前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8180字。

前半、思考描写多くてちょっとダルくなるかも...


魔族の罠、新たな武器

「なんだこの依頼、やってみっか」

 

そう言ったのがこの依頼の始まりだった。

 

「チキショウチキショウチキショウ!なんで俺はこれ受けちまったんだチキショウ!」

 

この依頼は魔族の罠だったのだ。この依頼は、山の一部が崩れ落ちたことによって生まれた洞窟に、とある魔物が巣を作っているから調査をしてくれというものだ。洞窟内は明かりが一切なく、完全な暗闇になっているため視界の確保をする必要があるのだが、俺なら速度探知で周りを見れるから適しているだろうと、軽い気持ちで受けてしまった。

 

結果どうなったかと言うと...洞窟をある程度、二、三十分くらい探索したその時、魔法拡散を使われて魔法を使えなくなりました。しかも、範囲は洞窟全体に及んでいるらしく、少し移動しただけじゃ意味がなかった。だから急いで洞窟から出ようとしたら上から大量の蜘蛛みたいなのが押し寄せてくるし、そのせいでさらに下へと追いやられるしで...ホンマクソ。

 

そもそも、だ。一人でできるいい感じの依頼を探してたら、その辺にいた変な人から「これなんかどうだい」とおすすめしてきたのがまずおかしいし、普段受付してくれてるキネットじゃなくて、代理の人だっていう人が受付してたのも怪しいし...今思えば、完全にこの依頼を受けるように誘導されていた。なんで俺はまんまと引っ掛かってしまったんだチクショウ。

 

「クソが...!ってかそうだよいくら山が崩れたからってどうなったら自然にこんな長い洞窟ができるってんだほんと頭悪いな俺!」

 

なんでこんな今日INT低いわけ?

 

「逃げるのは簡単だけど、このまま逃げ続けてもいずれ最奥にぶち当たって詰みだし...全部ぶっ殺すしかねぇか...!」

 

逃げるのはもうやめだ。こうなったら魔法無しの速度操作だけで全部倒し切ってやる。

 

「ついでにコイツも使い潰しちまうか!」

 

そう言いながら刀を抜く。今日の午後に注文した刀を受け取るので、コイツはもう折れてしまっても構わない。出来るだけ刀の感覚に慣れるためにも、壊れるくらいに振り回してやろう。

 

「どうせこんな群れるくらいなんだから一体一体は弱えんだろ!全員刀のサビにしてやらァ!」

 

斜め下方向へと走っていたところから一瞬で方向転換し、上へと走り出す。暗くて目では捉えられないが、きっと大量の蜘蛛がこちらに向かってきていることだろう。

 

「あぁー水刃使いてぇ!『雷装』!」

 

雷装を使ってこちらから蜘蛛に近づく。意表をつかれて驚いているのが動きからわかった。まぁそんな隙を晒しているのを見逃すわけもなく、一瞬で頭を真っ二つに叩っ切る。

 

「コイツ...意外と硬ぇ⁉︎」

 

雷装+最大加速状態だったため簡単に切れたように感じれたが、逆に言えばこうでもしないと切るのは大変そうだ。実際、今の一撃だけでほんの少し刃こぼれしてしまっている。玉鋼を使っていない刀だからだとか、俺の使い方が悪かっただとか、他の理由も考えられはするが一番の理由は蜘蛛の硬さだ。

 

「ってか、こいつら全然連携取れてねぇな...なるほど、そういうことか!」

 

刀に魔力を流し込むことで強化し、刃こぼれしにくくしてから蜘蛛たちを何度も切りつけていくうちに気づいた。

 

こいつら、元々群れをなす魔物じゃないんだ。転移の魔族が、いろんな場所にいるこいつらをありったけ集めて送り込んできてるんだ。もしこいつらが連携をとって襲いかかってきていたならば、速度操作があったとしても魔法を使えない今の俺は死んでいたかもしれない。

 

「こいつらも魔法を使えないってのは幸運だな...!」

 

そもそもこいつらが魔法使うのか知らんけど!少しでもポジティブなこと考えないとやってられねぇ!

