前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8343字。

とうとう戦争編最後ですね。
ここまで長かった...でもガネル編はまだ続くという。


最後の魔物、戦争の終わり

「っしゃあ!やってやらァ!」

 

テンションをハイに保つ。そしてクリアになっている頭で魔物の考察を始める。

 

見た目はなんとも言えない形だ。人型ではあるけれど、時々その輪郭がぶれている。不定形タイプだ。本質は液体か?

 

特に武器や防具のようなものは身につけていない。ステゴロか、それとも魔法かって感じだな。もし液体ってのが本当だったら魔法の確率が高まるけれど、液体を一部分硬質化させて武器のように扱ってくる可能性がある。武器は戦うまではわかりようがないな。一旦無視。

 

次は弱点。電気や火はおそらくあまり効かない。もし純水だったら電気は流れないし、純水じゃなかったとしてもこの量を電気分解するのには途方もない時間がかかってしまう。火は雨が降ってるこの状況じゃうまく扱えないし、膨大な熱量をこいつに与えたら水蒸気爆発が起きて巻き添えを喰らってしまう。

 

もし熱で攻撃するのなら、冷却の方がいいだろう。液体系の魔物は凍らせてから砕くのが定石だと思う。他にも、何か粘性のあるものを混ぜ込んで動きを鈍らせたり、スポンジ的なものに染み込ませたり...

 

「まっ、そもそも液体じゃなかったら全部崩れるんだけど...な!」

 

『氷装・矢』

 

「人力速射じゃい!」

 

弓を構えて大量に矢を握り込み、氷装を宿して超高速で矢を放っていく。弓返り?そんなの知らん面倒だから抑えつけて回り始める前に二射目三射目と撃ち込むね。

 

「…なるほど、そもそも着弾させねぇってか」

 

矢の通るであろう箇所、ちょうどそこだけをくり抜くように魔物の体が変形して矢を回避してきた。やっぱ液体だな。

 

「避けても無駄さ」

 

9930ページ 黒のみ 跳弾鏡射

 

「何度でも反射させてやるわ!」

 

矢の軌道に合わせて鏡を設置して矢を反射、その軌道をあちらこちらへと変えさせる。

 

「っし!命中!」

 

規則性のないランダム反射に魔物は対応することができず、全身の至る所に矢が突き刺さっていく。そして氷装の効果により刺さった箇所が少しずつ凍りついていく。

 

「跳弾鏡射で結構魔力喰っちまうけど、これ続けていけば最低限攻撃できるはず...あ゛?」

 

凍りついて白くなってた部分がなくなってる?というか、そもそも刺さってた矢はどこいった?

 

「それにちょっとだけさっきよりデカくなってる気が...雨でも吸収してんのか?」

 

わからないことだらけ。とりあえずは矢が消えた謎の解明を優先しよう。

 

「っとと危ねぇ!」

 

魔物がこっちに指を向けてきてるかと思えば、その指が丸ごと飛んできた。水とはいえ、相当の質量が飛んできた。その威力は計り知れない。急いで退避する。

 

「敵として認識されたか...ってか、部○弾かよ!」

 

己の一部を飛ばして攻撃してくるのか...そして、飛ばした部位は別の箇所の水を流し込んで再生すると。

 

「んで、飛ばした部位も回収するわけね?無駄撃ちさせるのは無駄ってことか」

 

その後も何発か大質量の水が飛んでくるも、走り回るだけで避けれた。直線的な攻撃は避けやすくて助かる。

 

「早めに手の内を全部曝け出してほしいんだがな...でも分身だけは勘弁な!」

 

そう叫びながら氷装の矢を一発魔物に撃ち込む。魔物の一部が凍りつき...

