DUの一等地にある大きなビルをまるまる買いとって、事務所としたニヒル協会は記念すべき日を迎えようとしていた。
防衛室から正式な事業支援プログラムが行われることが決定し、今回はその内容の報告会兼パーティーなのだ。
ニヒル協会の正装である『爪』が着るような黒服を着た多くの
木で作られた豪華で、重厚さのある演説台の前に立つ。その中央に黄金で刻まれた『0』が蛍光灯の光に当たり、きらきらと輝いている。
「ニヒル協会の皆さん、今回はこのようなパーティーを企画していただきありがとうございます」
「防衛室はニヒル協会の治安への貢献や学園へ通えない生徒に居場所を与えるなどの行為を高く評価し、何らかの形で支援出来ないかと考え、今回の事業支援プログラムに繋がりました」
「すべては皆さん、
実際、ニヒル協会はキヴォトス全体の犯罪低下に貢献している。それは調律者による指令だけが原因ではなく、ニヒル協会の財政的な都合が大きく関わっている。
まず、ニヒル協会は常時金欠である。急拡大する組織特有の問題である人員の急増…つまり、
当然、
キヴォトス全土に位置する『非行組織』などに該当するテロリストやヘルメット団を襲撃し、略奪。構成員はそのまま協会で教育し、得た金銭や武器でなんとか組織を保つ。歪だが、これが最も効率が良い。いずれ限界が来るだろうが…今考えるべき問題ではない。
一見すれば協会はヴァルキューレに代わり、治安を改善しているようにしか見えない。
「だから、防衛室は予定していた資金援助にプレゼントを添えることにしました」
「プレゼント?」
「やっと、ぼくっち達が報われるんスね!」
「10級の新設か!?これでももう最低辺じゃなくて済むぞ!!」
「協会は独立組織だろうが、だからお前は9級なんだよ」
「んだと!?って…あっ、4級様お許しを!なんでもしますから…」
「ならあとで訓練室に来い」
「あはは!!また、あの九級やらかしたよ。なっさけねー」
ガヤガヤしだす
「防衛室は、フィクサー登録を学籍と同等と扱うことを決定しました。そのフィクサー登録とは当然、ニヒル協会が行うものに限定します」
先程の喧騒から転じて、沈黙となる。
何十層もの布が体にかかり、押し潰してくるような重い空気が広がり…歓声に変わる。
「ありがとう…っうぅ」
感激のあまりに泣き出す子も。
「やった-!これでもう馬鹿にされない」
過去を想って喜ぶ子も。
「見たか、ティーパーティー!何がお前はもう生徒ではないだ。俺はフィクサーになったぞ!!」
新たな居場所を見つけて叫ぶ子も。
「カヤ様、カヤ様-!!!」
プレゼントをくれたカヤに感謝する子も。
カヤは彼らに決して消えない帰属意識という劇毒を投与した。
彼らはフィクサーであるから、生徒と同じ権利を持てる。
彼らはフィクサーであるから、友と帰る家を持てる。
彼らはフィクサーであるから、明日に怯えずに飯を食べられる。
あげられた生活水準を下げられないのと同じようにフィクサーであることを知った生徒はもう生徒に戻れず、フィクサーとして生きるしかない。
もう船は出発してしまった。荒波に揉まれつつも、次の港である『巣』へ向けて。
「これにて、防衛室の報告を終わりにします」
カヤは満足感に包まれながら、サオリのもとへと足を進めた。
ニヒル協会の財政破綻の可能性は例え防衛室からの援助があっても、完全になくなりません。協会は今行っている略奪の経済より効果的な手法が求められます。
現状のニヒル協会では事務所を持てるのが6級からで例え事務所を持っても強制的に協会指定事務所になるため、ニヒル協会の統制下にあります。
仮に協会の命令に従わなかったり、独立したりするとフィクサー登録を取り消されて不良生活へ後戻り…という容赦ないものになっています。