調律者サオリ   作:イワシコ農相

8 / 22
リンバスを本格的に始めたので初投稿です。


第五話『三者面談、本人は抜きで』

キヴォトスで一躍有名となっているシャーレの先生はアビドスで対策委員会を助け、黒服からホシノを守り通した。その活躍が評価されてか、連邦生徒会から送られる書類も今日は少ない。

 

だが、当の先生は気持ちが晴れるどころか…よりひどくなっていた。新たに現れたゲマトリアという明確な生徒を害する組織、その語り方から彼らが合理の徒であり、同時に無情な大人であることは誰に聞いてもそうだと答えるだろう。この鬱々とした気分もそのゲマトリアの一員である黒服の言葉によるものだ。

 

アビドス自治区のとあるオフィス

 

「クックッ、なるほど。これが調律者の語っていた先生ですか…確かに、私からしたら理解しがたい大人です」

 

"調律者!?"

 

「ええ、黒い沈黙事件は先生も知っているのではないですか?」

 

「まぁ、それを知らなくても先生は既に会っていますから調律者と面識があるでしょう。どうやら、かなり私の時みたいに強い対応を行ったと聞きましてね。そのことに関しては先生に感謝しないと思っていたところです。」

 

「先生、生徒だった彼女を大人にしてくれて感謝しますよ」

 

"冗談か…?黒服"

 

「私は嘘は付きますが、冗談は言いませんよ。先生と話してた時はまだ彼女の心は生徒だったが…その心はひどく消耗していて限界で、救いを与えられないと壊れるほど脆かった。そして、彼女がメシアとして見ていたのは貴方だった。」

 

「彼女は言っていましたよ」

 

『先生は生徒を救い、導き、そして自分を生徒として見てくれる』と。

 

「その時の記号はまだ完成されていなかった。だが、貴方が拒絶を示したことで『特異点』が完全に成立した。そして、その『特異点』は今ゲマトリアにある」

 

"調律者は悪い大人だ。生徒が簡単に殺人を肯定するわけがない"

 

「クックック、先生。言ったでしょう、記号は完成されていなかった。それに先生…貴方は彼女に説明する時間を与えたのですか?」

 

"していない…"

 

体から熱が奪われるように冷えていき、はっとする。自分は何か致命的な過ちを犯したのではないかと。

そんなはずはない、黒い沈黙事件を起こした調律者だ、生徒であるはずがない。

 

 

「子供は残虐なのですよ、先生。光があるように、闇もある。」

 

「先生、目を向けましょう。あなたの見ていない光当たらぬ黒い部分へ」

 

黒服はただそう言ってその場を去っていった。この時黒服は試合に負けたが、勝負に勝ったと言えよう。先生に、特大の爆弾を残したのだから。

 

シャーレに帰ってすぐにアロナの力を借りて、生徒データベースに調律者の身体特徴を記入して検索をかけた。検索結果は該当0件。

 

"はぁ…嘘か"

 

黒服は彼女が生徒であり、自分の助けを求めていたと言っていた。確かに、会った時は調律者は気分が高ぶっていたようだったが、生徒ならば…データベースに載っているはず。

 

「先生、調律者は学籍がない生徒かもしれませんよ?」

 

アロナがそう問いかけてくる。

 

"盲点だった…"

 

そう、まさしく盲点。キヴォトスにおいて学籍は極めて大事であり、生徒ならば無いとブラックマーケットなどの生活を余儀なくされるほどの必需品。学籍を持てなかった、または剥奪された生徒は大抵徒党を組んでヘルメット団になったり、カイザーなどの会社に所属して子供であるのをやめたりする者も居る。

 

問題は学籍を最初から持たなかった生徒だ、当然データベースに登録されず、いくら検索しても出てこない。

 

最悪の事態は調律者が生徒だった場合。自分は助けを求めていた生徒を悪い大人として拒絶し、ゲマトリアに入るほどに追い込んだことになる。

 

つまり、子供であるのをやめさせてしまった。人殺しは確かに良くないが、生徒なら"許される機会を与えられるべきだ"。だが、まだそうと決まったわけではない。調律者が最初から大人だったなら、やるべきことは一つ。生徒の安全のためにそれを排すること。

 

先生は調律者の写真を手に、思い悩み続けた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

どっちだ、どっちだと。だが、その答えを持つのは調律者のみ。

 

結局、気が晴れないままミレニアムへと先生は足を進めた。




お久しぶりです!!
受験が本格的に近づいてきていたので、小説更新が出来ませんでした。お許しください!!
さて、前言っていた調律者サオリの絵を見てくださいましたか?
個人的には脳内で思い浮かんでいた調律者サオリそのまま過ぎて、絵師さんから送られたときにはそりゃもう仰天しました。本当に…良すぎる
皆さんも自由に調律者サオリのイラスト書いて良いんですよ!!!(無茶振り)
最後に、不定期更新となりますがそれでも今後とも調律者サオリを楽しみにして頂けると幸いです。あっ、感想待ってるぜ!!(感想乞食)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。