 

「何匹いやがるんだこいつら...ああもう死体が邪魔クセェ!あっち行ってろ!」

 

このままだと、蜘蛛の死体の山ができて道を塞いでしまう。なので足元の蜘蛛を踏んづけて後ろに蹴飛ばす。加速キックのおかげで遥か後方へと吹き飛んでいくため、戦闘の邪魔には決してならない。多少の隙は晒してしまうが、速度探知があれば問題な...うん、問題ない。ちょっと危なかったけど、盾が間に合った。何気に盾の魔法も無効化されてるおかげで、デメリット効果までなくなってるのはこの混戦状態ではありがたかった。

 

「ってかなんで魔族は山を崩してこねぇんだ?温情のつもりか?それとも出口が見えてきたところで崩落させて嘲笑う気か...?いやダメだダメだネガティブシンキングはアカン。というか、なんで洞窟の中なのにまだ呼吸できるんだ?...ああダメだもう変なことに思考持ってかれる!」

 

やってること自体は、雷装を発動しながら速度操作で蜘蛛の位置を探知して、魔力操作で刀に魔力を流して強化し、一瞬でスパッと魔物を切るだけ。いつもやってることがちょっと変わっただけなので、そこまで頭を使わないでできてしまっている。その分別のことに頭を使えるのはいいことであるとともに、そっちに集中してしまい動きが鈍ったりと悪い一面もある。大量の雑魚相手だとこうなりがちだ。そういや、最近はこうなる機会が少なかったな。

 

ってか本当に、なんで息できるんだろう。洞窟に入ってから結構経つし、戦闘もしてる。蜘蛛たちももちろん呼吸をしてるわけで、しかも走ってきてるから息も荒くなってる。相当量の酸素を消費しているはずだ。それにこの洞窟内、風なんて一切吹いてないからどこからか外気が入ってきてるわけでもあるまい。そろそろ呼吸が苦しくなってきても、なんらおかしくはない。

 

いやホント、謎の違和感が...というか、朝からおかしなことが多すぎて夢でしたって言われても信じるぞこれ。

 

でも、意識はハッキリしている。幻覚の線もない。速度探知を欺くことはできないから、この洞窟や蜘蛛は現実のものだ。

 

ならば、他にどんな可能性がある...?いやまぁ、これは現実逃避もいいとこなのだが、いかんせん今やってることが単純作業の繰り返しであり、いつまでやらなければならないのか先も見えないわけで、頭を使ってないとダレてしまうのだ。

 

あっ、気づかないうちに、俺が別の場所に転移させられているという可能性があるな。似たような別の洞窟に飛ばされた可能性。ありそうではある。その線でいくと、急に魔法拡散が貼られたというのは勘違いで、あらかじめ貼ってあった場所に俺が転移させられたというような構図になるな。この蜘蛛も、あらかじめ集めたものということになる。常に蜘蛛を送り続けるよりも、あらかじめ築いた巣に獲物を放り込む方が容易いしな。

 

俺が気づかないうちに転移させるのは、思っているよりも簡単なはずだ。過去に考察したことだが、転移にかかる時間は、転移先の魔素の量によって変わる。転移に必要な量に満たしていなければ、さらに周囲から取り込む必要があるため時間がかかり、必要量を既に満たしていれば一瞬で飛ばせる。魔素を魔物に注入して巨大化させている魔族ならば、その場所の魔素を増やすこともできるだろう。

 

もともとあの洞窟は魔素しかなかったし、転移先の洞窟も同じように魔素だけで満たしていれば、転移も早くなり、転移した事実に気づかれにくくなる。一石二鳥ってわけだ。

 

先の呼吸の件も、転移したという仮定が正しければ解決する...気がする。魔法拡散の効果が表れ始めたその直前に転移したわけだが、そこからはまだあまり時間が経っていない。酸素総量がリセットされたと考えれば、まだ呼吸できるのも納得できる。

 

「…待てよ?もし本当に転移したとするなら...試してみる価値はあるか」

 

思考を戦闘に戻す。

 

そして目の前に来ていた蜘蛛を切り捨てたのち、踵を返して一瞬で下へと逃げ出す。

 

「騙されてたんだ...最初から最後まで!」

 

魔族は俺を転移させて何がしたかった?一番の目的は俺を殺すこと...ではないだろう。俺を殺すなら、魔法拡散の領域内に転移させた瞬間に総攻撃すればいいだけだ。多少の抵抗はできるものの、魔族総出で来られると普通に死ねる。でも、それをしなかったわけだから、何か他に理由があるはずなのだ。

 

目的はおそらく、俺を消耗させること、もしくは本命から遠ざけること。消耗させて動きが鈍くなったところで、フロートに速度操作をコピーさせたいのか、それとも単純に邪魔だったから遠ざけただけなのか...そこまではわからないが、多分こんなところ。

