【完結】双子座の魔女 ──機動戦士ガンダム 水星の魔女 外伝 作:鉄槻緋色/竜胆藍
「だいたい矛盾してねえか? オマエラが言ってただろう。「ただし、自分たちの身を守るためにだけ、エオルに乗る」と」
「してないよ?」
「むしろ今すぐ行かないと私たちの生存に関わる」
ブランドンの、戯れ抜きの眼光にも臆すこと無く、メルデもシィルもケロッと答えた。
「じゃあ俺が納得できる説明をしてみせろ」
「えぇ〜⁉︎ こないだボゾンジャンプの説明で泡吹いて卒倒してたクセにぃ〜⁉︎ 」
「「赤色」を「赤」以上に噛み砕いて説明はできないのよ?」
ブランドンの体勢が揺らいだが、ギリギリで踏みとどまった。
「……な、なら力ずくだ。大人として止めてやらなきゃならねえ時がある」
「わかった」
「またね」
飛びかかったブランドンに対して、拗ねた半眼で頬を白く輝かせたメルデとシィルの姿が消えてしまった。
「どおおお⁉︎ 」
そのまま虚空を掻き抱いた巨体が派手に転げた。
だがそこは現役傭兵。すぐさま起き上がって身構える。
だがそこに双子の姿はおろか、向こうのデッキからエオルまで失くなっていたのを見たブランドンの、開いた口が塞がらなくなった。
────────◆
「はあ⁉︎ なぁんであのGUND-ARMが生きてやがる⁉︎ 」
ハイルブロンが喫驚した。
あの白いGUND-ARMが、タワーを破壊した箇所から悠々とデータストームフィールドに侵入してきたのだ。
「弾道ミサイル十発以上ブチ込んだぞ⁉︎ ──いや」
映像をよく見ると、フェイスがフルバイザーでは無くツインアイだ。
あの傭兵のとこのモノとは別の、「最初に現れた方」の「白い悪魔」だ。
「やっぱり別個体かよ。おいサウファ! 地上のGUND-ARMを片付けろ!」
『──ッ、すんませ !──いま──交戦中!──あの《魔女狩り》 生きて──』
サウファの交信のノイズが激しい。
だが、上空のロゴリスト・オーラムの映像を見上げた、それの意味するところを理解したハイルブロンの、顎があんぐりと開いた。
タワーを一本破壊したくらいでは、バナト市街を包むデータストームフィールドは崩れはしない。
だが、失ったタワー周辺のフィールド部分だけが、ややへこんでいるように見えた。
『あの囲んでいるタワーだ! あれを狙え!』
《ドミニコス》のモビルスーツ部隊の小隊長が叫び、全隊がビームの狙いをタワーにも向け始めた。
だがそこに、各方面に展開したロゴリスト・アージェ六機からのデータストームビームがばら撒かれ、再び前線に迫ってきた《ドミニコス》のモビルスーツが次々と墜落していく。
タワーには傷ひとつ付いていない。
砲撃を停止したロゴリスト・アージェたちが、それぞれタワー一基につき一機、そばに着いて滞空した。
再び、ロゴリスト・アージェたちがそれぞれの方角にデータストームビームを放ち始める。
『回避! 回避ー!』
『ぎゃあああ⁉︎ 』
赤い稲妻は、機体の端に掠っただけでもパイロットにまで遡ってデータストームを転嫁する。
そして高所からの無抵抗な墜落は、それだけでパイロットを死傷させる。
《ドミニコス》は兵に突撃をやめさせ、残りの部隊を敵の攻撃が届かない場所まで退げざるを得なかった。
──なお、この戦争の模様は《ヨトゥンヘイム》と同じく、バナトの外周を取り囲むように展開配置されたドローンカメラによって全世界向けに配信されていた。
もちろん、《バノヴィナ》の新兵器プラットフォームGUND-RESS・ロゴリストのデモンストレーションのためだ。
(それなのになんであの《魔女狩り》野郎が生きていて、あのGUND-ARMはデータストームを無視してこっち来てるんだ⁉︎ )
まったく意味が分からない。
とりあえず、都合の悪いカットのカメラは遮断した。
デモンストレーションについては、《ドミニコス》の部隊を二度も圧勝のうえ撤退に追い込んでいるからまあ予定通りだ。
だがいま上空でサウファのロゴリストと互角に戦っているベギルベウは想定外だ。