 

「矢が消えた?...凍った部位ごと液体に変換したのかな」

 

ひとまず、こいつの能力は物質の液体への変換、そして液体操作だということにしておこう。他の能力は戦闘中に見つけていくことにする。

 

「とりま、どこまで液体に変換できるのかってのを調べるか...んお?」

 

レーザーのようなものが空から魔物に向かって雨のように降り注いだ。

 

「スートか!合流早くて助かる...!って、あれ受けてもこの程度かよ」

 

レーザーの直撃を受けた魔物は、一度はその形を崩した。けれど、すぐに元の人型に戻り、体積も戻る。

 

「というかレーザーも飲み込んでね?あれ。魔法すら飲み込まれるとか結構詰み気味なんだけど...」

 

なんかテンションも落ち着いてきた。肩代わりの時からがおかしかったとも言えるが、今やる気下がるのはちょっと困る。声出して無理矢理気分上げないと...

 

「スート!作戦会議すんぞちょいこっち来ーい!」

 

『悪いそんな余裕はない...!』

 

おっ、念話か?これで話せばいいか。たしかに、大量に水の弾丸グミ撃ちされて避けるのに手一杯そうだ。ステルス魔法も使えてなくて姿が丸見えになっている。

 

『じゃあこのまま話すから避けながら聞いててくれ。あいつに攻撃は無意味だ。さっきのレーザーも液体に変換されて逆に奴の強化に繋がってる。俺がなんとかするから、そのあと攻撃してくれ』

 

『なんとかってのはなんだ?」

 

『略奪で魔法を奪う。液体操作はもう俺が持ってるから、奪う対象は液体変換に限られるはず。そうだ余裕があったらでいいからこいつの上に障壁でも張って雨に触れさせないようにしてくれ』

 

『そんなものは朝飯前だ...!』

 

その言葉とほぼ同時、結界的なものが空中に展開されて雨が弾かれる。

 

「仕事が早くて助かるぜ...」

 

9902、9903ページ 次元収納

 

次元の狭間から魔力回復用のポーションを取り出す。

 

「これなら必要量回復できるかな...ん、蓋固いな。よい...しょっと」

 

買ってからずっと保存していたため固くなっていた蓋を開ける。

 

「……嘘だろ?」

 

蓋を開けた途端、中に入っていた液体が暴れ出した。液体はフワリと浮き出すと、とてつもない速度で魔物の方に飛んでいく。

 

「触れてないのに遠隔で操作できんのかよふざけんな...!」

 

魔力回復を妨害してくるのほんとやめてくれ。というか、液体の遠隔操作してくるとか普通に怖い。人体の水分を操作する...ってのができないっぽいのは幸運だけど、出血して外に漏れ出したら操作できるようになってもおかしくないな。一応出来るだけ被弾は避けなければ。

 

「ってかどうしよう...魔力回復できん...なんで固形の魔力回復アイテムねぇのかなぁ!」

 

なんで全部ポーション型なの?戦闘中の補給がすぐできるからってことなんだろうけど、腹たぷんたぷんになるんだわ。レーション的なのないの?こう、カロ○ーメイト的な、サクッと食べられて効率よく魔力回復できるようなのが欲しい。別に、美味すぎる‼︎ってのを要求してるわけじゃない。味はどうでもいいから固形のが欲しい。

 

「腕輪の魔力じゃ絶対足りないし...もうちょい魔力回復させてから来りゃよかったな」

 

とりあえず、略奪は使えない。こうなれば、一旦離れて魔物の液体操作の範囲外で魔力を回復させるか、略奪を使えるワンナを探すかした方がよさそうだ。

 

「…ってか、スートにヘイト向きすぎだな。誘引でもらうか」

 

俺が探しに行くよりも、空を簡単に飛べるスートに探してもらう方が良さそうだ。スートに向いているヘイトを集めて役割交代をしよう。

 

2472ページ上 黒のみ 誘引

 

「スート!魔力足りなくて略奪使えなかった!ワンナって人を探して連れてきてくれ!彼女なら略奪で戦況を変えてくれる!」

 

『わかった!ワンナだな!』

 