 

言ってしまえば、今この瞬間に行われているのはただの時間稼ぎ。そして、この状況で最も効率よく時間稼ぎをするならば...俺が真っ先に思いついたのは一つ。

 

出口の方向を誤認させる。

 

転移先であるこの洞窟の出口は上ではなく、下なのだ。それを隠すためにも、魔族は大量の蜘蛛を上から送り込んだ。さも、出口は上であるかのようにな。

 

「わかってしまえば楽勝だな!」

 

そう、下からは蜘蛛はやってこない。さっき蹴り飛ばした蜘蛛がところどころで転がってて邪魔になっているのを除けば、大した脅威もなくスイスイと進める。蜘蛛、こんなことなら蹴らなきゃよかったな...

 

「一本道だから迷わなくてもいいのは助かるぜ...再転移は勘弁な!」

 

まぁそもそもさっき考えてたのが全部間違ってたら完全に笑いもんなんだけどな!もし間違ってたら最奥で蜘蛛たちに囲まれて...考えたくもねぇ!

 

「頼む頼む頼む頼む...やった光だー!」

 

やっと洞窟の出口が見えてきた。外の光が見える。途中で立てた予想だと、出口から出る直前で山を崩してくるんだけど...

 

「なんもなし...か。魔法拡散の効果範囲も出たな」

 

なんもなくてちょっと拍子抜けだが、もしかしてもう時間稼ぎ完了してる?

 

「…まっ、生きて帰れたならいっか。ってかここどこー?」

 

3441ページ下 黒のみ 俯瞰視点

 

上から見て、ここがどこなのかを確認する...ゑ?

 

「こ、こここっここここっっここ!カリス⁉︎」

 

えっ、まじで⁉︎ここカリスの北東の山⁉︎西から東まで転移されたの⁉︎マジかよ...

 

「め、めんどくせぇ...!」

 

どうしよう。ここから戻らないといけないのか...

 

「ってかそろそろ約束の時間じゃ...?うわ五分前じゃん」

 

懐中時計で時間を確認する。陽の位置からなんとなく予想ができていたが、もう午後。それも結構な時間だ。

 

「絶対遅れる...いや、間に合うかこれ」

 

今から全力で走れば間に合う。計算も...合ってるな。

 

「よし、行くか」

 

9934、9935ページ 全力疾走

 

クミリアから教わった加速魔法を追加したため以前よりも強化された全力疾走を発動し、ガネルに向かって走っていく。今の速度は秒速250メートル。カイスからガネルまでの直線距離は35キロ。初期位置がカイスの北東なため、さらに距離は伸びるが、その誤差を修正してもおよそ150秒ほどで到着できる計算だ。

 

7801ページ 黒のみ 未来跳躍

 

けれど、全力疾走は一分ほどでスタミナを使い切ってしまう。その問題を解決するのが、この未来跳躍だ。未来跳躍は、転移中の移動でスタミナを消費することがない。なので、その消滅している時間分スタミナ消費を抑えることができるのだ。

 

だが、これでは本来の三分の一しかスタミナの消費を抑えられない。転移できるのは三秒のうちの一秒だけだからだ。

 

「追加!これでさらに加速...!」

 

7713ページ 黒 赤 重力操作

 

空中に飛び出し、ガネルの方向に加速度を増した重力を向ける。これでさらに加速。自ら動く必要がなくなったため、スタミナ消費も少し減った。このまま未来跳躍の発動もしていけば、おそらく間に合う...はず...!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃーい...おお、お客さん。時間通りだな...って、なんだその羽根。どうした?」

 

「バードストライクしてな...」

 

うん、なんとか間に合ったけど、空を飛んでたから鳥の魔物にぶつかっちった。まだ運が良かったけど、少し角度がずれてたら嘴が突き刺さってたわ。

 

「まぁそれは置いといていいぞ。んで、刀はできたのか?」

 

「置いとけないが...まぁいい。現物を持ってくる前に、お客さんに合わせたい奴がいる」

 

「合わせたい奴...?」

 

「おーい、出てこーい」

 

誰のことだろうと考えていたら、その人が店の奥から出てきた。

 

「お前...クルス⁉︎」

 

出てきたのは、この店の店主であるコートの従兄弟、王都で店を開いているはずのクルスだった。

 

「お前、王都からはるばる俺に会いに来たってのか?」

 