ベギルベウは、ロゴリストにピッタリ追従して密着し、至近距離戦闘を続けている。
サウファもたびたびフェーズドアレイキャノンを撃つが、その都度ベイオネットで腕ごと射線を弾かれて逸らされる。
あるいは、ベギルベウがノンキネティックポッドを操ってアンチドートを放ち、データストームビームと相殺してもろとも消し去ってしまう。
ロゴリストには構造上、ほかに火器を持つ事ができない欠点がある。データストームがその機構を阻害してしまうからだ。
(……サウファの腕を信じるしかねえ)
『考え事だなんて、余裕だね?』
そこに、少女の声が割り込んできた。
ここはセントラルタワーの地下深くにあるコントロールルーム。
ルームと言っても観光遺跡の闘技場ほどの広さ、高さがある空間だ。
ハイルブロンは、その中央に自走式のマスターシートに座って指揮を執っていたのだが。
その天井をブチ破って、大量の瓦礫と共に白いGUND-ARMが降下、着地してきた。
鞭のようにしなるアンカーブレードとフレキシブルダガーを、ひと振りして収納する。
「……何の用だ。対戦賭博なら地上が舞台だぞ」
『挨拶に、来たんだよ』
ハイルブロンの恫喝にも物怖じせず、少女の声で白いGUND-ARMが床に片手をついた。
──はッッ⁉︎
たったいま覚醒したような心地で、ハイルブロンは目をしばたたかせた。
脈絡は分からないが、学生時代に所属していたGUND医療研究所の通路にハイルブロンは立っていた。
気配を感じて振り返ると、そこには双子の少女がいた。
──とは言っても、二卵性と聞いている。
ハニーブロンドと黒髪の姉妹。見覚えがある。知っている。
「……クルティ。ヘレネ」
「やっほ! ムーたん!」
「どうも。ムルトさん」
クルティは相変わらず快活に、ヘレネは相変わらず覇気に欠ける声で、自分の名前を呼んだ。
だが、最後に見たのは七年前だ。
なのにその容姿は当時のままで。
「……なんで……?」
なぜ、ここに? なぜ、この場所に?
溢れる疑問は止めどなく。
だが姉妹は構わずとことこと近寄ってきた。
「うーん昔からトバしてたけど相変わらずハードだねえ!」
無遠慮に近寄ってきたクルティは、ハイルブロンの耳の鈴生りのピアスを撫でたあと、背後に回って半透明皮膚の背中を指先でなぞった。
「うお、ほとんどGUNDじゃん!」
「っ、やめろバカおまえ⁉︎ 」
「ウヒョー! ヘレネに触られた方が良かったよねー」
ハイルブロンが振り払った腕を軽く躱してクルティはケラケラ笑った。
だが、ハイルブロンはそれどころではない。
「……オマエラ死んだのかと思ってたよ。ヴァナディース事変で」
俯いたハイルブロンの前後で、クルティとヘレネが挟んで見合う。
「うんまあ死んだよ! 事変の一年くらい前だけど」
「は?」
あっけらかんと宣うクルティを振り返る。
「ああでもヘレネは生きてるよ!」
「なんっ⁉︎ 」
今度は一周してヘレネを振り向いた。
「じゃ、じゃあ、いま、どこにいるんd」
「〜〜〜〜ッッ!」
おずおずと尋ねようとした途端、背後から高音のげっぷのような奇声が響いてハイルブロンは盛大につんのめった。
「空気読めよテメエはよお⁉︎ 」
「たはーゴメンゴメンこっちの仕事だから気にしないで」
後ろ頭を掻いて悪びれるクルティに怒鳴りつける。
もう台無しだ。
改めてヘレネに尋ねた。
「……また、会えんのか?」
「……迷惑かけちゃうかも」
「それでもっ⁉︎ 〜〜ッッ⁉︎ 」
言いかけて、天井を仰ぎ拳を握り締めて煩悶する。
……自分の業は弁えている。
(所詮は血塗られた道か……)
「……まあ、元気でやってんならいいよ」
俯いて、投げやり気味に、嘆息した。
「ムルトさん……」
「俺も、ヴァナディースに行っときゃ良かったのかなー」
「いやムーたん受験して落ちたんじゃんナニ「選ばなかった」みたいなツラしてんの」
「お ま え は よおおお!」
後ろから混ぜっ返すクルティに、五指を蠢かせて犬歯を剥いて迫る。
ところがクルティはそれをヒラリと躱すと、ヘレネの隣に並び立った。
