前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8059字。

なんか魔物の設定を持て余した感が...出来悪いですすんません。


深い泥の中、深淵を覗く水溜り

「今日はどこ行くの?」

 

「三体の巨大化魔物の、残った最後の一体のところだ」

 

「なるほどね...どんな魔物?」

 

「わかんね」

 

「…どういうこと?」

 

「なんか不定形なんだってさ。その魔物が現れてから、そこでは雨が降り続けているってのを聞いたからなんとなく予想はついてるけどな」

 

多分雲の魔物なんだろうな。ク○ッコ的なやつ。雲相手にどうやって戦えばいいんだって最初はちょっと悩んだけど、クミリアは空気の腕を使って攻撃できるしなんか効きそうな気がしたからとりあえず移動している。効かなかったらその時に考えよう。

 

「雨が降り続けてるってだけでもう違和感がすごいよね」

 

そう、クミリアが言う通り、雨がずっと降っているのは異常だ。雷が降り続けているところもあるんだし、雨が降り続けてる場所があってもおかしくないじゃないかと思う人もいそうだが、そもそもこの世界、雨が降ること自体珍しいことなのである。

 

この世界では、雨は一ヶ月に一回降ればいい方である。海が存在していないので、雨雲ができるほどの水分が蒸発することがないってのが主な理由だろうか。水魔法を使うときに空気中から水分を持ってくる場合があるが、それも関係しているのかもしれない。とまぁそんなこんなで雨自体珍しいわけで、ずっと降り続けているというと魔物の仕業確定というわけだ。

 

「だな。そのおかげで場所が分かりやすいのはありがたい」

 

少し先の空に、黒い雲が漂っていた。大量の雨が降っているのがここからでもわかる。

 

「でも変だな。聞いた話だと、もっと奥...あの丘よりも遠くに魔物がいるって話だったんだけどな」

 

「風で動いてるんじゃない?」

 

「あー...確かにそうかも」

 

ってかやばくね?話聞いたのなんてほんの数十分前だったけど、確かあれ最新の情報って言われたぞ?その数十分であんだけ移動しているとすると...三、四時間でガネルの上空に到達するなこれ。

 

「こりゃ早めに処理しないとヤバそうだな...」

 

「そうだね。さっさと行こうか」

 

とりあえず雨の境目のすぐ前まで移動する。

 

「うーん...普通の雨だな。魔法で作った雨なのかどうかの判別はできないけど、水ではあるな」

 

普通の雨に見えるけど実は魔物の体液かなんかで、触れるとやばいってわけではなさそうだ。

 

「とりあえずクミリア、あの雲を空気の腕で吹き飛ばしてくれない?」

 

「りょー...かい!」

 

クミリアがほぼ真上にある雲に向かって拳を振るう。すると目には見えないが空気の腕が確かに振るわれ、雲の一部が晴れる。この腕は原理的にクミリアから遠くなれば遠くなる程範囲が広がるため、一部とは言ったがほぼ半分を弾き飛ばした。

 

「偉く呆気ないな...ん?」

 

大量の雨によってほぼ沼と化していた地面から、水滴が空に向かって逆流しだす。そしてその水滴が雲を生成しだす。

 

「…これ、地面の沼が本体のタイプか」

 

不定形だって言ってたのはそういうことか。たしかによく見ると、雲が動いてきたであろう方向の地面は一切濡れていなかった。沼を形成している水分ごと移動しているのだろう。

 

「それなら...とりあえず雷装で攻撃してみるか」

 

沼の中に手を突っ込むのはちょっと嫌だが...それが一番だろう。

 

「クミリアちょっと下がってて。感電すると危ないから」

 

「わかった」

 

「…よし、じゃあやるぞ」

 

『雷装』

 

クミリアが後ろに下がったのをきちんと確認してから、雷装を発動させて沼に手を突っ込む。

 

「…チッ、やっぱり泥水だから電気伝導率が悪いな。一応流れてはいるみたいだけど...っ⁉︎」

 

速度探知でソレに気づき、急いで手を沼から引き抜こうとした時にはもう遅かった。

 

「掴まれ...引き摺り込まれる⁉︎」

 

942ページ右下 黒のみ 呼気再生

1025ページ左上 黒のみ 水泡

 

抜け出すのは無理だとすぐに判断し、沼の中でも行動できるように二つの魔法を発動させる。

 

「カリヤ⁉︎」

 

