銃声が街中に鳴り響く中、先生は新しく出会った四人に手伝ってもらいながら、なんとかシャーレへと辿り着いた。
幸いというべきか、シャーレの建物自体に目立った損傷はない。青空のもとで事務をすることにはならなそうだ。
「良かった…」
気づいたらこのキヴォトスに居て、先生をすることになったり、自分の勤務先が襲われたりと波乱の一日だったが、さすがに今日だけの話に終わるはずだ。
正面の扉から入り、玄関を素通りし、オフィスに入ったその時。
今まで感じたことがない違和感に襲われる。そこに居てはならない、在ってはならない。
その拒否感の示す方へ目を移せば、金色の鎖で縛られた仮面の生徒と違和感の正体がこちらをその何よりも黒い瞳でこちらを見ている。だが、目があった瞬間その拒否感は一瞬薄れた、どちらかと言うと空気が柔らかくなったのだ。
レッドウィンターを覆う雪原と勘違いするほどの白肌、金色の文字や刺繍が入ったような黒い外套、そして…明らかな非武装。この場所に来たばかりの自分ですら、非武装はおかしいとわかる状況下で彼女はさも当然にそれをやってのけている。
金色の鎖のようなものを地面から出しているみたいだから、自衛手段はあるのだろうが、それでも銃を持っていないのは変だ。
「『人生は出会いで決まる』こういう言葉があるのを知っているか。私はこれは真実であると信じている。あの至聖三者の名を冠する地にて、
「これこそ、良い出会いの典型例だろう。良い出会いもあれば、悪い出会いもある。アダムとイヴが蛇に会ったように、私がマダムに会ったように…そして、都市へと行ったように全ては等しい業のもとで動いているように、良きことの後に悪いことをぶつけてくるものだ。だが、私は10年の時を得て、再び良いことが起こったのだ」
「いささか、出会いが乱雑になった気もするが、これも私らしいと言えよう」
畳み掛けるように、長話を嬉々とした表情で…いや、硬い表情筋を必死に動かして自然な笑顔にしようとしてるみたいだが、サディスティックな笑みにしか見えないそれで、私に語りかけてくる。正直言って怖い。あの存在感と拒否感が頭の中を駆け回り、混乱しそうだ。
"ごめんね、誰かな"
そう聞くと、彼女は明らかに目を開いて、動揺している様をその揺れる瞳からかろうじて読み取る事ができる。
「そ、そうか…だが、せんせ…」
何を言い出そうとするも、彼女の口は固く閉じられてしまった。そして、ただ静かに。
「調律者と呼んでくれ」
悲しそうな表情でそう告げてくるのだ。
"わかった、調律者さん?"
「調律者で良い」
"調律者、その子は?"
縛られている狐面の方を見ると、苦しそうにもがいている。
「ああ、これか。七囚人の一人、つまり規則の違反者だ。殺したほうが良かったか?」
"殺しちゃ駄目だよ!?"
「こういう輩はたくさん殺してきたがな」
"……"
"調律者は生徒じゃない?"
「…そうだな、私は27歳だ。到底生徒とは言えない」
"子供を殺すことに躊躇が無い…"
「ああ、規則に反することを考えてしまった子供を殺したことはあるな。無論、戦闘に巻き込んでしまったことも」
"そう…調律者は悪い大人だね"
「それが私の仕事だ。違反者を罰することで頭の秩序を保つことがな」
「だが、これは必要なことで…」
"黙れ"
「ッ!?ど、どうした急に」
"そこの子を離して、ここらから出ていけ"
「私はただ先生と…」
"私は君の先生ではない。なりたくもない"
"子供の殺しを正当化するような人とは、特に"
前のような重い空気。彼女の暴力的な存在感が戻る。
「そうか、すまなかったな…」
金色の鎖がなかったように消え、倒れてくる生徒を抱えた。
振り返った頃にはもう、調律者は居ない。
あの拒否感は正解だった。
あのような大人はキヴォトスに存在してはならない。
投稿がうまく行かなくて予定の10時から遅刻しました!
許してください!!
それはおいといて、一週間って早いですね。
私はコミケで本を売ったり、他の設定書いたり、勉強したりで一瞬で過ぎました。
次話は一週間後には出したいですが、遅れるかもしれません。その際は気長にお待ちいただけると幸いです。