前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
ちなみに、最初に買った仮の刀は前回のあの洞窟の中で蜘蛛にブッ刺したため手元にありません。
描写はしてませんでしたが、逃げ始める直前に刺してます。
二本も刀装備したら邪魔だしね。
「うわーめっちゃいるな...」
人間軍の先頭に立ち、魔物軍の様子を見る。
「カリヤってカイスの方の戦いに参加してたんでしょ?それと比べるとどう?」
「どうって?」
「魔物の数とか、こちらの戦力とか...ハッキリ言って勝てると思う?」
「多分勝てる。魔物の数自体はカイスの時よりもまだ少ないし、こちら側の戦力は...カイスの時よりも人数は多いな。流石は冒険者の町、物理職魔法職タンクちょうどいい感じのバランスでいるし、最初はこちらの優勢になるはずだ」
「…まだってどういうこと?それに、優勢なのが最初だけなのはなんで?」
「転移の魔族がどんどん魔物を送り込んでくるんだよ。減らしても減らしても追加してくる。それに今回は、最初から何体か巨大化したのを送り込んできてるしな。それの対処に手間取ると苦しくなりそうだ」
そう、今回はすでに巨大化魔物が四体戦場に立っている。いずれも今まで倒してきたものと比べると少し小さいが、それでも十分な脅威にはなりうる。これも時間が経てば追加されるんだろうな。
「それに今回は、カイスの防衛装置みたいなのがないからな。耐えれば一発逆転できるわけじゃない。持久戦、消耗戦になってくるとこちらが負ける可能性が高い。なるべく早く魔物を殲滅し、これ以上数が増える前にやるのがいいだろうな」
「なるほどね...」
「ってわけで、一斉攻撃が必要だ。そのためにも、みんなに作戦を説明しないといけないし、士気を上げる必要があるから...自分でやるの恥ずかしいな」
カイスでやった時みたいに演説みたいなことしようと思ったけど、ちょっと恥ずかしくなってきた。なんか、俺が号令かければみんな従ってくれると思ってる、って思われそう。この町の人たちのことだからそんなこと考えないんだろうけど、ちょっと気にしちゃう。
「…まぁやった方がいいよな。やるか...」
「カリヤ!」
「ん?...ミュラーか。どうしたんだ?」
ミュラーがこちらに走ってきた。なんだろういったい。
「みんなにやってることなんだが...こいつに少しでいいから魔力を流してくれないか?クミリアも頼む」
「…ああ、罠に引っかからないようにするためか?」
ミュラーの出した糸に魔力を流しながら聞く。
「そうだ。二人で最後。これで誰も俺の罠にかかることがなくなった。心置きなく罠を張りまくれるわけだ」
「おお...」
ミュラーの罠があれば、だいぶ戦況が変わる。火力が低いという欠点はあるものの、それを数で補え、しかも広範囲に張り巡らせることができるため魔物の侵攻を止めるのには打ってつけだ。
「今から罠を設置して回る。二人も頑張れよ」
「魔力は足りるのか?減ってきたら俺を探してくれ。回復を手伝ってやる」
「大丈夫だ。こんな時のために、ポーションは大量に常備してある」
そう言ってミュラーは走って行った。
「…さっきの訂正。持久戦になっても俺たちは勝てる。ここにいるみんなの力を、各々が十二分に引き出せればな」
後ろを向く。さて、演説を始めよう。
「まずは魔法を...」
「やぁ」
いつのまにか、横に誰かが立っていた。横を向くと、アクセルが立っていた。
「久しぶりだね」
「久しぶりだな。試合やろうと思ってたのに会えなくてどうしようかと思ってたが、まさかこんな時に会うとはな...まぁ、アクセルがいてくれて助かるわ。百人力以上だな」
アクセルがいれば、一瞬で魔物を駆逐できるだろう。あの巨大化魔物にも一人で戦えるはず。魔族とも渡り合えたわけだしな。言葉通り、百人力である。
「頼むぞアクセル。お前は主戦力だ」
「そんなことよりも...私と戦ってくれるかい?」
「ん?...そうだな、さらに加速させてやろう。まずはあのデカい奴から倒していこうか」
「いや、そういう意味じゃなくて...試合をしようと言っているんだ」
「…は?こんな時に何言って「こうすれば戦ってくれるかな」...っ⁉︎」
アクセルの姿が...少しずつ変わっていく...?