沼の中へと引き摺り込まれようとしている俺を助けようと、クミリアが手を伸ばしたが届かない。そこでクミリアを加速させるという機転を効かせられればなんとかなったのかもしれないが、なすすべもなく沼の中へインする。

 

沼の中は、外から見た時には想像もつかないほどクリアだった。まるで普通の水の中かのように、先が見通せる。けれど、発動中である雷装がうまく流れなていないため泥水であることには変わりないようだ。

 

んで、魔物はどこにいるんだ...?どこを見ても魔物っぽい姿が見えない。俺を引き摺り込んだ魔物がいるはずなのだが...というか深すぎないか?一瞬で水深数十メートルにまで引き摺り込まれたのかと驚くと共に、そこまでの深さまですでに達しているのに、まだまだ底が見えないことに恐怖を覚えた。

 

けれど、そんなことを考えている暇はない。ってかここに留まる必要もねぇな。クミリアに情報共有をしないと。そのためにもこの沼の外に出ないとな。

 

一旦上に...っ、後ろから何か来てる⁉︎追っかけてきてんのかでも見えない⁉︎まさか魔物は水そのもの...?いや違う、泥水が透明になっているように、魔物の姿も透明になってるだけだ。速度探知が水とは違う何かとして魔物の姿を認識している。でも水みたいに不定形なのは本当みたいだ。

 

俺を沼から逃さまいと後ろから追いかけてくる魔物。自らのテリトリーと言わんばかりに高速で近づいてくるが、速度操作がある俺に追いつけるほどの速度ではない。引き摺り込まれたのが俺でよかったな。クミリアだったら一瞬で追いつかれているだろう。仮にも泥水、普通の水の中のような速度では泳げないしな。

 

「……よいしょぉっ!」

 

沼から飛び出す。それと同時に水泡を解除して会話ができるようにしておく。

 

4014ページ 黒 青 障壁

 

「カリヤ!大丈夫?」

 

「ああ!なんとかな」

 

障壁で足場を確保し、クミリアの方を見る。バンッ!と足元の障壁に魔物がぶつかっていたが、気にしないでおこう。

 

「よっ...と」

 

ジャンプして、雨の降っている領域から離脱しクミリアの近くに着地する。

 

「おかえりー。それで、あの泥の塊みたいなのが目標の魔物か」

 

先程設置した障壁に、泥のようなものがまとわりついていた。俺がいないことに気づいたみたいで、ゆっくり沼へと滴り落ちて消えてしまったが、これでやっと魔物の正体が掴めたな。

 

「あの沼の中ってどうなってた?」

 

「なぜか透明に見える泥水の空間が、深さキロ単位で広がってた」

 

「なにそれどうなってるの?」

 

「よくわからないけど、巨大化の影響が変な形で現れてるのかな多分。あと、あの中だと魔物の姿も透明になってて、しかも結構素早い。加速すれば普通に逃げ切れるくらいだけどな」

 

「なるほどね...あの沼の中で戦うのはやめた方がいい感じかな?」

 

「だな。さて、どう倒そうか...」

 

「一応言っておくけど、早めに倒さないとヤバそうだよ。カリヤがあの中に入ってから急に雲の動きが速くなったの」

 

「ホントだ速くなってる...おけ、作戦決めた」

 

「どんなの?」

 

「まず俺があの中に入る。そして魔物を外に誘き出すから、そこをクミリアが攻撃する。オーケー?」

 

「オーケー!」

 

「じゃあ行ってくる。戻ってくるまでの間に、クミリアはあの雲をどうにかできないか色々やってみてくれ」

 

「了解!」

 

942ページ右下 黒のみ 呼気再生

1025ページ左上 黒のみ 水泡

 

再び沼の中に身を投じる。

 

さぁ来い。いや、これはそんな受動的じゃない...無理矢理にも来てもらおう!