「いや、コートに呼ばれたから来ただけだ。俺の技術を借りたいと言われたからな」

 

「お望み通りの刀は私の技術だけでは作れなかったもんで。技量自体はクルスの方があると判断し、一昨日連絡したんです。当日来て少し驚いたけど」

 

「そりゃ、この話を聞いたらそうなる。誰もやったことのない製法で作られる金属、そして武器。鍛治師として、これほど心が躍るものはない」

 

あっ、なんとなくこの二人が従兄弟同士なんだなってのが垣間見えたな。

 

「それに...カリヤに言いたいこともあったしな」

 

「…なんだ?」

 

「……何か作って欲しいものがあったらここで頼むことにするよ。そう言ったのは誰だったかな」

 

…ヒエッ

 

「前にオーダーメイドするなら俺のところでやるって言ってたよな?忘れてたとは言わせないぞ」

 

「…ごめん。完っ璧に忘れてた」

 

「買うときに俺の名前が出たんだよな?その時に思い出さないか普通?」

 

な、なんか重くね...?こんなだったっけクルス...

 

「ごめん、多分刀を手に入れられる喜びで舞い上がってたからだ。ほんとごめん...で、でもクルスが刀作ってくれたんだろ?」

 

結果的には同じじゃないか...と言うと、なんか火に油を注ぐことになりそうだからやめておこう。

 

「ああ...そうだ、試し切りがまだだったんだよな」

 

「…ん?」

 

「カリヤで試しても...すまん、悪ノリしすぎた。冗談だ。だからそんなに怯えないでくれ」

 

ビクビクビクビク

 

「…ほんとに、怯えないでくれ。もう気にしていないから」

 

「そ、そう...?」

 

声といいセリフといい、とても冗談に聞こえなかったからまだ怖いぞ...

 

「…話を戻していいか?」

 

「あっ、はい」

 

「どうぞどうぞ」

 

コートがどんどん脱線していく話をなんとか戻してくれた。ありがたや〜

 

「それで、現物なんだが...これだ」

 

カウンター下から鞘に入った刀を取り出すコート。

 

「流石に技術的限界があり、お客さんの考えていた通りのものは作れなかったけど...ほぼほぼ完成だ」

 

「おお...KATANA...!」

 

「抜いてみてくれ」

 

コートから刀を受け取る。

 

「これは...長さちょうどいいな。扱いやすい」

 

とりあえずで買ったあの刀、俺が使うにはちょっと長かったんだよな。ちょうどいいのは、俺の想像を読み取って作ったからかな。

 

「硬さは使ってみないとわからないけど...よくここまで再現できたな」

 

「金属やガワは俺が作った。新体験すぎて他のものと比べるの自体難しいが...俺の最高傑作と言ってもいいくらいの出来だ」

 

「素材だけでは再現しきれなかった部分は、私が魔法陣を組み込むことで補った。金属内部や柄の部分、それだけでなく、焼き入れをしているうちに自然にできたこの模様も利用している」

 

焼き入れしているとでる模様...刃文のことか。刃文は切れ味にも影響するみたいなことをどっかで見た覚えある。そこまで疑似的に再現してくるか...すごいな。

 

「鞘にも細工がしてあってな。素材となる金属を鞘に入れてから刀をしまうと、刃こぼれしたところや傷ついたところが直る」

 

…なにそれ魔法すごい。

 

「ヒビくらいまでなら直るが、折れたら流石に直せない。折れたら私かクルスの店まで来てくれ。直してやる」

 

「アフターケアまでしてくれるのか...」

 

「そして、これが修復用の金属だ。多少の傷なら一粒入れるくらいで直るが、これがあるからといって適当に扱うんじゃないぞ」

 

「流石にそんなことしないって...これが無くなったら、折れた時と同じように店に寄ればいいのか」

 

「ああ。用意しておく」

 

これで刀の破損の心配はあまりしなくていいな...まだ慣れがないからしばらくの間は刃こぼれもするだろうが、その慣れるまでの間自分で修復できるのはとても嬉しい。

 

「あと、抜刀するときに自動的に研磨されるようになっている」

 

なにその勝手に研磨されるってどこぞの聖剣ソー○ライバーかな?

