伝説の英雄   作:奥歯

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船長

大きな白い雲が遠くで青空を泳いでいる。空気がとても綺麗だった。リクは大きく息を吸い込み、そして大きく吐いた。遠くではカモメが鳴いていて、それも耳が心地いい。以前リクも別の船に乗っていた時期があり、その時から海が好きで海賊にも憧れていた。

 

「今日もいい天気だね」

 

「そうだね」

 

「そうだな」

 

そんな他愛もない会話をしている3人はとある関係があった。それはこの三人は姉弟であるということだ。この中で一番年上なのはウタ。その次にリク。そして最後にルフィといったとこである。実はもう一人兄弟がいるのだが、先に海に出ており海賊をやっているらしい。というのは置いておいて、3人は今とても重大な危機に直面していた。

 

「こんなに気持ちいい日なのになぁ、ひとまずこの船旅は遭難ってことになるな!」

 

「「だね」」

 

3人の目の前には巨大な渦があった。このままでは3人は確実に飲み込まれ、海の藻屑になってしまうであろう。しかし3人は焦りもせず、妙に落ち着いていた。

 

「私とルフィは泳げないから....リクなんとか私たち掴んで泳げる?」

 

「無理」

 

「そっかぁ....」

 

二人を掴んで泳ぐというのは流石のリクでも無理難題。ウタの提案にリクはキッパリ無理と言った。こうしてルフィとウタとリクの3人は巨大な渦の中に飲み込まれたのであった。

 

●●●

 

とある島、そこでは一隻の船が止まっていた。その船には何か旗があり、その旗には横向きの髑髏マークがあり、その髑髏にはハートのマークがあった。

 

「なに?酒樽が海岸に流れてきただと?雑用コビー」

 

「は、はい、まだ中身も入っているようなのでどうしたらいいでしょうか....」

 

酒樽を運んできたのはピンク髪の小柄なメガネをかけたコビーという名の少年。コビーは海賊の船員たちに運んできた酒樽をどうしたらいいかと尋ねていた。

 

「そりゃいい!俺たちで飲んじまおう!」

 

「しかし兄弟!もしお頭にバレたら俺達ァ....」

 

「なぁに!バレやしねぇよ!このことを知ってんのは酒蔵掃除の俺らとへっぽこコビーの四人だけだ」

 

「それもそうだな」

 

船員たちはお頭と呼ばれる者にバレないよう酒樽を楽しもうと考えていた。その様子を遠くの雑木林からリクは見つめていた。

 

「これは、まずいことになっちゃった」

 

リクたちはあの時、巨大な渦に飲み込まれる直前。リクは船にあった樽にルフィとウタを無理やり突っ込んでこの島に流れ着いたのだが、その樽を酒樽と勘違いしたコビーが持っていってしまって今この状況になっている。リクはこの状況をどうすればいいか考えていた。

 

「わかってんなコビー....」

 

「は、はい勿論!ぼ、僕は何も見ていません!えへへへ....。だ、だから殴らないでく....」

 

船員に脅されて告げ口はしないと誓おうとした途端、突然樽からルフィとウタが飛び出した。

 

「あーー!!よく寝たーー!!」

 

「ちょ、ちょっとルフィ離れてよ!」

 

「ぬあ!なんだ!?」

 

突然飛び出してきたルフィとウタに船員たちは驚く。ルフィとウタは狭い樽の中で中々出られず、ウタはどうにかして出ようと模索するが一向に出られない。しかもどこかウタの顔が赤くなっていた。

 

「なんとか助かったみたいだなぁ!目ぇ回って死ぬかと思ったよ!はっはっはっはっは!」

 

「私も、ちょっと酔っちゃった....」

 

この状況に船員たちは理解が追いついていなかった。お頭に黙って酒樽を楽しもうとしていたのに、その樽から二人の謎の男女が飛び出してきた。驚くのも無理はない。

 

「「ん?」」

 