誘引によってスートに向いていたヘイトが全てこちらに向く。そのおかげで自由になったスートは姿を消して飛んでいく。

 

「よし、ほらほら撃ってきやがれ!」

 

大量の水の塊がいくつも飛んでくる。けれど、もう見切った攻撃だ。避けるのは容易い。

 

「…お、これ射程限界あるのか」

 

平面的な回避だけでなく、跳ぶなどして三次元的に回避していて気づいた。めっちゃ跳びすぎてギリギリのところで避ける羽目になった水が、ある一定距離を飛んだのち勝手に戻ってきたのだ。そのあと検証してみたが、距離は大体魔物の全長の五倍くらいだった。

 

これ、意図的に戻すようにしてる距離なのか、それ以上行くと戻ってこれなくなるから戻してるのか、どちらかによって対応変わるぞ。前者だったら何にもならないけど、もし仮に後者だったら、こちら側でその水を押し出して液体操作の範囲外に出してしまえば奴の戦力を削ぐことができる。

 

「あともう一個試すか。飛ばしてきたのを凍らせるとどうなるのっと」

 

『氷装・矢』

 

「うん凍って?その後は...帰ってかない!なんだよ攻略法あんじゃねぇか!」

 

いいねこれならワンナの略奪に頼らずにある程度削れる。二人が戻ってくる前に数%でも削り取ってやろうか。

 

「それと!ほぼ忘れてたこれも利用してみようか!」

 

9902、9903ページ 次元収納

 

次元の狭間からとある小瓶を取り出す。今は懐かしいスライムの残骸入り小瓶だ。

 

「…こいつ、やっぱ液体カテゴリーじゃないみたいだな。不純物として認識させられれば...!」

 

中から一部だけを別の小瓶に移し、魔物に向かって投げつける。小瓶は普通に液体として変換されてしまったが、中に入っていたスライムの残骸は変換されずに残っていた。

 

「スライムって、なんかこう...異質なんだよな。生態もあまりわかってないらしいし、絶対カリスに出てるのおかしいって...」

 

絶対スライムって序盤に出る敵じゃないよな。序盤に出るってイメージを世に定着させたドラ○エってやっぱすげぇや。

 

「あっ、でもやっぱ変換はされるんだな。一時的な阻害はできると...凍らせた方が早いか」

 

魔物の攻撃を誘発させ、飛ばしてきた液体を凍らせるのを繰り返す。やっぱりこれが一番早いし楽だ。魔物が操作できるのは液体だけ。魔物が触れたら凍らせた液体も元に戻ってしまうが、凍らせたらすぐに砕いたり、遠くに吹っ飛ばしたりするなどして回収を妨害していく。

 

「ほーれ吹き飛べー...あっ」

 

「あっぶないな気をつけてくれカリヤ!」

 

氷を蹴り飛ばした方向にスートたちがいた。あっぶね撃ち落とすところだった。

 

「悪い!スート!」

 

「ワンナを連れてきたぞ!」

 

「助かる!」

 

ワンナがスートの杖から飛び降りる。

 

「呼ばれて来たけど何の用?」

 

「早速で悪いがワンナ。あいつの使ってる魔法を奪ってくれ。液体操作じゃなくて、物質を液体に変換するような魔法だ」

 

「わかった。とりあえず奪ってみる」

 

ワンナが手のひらを魔物に向け...その手をギュッと握り込んだ。

 

次の瞬間、水で構成されていた体がさまざまなものに変わる。魔物本体に加えて、矢、鏡、土や草、木、レーザー...ってやべぇ⁉︎

 

「危ねぇ推進力残ってんのかよ!」

 

4014ページ 黒のみ 障壁

 

飛んできたレーザーを障壁で受け止める。どうやら、魔物は液体化したものを自らの周囲を覆うような形で漂わせていたみたいだ。ワンナが液体化の魔法を奪ったことで、液体化したものが全て元に戻った。ほとんどのものは重力に引かれて落下するだけだったが、矢や魔法は元の推進力を保持しており、そのまま飛んできたというわけだ。