「お前...まさか...!」
「そうだよ。私は...」
「フロートか!」
「違う、そうじゃない。フロートじゃないよ」
アクセルの姿が変わる。この姿には、見覚えがあった。それは今から六ヶ月以上前のこと。これは...魔物の巣穴で、アクセル本人が戦っていた魔族そのものだ。
「その姿...!」
「私は魔族さ。魔族アクセル。私は君と戦いに来た」
…しばらく、沈黙が場を支配した。
マジかよ...と、誰もが思ったことだろう。俺も、一瞬思考が止まった。
そしてすぐに超高速の思考が始まる。
ひとまず、すべきことを列挙する。
俺はアクセルと戦う。他の人には任せられないし、奴の狙いは俺だ。俺がちゃんと戦えば、アクセルは他の人を襲うことはなさそうだ。
そして重要なのはこっち。おそらく、俺は全力疾走と雷装を使ってもアクセルに追いつけないだろうということだ。
アクセルが前に言っていたこと。加速には条件がある。この条件というものが、魔族としての体質...周囲の魔素、聖素の量によって身体能力や固有能力の出力の度合いが変化することを意味していたとしたら...非常にまずいことになる。
俺が見たアクセルの最高速度は、あの巣穴での音速。だが、あの巣穴には少しではあるが聖素が混じっていた。つまり、あれが限界ではないのだ。
もし、魔素を魔物に注入できる魔族がこの周囲に魔素を放出したならば、アクセルはさらに加速する。だから追いつけなくなる。
速度操作で減速させ続けられれば追いつける可能性はあるが、この方法はおそらくほとんど使えない。能力範囲外に出れば減速がリセットされてしまうため、減速させ続けるのは実質的にほぼ無理なのだ。
だからやることは一つ...!
5510ページ 黒のみ 念話
さっきクミリアとかミュラーとかと話していた時にチラッと見かけていた、ワンナに向けて念話を発動させる。
『ワンナ、呆けているところ悪いが、アクセル...魔族に略奪を使ってくれ』
『これ...念話?カリヤなの?』
『もう一度言う。魔族に略奪を使え。アクセルの使ってる加速魔法を一つでもいいから奪い取るんだ。頼む、俺が勝つ確率を少しでも上げるために...!』
『わ、わかった。魔族相手に使えるかわからないけど...やってみる!』
「…で、私と戦ってくれるかい?戦ってくれるなら、他の奴らには手を出さないことを約束しよう」
念話は発動し続けておきながら、意識を外に戻す。ワンナが略奪を使うまで、時間稼ぎをしなければ。
「…本当に、手を出さないでくれるのか?」
「ああ」
「そもそも、なぜ俺と戦う?それに、不意打ちをしなかったのはなぜだ?」
「戦うと約束したから。試合をすると約束したから」
くそ、めっちゃ淡々と答えてくるせいで時間稼ぎできねぇ...!
「…なぜ、大会に参加していた?」
「それ、今から戦うことに関係あるのか?...単純だ。英雄になって勇者パーティーに入れば、内側から叩けるからな」
ああ、それは推測できてたよ。わかりきっていたことだ。そして、少し怪しまれた。これ以上の引き伸ばしはできないな...
「そろそろハッキリ答えてもらおうか。戦うのか、戦わないのか...んぐっ⁉︎」
…ん?俺は何もしてないのに、急に苦しみ出したぞ?
「心臓が...カリヤ...何を...した...!」
『カリヤ!一個も盗めない!』
二つの声が、耳と脳に響いてくる。
『一個も...盗めない?』
『というかそもそも!盗めるものが二つしかない!一つは狂化!もう一つは...よくわからないけど魔族の固有能力!信頼が固有能力の方に向いてるから狂化は盗めないし、固有能力はなぜか盗めない!』
「痛...い...!」
アクセルが心臓の辺りを押さえながら、膝をつく。
普通の加速魔法一個も使ってなかったのか...いや、それよりも考えるべきことがある。
なぜか盗めない固有能力。
突如現れた心臓の痛み。
これが表すことは...!
「俺と...同じ...?」
略奪で盗めない能力と、心臓の痛み。俺も経験した事象だ。なぜ起こったのか。それは、速度操作が魂に刻まれた能力だったから。
それがアクセルにも起こったということは、俺と同じことが起こったということは、アクセルの固有能力は魂に刻まれていることを意味する。
まさか...アクセルも俺と同じ、転生者...?
