前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8438字。

もう一、二話やるつもりだったけど予定変更ガネル編終わらせます。


さらばガネル、新たな猛者

「ほんと俺、運だけで生きてる気がするな...」

 

俺指名の依頼、その討伐対象だった魔物の大群の、最後の一体にダガーを突き刺しながら呟く。

 

強敵だった...集団で連携取りながら攻撃してくるのはまだいい。でも、ひたすらにこちらの動きを妨害してくるのは辛かった。泥沼を作ってくるわ、空気操作して酸欠にしようとしてくるわ...魔物のくせに魔法が高性能すぎて怖い。多分一体一体使える魔法が違うんだろうけど、使い方が上手かった。

 

そんなこんなで危うく死にかける二歩手前くらいまでの状況になったけれど、偶然最初に殺したのがリーダー格だったようで、そっから先はめっちゃ楽だった。

 

見るからに動きが崩れていたからな。魔法暴発して味方に当たり散らかしてたし。リーダーに依存しすぎてちょっと笑ってしまった。百数体を一体でまとめ上げていたというのは普通にすごいと思うのだが、後継者を育てていなかったのが敗因だろうな。

 

「運良くリーダー殺せたけど、もし違ったらと思うとゾッとするな...俺、そんな運いい方だったっけ?」

 

なんかこの世界に来てからめっちゃ運が良くなってる気がする。初日にステラに助けられたのもそうだし、アクセルに気絶させられた後スートに助けられたのもそうだし...助けられてばっかだな。

 

「俺毎年末吉か小吉しか引けなかったんだけどな...大吉引いたことないし、かといって凶を連続で引くとかもないし、運は平凡のはずだったんだけど...」

 

いや、むしろ悪い方だった気がする。それなりのキャラは二、三十連で出るのに、本当に欲しいキャラは天井まで引いても出ないこと多いし。

 

「もしかして、神様が運でも操作してたりするのかな...」

 

こう、すぐに死んでしまわないように運勢を操作して死から遠ざけているような、そんな感じがする...普通にあるかもしれない。

 

「もしかしたら、魔王を倒すまでなぜか死なないってことになってたり...?流石にゆゆ○の精○バリアみたいに絶対死なないってことはないだろうけど、よっぽどのことがなければ死なないようにはなってそうだな」

 

後で暇な時間がある時にそれとなく聞いてみるか...と考えながら、俺はガネルに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、カリヤじゃん」

 

ガネルの門まで戻ってきたのだが、ちょうど出ようとしていた馬車の中から声をかけられた。

 

「く、クミリア⁉︎」

 

「あっ、ごめんなさいちょっと止めてくださーい」

 

御者の人にそう声をかけてから、クミリアが馬車から降りてきた。

 

「クミリア...馬車なんて乗ってどこ行くんだ?なんかの依頼か何かか...?」

 

「いやいや、ガネルを出るんだよ」

 

「…どうして?」

 

「どうしてって、だってもうすぐあの時期じゃん。ほら、勇者選定の日」

 

「そういやそうだけど、あれ確か一週間後だろ?今回は絶対日時は間違えないようにって思ってちゃんと調べたから間違ってないはずだぞ?」

 

「うん、確かにそうだよ?だから今から移動するんじゃん」

 

「当日でも遅くないはずだけど」

 

「それはカリヤの場合でしょー?クミさんは時間がかかるんだから」

 

「当日俺と一緒に移動すればいいだけでは...?」

 

「走って何分かかるの?」

 

「うーん...速度操作だけで四十分くらい?」

 

「スタミナは持つだろうけど、流石にそこまでは走りたくないかな...それに、当日バタバタして移動するのちょっと嫌だし。王都でやりたいこともあるしね」

 

「やりたいことあるのか了解した。引き止めて悪かったな」

 

「やけにあっさりと引くね」

 

「まぁやりたいことあるってんのに無理矢理俺の都合に付き合わせんのもおかしいしな。バタバタしたくないってのは俺も同意だし。ゆっくりいってら」

 

「じゃあ行ってきまーす」

 

クミリアは馬車に戻り、そのまま出発していく。

 

「……そりゃ普通はこれくらいの時期から移動するよな。感覚狂ってんなー俺」

 

ある程度の距離まで馬車が行くのを見届けてから、ボソッと呟く。

 

「懐かしの五分前行動の精神を取り戻さないとな...」

 

五分ってか、日にち単位で早めの行動しろってことだけど。なんで速度操作で高速移動高速思考できるのに、行動のし始めが遅いんですかね...