「っははっ! じゃあまたね! ついでにちょっとこの辺貰ってくから!」
「っておい何のハナシだ!」
──振り返ると、白いGUND-ARMが破壊した穴から跳び立っていったところだった。
ややあって、《ドミニコス》と《バノヴィナ》の間で密かに停戦協定が結ばれた。
突如、バナト市街に敷設された全てのシェルユニットが赤から青、そして白虹へと輝きを変じ、データストームフィールドを消し去ってしまったのだ。
それきりシェルユニットは灯りを落として沈黙してしまった。
データストームフィールドを失っても、依然バナトにはGUND-RESSロゴリスト七機が残存しており、《ドミニコス》にしても攻めあぐねている状況である事に何ら変わりはない。
遠距離ミサイルという手段もあるにはあるが、大義名分のうちのひとつである「ケナンジの健在」が知られた以上、強引にバナト市街を破壊しても、周辺組織への体面が保てない。
「どぉ言うことですか艦長!」
『貴様がオープンチャンネルで啖呵を切らなければ、押し込む目はあったんだがな』
バナト側にも都合が悪かった。フェーズドアレイキャノンにはもう一つ、「標的を外すと、データストームが逆流する」という欠陥があった。ケナンジには黙っていたが。
「実質的大口径」である事が、その欠陥を補ってはいた。中距離であれば、絶対に外さない。
市街を包むデータストームフィールドの傍であれば、流れ弾も逆流もフィールドが吸収してくれるため乱射できたが、そのフィールドを停止されては、安易には撃つことはできない。遠距離狙撃など以ての外だ。
かくてケナンジは上官の命令に渋々従い、サウファは欠陥の懸念と長距離ミサイル警戒で身動きが取れなくなり、互いに不完全燃焼で燻ることとなった。
────────◆
──かくして、GUND-ARM・ルブリスエオルは、必要な最後のピースを手に入れた。
────────◆
──シィルが右腕を撃たれる寸前。
まず邪魔な町長のモビルスーツを格納庫ごとビームハンドガンで木っ端微塵にした。
ついでに、この街を襲撃した連中のモビルスーツを全てバラバラに斬り刻んで打ち捨てた。
──MS野戦ゲリラに所属していたメルデとシィルが、複座式の改造モビルスーツで、通りかかりの《フォスフォロス》にちょっかいをかけている頃。
そのMSゲリラの他のモビルスーツを全て破壊した。
──メルデとシィルが、エオルの適合テストを始めた時。
偶然にもパーメットリンクとの深層感応に成功した、この時がすべての始まりだった──
当時のエオルのAIとコクピットに高次元からリンクして、自分たちと意識を同期させた。
──《フォスフォロス》が、バナトに程近い拠点に移動した頃。
《ヨトゥンヘイム》に乱入し、ムルト……ハイルブロンの気を引いて、《フォスフォロス》がエオルを出撃させるよう促した。
──《フォスフォロス》が《ヨトゥンヘイム》のオファーを断った時。
高次元から干渉してメールを改竄し、通信を欺瞞して偽の返信を送りつけた。
そしてGUND-ARM討伐のために降りてきたベギルベウを、エオルの元へ誘導した。
──《ドミニコス》がバナトにある企業に強制執行を行なった時。
哨戒していたモビルスーツ小隊のひとつを、《フォスフォロス》の隠し拠点の方角に誘導した。
──メルデとシィルが潜伏している間。
まめにエオルの状態をチェックして、部品全ての消耗・摩耗を九割程度に復元を繰り返した。
──GUND-RESS・ロゴリストとの対決において。
データストームビームの弱点に干渉して逆流させると、予定通りロゴリストに使用されている大量のシェルユニットに強制接続して制御下に置き、簡易的な《クワイエット・ゼロ》現象を形成すると、
すべては、自分たちで自分たちの深層領域のパーメットスコアを高めるための行動だった。
そして現在。
ハイルブロンが掻き集めた膨大な量のシェルユニットの制御権を、クルティの協力のもと、強奪して再び《クワイエット・ゼロ》現象を展開したメルデとシィルは、エオルと共にパーメットリンクによる高次元空間にいた。