 

「いやー怖かった...でも、これでやっと有効打を打ち込めるな」

 

「液体化...かなり面白い力だ。一応報告するけど、奴が持ってる魔法はあと液体操作だけみたい」

 

「なるほど。じゃあ雨さえ除外してしまえば、奴の攻撃手段はなくなるってわけか」

 

スートに空に張った障壁を広げてもらおう。魔物の全長五倍以上の広さまで広げてくれれば、雨を液体操作の範囲内に入れずに済む。

 

「いや、そんなことするよりも...スート!障壁を解除!」

 

「了解」

 

障壁が解除され、遮られていた雨がこの場所に降り注ぐ。

 

「……なるほどね」

 

魔物が降ってきた雨を集めて攻撃しようとしてくる。が、すぐに制御を失い地面に落とす。

 

「使わせて武器として認識してもらい、奪い取れば早いってわけか」

 

「そ、これで十分間は何も魔法を使えない。私も液体化を使って上手く戦ってみる。二人も頼んだよ勇者コンビ!」

 

「勇者コンビってのはちょっと語弊あるけど...行きますか!」

 

ダガーを抜いて構える。

 

「それじゃあまずは俺が...!」

 

スートが空を飛び、大量のレーザーを撃ち込む。

 

「…跳ね返った⁉︎」

 

レーザーが魔物に当たる直前、空間が急にひび割れたかと思えばそこに当たったレーザーが跳ね返されてスートに襲いかかった。

 

「おいワンナ。たしかあの魔物は液体系以外の能力を持ってなかったんだよな⁉︎」

 

「そのはず...略奪を使ってももう何も奪えないから、他に何か持ってる可能性はゼロだ」

 

「となると...あんの魔族姉妹の仕業か!」

 

アクセルとは違ってあの二人は魔法特化っぽいし、姿を消したり声を変えたりしながら戦闘できるのは確定している。隠れながらこの魔物をサポートしてるに違いない。

 

「スート!そいつは多分魔族の仕業だ!」

 

「マジかよついてないな...!」

 

スートは攻撃をやめ、魔物から離れる。が、今度は魔族が攻撃をしてスートを襲い始める。

 

「こりゃ助けに行くよりも、さっさとこいつを処理した方が早そうだな」

 

『その処理ってのもさせる気ないけどね』

 

「あっ!バカの方だなテメー!」

 

声は変えられてるけど口調でなんとなーくわかんぞ!

 

『バカって言う...な!』

 

「あっ...ぶな!その謎加速なんなんだよほんと!」

 

魔族の攻撃を間一髪で避ける。速度探知様々だ。

 

「えっ、何が...?」

 

「悪いワンナこっちもバカ魔族のせいで動けないからあの魔物の処理頼むわ」

 

「わ、わかった...?」

 

そう言ってワンナは魔物の方へと向かっていく。

 

『そうなんでバカバカ言うのかな...!』

 

「事実だからだろ。で、ワンナは追わなくていいのか?」

 

『あんなの眼中にナーシ!』

 

「…さっき処理させる気ないっつってたのは?」

 

『カリヤと戦うための方便』

 

「うーん...なぜ?ってかなんで戦う必要があるのさ。俺を処理するのは先送りにするって妹の方が言ってたろ?まさかもう気が変わったのか?」

 

『殺しはしないよ。ただ戦うだけ』

 

「…その心は?」

 

『カリヤと戦えばあの...雷装?だっけ?手に入るかもしんないし。それじゃなくとも、何か別の力手に入りそうだしねー』

 

「……ゼッテー雷装使ってやんね」

 

『絶対使わせてやギャフンッ!』

 

思い切り頭部に蹴りを叩き込む。

 

「ペチャクチャ喋ってるからだよバーカ」

 