 

「うーん...あっ、じゃあ俺も王都行こっかな」

 

善は急げ、有言実行、そうと決まればさっさと王都に行ってやろう。正直、もうこの町に残ってもあんまりやることないしな...依頼もいいのないし。

 

「まずは荷物まとめてくるか。つってもほぼ次元収納に突っ込んでるけど」

 

とりあえず宿に戻ろう。適度に加速させてそれなりの速度で走る。人にぶつからないように、速度探知もフルに使って慎重かつ高速で宿までの道を駆け抜ける。

 

「よーし到着!さーて荷物はどこにしまってたかなっと」

 

部屋まで戻ってきた俺はいろんな場所にしまってある荷物を回収する。

 

9902、9903ページ 次元収納

 

そして回収した荷物をポイポイッと次元の狭間に放り投げていく。

 

「あっ、そうだ洗濯物回収しないと」

 

一階まで降りて、軽く従業員さんと会話し昨日着た服を回収する。

 

「ポイッと...これで荷物は最後だよな?」

 

開けたままにしていた次元の狭間に洗濯物を突っ込む。まだちゃんと乾いていないけど、次元収納の中のものは時間止まってるから問題なし。後で乾かせばオールオッケーだ。

 

「あとやるべきことは...チェックアウトとギルド寄るくらいか。すぐ終わるな」

 

宿のチェックアウトをして、すぐにギルドに向かう。こんな日中に、なぜこんなにもあっさりとチェックアウトできるのかといえば、冒険者向けの宿だからというふうな説明をするしかない。

 

冒険者なんていつ死ぬかわかったもんじゃないし、すぐに別の町に移動しなければならなくなるなんてこともザラだろう。そんな冒険者を客層にしているのだからいつでもチェックアウトできるようにしてるのは当然とも言える。

 

「ギルド到着はい予想通り!」

 

こんな時間に冒険者登録関連の列に並ぶ奴なんてそうそういない。当然のように誰も並んでいなかったのでさっさと並ぶ。

 

「ってそりゃ受付誰もいないわな...あのーすみませーん」

 

「はい承ります」

 

ささっとすぐ近くの椅子から受付に移動してくるキネット。

 

「俺今日でガネル出ることにしたから。冒険者許可証の解除しといてくれ」

 

いちいち町を移動するたびに解除と登録しないといけないのめんどいよな...カイスみたいに登録自体なければ楽なのに。

 

「……随分と急ですね。たしか、勇者選定の日に出ると言ってませんでした?」

 

「つい数分前くらいに決めたことだからな」

 

「本当に急ですね...で、許可証を出してもらわないと解除できませんが」

 

「あっ、すまんすまん。急いでて忘れてたわ」

 

9902、9903ページ 次元収納

 

次元の狭間からヒョイっと黒色のカードを取り出してキネットに渡す...ブラックカードって響きいいな。

 

「そこまで急ぐ理由はなんなんですか?」

 

キネットが手続きをしながら俺に聞いてくる。

 

「急ぐ理由は特にない。なんとなくだ。強いて言うなら、クミリアが王都に向けて出発するところに鉢合わせしたからかな。さらっと追い越してクミリアを待ち伏せしてやりたくなった」

 

「なにしようとしているんですか貴方は...はい、手続き終わりました」

 

「ありがとうキネット。それじゃあ行ってくる」

 

「行ってらっしゃいませ。貴方の無事を祈っています」

 

「おう、次会う時は魔王との決戦前になるのかな...また会おうぜ」

 

「ですね」

 

キネットとの会話を終え、ギルドの外に出る。

 

「んよし。まずは門まで走って、そこで一旦魔力とスタミナを回復...そっから走って終わりだな」

 

さささっと道を走り抜けて門の近くで止まる。

 

「この感じだと休憩は一分もいらないな。軽ーく屈伸と伸脚しておこ」

 

準備運動をして、靴紐もきちんと結ぶ。

 

「よし走ろう」

 

速度操作による最大加速。地面を一気に蹴って前に飛び出す。

 

「速度的には余裕で追い越せるし、注意すべきは走る位置だよな。街道をバカ正直に走ると見つかるだろうし...いっそのこと反対周りで行ってみるか?」

 

普通に真っ直ぐ走れば、三十分程度で王都に着く予定だ。ただ、そのルートで行くと必ずクミリアと鉢合わせするので、ぐるっとシレンの穴を時計回りに回ってカイス側から王都に向かうことにした。

 

「魔物いないといーな!」

 

ひとまずは南東方向に向かって走る...ってやべ、まだまだ馬車近くにいんじゃん。馬車おっそ。もうちょい進んでるもんだと思ってたわ...