『ワンナ。もう略奪は使わなくていい』
『…わかった』
念話を切る。アクセルが転生者かどうかは、少なくとも今はどうでもいい。
やるべきことは一つ。全力のアクセルと、真っ向から戦うことだ。
「アクセル、大丈夫か?」
「…何をした?」
痛みがなくなったことを不審がりながら立ち上がるアクセル。
「大丈夫かと聞いているんだ。戦えるのか?」
「…そう言うということは、戦ってくれるわけだね?」
「ああ。だが、ここでは戦えない」
俺はここでクミリアに小声で、「あとは頼む」と伝えた。
「ついて来い。場所を変えよう...まぁ、移動の最中に攻撃しても構わないがな。試合開始だ!」
試合開始を勝手に宣言し、俺は東へと走り出す。
「…いいね、追いかけっこか。乗ろうじゃないか!」
一瞬でアクセルが能力範囲内に入ってきた。一秒も経たないうちに攻撃されてる俺は死ぬことだろう。
7801ページ 黒 青 未来跳躍
0.1秒で消滅し、アクセルの攻撃を回避。そのまま五メートルほど前方に転移して着地する。
「避けるか...話に聞いてた通り、カリヤも転移できるんだな!」
「あんたのお仲間みたいな便利なモンじゃねぇよ。短距離専用だ」
「だとしても、私の攻撃を避けられるだけで十分だろう」
何度も未来跳躍を発動し、アクセルの攻撃を避けながら東へと走る。直線的な転移だけではなく、斜めや上へと飛んだり、時にはその場に転移するなどしてアクセルを翻弄しながら逃げていく。
その間、思考も加速していく。
アクセルは魔族だった。それを知った今、アクセルの今までの行動全てに理由があったことに気がついた。
まず、アクセルがゴモンとの試合を終えて闘技場の外で俺と会った時、俺の魔力回復加速を断ったこと。これは魔族であることを隠すため。聖域の中では魔力が回復しないからだ。おそらく、ガネルの外に出て魔力を回復させようとした時に俺とバッタリ会ってしまったのだろう...いや、あの時はアクセルから近づいてきたっけか?まぁどちらにせよ、俺の提案を断ったのはこれが理由だろう。
次、アクセルが決勝戦にて、突然降参したこと。これはおそらく、自らの影によって自分の本来の姿を晒すのを恐れたからだろう。そのままの人間の姿の影で出てくる可能性もあるにはあるが、念には念を入れて降参したのだ。
そして最後。巣穴で魔族を倒したこと。これは、魔族討伐というわかりやすい手柄を立てることで信用を得て、大会で連勝しても怪しまれないようにするためだろう。
まぁ、本当に魔族を倒したわけではなさそうだがな。今のアクセルの姿は、巣穴にいた魔族と全く同じだからだ。ならば、あの魔族はなんだったのか。このアクセルがフロートではない以上、考えられる可能性は三つ。
一つは、あの魔族がフロートだった可能性。アクセルをコピーし、わざとアクセルに倒された。そしてあの場所が崩れて見えなくなったタイミングで、転移の魔族が回収するという筋書き。
二つ目は、あの魔族はアクセル自身で、アクセルだと思っていたのがフロートだった可能性。これも同じように転移の魔族の回収が必要になる。
三つ目は、あの魔族がフロートの作ったアクセルの複製体だという可能性。フロートは、物を複製することができる。カイの服や装備を真似していた時があったしな。生き物に対して同じようなことができるかはわからないが、この方法だと回収する必要はない。
俺はこの三つの中で、三つ目が一番合っていると思う。死体を残すことができるからだ。確実に倒したという証拠を作ることができる三番目が、アクセルの信用を作るという目的に合致している。おそらく、俺があの場所を崩していなければそうしていたんじゃないかと思う。
…こうして考えてみると、変なところだらけだ。それに、魔力回復のことに限っては、一応確認しておけば魔族だと気づくことができたかもしれない。
……それに、どうして俺は、巣穴の依頼のあの時、アクセルは怪しくないと思ってしまったのだろう。魔族とアクセルが同時に立っているのを見て、アクセルは魔族じゃないと思い込んでしまったのだろうか。他者を模倣できるフロートの存在が明らかになった時に、もう一度考えておけばよかった。
後悔が頭を支配する。
けれど、後悔先に立たず。後の祭り。悔やんでも、今は何も変わらない。
集中しよう。アクセルとの戦いに。
「とりあえず...この辺でいいだろう」
俺はガネルから結構な距離を移動し、最終的にガネルの南東方向にある平原にまでやってきた。
「ここなら誰の邪魔にもならない。ガネルの戦争の様子も見えないから、お前との戦いに集中できる...どうだ?いい場所だろ?」
「そうだね。良さそうだ」
アクセルが指抜きグローブをグッと引っ張る。よく手を見ると、長い爪が生えていた。だから指抜きなのか...っと、戦う前にアクセルの体をじっくり観察しないとな。
思考を加速させる。
見た感じの変化は少ない。指の爪が伸びたり、ツノが生えたり、少し筋肉量が増えていたり...そんな感じだ。けれどおそらく、この姿はアクセルの固有能力を最も効率よく引き出せる姿のはず。目に見えない部分での変化は大きいだろう。それは速度探知で調べないとわからないが...高速で戦闘しながらだと難しいだろうな。
「さぁ、改めて試合を始めようか。さっきのは唐突だったし、カリヤは逃げているだけだったからな」
このアクセルの言葉が出る前に先の思考を終えた俺は、構えを取りながら答える。
「そうだな。始めよう」
そして次の瞬間、アクセルが俺に突っ込んでくる。やっぱり、速度上がってんな。音速以上、マッハ1.2くらいか...?