『なにおう...!』

 

ほんと、煽ってれば冷静さを欠いてくれるから扱いやすい。

 

「それに、早く動けても反応速度は据え置きだから予め攻撃を置いとけば当たってくれる。お前近接向いてないよ」

 

今までは避けていたが、謎加速で高速移動する魔族の軌道を読み切り、蹴りを叩き込んだりダガーで切ったりする。

 

「魔法使えよ魔法。それに、近づけば俺の探知に引っかかる。離れて遠距離から魔法撃ってた方が姿隠せて楽じゃねぇか」

 

『た、たしかに!』

 

そう言って魔族は俺から距離を取る。

 

「よっしゃ引っかかったなバカめ!」

 

体よく魔族を遠ざけることができた。能力の範囲に入るほどの距離にいられると動きにくくてなかなか困っていたのだが、これで自由に動ける。探知できないくらいの距離からなら、走れば追い付かれないだろうし攻撃も避けられる。魔族は無視だ無視!

 

『ちょっ、無視すんな!』

 

少し後ろの方から声が聞こえてきた。ん〜無視!

 

「テメェに構ってる暇ねぇんだわ!いっぺん死んでろ!」

 

9929ページ 黒 緑 閃光・改

5000ページ 黒のみ 魔法復唱

 

追尾性を持った閃光を、声のした方向に向けて放つ。

 

「どうせ生き返るんだから喰らっとけ!」

 

『嫌だ痛いんだから死にたくない!』

 

声が遠ざかっていく。やったぜ逃げてくれたみたいだ。

 

「それじゃあサクッと魔物倒しますか!」

 

走って魔物に近づく。

 

「とりあえず首でも切ってみますか...んぉ?なにあれ」

 

何かスライム的なものが魔物の腕に張り付いていた。

 

「液体化これすごい便利!」

 

あっ、液体化したワンナかこれ。びっくりした。スライムがマジで魔物襲ってるのかと思ったわ。

 

「触れてるところしか液体化できないけど、硬さとか全部無視して攻撃できるから強いわ。倒したら使えなくなるのもったいない...!」

 

「へーそんなすごいのか。使ってみたかったな...」

 

「自分という形を忘れそうになるから、それだけ怖いけどな」

 

「…それ、速度操作使うといつも思うことだから慣れてるわ。えっ、習得したいどうにかして魔物が使ってる魔法を解析して使えるようにできたりしないのかな?」

 

「そんなの知らないよというか早く攻撃してくれない?液体変換はダメージ自体は少ないから、サクッと攻撃して火力出して欲しいんだけど!」

 

「あっ、すまん。行ってくるわ」

 

腕を駆け上り、魔物の首のすぐ近くにまで辿り着く。

 

「というかこいつ動かねぇな...」

 

「私が腱を液体化させたからだ!腕や足は動かせない!」

 

「お膳立ては完璧ってか...!トドメは任せろ!」

 

首にダガーを突き刺し、そのまま左右に思い切り引き裂く。皮膚は柔らかく、一瞬で傷が開いた。

 

「魔素漏出加速開始!...しょうみやること地味なんだよな」

 

ワンナが反撃能力を全て奪っているから反撃される心配はなし。急ぐ必要ないから、首切って傷広げて魔素漏出速度ハイ加速で終わり。無理に動く必要ないし、このまま魔素が抜け切るまでやることがない。というか無理に動いて魔力切れ起こす方がまずい。

 

「魔力温存しないとだしな...」

 

こうやって魔素を出してる間は、周囲が魔素で覆われるため魔力を自然回復させることができない。だから魔力を無駄に消費するのはやめた方がいいわけだ。こうしていればいずれ勝てるのだから、無理にやる必要はない。

 

魔族が戻ってくるという裏目はあるものの、スートが妹の方を引きつけてくれているし、バカな姉の方は閃光に追われているからしばらく戻ってくることはないだろう。問題ない...はず。

 