 

「見つからないように東に突っ走るか...姿消してもクミリアにはバレるだろうし、とりあえず離れないと」

 

まぁ別に見つかってもいいんだけどな。先回りするのはただ単に驚かせてやりたいってだけだし...なんか、やってることキースたちみたいだな。あの時のは俺が乗った馬車に乗り込んできた感じだったけど。

 

「よし、この辺まで来れば流石に見えないよな。こっちからも地平線的に遮られて見えないし...いけるやろ!」

 

方向転換し、一気に駆け抜ける。

 

「うーん...流石にシレンの穴飛び越えたら目立つよなぁ...普通に回るしかないかな」

 

とりあえずの目標をシレンの穴に設定し、俺は走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから二十分弱の虚無時間が生まれる。一人だけでただ走るのってすごい暇だな...

 

っと、そんな暇を解消したのは、シレンの穴に着き、それを見つけたからだった。

 

「えっ、どういうことだこれ?」

 

誰かが、シレンの穴の中で魔物と戦ってる...?一体誰がこんな無謀なことを?

 

「えーっとぉ...時間めっちゃ余裕あるし助けておくか」

 

こんな誰でも無謀なだってことがわかることをわざわざやっているのだから、腕には自信があるのだろう。でも、一回ここに落りて魔物の軍勢と戦った俺は知っている。上層の魔物でもかなり厄介なのが多い。アクセルでさえ苦戦している。万が一がいくらでも起こりうるため、助けに入った方がいいはずだ。

 

「よいしょっと」

 

ちょうどこの位置から少し下、三段ほど降りたところにその人はいたので、速度操作をうまく扱いながらヒョイと飛び降りる。

 

「おーいあんた。こんな危ねぇところで何やってるんだ?」

 

長い槍を振り回して魔物を薙ぎ払う男に向けて、降下しながら声をかける。

 

「えっ...て、ハァ⁉︎なんで降りてこれて...!」

 

「神の使いなんでな。なんかやばそうな雰囲気あったから一応助けが要るかなと思って来たけど、必要あるか?」

 

「必要...ない!」

 

「そうか。まぁ見た感じたしかにだいじょぶそうだし、邪魔しないでさっさとお暇しますねー」

 

一応、まだ地面に足をつけてないからすぐに上に戻れるようにはなっている。こう、加速を解けばすぐに上に...ん?

 

「その紋章は...」

 

男の右手の甲。そこに、翼のない鳥の紋章が刻み込まれていた。

 

「まさかあんた...勇者候補のアライブ?」

 

あっ、足つけちった。戻れなくなっちゃった...まいっか。

 

「そうだが...今は話しかけないでくれ!気が散る!」

 

「おっとすまん。それじゃあ...」

 

空気を引き裂けるほどの速度で蹴りを放ち、魔物を叩き落とす。

 

「露払いでもしておきますよっと」

 

「…槍が当たっても承知しねぇぞ」

 

「気にせず振ってくれて問題ない。見えてるからな」

 

「なら遠慮なく!」

 

その宣言通り、明らかに俺を巻き込むであろう軌道で槍を操り、魔物を薙ぎ倒す。

 

かなり豪快な奴だな。そしてまたしても仲間と協力して戦うことを知らなそうな勇者候補だ。絶対一人で修行してるからだよな...弊害出まくりなんだが。俺みたいに誰かと一緒に戦う経験を積んでいれば...まっ、ちゃんと連携できたかって言われるとちょっとアレだが。

 

というかこいつも剣使ってねぇな。槍じゃん。なんで剣使わないの?もしかして本当に聖剣ってのは名前だけだったりする?杖とか槍とか、望む形に変えられる感じ?なんかその説が濃厚になってきたな...

 

「っととあっぶね」

 

危うく槍の石突が当たるところだった。ほんとに遠慮しないな。まぁ避けられないほどじゃないから全然いいんだけど、つい癖で減速させて避けようとしちゃう。邪魔しちゃうから減速させないようにしないと...

 

「よっとお前も吹き飛べ!...なんかだいぶ見慣れてきたなこいつら」

 

何度かここに来ているから、どんな魔物が出てくるのかだいぶ覚えてきた。具体的にどの横穴から出ているかまではわからないけど、この辺りならこいつらだよなーとなるくらいには覚えてきた。

 

勇者パーティー組んだらここに修行しにくるんだし、あらかじめ魔物の情報集めておくのもいいな...