 

2472ページ上 黒のみ 誘引

 

魔法図鑑に魔力を流し、誘引魔法を発動させる。これで魔物は俺を何がなんでも追い続けるはず...来たな。

 

とりあえず沼から離脱する前に...一応攻撃を試してみるか。二、三日前に買ってまだ一回も使ってない刀を抜き、魔物を待ち構える。

 

「………っ!」

 

魔物が刀の射程圏内に入ったので、一気に振り抜く。だがしかし、泥であり液状である魔物は刀を上手く避けてそのまま俺に襲いかかってくる。

 

急いで魔物の速度を減速させ、最大速度で沼の外に向かって泳ぎ始める。底が見通せないほど暗くなっているため、天地が分かりやすいのはありがたかった。

 

「……そぉい!」

 

脱出と同時に魔法を解除する。

 

「よっしゃもっと来ーい!」

 

脱出の瞬間の速度を利用して、数十メートルもの高さまで跳躍した。泥の魔物も俺を追ってくる。どうやってここまで来てるのか一瞬わからなかったが、落ちてきている雨水を高速で伝うことで上昇しているようだ。

 

「全部出たかわからないけど...!」

 

4014ページ 黒 黄 障壁

 

沼全体を覆うように障壁を貼る。これで沼には潜れないはず...

 

「今だクミリア!吹っ飛ばせ!」

 

「あいよ!」

 

クミリアが腕を振るうと、空気が泥の魔物を一瞬で弾き飛ばす。

 

「雲ごと動いた⁉︎やっぱアイツが中心か!」

 

魔物が吹き飛ばされた方向に、雲と地面の沼が移動していく。

 

「雨の外まで弾き飛ばすのは無理ってわけね...カリヤ!障壁再設置!」

 

「今やってる!」

 

4014ページ 黒 黄 障壁

 

魔物が落下するであろう位置を先読みし、地面に着地しながら障壁を設置する。

 

「今度は上だ!雲の上まで吹き飛ばしてみよう!」

 

クミリアと共に移動し、落下地点に先回りする。

 

「了解!」

 

クミリアが空気の腕を使って魔物に殴りかかる。だが、魔物は降ってくる雨を伝って斜め横へと高速移動し、クミリアの攻撃を避ける。

 

「俺がいく!...オラァッ!」

 

一瞬で追いつき、真下から真上に魔物を蹴り上げる。当たりはしたが...水を蹴ったみたいな感触があるだけで、とてもダメージを与えられたようには感じられなかった。

 

魔物は一瞬上に弾かれるものの、すぐさま雨と一緒に落下し始める。

 

「こんにゃろ...消えた⁉︎」

 

「障壁に潜ったの⁉︎」

 

魔物は雨で濡れていた障壁に接触すると、そのまま溶け込むように消えた。沼からちょっと浮かせてたのに潜ったってことは...こいつ、雨で濡れた箇所に巨大な空間を作ってるってな感じか?

 

「だから薄い障壁の中にも入れるってことか...でも今ので対処法がわかったぜ」

 

4014ページ 黒 黄 赤 障壁

 

今度は障壁を空に設置する。これで雨は空に設置した障壁に降り注ぐようになり、この地面に設置した障壁に発生した沼は消滅する。そうなれば強制的に魔物が排出されるはず。無防備になった魔物をそのまま二人で滅多撃ちっていう戦法だ。

 

「障壁解除!...えっ?出てこない?」

 

まーた想定外が...あれか?沼と沼は飛び地になっていても自由に移動できますよっていう感じのアレか?ったく面倒な...

 

「魔物はあの上か...どうしようかなぁ。雲を吹き飛ばしてもダメだし、意外と耐久力あるみたいだし...」

 

泥ってのが難儀だな。水分を蒸発させてしまえばいいか...?

 

「あの魔物はどこいったんだろ」

 

クミリアがそんなことを言っていた。気づいてない...のか。

 

「多分上だろ。沼と沼を転移できるんだろうよ。空間を作る力があるみたいだし、それの応用でどうにかなるんだろ」

 

「上?でもでも、気配は近くにあるよ?」

 

「気配は近くに...ああ、そういうことか」

 

俺もクミリアも、雨を浴びていて少しだが濡れていた。あの魔物の力が泥と泥との間を転移できるというものではなく、水の中に巨大な空間を作り、そこに入り込めるものだとするならば...