「どうしようか。シィル」
「どうしよう。メルデ」
今まででいちばん長く過ごした寝室の記憶をモデリングした部屋で、虚空から可愛い動物のぬいぐるみを生成してはベッドに積み上げてゆく。
──なお、《クワイエット・ゼロ》なる概念は、十六年後のパーメットリンクの記録から取得した。いったい何にどう使うつもりだったのかは良く分からないが。
「「万能のチカラ」ってさ、いざ手に入ってみると、なんか途端に「やりたい事」が浮かばなくなるって言うか」
「こういう感覚のこと、「積みプラ」とも言うらしいよ? どういう意味かは分からないけど」
メルデが虚空にホワイトベアーのぬいぐるみを生成したところで、そこにシィルがゼブラのぬいぐるみを投げつけて打ち落とした。
「ナイスヒット」
「なんだよー」
たちまちぬいぐるみ投げ合い合戦が始まった。
やがてふたりとも疲れ果てて、ベッドに寝転がった。
「……平和な暮らしって、なんだろう」
「《フォスフォロス》に加わってからは、平和だったと思う」
なにしろ、危険を実質"神の視点"で先回りに排除できたのだ。
これを「チート」と言わずして何と言おう。
──シィルの腕の切断を無かった事にしよう、などとは、ふたりとも発想だにしない。なぜなら、それはふたりの人生と、この計画の前提の消滅と同義であるから。
「とりあえず、思いついたトコ、片っ端から行ってみよう! やってみよう!」
「やるだけやってもアレだったら、もう隊長の所に帰ろう!」
そう決めて、ふたりは立ち上がった。
────────◆
──ねえ、あの時の約束、覚えてる?
──約束って言うか、おまじないみたいなモンでしょ。わたし達の為ならいつでも撃てるし、躊躇わないよ。
──そうね。それくらい染み付いてる。
──わたし達の間じゃあもう当たり前な事じゃん!
──そうだね。私もそう。当たり前な事だよ。
──守るよ。シィル。
──守るわ。メルデ。
────────◆
謎の通信を受け取ったサウファは、情報に添付されていたマップの場所に独りでやって来た。
バナトの外れの広大な倉庫街。その最奥の格納庫の入り口に立つ。
指定されたナンバーを打ち込むと、本当に呆気なく通用口ドアが開いた。
「……」
それでも拳銃を構えて、念入りに警戒し、クリアリングを繰り返してドアを潜り抜けると、そこには天窓から差す月明かりに照らされた、白いGUND-ARMが降着姿勢で鎮座していた。
コクピットハッチまで展開されていた。
「……」
サウファは注意深くGUND-ARMの足元に接近して、周囲のキャットウォークを伺う。
ひとの気配は無し。
続いて、届く限りモビルスーツを這い回って、装甲の隙間や裾の裏側などに、発信器や爆発物などが無いか、入念にチェックした。
──バックパックの剣型武器が、上下ともに外されていたが、気にしなかった。どうせあんなものを装着していては、この格納庫には収まるまい。
そしてコクピットを覗き込んで確認し、パイロットシートに腰掛けた。
(……本当に、GUND-ARMを明け渡しやがった……⁉︎ )
謎の通信曰く。
「「謎の白い悪魔」を譲渡する。ただし、起動後、必ず十分以内に何かを銃撃すること。さもなくば、機能を停止する」。
「当機はGUNDフォーマット搭載機である。留意されたし」。
(いいだろう! 決着をつけてやる! 「魔女狩り」野郎め!)
サウファは躊躇うこと無くコクピットハッチを閉塞し、システムを起動させた。
「パーメットスコア、ツー!」
コールを詳述した途端、たちまち全身を激痛が走り抜けた。
「ぐううっ⁉︎ 」
(だが、これくらいなら行ける!)
サウファは恐るべき意志力でGUND-ARMを立ち上がらせると、格納庫の天井を破壊して飛び上がった。
凄まじいスラスターの推力で飛翔すると、バナトのセントラルタワーの上層部の手前までやって来た。
「っはー!っはー!っはー!」
(すべては、ボスのためにッ!)
