あと大学が楽しいので初投稿です。
生徒に新たな生活の形を示したニヒル協会はその拡大を留めることを知らない。各自治区に支部を保有し、そこから応募してきた不良達を教育し、別の支部に移すことであえて新しい場所を体験させ、協会という組織が如何に頼りになるかを刷り込ませる。所謂、宗教勧誘でも使われる孤立させ、集団で慰めることで帰属意識を高めさせる戦法だ。ゲヘナの不良はトリニティに、トリニティの不良はゲヘナにと双方にある対抗意識を利用することもあれば、ミレニアムからレッドウィンターへと僻地に派遣することもある。
そして、一定期間を過ぎれば本当の本部が位置するブラックマーケット支部に異動させる。自治区のおかれている場所より依頼量が多く、かつカイザーコーポレーションとの勢力争いに兵力が要るのだ。
調律者の登場以来、ブラックマーケットの様相は一段に酷くなった。失った兵力を補充するために地上げを行い、マーケットガードを盾に暴政を敷くカイザーコーポレーション。ブラックマーケットが治外法権としての立場を事実上確保している故に誰も介入出来ず、そこに居る
ニヒル協会が現れた。
ウェトゥリウス区、アウグリヌス区、サビヌス区に存在したカイザー支社を
三つの区を実効支配下に置いたニヒル協会はすぐさまにカイザー資本の締め出しとフィクサーの展開を行い、そこに住んでいた人々に対する税金等の負担を
そして、今に繋がる。防衛室に鳴り響く電話の音となって。
「…先生、お問い合わせ頂きありがとうございます。現在緊迫しているブラックマーケット情勢は連邦生徒会の管轄外となっているので対処できないため不干渉です。また、先生のおっしゃっていたフィクサー登録された者のシャーレへの加入は法律上不可能です。新たな立法が必要となりますね」
カヤにとっては幸いに今日の業務は一段落つき、コーヒーを嗜みつつ先生の相手をするという極めて文化的な行為を行うことが出来ていた。
"なら、生徒のままフィクサーになっている子は?"
「フィクサー登録が優先されるので行えません。もともとフィクサー登録は各室が行える推薦枠を活用した制度です。その生徒を推薦し、資格を取らせるものですが…この場合は学籍という資格を取得するための推薦という形です。なので、各学園の資格より一つ上のレベルにあるとでも思ってください。もともとは古い制度で、数十年は使われて居ませんでしたがニヒル協会による慈善事業を受けて不良生徒等を更正させるべく協会にその権限を私が与えました。もっと詳しく説明するなら…そうですね、まずはお手元の連邦生徒会憲章を開いて32条第5項を…」
もともとは初期連邦生徒会が資格持ちの生徒を増やすために悪用された制度だったが、今はこのように別の悪用の役に立っている。
"大丈夫!わかったから!"
「そうですか…まぁ、わかったのでしたら良かったです。それで今回は何故、このような電話会談を?」
"あはは…それがねシャーレに不良が消えるのを止めて欲しいっていう問い合わせが多くてね"
「まぁ…それは何故に?」
"不良達がやっていた仕事や彼女らが住まなくなったことで町がゴーストタウンになっていくとかでね"
「随分、都合が良いですね。居たら居たで防衛室やヴァルキューレのお問い合わせ窓口に何とかしてくれと泣きつくのに、それがなくなったら今度は去っていくのを止めて欲しい等…私達の苦労をわかっていないんでしょうね…やはり、ここは一度…巣の…」
思わず頭を抱えそうになる衝動を抑え、呪詛をはく。調律者と出会う前にあんなに役所対応で苦労をかけてきた人達が今度は元に戻せなどと言い出す様に脳内の掃除屋の真ん前に放り投げたくなってしまう。
"カヤ!戻ってきて!"
「ああ、すみません。少し取り乱しました。この仕事大変なんですよ…治安が荒れれば荒れるほど書類の山が迫って来ますので。まぁ、ニヒル協会のお陰で減りましたが」
「それで…推測しますが、シャーレにフィクサーの生徒を加入させてニヒル協会ではなく普通の学園に彼女達を移籍させることで問題の解決を図ろうと?」
"そうだね、出来れば普通の青春を皆に送って欲しいんだ"
「先生…ニヒル協会は良いところですよ。公的な学校ではないだけで、学校組織としての機能は着々と備えられていっていると報告書で読んでいます。なので、その心配は無用かと」
脚色された報告書であるが、SRTをモデルに組織づくりが行われているためにあながち嘘とはなっていない。
"…あとは、調律者がフィクサーになっているかもしれないんだ"
「調律者!?」
協力者の名前が出て、口から少しのコーヒーが垂れる。
「ああ、これはまた…」
それを拭きつつ、先生の言ったことを精査する。調律者がフィクサーになっていると予想している…おそらく、食うのに困った調律者は人の目をなるべく避けられるフィクサーという役職を選んだと。正確にはその親玉であるから、当たらずとも遠からずだが。
「失礼しました。何せ、防衛室の指名手配犯の中で最も探されている人の名前ですから、びっくりしました。どうぞ、続けてください」
"前に調律者と会った時に彼女は生きる道に迷っているようで、泥舟に乗りながらどこを漕げば良いかわからずに目を虚ろにしているように感じ取れたんだ"
"でも、そこに居た生徒を殺す選択が出てきたときにはそれらがすべて消えて無機質な機械みたいになっていて、思わず突き放してしまった。あの時、実は助けてくれって言っていたんじゃないかって"
「…なるほど、でも先生はその子をキヴォトスの敵に見事に仕立て上げましたよね。我々防衛室もその方針を踏襲しています」
あの記憶を見せられてからの悪い癖が出てしまう。人をいじめたくなってしまう…だって、サオリはあれほど笑っていたのだから。
"…"
「もしかして、今ならやり直せると思っているのですか?」
"カヤ?"
「仮にですが、ああ仮にです。私が彼女であったなら、助けてを求めて、最悪の形で突き放してきた相手はもはや救世主になりえませんよ」
「まぁ♪でも相手は殺人鬼です。先生は心配なさらず、もうどうしようもありませんから」
"…でも先生としてあの子と向き合わなければ"
「それは獄中でも出来ますよ」
これでトドメだ。どや顔のカヤは自身の舌戦を誉めるしかなかった。的確に相手のつらいところをえぐり、戦意をなくす。完璧では?
"……"
「調律者関連の業務は防衛室が担当となっていますので、安心してください。我々で捕まえてみますとも」
"それはシャーレがやるよ、大人の責任だから"
「……先生、おすすめはしませんよ。そんな苦しそうな声で言っている様から貴方は今冷静ではなく…」
悪い流れだ、軌道修正を…
"ううん、これは決めたことなんだ。きちんと向き合うって"
まずい、まずい!これでは捜査隠蔽がしにくくなる!
「無理にする必要は…」
"…大丈夫、心配かけてごめんね。でも、先生としてやらないといけない"
「わかりました…シャーレの権限の使用と見なし、調律者関連の業務を委託します。後日捜査資料を送付します」
"今日はありがとうカヤ"
「ええ…構いませんよ」
ガチャリと電話が切れ、カヤは頭を抱える
「煽りすぎてしまったー!!」
これもしかして…サオリに怒られる?
カタツムリ更新ですが、なんとか投稿出来ました!
感想と評価お待ちしております!