 

「そういうことだよな。クミリア!ジャンプ!」

 

「…?」

 

よくわからないと言った顔をしながらも、俺の指示に従ってその場で飛び跳ねるクミリア。

 

27ページ左下 黒 赤 水弾

 

「わぷっ⁉︎」

 

巨大な水の弾丸をクミリアに命中させる。デカいとは言っても簡単な魔法なので、クミリアくらいならノーダメージだろう。

 

そして俺は水弾に走ってついていった。加速し続けるためだ。そのおかげで水弾はクミリアに命中しても勢いを失わず、そのまま大体の形を保ったまま突き抜けた。クミリアの髪や皮膚、服についていた水滴をもぎ取っていきながらだ。

 

4014ページ 黒 緑 障壁

 

「よし!閉じ込めた!」

 

緑色のカスタムによって、球体になった障壁が巨大な水弾を丸ごと包み込んだ。速度探知で水飛沫も含めて閉じ込めたのは確認済み。この水の中に魔物がいることも、近くの水に移動していないのも確認済みだ。完璧に閉じ込めた。

 

「さーて、どう調理してやろうか...」

 

「ちょっとカリヤー急に何してくれてんのさー」

 

「ん?ああ。クミリアについてた水滴に魔物が潜んでいると踏んでな。無理矢理引き剥がしたわけさ」

 

「そっかぁ...やるにしても、事前にちゃんと言ってくれない?ビックリするじゃん」

 

「ほら、そんなこと言ってる間に魔物が動き出すかもしれないしゃん?だから動く前にやる必要があったわけで...そんなことよりも、まずはこいつをどう処理するか話そうぜ」

 

「全然そんなことじゃないんだけど...そうだね、どうやって倒そうか」

 

障壁を張っているため、魔物は逃げることができない。けれど、障壁があるせいでこちらからの攻撃も限られてしまっている。どう攻撃するか...それが問題だ。

 

「雷装で水を電気分解するのは障壁越しだと無理だし、そもそも体積が膨張して内圧がやばいことなるし...」

 

同じような理由で、熱操作も厳しい。水分を蒸発させるのがこの魔物にとっての有効打だとは思うのだが、それをしてしまうと水蒸気になって体積が1600倍になってしまう。球の形になっているため、ガスタンクのようにある程度の内圧には耐え切れるだろう。だが、障壁を解除した後が怖い。中の100℃以上の水蒸気が一気に解放されるわけで、相当の危険を要する。できればやりたくない。

 

「蒸発がダメだとなると...他に取れる手は...」

 

「反対に凍らせるのは?」

 

「…それだ」

 

マジナイスクミリア!そうだよ凍らせてしまえばいいんだ。水ごと凍らせれば、魔物の動きを鈍らせることもできるし、もしかしたらあの巨大な空間を消滅させられるかもしれない。液体の水にしか潜れないという前提ありきだが、そうなる可能性は高い。それに、凍らせるだけなら膨張は少しで済む。その後の処理も簡単だ。

 

「よしクミリア。まず、俺がこの水から熱を奪っていく。絶対零度まで冷やしたらもう魔物も動けないだろう。そうなったところをクミリアが粉々に砕く。オーケー?」

 

「オーケー!」

 

球体の障壁の近くまで近づく。これから水の温度を下げていくわけだが...熱操作は使わない。カイくらいの技量があればよかったのだが、俺にはそこまでの力はないので熱操作ではそこまで温度を下げることができない。温度を下げるよりも、上げる方がやりやすいんだよな...ってのは置いとこう。

 

熱操作を使わないならどうすんだってなるだろうが、そこは速度操作の出番だ。前にも少しやったことがあるが、速度操作で物質の分子の運動速度を操作することで、物の温度を操作することができる。減速は加速の時とは違いゆっくり進むが、その限度はないため絶対零度まで冷やすことができる。いや、本来の絶対零度のその先にまで至ることができる。零点運動すら止められるためだ。やろうと思えば、ヘリウムすらも固体にできるってことだな。

 

水弾のサイズは直径二メートルほど。障壁越しにも速度操作は使える。どれだけの時間がかかるのか、やってみないと俺にもわからないがとりあえず始めよう。

 

「転移だけはしないでくれよ...?」

 

意識を集中させる必要があるため、目を瞑り視界という情報を削ぎ落とす。水の動きの速度のその先...あった。水の分子運動の速度を見つけた。それをどんどん減速させる。

 

「……すぅ...はぁ...」

 

自分の呼吸の音すらも邪魔に思えてくる。ただでさえ自己以外のもの、それも触れていないものの熱運動を捉えるのが大変だというのに、減速のために長時間その状態を維持し続けないといけないのがなによりも辛い。ここまで一つのことに集中したのはいつぶりだろうか...いや、こんなことを考える余裕があるのだから、まだ全然いけそうだな。

 

「よー...し凍ってきたぞ。さて、魔物はどう出る?」

 