『反撃流』
『接触不動』
「っっっぅぅっぅぅ!!」
腹にアクセルの強力な一撃が突き刺さった。
「動けない...ゴモンの反撃流か」
「クソ...意識飛びかけたぜ...!」
反撃流を使っても、痛みは普通に受けてしまう。音速をゆうに超える速度で殴られれば、その痛みは言葉で表せない程になる。俺はゴモンほど痛みに慣れているわけではない。そもそも怪我自体が少なかったので、痛みへの耐性がほぼ皆無なのだ。カノウとの試合でバッサリ切られる痛みには慣れたものの、打撃の痛みは初めてだ。普通ならば、俺は意識を保っていられなかっただろう。
そこで俺は、気絶から免れるために速度操作を使った。超高速で痛みの信号を脳に送ったのだ。痛みを感じる時間を一瞬だけにしてしまい、その瞬間に舌を噛むことで飛びかけた意識を無理矢理引き戻したのだ。
「アクセル、お前、一発打ち込んだな...その威力、一撃をもって返させてもらう!」
腹に打ち込まれた衝撃を、腕に乗せてそのままアクセルの顔面に叩きつける。
「オラァッ!」
ドゴォッ!と、肉と肉がぶつかり合ったとてつもない音が響いた。
…がしかし。
「傷一つねぇ...だと⁉︎」
どうやら速度だけでなく、体の硬さも強化されているのか...いや、そういえばクミリアが、アクセルの力は肉体そのものの強化だとかいう考察をしていたな。固有能力は肉体の強化。それによって加速をしたり、防御を固めている。そしてちゃっかりこの辺りの魔素の量が跳ね上がってやがる。固有能力がさらに強化されて、ここまでの防御力になっているのだろう。
「…まだ動けない?」
アクセルが殴ってきた腹が、偶然下半身判定された結果足を離す必要がなくなった。そのおかげで、アクセルを止め続けることができている。
「俺はゴモンみたいないい奴じゃねぇからな。一発殴られたら、何度だって殴り返してやるからよ...覚悟しな」
ドンっと足を殴って衝撃を腕に流す。そしてまたしても顔面を殴りつける。
一回、二回、三回、四回...くそ、あんまりダメージになってないな。さっきのアクセルの攻撃の威力を利用した反撃でもあまり効果がなかったわけだし、この攻撃が効かないのも当然だな。
「君が泣くまで...って言おうとしたけど、これじゃ無駄だな」
7801ページ 黒 青 未来跳躍
アクセルに反撃されるのを防ぐため、未来跳躍でその場から離れる。転移先はアクセルの後ろ四メートルほどの位置だ。
「っぱ拳じゃ火力不足だわな。こいつでいかせてもらおう」
ダガーを引き抜く。様子見をするなら、やっぱり慣れ親しんだこいつだろう。
4983ページ 黒のみ 虚像生成
7801ページ 黒 青 未来跳躍
虚像生成でアクセルに俺の位置を誤認するようにしてから、転移する。転移先は、アクセルの視界外。脚のちょうどすぐ後ろに、膝が目線の位置になるようにしゃがんだ状態で転移し、そのまま膝裏にダガーを突き立てる。
「は?硬...!」
関節ですらここまで硬いとは...こりゃバフをかけて強化しないと刃は通らなそうだな。
「そこっ!」
「遅い遅い!反応速度遅いんじゃないか?」
7801ページ 黒 青 未来跳躍
未来に跳躍して回避する。反応速度が鈍っていたのは俺の能力のせいだが、微々たるものだからやらなくても変わらなかったなこれ...