 

と、そんな感じで思考をしながら魔物を攻撃し続ける。アライブはそろそろ終わりにするつもりなのか、魔物を倒しながら少しずつ上に移動しているので、俺も少しずつ上に移動する。

 

上に行けば行くほど、魔物は弱くなっていき、数もどんどん減っていく。そのため、すんなり移動できるようになり上に進む速度もどんどん速くなっていく。

 

「アライブ強いっすね。流石は生きるって名前がついてるだけある...」

 

生存能力高そう。現に、魔物に囲まれてる状況でも普通に戦えてたし、俺が干渉しなくても生還できただろうし。

 

「…どういう意味だ?」

 

「うん、やっぱ英語は伝わりませんわな...」

 

そういえば、人名の翻訳ってどうなってるんだろ。今の反応的に、名前の由来になった単語で変換されてるわけでもなさそうだし、かといってあのわけわからん発音の言語で人名だけ日本語と同じ発音ってのもおかしいし。流石に適当にそれっぽい単語を当てはめてるわけじゃないだろう。やばい気になってきた。レストは休憩だからめっちゃ合ってるんだけどな...実際はどういう発音の名前なんだろ。ステラもクミリアもスートも気になって...

 

あかん。もうほとんど思考に集中してるいつのまにか。まぁそれくらいでも問題ないからってのもあるけど。戦闘と思考のリソース1:9くらいになってる。思考加速の賜物だな...体感時間めっちゃ伸びるけど。精神年齢だけ早く成熟しそうでちょっと怖かったりする。

 

「お前も強いな。神の使い...名前は...カリヤだったか?」

 

「よく知ってるな」

 

「そりゃ有名だしな。それに、将来の仲間だし」

 

「すまんな、こっちはつい一、二ヶ月前まで名前知らんかったわ」

 

「それは当然だ。勇者候補の名前は公表されてない。直接会った人しか知らないはずだからな」

 

勇者候補なのに大々的に名前出したりしないんだな...まだ候補だからか?それとも、魔族に襲われるのを防ぐためか...紋章のせいで一目見ただけでわかるんだから、それはないか。

 

というか、アライブも普通に話すようになってきたな。それだけ余裕が出てきたということか。

 

「ところで、俺の名前は誰から...ああ、カルトから聞いたのか」

 

カルト?...ああ、王城で会った大臣さんか。そんな人いたな。懐かしい。

 

「いや違う。スートに聞いた」

 

「あいつに会ってるのか...」

 

「あっ、そういやその前にクミリアから聞いてたな」

 

「クミリア...うっ」

 

うっ、頭がって現実でなってる人初めて見た。そんなトラウマになってるのか?クミリアが弱かったみたいなこと言ってたし、多分ボコボコにされたんだろうな...

 

「その名前はあまり聞きたくないな...」

 

「ガネルの英雄になってるからアライブが勇者になったら仲間になるぞ」

 

「おぉぅ...」

 

あーこれかなり心にきてるやつだな。少し動きが鈍くなってるし...

 

「って、ゲンナリしてる場合か!」

 

アライブの近くに迫っていた魔物の頭に蹴りを叩き込み、頭蓋を打ち砕く。

 

「えっ、あ、あぁ、すまない。集中が途切れていたな」

 

今が戦いの最中だというのを思い出したようで、槍を振り回して少なくなっていた魔物をまとめて殴り飛ばす。

 

「これで最後だな...ああは言ったが、正直助かった。助けに来てくれてありがとう」

 

助けは必要ないと言ったことを言ってるのだろう。シレンの穴から出ながら、アライブは言う。

 

「礼はいらないよ。勝手に乱入しただけだしね。俺がいなくても問題なかったはずだ」

 

というか、普通に結構強かったぞアライブ。クミリアと戦ったのは結構前のことだろうし、負けてから頑張って修行したんだろうな...今のクミリアと戦ったらどっちが勝つのか、ちょっと気になるな。

 

「いやいやそんな、槍の縛りを解かないとキツイなってところまで追い込まれてたんですよ実は」

 

槍の縛り?と思ってたら、アライブの持っていた槍がカシュンカシュンと収納されていき、手のひらサイズの小さな円柱になる。如意○箍みたいだな。

 

ってか、なんか急に大人しくなったな...丁寧語になってるし。あれかな?戦闘中は性格変わるやつ。俺もそうだって前にステラに言われたことあるけど、俺は気分を上げるために意識的にやってることだから、ちょっと違うんだよな。

 

「その槍、変形できるのか?」

 

「はい。槍が基本系ではあるんですけど、結構自由自在に変形できます。質量を保存したまま、密度を変えることで体積を変化させて形を変えてるんです」

 

「なるほど、そういう感じの魔道具か」

 

魔法ならば、重さも自由に変えられるはず。微妙に制約があるところを見るに、これは魔法ではなく魔道具によるものだろう。

 

「そうです。依頼をやってるうちにアンデッドの作る屋敷で拾いまして」

 

「ああ、あそこか。俺も二個拾ったな」

 

「あそこ良いもの多くありますよね!」

 

「そうだよな!」

 

こいついい奴だ!仲良くなれる気しかしない!