流石に全ての水が凍りつく前に出てくるはず...よし、出てきた。

 

「残念だったな。そこからは絶っ対に出られないから、死ぬ覚悟をしとけよ」

 

魔物の速度もついでに減速していく。移動速度も、熱運動の速度もだ。

 

「一応水蒸気も凍らせておくか...?いや、水になったところで潜られても困るか。このまま...」

 

「……カリヤまだー?」

 

「まだだ準備運動するなりバフ全積みするなりして待ってろ」

 

「わかったー」

 

後ろを見る余裕はない。でもまぁ、もう少し経てば余裕ができるだろう。

 

「早く終わってくんないかなぁ...速度操作で、減速させる速度を加速させられないもんかなぁ」

 

これができたら一瞬で終わらせられるのになと悪態をつきながらも、減速は止めない。数分と経ち、だいぶ温度が下がってきた。もうそろそろ、酸素が固体になるくらいにはなるかな...?

 

温度は順調に下がっているが、一方魔物の動きはまだまだ活発だ。運動速度よりも、温度の方が効率よく減速できるんだな...ってか、体を構成している水分は全て凍ったはずなのに、まだ動けるんだな。泥というより、土が本体だったわけか。一応動きはちゃんと鈍ってきているから、もう十数秒やれば動けなくなるだろう。

 

「……よーしクミリア!トドメを刺せ!」

 

障壁を解除しながら目を開け、クミリアの方を向く。

 

「あいよ!」

 

クミリアが視界に入ったときには、もう地面を蹴って跳び始めていた。そして空中で空気の壁を作って一気に真下へと降下、大量のバフをかけた足で踵落としを、魔物の脳天...?よくわからんがともかく、頭っぽくなってる部分に叩き込んだ。

 

衝撃操作の効果もあってか、一瞬で魔物が粉々に砕け散る。

 

「マジ助かるクミリア良く上からやってくれた!」

 

上から攻撃してくれたおかげで、砕け散った魔物の破片は全て速度操作範囲内だ。どれも凍りついたまま、動きを止めている。

 

「…まだ生きてるみたいだな。魔力の動きを感じる。このまま破片全て潰していくぞ」

 

「わかった」

 

俺とクミリア、二人で破片に拳を叩き込み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか...まさかこうなるとは思ってませんでしたね...」

 

あの魔物はつい最近我々が発見した新種の魔物だ。姉さんに魔素を注入させたら、なぜか体積ではなく沼の広さが大きくなるという特異性が現れて、なかなかに気に入っていたのですが...ほんとあのバカ上司、何故あれを巨大化魔物として処理したんでしょうか。新種の魔物として依頼にしていれば、神の使いに任せることもなかったでしょうに...しかも、何故それを私に渡させたんでしょう。作った本人にそれを任せるなんて、あの上司は運がいいのか悪いのか...

 

「それにしても、最初から様子を見にいくべきでしたね...倒されるとは思ってませんでしたよ全く...」

 

この目に映る景色をあまり信じたくない。凍りつき動けなくなっているばかりか、既に粉々になっている魔物に拳を叩きつけていく神の使いとガネルの英雄...オーバーキルだ。

 

「あれは熱操作で凍らせているわけではなさそうですけど...じゃあどうやってで凍らせたの?まさか、神の使いとしての能力?でも、速度操作でどうやって温度を...」

 

わからない。何か、私の知らない魔法があるのか...?いやでも、なぜゆっくり凍らせていったんだという問題が出てくる。まだまだ底が見えない...

 

「…これで神の使いに渡した依頼書の三体は皆死んでしまった...と」

 

気を取り直してこれからのことを考える。かなり気に入っていた魔物だが、生息地は知っている。かなりの数がいたから、また姉さんに魔素を注入させればすぐに作れるため、簡単に持ち直せる。

 

「まぁいいでしょう。他にも十分手札はありますし、あと5日...その日が来るまで、姉さんを酷使するとしますか」

 

そう言ってキネットは数ある拠点のうちの一つへと転移した。

 

その次の瞬間に、つい一瞬前までキネットがいた場所にクミリアの空気の腕が通ったことを知らなかったのは、果たして幸運か。




キネットは多分ものすごいゲス顔で姉を酷使する宣言してます。
ギルドではものすっごい猫かぶっているので、本来ならギャップがすごいことになってるんですが、表現力がないせいで文章で表せられん...無念。
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