ビームトーチを除けば、このGUND-ARM唯一の銃器であるビームハンドガンを引き抜くと、タワーの先端にあるゲイン塔を撃ち抜いた。
そして鋭く身を翻して市街の外へ、荒野の彼方へ飛び去っていった。
翌朝。
バナトより西方の、とある湖のほとりで。
森と大地の焦げる臭いとともに。
袈裟懸けに真っ二つにされたGUND-ARMが発見された。
「……なんだよ……サウファまで……」
窓から差す朝焼けを浴びながら。
ハイルブロンは大きく肩を落として嘆息した。
少しだけ、泣いた。
涙はもう片目からしか流れないけれど。
「……うそ、だろ……」
拠点のオフィスで、ブランドンが愕然としていた。
ネットワークニュースには、「《ドミニコス》、バナトにてGUND-ARM一体を破壊」の報が記されていた。
ゆっくりと、背後のヘレネを振り返る。
あとメルデとシィルを。
「どういう事だ?」
「エオルのダミーを創って、あげちゃった」
「GUND-ARMに関連する部品を丸ごとあっちに移し替えたから。こっちのエオルはもう「ただの優秀なモビルスーツ」だよ」
オフィスの窓の向こう、デッキに立つ「エオルだったもの」には、確かにシェルユニットが無くなっていた。
シェルユニットがあった部位には、通常の装甲があてがわれている。
あの時の、格納庫のひと悶着で消え去ってから、まる一日経過して戻ってきた時には、こうなっていたのだ。
「だからアレは、もう「GUND-ARM・ルブリスエオル」じゃなくて、ただの「エオル」ね!」
「でも十六年先のテクノロジーをふんだんに詰め込んだから、これまでと変わりない活躍をご提供できると思うの!」
「これでもう、GUND-ARMだからって追われることは無くなったから、わたしたちも安全だし、《フォスフォロス》の心配事も無し!」
「言った通りわたしたち、自分たちの身を守ったよ!」
何やらスッキリしたかのような朗らかな笑顔で訳の分からない事を宣う双子を、ブランドンは気味の悪いものでも見るかのように、やや身を引いた。
「ヘレネ博士は、なんかいろいろ大丈夫か……?」
「ええ。ご心配なく」
ヘレネもヘレネで、最近なんだか以前のような陰鬱さが綺麗サッパリ無くなってしまっていた。
「エオルをざっとチェックしましたけど、もう私が触れる部分が無くなってるので、今後はGUND医療技師、兼、ただの医者として《フォスフォロス》に貢献して参りますわ」
「いや別にGUND-ARMが無くなったからって、この集まりが今さら解消するワケでもねえしよ」
がりがりと金髪を掻いて言う。
「お前らも、平和に暮らしたいんだろ? 今後は無理に戦闘に出なくていいから、学校でも行ってみねえか?」
ブランドンとしても、以前から考えていた事だ。
貧困と紛争の中で生きてきたとは言え、今の《フォスフォロス》のメンバーと体制なら、子供二人の就学くらいは面倒見れるはずだ。
「うーん考えとくー」
「うーん考えとくー」
「うーん考えてねえ顔ー」
メルデとシィルの横目の返答に、ブランドンは苦笑いで返した。
「まあいい。もう色々ツッコむのも疲れたから、今日はオフにして休もうや」
「わかりました」
ヘレネが立ち上がってオフィスのドアから出て行った。
「わーいオフだー」
「わーい特にやる事ないー」
双子が、どこか平淡な言い方をしてドアに歩いていく。
確かにここは娯楽が乏しい。
特にここしばらくは忙しかったし精神的に余裕も無かった。
いずれは、何処か商業が発展した街でも探して、全員で休暇に繰り出そうか。
──などと、先行きを考え。
まあ、それはともかく。
ブランドンは、双子が再び帰還してからずっと気になっていた事があった。
だからそこで呼び止めた。
「なあ、メルデ」
「「なに?」」
ふたりが全く同時に振り向いて返事をした。
第12話 誰ガ為ノ願ウ心
双子座の魔女 ──完──
水星の魔女の二次創作外伝「双子座の魔女」の物語は、以上になります。
本作のコンセプトは「原作オマージュ」と「本編で語られていない設定の考察・補完」です。
あくまでも二次創作作家が勝手に考えた補完設定です。ご注意ください。
↓なお、「エオル」最終形態↓
https://gumpla.jp/hg/1629546
その外観
【挿絵表示】
【挿絵表示】
ご覧くださりありがとうございました。
よろしければ、ご感想を聞かせてください。
本作は読みやすいでしょうか?
-
面白い
-
文章は読みやすい
-
内容は分かる
-
難しい
-
文章が読みにくい
-
内容が分からない