やっと状況を見たルフィとウタは少し呆然する。お互い黙ったままじっと見つめていた。

 

「誰だお前ら?」

 

「誰?」

 

「「「テメェらが誰だ!!」」」

 

やっと状況を飲み込んだルフィの第一声は気の抜けた問いだった。その問いに船員たちは同時にツッコむ。

 

「一体どうゆう状況で樽から人が出てくるんだ!?」

 

1人の船員がルフィとウタを見ながら真っ当な疑問を持つ。すると突然、遠くの方から金棒が飛んできて、酒蔵を破壊した。それと同時にルフィとウタも雑木林の中に消えていく。リクはその様子を見て飛んでいったルフィとウタを探しに行った。

 

「あー!もー!」

 

●●●

 

雑木林の中でルフィとウタはさっきの衝撃で樽から抜け出すことができ、一息ついていた。

 

「あーやっと出られた。っていうかルフィ!ちょっと私のお尻触ったでしょ!」

 

「あ?触ってねぇよ」

 

「嘘!絶対触った!」

 

「触ってねぇよ!」

 

「触ったったら触った!」

 

「触ってねぇ!」 

 

「絶対...!」

 

「あの〜」

 

触ったか触っていないか言い合いをしているルフィとウタに隣から話しかけられてきたので二人は振り向く。そこにいたのは海賊の雑用係のコビーであった。

 

「あの、大丈夫ですか?怪我は?随分吹き飛ばされちゃいましたけど」

 

「はははは!ああ大丈夫なんかびっくりだけどな。俺はルフィ、ここはどこだ?」

 

コビーはさっきの衝撃で平気そうな2人を見て安心と同時に少し引くが、とりあえずルフィの問いには答えることにした。

 

「この海岸は海賊"金棒のアルビダ"様な休息地です。僕はその海賊船の雑用係コビーと言います」

 

「ふーんそうか。実はどうでもいいんだけどなそんなこと」

 

「はあ....」

 

ルフィたちが流れ着いたこの島は金棒のアルビダという海賊の休息地らしい。このよくわからない麦わら帽子の男にコビーは恐怖心は感じなかったが、怪しい奴には変わらないので警戒はしていた。すると隣からウタがコビーに話しかけてくる。

 

「ねぇ、私ウタって言うんだけど。小舟とかない?渦巻きに飲まれちゃって」

 

「う、渦巻!?渦巻にあったんですか!?」

 

「あーあれはびっくりしたよまじで」

 

「うんうん」

 

「普通死ぬんですけどね....。こ、小舟ならないこともないですが...」

 

「ほんと!?」

 

「はい、あっちにあります」

 

●●●

 

ルフィとウタが嬉々としてコビーについていくと小舟らしきものが見えてきた。そしてその小舟の前に立つとルフィとウタはなんとも言えない顔になった。その小舟はガラクタで寄せ集めたような、今にも崩れてしまいそうなふ小舟だった。

 

「なんだこりゃ?棺桶か?」

 

「一応、船です。僕が作った船です...!2年かかってコツコツと...」

 

「2年もかかったの?いらないの?」

 

「はい、いりません。この船はここから逃げ出したくて造ったんですが、結局僕にそんな勇気ないし、どうせ一生雑用の運命なんです。一応、本当はやりたい事もあるんですけど...」

 

「じゃ逃げればいいじゃねえか、これで」

 

「む、無理ですよ無理無理!もしアルビダ様に見つかったらって考えると足がすくんで...!怖くてとても...!」

 

ここでコビーの話になるが、コビーは2年ほど前、釣りに行こうとした時、間違ってアルビダの海賊船に乗り込んでしまい、以来2年間、殺されない代わりに航海士兼雑用係として働かされていた。

 

「お前ドシでバカだなー。その上根性なさそうだしなー。俺お前嫌いだなー」

 

「私も!」

 

「え、えへえへえへえへへへ....」

 