 

最終的にどういう基準で勇者が選ばれるのかは知らないけれど、アライブだといいなぁ...まぁ、スートも強いし、最後の一人のライトがどんな奴か知らないからハッキリと言い切ることはしないでおくけど。

 

「そういやなんだけど、その槍って剣に変形できたりしないのか?というか、剣を使った経験はあるのか?」

 

「やろうと思えば剣にすることもできますが...少し小さくなってしまうんですよね。あと、剣を使った経験は流石にありますよ、これを手に入れる前はよく使ってました」

 

「そうなのか...スートが魔法しか使ってなくて剣一切使ったことないとか言ってたからちょっと心配だったんだよな、うん」

 

「ああ、スートさんですか...たしか、剣なんて振ってられるか、俺は魔法しか使わねぇみたいなことを言ってましたね」

 

「えぇ...」

 

ほんとにどういうこと?今言った内容的に、聖剣はガチで剣なんだよな?なのになんで剣使わないんですかね...

 

「どうして剣を練習しないのか理解に苦しむ...」

 

「……?」

 

えっ、なんでそんな不思議そうな顔してるんだ?

 

「……そういえば、あれは公表されていなかったんでしたっけ...」

 

「あれってなんのことだ?」

 

「忘れてください。言ってはいけないと言われていたことでした」

 

「そっか。ならしゃーねぇな」

 

後で神様に聞いてみよ。多分知ってるだろうし。教えてもらえるかは別だけど。

 

「……あっ、そろそろ王都向かわないと。流石に追い越せてるけど、先回りして色々準備したいし...」

 

「王都に向かってる最中だったんですか?」

 

「ああ。走って移動中だったんだけど、偶然アライブが戦ってるのを見かけて飛び込んできたってわけだ」

 

「は、走って...いやそれよりも、偶然見かけるような場所じゃないと思うんですけど...」

 

「んー、なんとなくチラッと覗いただけだったからな。意図的とも言えるし、偶然とも言える」

 

「そうですか...ところで、噂は耳にしているんですけど、どれくらいの速さで走れるんですか?」

 

「秒速58メートルくらい...って言われてもわかりにくいか」

 

「ですね...」

 

「それじゃあ体験した方が早いか。勇者になったら嫌でも経験することになるだろうし」

 

「体験?それって...?」

 

「さっき言った通り俺はこれから王都に行くんだが、もしアライブもそうなら一緒に走ろうってことだ。どうだ?」

 

「ふむ...面白そうですね。行かせてください」

 

「わかった、じゃあ行こうか。結構速いから、転けないようにだけ気をつけてな」

 

「了解した」

 

よし、アライブを加速させて、一気に走り出す...あっ。

 

「ちょっ、置いてかないで!」

 

「なんで走ってないの⁉︎」

 

アライブが取り残されてしまった。なんで動かなかったの...?とりあえずアライブのところまで戻る。

 

「勝手に体が動くものだとばかり...自分で走らないといけないんですね」

 

「そりゃまぁ、あくまで速度を変化させてるだけだから、動かないと意味ないぞ」

 

「なるほど...わかった今度は置いてかれないぞ」

 

「念の為、先に走り出しておいてくれ。後から追いついて加速させる」

 

「了解」

 

アライブが走り出す。その背中に一瞬で追いつき、加速させる。

 

「おわっ、こんな速いのか!気持ちがいいものだな!」

 

ちょっと口調変わってるな。体を動かすとスイッチ入る感じか?

 

「風気持ちいいだろー。よし、このまま王都まで行くぞ」

 

「わかった!」

 

王都までおよそ十三分。

 

俺たちは風を浴びながら、高速で平原を走り抜けていった。




本編でカリヤが言っていたように、本来の予定では勇者選定の日に移動することになってたんですけど変更して一週間前に、そしてアライブとも遭遇させました。
この感じでライトとも会わせてみようかなと思ってたり。

実は、元々は勇者候補とは一回も会わずに選定の日迎える予定だったりもして、結構何度も予定変更繰り返してたりもする。
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