「トドメは任せろつったけど、こんなんでいいのか...?なんか、もう少し良さげな討伐方法考えた方が良さそうだよな...」

 

よくよく考えると、この方法俺一人で戦う時用というか、多人数で攻める時に使うのには適さないんだよな。俺が魔物の傷にへばりついてひたすら耐えるってだけの、とても戦法とも呼べないお粗末な戦い方だ。仲間を持て余してしまう。

 

勇者パーティーとして動く前に、パーティーとして効率よく戦う方法を考えなければ。協調性協調性とスートに言ってきたが、それを言うなら俺も今までの戦い方を変える必要がある。ニアの戦力がどの程度のものなのかとか、勇者が誰になるのかとか不確定要素が多くてきちんとした作戦は立てられないだろうが、今から考えても早すぎるわけじゃない。そろそろ考えないと。

 

「とまぁそんなこんな言ってるうちに小さくなってきてるわけで...お、あれカノウじゃね?」

 

加速させながらボーッと下を見ていたのだが、剣を光らせながらこちらに走ってくる人の姿を見た。カノウだ。

 

「おーいカノウー!ちょーっとこいつ吹っ飛ばしてくれん?」

 

そうカノウに呼びかけると、カノウは返事の代わりだと言わんばかりに剣を黄色に光らせて、真横に振り抜く。

 

「うわやっぱ本家の威力ぱないな...やっぱ魔法陣として使いてぇな。考えること多すぎるぞ戦争終わったらどうしよう」

 

とりあえず一日部屋に篭るかどうせ疲れて動けないだろうし...と、そんなことを考えていると、カノウが叫んでくる。剣に光が灯ってないのが気になった。

 

「悪い今ので魔力使い切った!あとは頑張ってくれー!」

 

「えっ、そんななのにやってくれたの⁉︎そこまでしてくれなくてもよかったのに心配になるじゃん!」

 

うわめっちゃ走ってガネルまで逃げてるし...よく攻撃してくれたなほんと。

 

「…これ、あそこの傷で加速させた方が良さそうだな。結構抉れてるし足場もあんだろ」

 

空間の裂け目が消滅したのを確認してから、ゆっくりと降りて...ん?

 

「よい...しょっ!」

 

「あっぶねクミリア⁉︎」

 

カノウの開けた傷に思い切り拳を突き刺したのはクミリアだった。いつのまに来てたの?

 

「あっ、カリヤじゃん。魔法図鑑かーして」

 

「また全力疾走か?わかったよほれ」

 

魔法図鑑を渡す...これ、クミリア用にチューンしたのを別で渡した方が効率いいな...これも後でやっておこう。

 

「それじゃあいっくぞー...クミさんパーンチ!」

 

「なにその力抜ける必殺技名威力すごっ⁉︎」

 

クミリアの放った超高速の正拳突きが、魔物の胴体を完全に貫いた。大量に魔素が漏れ出し、立ったまま魔物は小さくなっていく。

 

「こーれは完全に死にましたわ...」

 

「もう放置でいいでしょ。次の魔物探しに行かない?」

 

「そうだな...魔物いなくね?」

 

縮小していく魔物の肩の上から周りを見渡すが、生きている魔物の姿が見えなかった。

 

「増援は無し...か?」

 

「俺を追いかけていた魔族も消えていた。完全に撤退したと見るべきだろうな」

 

スートがそう言いながら戻ってきた。

 

「なるほど...じゃあこの戦争は」

 

「クミさんたちの勝ちってね」

 

各々拳を突き上げ、勝利を喜び合った。

 

カイスの時のような、勝利した実感はあまりなかったが、何はどうあれ、勝利は勝利だ。

 

この町を守り切ることができたのだ。その事実だけでいい。




なんかぬるりと終わってしまいましたが、そういう仕様だということで。

次回は久しぶりの日常回。
はたして戦闘描写なしで八千字を書ききれるのか...
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