ルフィとウタにかなりバッサリと言われたコビーは涙を流しながら愛想笑いをしていた。

 

「でも、その通りです...。僕にも、樽で海を漂流するくらいの度胸があれば.......あの、ルフィさんとウタさんはそこまでして海に出て何をするんですか?」

 

突然のコビーの問いにルフィは迷うことなく笑顔で答えた。

 

「俺はさ、海賊王になるんだ!」

 

「え!か、か、海賊王ってゆうのはこの世の全てを手に入れた者の称号ですよ!?つまり富と名声と力の"ひとつなぎの大秘宝"...あの『ワンピース』を目指すってことですよ!?」

 

「それぐらい知ってるよ。だから私たちはそこを目指してるの。私には別の夢があるんだけどね」

 

「死にますよ!?世界中の海賊がその宝を狙ってるんです!」

 

「俺も狙う」

 

「それに!あの"悪魔の種族"だっているんですよ!?」

 

「悪魔の種族?なんだそりゃ?」

 

「し、知らないんですか?」

 

「うん、なにそれ?」

 

突然出てきた悪魔の種族という言葉。その言葉にルフィとウタはよくわからず。コビーに説明を求めた。

 

「悪魔の種族っていうのは別名で、本当は"グロンギ族"って言うんですけど、その種族はとても凶暴で、ゲーム感覚で人の命を奪うとても危険な奴らなんです!!一般常識ですよ!?」

 

「知らん!そんなやつ俺がぶっ飛ばす!」

 

「無理ですよ!無理無理!あいつらは不死身なんです!絶対に倒せませんよ!無理無理無理!無理に決まってますよ!海賊王だなんてこの大海賊時代の頂点に立つなんて!できるわけないですよ無理無理っ!」

 

無理だと言い続けるコビーにウタは腹が立ち、コビーの頭を殴った。

 

「痛い!ど、どうして殴るんですか!?」

 

「なんとなく!!」

 

すると茂みの方から誰かが来る気配がした。ルフィたちはその方向に振り向く。コビーはビビり散らかし後ずさる。

 

「だだだ誰か来るうううう!!!」

 

ルフィとウタは警戒する。そしてその茂みの中から現れたのはリクだった。

 

「あ!やっと見つけた!探したよ二人とも」

 

「なんだリクかよ〜」

 

「ちょっと驚かさないでよね!」

 

「ごめんごめん。ところでここで何してんの?」

 

「ああちょっと代わりの小舟探しててよ。今ちょうどあそこにあるんだ」

 

ルフィの指差す方向に目をやると、そこにはボロボロの小舟があった。

 

「随分ボロボロだけど、これで大丈夫なの?」

 

「わかんない」

 

「ええ....」

 

流石にあの小舟では海を渡るのは無理だろうとリクは思う。そんな中でコビーは危険そうな人間ではないことを確認するとリクに近づいてきた。

 

「あ、あの....あなたは...」

 

「ん?ああ!自己紹介が遅れたね!俺の名前はリク!俺はこの二人と一緒に海賊をやってるんだ!」

 

「あなたも海賊なんですか」

 

「うん!」

 

それを聞いてコビーは座り込み俯く。

 

「すごいですねみなさん。僕なんかそんな度胸ないし....死ぬかもしれないのに、どうしてそんなにも海賊に?」

 

コビーの問いに3人は首を傾げる。そしてその問いに答えたのはルフィだった。

 

「俺は死んでもいいんだ!」

 

「え?」

 

「俺がなるって決めたんだからそのために戦って死ぬんなら別にいい」

 

その言葉にコビーは驚く。そんな覚悟で海賊をやると決めたルフィにコビーは羨ましく思った。

 

「僕にも.....やれるでしょうか....死ぬ気なら...」

 

「ん?何が?」

 

「僕でも、海軍に入れるでしょうか!!」

 

「海軍?」

 