「とりあえずいつものバフを...!」
1900ページ右下 黒のみ 威力増大
2102ページ上 黒のみ 研磨
1900ページ左下 黒のみ 斬撃強化
1774ページ右下 黒のみ 物質強化
アクセルの攻撃を避けながらダガーにバフをかけていく。未来跳躍だけでここまで避けれているのは嬉しい誤算だ。
正直、音速以上に加速したアクセルには通用しないと思っていた。なぜ避けれているんだろう。自分でもちょっと不思議だ。加速に反応速度が追いついていないのかな...あそっか、方向転換に時間がかかってるからだ。俺とは違って、アクセルは一瞬で止まることができない。だから未来跳躍で避けれているのだろう。少し活路が見えてきたな。
「ふっ...!」
アクセルのすぐ真横に転移し、ダガーを振ってまたすぐ転移する。
「これでも威力不足...ね」
脇腹を狙ったのだが、石か何かにダガーを当てているような感触だった。こりゃツノが生えただとか筋肉量が変わったとかいうレベルじゃない。体の構造丸ごと変わってるみたいだな。人間の形をしてるけど、人間の常識を当てはめてはダメだ。人体の弱点を突いてもあまり意味がなさそう。
少なくとも、アクセルの攻撃を利用したあの攻撃以上の威力を叩き出さないことには、アクセルに傷ひとつつけることはできないだろう。一番良いのは、ありとあらゆる防御を無視して攻撃できるような技だ。そんな技があるわけ...って、あるのは知っているんだけど。
アレを今すぐにでも使うことはできるが、まずは情報収集。適度に攻撃しながら、弱点を探したりアクセルの攻撃方法を解析する。今はまだ膠着状態。これを変えるには情報が必要だ。もちろん、時間をかければかけるほど、アクセルに俺の癖とか思考パターンを読まれる危険性もあるわけだが、そうなる前に情報を集める。速度探知をフルに使い、アクセルの筋肉の動きを理解していく。
4566ページ 黒のみ 閃光
避けながら閃光を一発試しに撃ち込んでみる...まぁ、避けられるか。どれだけ効果があるのか試したかったのだが、都合よく当たってくれるわけない。果たして、魔法攻撃はダメージを受けてしまうから避けたのか、それとも効かないとわかっている攻撃だけどただ当たるとうざったいから避けたのか...これだけだと判断できないな。もう一回やるか。
4566ページ 黒 黄 青 緑 閃光
小さく、高速で、追尾機能を持った閃光を放つ。
「いてっ」
「…それだけかよチキショウ」
小さくさせていたせいもあってか、あまり威力が出ず効果がなかった。いてっ、と声を出させることはできたから、魔法の方が物理攻撃よりも効きそうなのがわかったのは僥倖か。
それと、わかったことがもう一つ。俺は走っているアクセルの後ろから閃光を放ったのだが、アクセルは避けることを一切しなかった。おそらく、閃光が見えなかったのだろう。クミリアみたいに気配を読むことは出来ず、高速移動中は視野狭窄する。
これは実にいい情報だ。アクセルは動いている最中、周りへの警戒が緩む。その隙を魔法で突く。単純明快な作戦だ。なら、まずは小さな鏡を作って跳弾鏡射でも...
パンッ!
俺の手からダガーが弾き飛ばされる。
「何かを考えてるみたいだけど...だいぶ慣れた。もう逃がさない」
俺を襲ったのは、アクセルの蹴りだった。
「はは...もう逃げられないってか」
7801ページ 黒 青 未来跳躍
未来跳躍でその場から離れる...が、すぐに肉薄される。
「確かに、もう逃げられないみたいだな」
転移して、また肉薄されて...を繰り返す。完全に移動先を読まれている感じだな。未来跳躍はそろそろ使い物にならなくなりそうだ。
「なら...!」
俺は刀を構えた状態で転移し、鞘に一度押し込んでから一気に振り抜く。
速度操作の加速もあってか...その抜刀速度は音に近かった。切っ先がアクセルの腕を捉え、一筋の傷をつける。
「そろそろ...攻めさせてもらおうか!」
刀を鞘に戻しながら、俺は啖呵を切った。
魔族の正体は、アクセルでした。
前回の後書きで四人目と言ったのも、巣穴で出会った魔族が偽物だったからなんですよね。
実は、アクセルが魔族だということは、考察すればちゃんとわかるんですよね。
二つほど判断材料がありました。
ぜひ、探してみてください。