調律者サオリ   作:イワシコ農相

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大量のUAと評価で記憶が飛んだので初投稿です。


第一話『小さき翼、風を起こせず』

シャーレへと一歩を踏みしめた瞬間。

 

人だかりを割るように、複数のオートマタが侵入してくる。

 

「さぁどけ、どけ」

 

「これからここの事態はマーケットガードが対応する」

 

「警戒線を超えた人物はこの地区の主であるカイザーコーポーレーションに楯突いたこととなる」

 

私を取り囲むように展開していく大軍を眺めながら、どう殲滅すべきかを思考する。

緻密に行われた敵PMC達(フィクサー)の戦略的配置、退路を断つように設けられた警戒線、こちらへと砲塔を向けている戦車群。これほど素早く私の存在を察知して戦力を向けてくる…明らかに私が来ることを知っていたとしか思えない。とりあえず、話を聞こう。潰すのは何時でもできる。

 

正面の武装した兵を押しのけながら、黒いスーツに青ネクタイの典型的なサラリーマンの格好をしたテレビ顔のオートマタが仰々しく一礼をする。

 

「そこの君。カイザー本社前でのとても良いショー、とくと見させてもらったよ。まるで重力が止まったかのように空を歩くその様は神秘的だったとも。あぁ、失礼。私はカイザーコーポレーションのスカウトマンだ。その君の才能をぜひ、弊社で活かしてほしい」

その男は大げさに両手を広げて、電子製の顔に貼り付けられた笑みを変えぬまま、さらに話を続ける。

 

「我々カイザーコーポレーションは今や、このキヴォトスを席巻する一大企業だ。我が社で作られた製品が、我が社の販売店で、我が社の客に売られる...ああなんと素晴らしい資本経済だ。普通の企業ではこんなことは出来まい。しかし、カイザーはそれを可能にする!不可能なんぞ無いのだ!」

 

「その末席とは言え、加わることができるのはとても名誉なことだ。それを断るなんて愚かなことはしないと信じてるが、仮にそうなった場合は我が社の管理する地区で無断でショーを行ったことに対して罰金を取らないといけなくなる。ざっと、1億程度だ。ここはそこらの価値が高いのでね。」

 

「それも断るなら、我が社は金を払わない違反者を捕まえないといけなくなるな」

 

胡麻をすりながら、ニタニタとこちらを嗤う。

 

「…断る。君らに与する利点は一切ない。お引取り願う」

 

刹那。私へすべての火器の銃口が向く。装填手によって砲弾を入れられた戦車は重々しく、それに追随する。

 

「罰金を払うつもりは?」

 

嘲笑を隠す気がない呆れた声で声を上げるスカウトマンはしづかに腕を上げた。

 

「無いな、あいにくと(アン)しか持ち合わせがない」

 

だがな、と付け加える。

 

「カイザーだったか」

 

今は多少曇った過去の記憶のどこを覗いても、この会社が翼のように特異点を保持したことが一切ないことがわかる。

 

「翼に満たぬ力で翼を折れる私に意志を強制できると思っているのは愚かでしかない」

 

私は理由あって、特異点が使え、A社から最重要戦力として数えられている。

 

「それはな、私が調律者(錠前サオリ)だからだ」

 

スカウトマンが腕を下げ、攻撃を指示する前にそれは起こった。

 

まるで生きているかのような黒い液体が列をなし、波をなし、見下ろすもの(調律者)へ危害を加えようとした救いようがない愚か者達(カイザーコーポレーション)へと襲いかかる。

 

「あぁ!!腕が、腕がぁ!!」

 

「カイザーがこれくらいで負ける訳がない!俺は認めんぞ!認めーー」

 

「隊長撤退命令を!駄目だ、隊長まで飲み込まれてやがる」

 

「溺れる、出してくれ、ここから早く!早く!」

 

「吹っ飛べよ、クソが!死にたくないよぉ…」

 

「ぁ…あ…」

 

「………」

 

恐慌状態へと陥ったPMC達を容赦なく、黒い波が飲み込んでいく。喧騒が静寂へ、生が死へ、傲慢が絶望へ切り替わる。

 

幸い、他の生徒は追い出されていたようで巻き込まれる心配がない。まぁ、仮に巻き込まれてもW社の特異点(現状復旧)でなんとかすればよいだろう。

 

先程まで大勢で賑わっていた交差点に私一人。

 

「コーヒーが飲みたくなるいつもの光景だな」

 

今度こそシャーレへ、先生の元に向かう。これほどやっておけば邪魔をする人は居ないのだから。

 

 

 




えっ、UA1500超えマジですか???
お気に入りも評価もめちゃくちゃいただきましたし、一瞬夢かと思いましたよ。
評価、誤字報告、感想ありがとうございます!!!
もともとは週1投稿にしようかなと思ってたんですけど、嬉しくなってきちゃったので次話を投稿しました!(書きためが消える…消える…)
それでは、また次話で会いましょう!!!!
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