「皆さんとは敵ですけど!海岸に入って!偉くなって!悪い奴らを取り締まるのが僕の夢なんです!小さい頃からの!!やれるでしょうか!?」

 

コビーは精一杯の声で涙目になりながら自身の夢を語る。その姿を見てリクとウタは笑顔をなった。

 

「知らねぇよそんなの」

 

「いえ!やりますよ!どうせこのまま雑用で一生を終えるくらいなら!海軍に入るため命をかけてここから逃げ出すんです!そしてアルビダ様....アルビダだって捕まえてやるんです!!!」

 

自分の意思で自分の声で言い切ったコビーはなんとなく心が軽くなった気がした。その直後。何者かがコビーが造った小舟を破壊する。

 

「誰を捕まえるって!?コビー!」

 

「うわあ!!」

 

「このあたしから逃げられると思ってんのかい!?」

 

この金棒を持ったずんぐりむっくりの女こそ金棒のアルビダである。そのアルビダの後ろから沢山の船員たちが現れる。ルフィたちはアルビダを見るなら口々に言い始めた。

 

「誰だこのイカついおばさん?」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「ねぇリク。あの人男じゃない?」

 

「いやウタ。人を見た目で判断しちゃだめだよ。確かにイカついけど、いくらなんでも男呼ばわりは失礼でしょ」

 

完全に失礼な発言をしまくる3人にアルビダは怒りの頂点に達していた。その様子を後ろにいた船員たちも冷や汗をかいている。

 

「こいつら....!なんて事.....!」

 

「ルフィさん訂正してください!この方は海で一番....一番....」

 

ルフィにつかみかかり訂正させようとしたが、思いとどまる。ルフィがあの時言ったなると決めたならそれで戦って死ぬんならそれでいいという言葉をコビーは思い出す。そしてコビーから出た言葉は。

 

「一番イカつい!!クソババアです!!!」

 

涙目になりながらも自分の意思で抵抗した。そんなコビーにルフィは大笑いをする。

 

「このガキャーーー!!」

 

「ああああああああ!!!」

 

アルビダの金棒がコビーに迫り来る。コビーは大声をあげて泣き叫ぶが、悔いはなかった。自分の意思で戦った事に悔いはなかった。その意思を汲み取ったルフィはコビーの前に出る。

 

「よく言った!流石だなコビー!」

 

「ル、ルフィさん!」

 

「同じことさ!四人とも...生かしちゃおけないよ!」

 

そう言ってアルビダはルフィの頭に金棒を振り下ろす。ルフィはその金棒をモロにくらうが、なんともない様子だった。

 

「効かないねぇっ!ゴムだから」

 

「バ、そんなバカな!?あたしの金棒が....!?」

 

「「「嘘だろーー!?」」」

 

ルフィは姿勢を低くし腕を伸ばす。

 

「ゴムゴムの....」

 

そして思いっきりアルビタの顔面にパンチをくらわした。

 

(ピストル)!」

 

顔面を殴られたアルビダは吹き飛ばされ、地面に激突した後そのまま気絶してしまった。

 

「手が....!手が伸びたぞ!!」

 

「お頭!アルビダ様が負けた!化け物だ!」

 

船員たちがアルビダが負けてしまったことに驚いてるなか、ルフィは指を指してその船員たちに言った。

 

「コビーに一隻小舟をやれ!こいつは海軍に入るんだ!黙っていかせろ!」

 

「は、はい....」

 

ルフィの命令に船員たちは怖気ついて言われるがままに小舟を一隻ルフィたちに渡したのであった。コビーも涙を流している。その涙は恐怖からのものではない。嬉しさから出てくる涙だった。

 

「今回俺たちの出番はなしみたいだね」

 

「まぁ、あれくらいならルフィ一人でも十分でしょ」

 

「それもそっか」

 

「よっしゃ!野郎どもいくぞ!」

 

「「おー!」」

 

ルフィたちは船員たちが用意した小舟に乗り込み海に出たのであった。

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