「せいっ!」

 

「は、ハァ⁉︎」

 

う、うせやろ?拳で閃光を跳ね返した...?確かにワンナの青の光の刃を弾いてたけど、閃光も弾けるのかよ...!

 

ってかこいつ!攻撃に魔法ほぼ使ってねぇ!いやまぁ対策できてないから使われても困るけど、こんな簡単に俺の攻撃を対処されると泣きたくなる。

 

チキショウこっからどうする?色彩剣装はロングソード抜く必要あるから隙を晒しちゃうし、略奪は一回しか使えない上にいいものは盗ませてもらえないだろう。少なくとも、この三日間で覚えた技は使えない...って、また俺逃げに徹して考えに耽ってる!攻めるんじゃなかったのか俺!

 

「ああもうめんどくせぇ色々やるから黙って喰らってろ!」

 

4970ページ 黒のみ 鎌鼬

 

鎌鼬を発動するが、空気の流れを読んでいるクミリアに避けられる。

 

7002ページ 黒のみ 金属生成

『製作』

 

久しぶりに特製クナイを作り出し、それをクミリアに向けて投げる。弾き飛ばしてくれればこっちのもんだが...避けたか。

 

4571ページ 黒のみ 触手・水

 

触手を出して攻撃を仕掛ける。けれど、クミリアはうまく避けながら触手を凍らせ叩き砕いていく。氷装を拳に付与している...のか?どうやって手に入れたのか知らないけど、それならこうするまで。

 

『雷装』

 

新たに触手を出しつつ、電流を流していく。これなら例え凍らされたとしても、電撃を喰らわせられる...かかった!

 

「イ゛ッ...⁉︎何この痛み!」

 

「天の怒りってやつだ。ゴモンは一発で慣れやがったけど...お前はどうだろうなァ!」

 

クミリアは回避に専念し始める。けれど、四方八方から秒速53メートルで襲いかかってくる触手たち全てを避け切れるはずもなく、少しずつ掠りだす。一度掠れば電撃が走り、痺れて動きが鈍り、さらに攻撃を喰らうことになる。これも、一度ハマればほぼ詰みとなる必殺技のようなものだ。

 

けれど、それは魔物に限ってのこと。この世界の人間は、スキルが存在することからも分かる通り、どいつもこいつも適応力がバケモンである。

 

「もう...見切った!」

 

クミリアが拳を振るうと、触れていないにも関わらず触手が弾け飛ぶ。空気の拳...大会で使ってたやつと同じ魔法か?空気中に流すほどの力は無いともう見破られたか。

 

「空気...空気ね」

 

ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら俺は呟く。もちろんわざと。多少警戒してくれればいいけど...警戒はしつつも攻撃はやめないか。まぁいい。策があるのは事実だ。

 

4014ページ 黒のみ 障壁

 

障壁を四方と上に展開、数メートル四方の箱を作り出し、空間を区切る。

 

密閉空間。逃げ道は塞いだ。

 

「何するつもり?」

 

「ちょいと自爆に付き合ってもらおうと思ってな」

 

起爆剤は既に作ってある。あとは適当に火の魔法を使うだけでいい。

 

「道連れにするつもり?」

 

「あー、自爆ってのは語弊があったな。喰らうのはお前だけさ」

 

7801ページ 黒 赤 未来跳躍

 

未来跳躍を発動。効果時間は最大の三秒。

 

跳躍が始まるまでの三秒間、時折飛んでくるクミリアの空気の拳を避けながらできる限り触手を電気分解させる。

 

3780ページ上 黒のみ 筆記

 

転移の数瞬前に筆記で地面に魔法陣を描く。

 

「じゃあなクミリア。一人で吹き飛べ」

 

そう俺が言った瞬間に転移が始まり、三秒先の未来へと飛ぶ。ひとまず、転移には成功だ。

 

「消え...未来超やくぅ⁉︎」

 

転移開始から一秒後、仕掛けていた魔法陣が起動して発火、密閉空間に溜め込まれていた水素と酸素に引火して急激に反応する。俺が未来跳躍で逃げたことにクミリアが気づいた頃には、すでに爆炎に飲み込まれている。というか、よく気づいたな。気配が完全に消えたからかな?

 

そして転移開始から二秒後、貼られていた障壁が消滅する。そこから一秒のうちに限界まで走って移動し、さっきまでクミリアがいたところから遠いところに転移する。

 

転移完了後も油断はしない。そのまま走り続けて回避に専念する。あっ、未来跳躍のせいで水膜と水噴が解除されてるから早めに再発動しないと...⁉︎

 

「すごいねさっきの。後でやり方教えてよ」

 

なんでクミリアがここにってかボロボロじゃねぇか火傷すげぇぞよく動けんなというかもう攻撃の構えに入ってるじゃねぇかそもそもおかしい速度探知に引っかからずにここまでどうやってきたんだまさか未来跳躍かってか回避しないとでもこの距離だと今からじゃ避けられない未来跳躍はクールタイムまだだし魔法図鑑に魔力流す暇もないこうなりゃ直接魔力で壁を

 

「とうっ!」

 

走馬灯でも見えそうなくらいの思考の中、なんとか作り出した魔力の壁を軽々と突き破られてクミリアの拳が俺の胸に突き刺さった。

 

ああ、肋骨が砕けた感触がする。速度探知もそれが事実だと伝えている。けれど、不思議と痛みは少なかった。さっきの高速思考のせいで、脳が疲弊しているからかな?それとも、単純にアドレナリンがドバドバになってるかだな...とりあえず、再生使ってまずは回復させないと...

 

そう考えていたら、魔法を発動していないにもかかわらず、勝手に傷が治り始めた。

 

これが意味しているのは...

 

「ああ、負けたのか俺...」

 

思っていたよりも、何もできなかったな...やっぱり、冷静になってクミリアの戦法をちゃんと分析しながら戦う方がよかったか。なんなら、初見で戦ってた方がもっと上手く立ち回れたかもしれない。底が知れないと先に知ってしまっていたからこそ、怯えが出ていたのかもしれない。

 

「やられたわ。まさか未来跳躍で飛んで攻撃してくるとはな」

 

気づいてから発動までのタイムラグのせいで爆炎を喰らっていたが、途中で転移したおかげで致命傷にはならなかったのだろう。そして俺が移動しているのを見て、先回りして転移したわけだ。

 

「完敗だ。さて、この後何をしようか...」

 

「もう一戦」

 

「……へ?」

 

この後の予定を頭の中で組み始めていたのだが...今、クミリアなんて言った?

 

「本気、出してないでしょ。もう一回やろうよ」

 

「…いやいや、十分本気出したよ」

 

「十二分出さないと本気とは言えないね。それに...まだ何か隠し球あるでしょ」

 

「……わかった。もう一戦やろう」

 

まだ試作段階。隠し球とも言えないものだし、できればアイツとやりあうときまでとっておきたかったのだが...仕方ない。

 

「ただ、ちょっと魔力回復させてくれ。その後でやろう。クミリアも回復するか?」

 

「そうしようかな」

 

二人で闘技場の外目指して歩く。

 

頭を回せ。思考を回せ。もう既に、俺の勝負は始まっている。

 

作戦を練り上げるのだ。




戦闘描写無しのネオン...相性悪いし、仕方ないね。

とまぁそんなことは置いといて...流石にクミリアの実力を示そうとしすぎてカリヤくんを落としすぎたんで、次回挽回させます。
もうちょい先で使う奴を次回出すというまぁまぁな路線変更なんですが、まぁ終着点は同じでしょと見切り発車で変えました。

あらかじめ言っておきます、ネーミングセンスないのは許して。
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