 

「それと、刀を鞘から抜刀する前に押し込むと、魔法が起動して抜刀速度が増す」

 

「…そんなの要望してた?」

 

「してはなかったが、刀には居合切りという技があるという風な情報を読み取ったんでな。使えるかと思って入れてみた」

 

抜刀速度の加速か...結構ありがたいかもしれない。抜刀速度が速くなると、普通に攻撃するのにも役立つし、雷装水刃の発生も速くなるわけだから中距離への攻撃も速くなる。押し込むというワンアクションが必要ではあるが、それなりに使えるはず...ん?

 

「鐔があるから引っ掛かるじゃん。どうやって押し込むんだ?」

 

「あー...押し込むってのはさらに奥に動かすという意味ではなくて、力をかけるという意味だ。確かに引っ掛かるから奥には動かないが、力をかけて押すことはできるだろ?それ以上動かないが、押すだけでいい」

 

説明下手かな?...まぁとりあえず、グッと押し込めばいいだけってわけだ。

 

「おけ、理解した。他に何か効果あるか?」

 

「他には...何かあったか?」

 

「アレが残ってる」

 

「アレ?」

 

「ほら、魔力を流すと...ってやつ」

 

「ああそれか。確かに忘れてたな」

 

「魔力を流すとどうなるんだ?」

 

「刀身が伸びる」

 

「何その機能。使うかな...」

 

まぁ戦ってる最中に急に間合いが伸びたら、ちょっとした奇襲になるか。長さは今のでちょうどいいからあんまり使わなそうではあるが。それにしても、随分多機能だな。ちゃんと使いこなせるか不安になる。

 

「ってか、結構魔法仕込んでんだな」

 

「強度に関しては、いずれ魔法無しでも問題なく使えるようにしようとは思っている。使っていると魔力を消費してしまうから、出来るだけ魔法部分は減らしたい」

 

「魔法に頼ってると魔法拡散使われた時困るからな...」

 

強度を魔法で補強しているから、今のままだと魔法拡散適用下では脆くなってしまう。切れ味も幾分落ちてしまうため、かなりグレードダウンしてしまうことだろう。

 

「まだまだ改善の余地ありってわけだ。暇があったら店に来てくれ。研究しておくから、手直しをするかもしれない」

 

「わかった。たまに来ることにするよ...そういやこれいくら?」

 

受け取りの時に代金払うんだよなたしか。

 

「このくらいだ。ちょっと他の店より高いが、払えるか?」

 

「…ああ、払えるよ」

 

かなーり高いが、なんとか払える額だ。巨大化魔物の討伐の報酬が美味しかったおかげだな。それがなけりゃ破産レベルだが。

 

「まぁ高いのには理由があってな。これは今後の修理費や鞘の修復に使う金属の代金を含めた額だ」

 

「つまり...?」

 

「今後、この刀にかかる費用はゼロだ。そう考えると、安いもんだろ?」

 

「だな。そう考えると破格だわ」

 

一生アフターケアしてくれるわけだろ?やっす。

 

「えーっと...これで足りるよな」

 

「足りるってかちょうどだ。毎度あり」

 

「じゃあな、刀作ってくれてありがとな。大事に使わせてもらうよ」

 

「ああ、また来てくれ」

 

「今度また武器を作るなら、ちゃんと俺の店に来いよ」

 

「はは、わかってるって」

 

うん、次はちゃんとクルスに頼もう。

 

そう思いながら店を出た。

 

慌ただしい声と、何十もの人の足音が聞こえた。

 

道ゆく人のほぼ全員が、各々の武器を持ち、焦るような、真剣なような、そんな顔をしながら町の南方向へと走っていた。

 

コートの店には窓がないし、鍛冶の音が外に漏れないようにするためか防音機能もガチガチになっていたため、俺は外がこんな状況になっているのに一切気づいていなかった。

 

「…いったい何が」

 

「あっ、カリヤ!」

 

ちょうど近くをクミリアが通っていたらしく、俺に気づいてこちらに近づいてきた。

 

「みんな慌ててどうしたんだ?」

 

「どうしたもこうしたもないよ!」

 

なんだろう。この感じ...ちょっと違うけれど、既視感が。

 

「南から魔物の軍勢が押し寄せて来てるの!早く迎撃に行くよ!」

 

そう言ってクミリアは俺に走るように急かしてくる。

 

「なるほどな...時間稼ぎはこのためか!」

 

俺たちは南、町の門へ向かって走り出した。




はい、ガネルでも戦争が始まります。
今回でもうガネル編20話やってるけど、もうちょい続きます。

次回、四人目の魔族登場...!
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