パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

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前回夏油の一人称を間違えてたそうで…マジすまねェ


10.月日は巡るし金は無くなるし恵は可愛いし

 

 夏油が二人を連れて帰った次の日。

 家入の処置を受けた美々子(ミミ)菜々子(ナナ)を連れた夏油は、近くの公園に遊びに来ていた。

 といっても、目的は遊ぶことではないのだが。

 

「──それで、二人は私の親戚として高専で預かることになったわけです」

「へー。てっきりロリコンに目覚めたもんだと」

「もう、悟達にイジられ過ぎて慣れましたよ」

「…なんかスマン」

 

 死んだ目をした夏油に罪悪感を感じ、甚爾は素直に頭を下げる。

 

 公園のベンチで座る夏油と甚爾。視線の先には津美紀と戯れる二人の姿。最初は互いに警戒し合っていたのだが、今では普通におままごとをして遊んでいる。

 尚、恵に関しては女子三人にあまり絡みたくないのか、ジャングルジムのテッペンで携帯ゲームを遊んでいる。

 

「しかし…お前のチョイスはなんというか、幼稚だな」

「幼稚、ですか?」

「公園で集合ってお前、四分の三は女だぞ?家でおままごとしてた方がいくらか遊び甲斐あるだろ」

「そうは言っても、私は女児物の玩具は持っていませんし…」

 

 チラリと甚爾の方を見る。

 それに対して甚爾は何期待してんだと言いたげな目線で睨み返す。

 

「自分で買えよ」

「……伏黒さんは持っていないんですか?」

「俺の家にはある。言っとくが渡すつもりはねぇからな?」

「そもそも伏黒さんの家知りませんよ」

「教える気ねぇからな」

「…じゃあなんで持ってるって教えてくれたんですか?」

「そっちの二人が遊びに来るかもしれねぇだろ?」

「なら今家の場所を教えてくれても──」

「自分で買え」

 

 ムスッとした顔で甚爾を睨む。

 あくまでミミとナナが津美紀の友達として家に来るのはいいが、夏油は否が応でも駄目らしい。

 

「私が恵くんの友達として行くのであれば──」

「自分で買え」

「……ハァ、分かりました。ですが、買うにしても伏黒さんの意見も聞きたいのですが…」

「俺も?めんどくせぇな。ンなもん二人の我儘通りに買えばいいだろ」

「そこをなんとか…一人で子供用の玩具店に向かうのは流石にメンタルが…」

「それを言ったら俺も──いや、確かにお前学生だな。それはそれで問題か」

 

 学生が子供を二人も連れて、女児向けの玩具を買う姿は普通に問題がある。通報は流石に無いとしても、身元の確認や取り調べ、少なくとも呼び止められることにはなるだろう。

 

「ないとは思うが、責任問題で俺に飛び火するかもしれねぇし…しゃあねぇ、ついて行ってやるよ。その代わり金はびた一文も出さねぇからな」

「ありがとうございます」

 

 早速夏油は津美紀と遊んでいるミミとナナを呼ぶと、人影のないところで飛行型の呪霊を一体召喚してその背に乗る。

 

「では近くのショッピングモールで落ち合いましょう。お先に失礼します」

「あ?今からかよ。というか、俺達の分は?」

「津美紀さんがいますが…大丈夫ですか?」

 

 津美紀は呪力がないため呪霊を見ることが出来ない。その状態で浮いたりすれば、間違いなく下手な勘違いをされる。魔法使いがーとか、孫悟空がーとか。

 仮に呪霊が何かの間違いで見えたとして、自分達の正体がバレたとしても口止めは出来るだろうが、それすら含めて面倒事は可能な限り避けたい。

 

「ケッ!覚えてろよ」

 

 甚爾の恨みったらしい一言から逃げるように、夏油は呪霊を発進させる。意外と速度は出ているようで、暫くすると視界からその姿が消えた。

 

「しかもショッピングモールって…ここから10km前後あんだろ」

 

 直線距離なら6km程度。

 甚爾もその身体能力で向かおうとすれば建物を無視して直線距離で行けるし、なんなら入り組んだ道を通っても4、5分あれば余裕で着く。が、その場合二人を背負うor担がなければならず、そうなれば電柱等に当たった時に二人の首か腕か足が吹っ飛ぶことになる。そうでなくとも体感Gと脳震盪で気絶は免れない。

 大人しく車で向かうのが吉だ。

 

「だが車で向かうにしても、なぁ」

 

 甚爾は車を所持していない。より正確に言うのであれば、車の免許をそもそも持っていない。

 元々車無しでも甚爾の素のスペックが車以上なので必要がなかったのと、必要があると思った頃には免許を取る時間が取れなかったことが原因だ。

 

「恵を連れてドライブ…ドライブなら大型バイクの免許が欲しいな。恵達が小学校に通い始めれば時間も取れるか?」

 

 背に恵を乗せエンジンを吹かせる自分の姿を思い浮かべる。

 

 ──いいなコレ

 

 妄想に集中していると、それまでゲームをしていた恵が足元に寄ってくる。

 

「パパどうかしたの?」

「いや、恵には…いや、一応聞いとくか。恵はバイクに乗りたいか?」

「バイク?ブーンってやつ?」

「そう、ブーンだ」

「僕はパパがいるからいいや」

「そうか…じゃあいいか」

 

 会話の方向性が違う気がするが、恵が要らないと言うなら、まぁそれでいいか。

 と、そこで本来の目的を思い出した甚爾は、砂場で遊んでいた津美紀を呼ぶと公園の外に向かう。

 

「タクシーが捕まればいいが…ん?」

 

 恵の視線の先。

 そこで手を振っていたのは灰原とソッポを向く七海だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実は七海が新しい武器が欲しいらしくて、休日に買いに行きたいって誘われてたんですよ。それで窓の人に頼んで車を出してもらったんですけど、いやーまさか!大型車にした意味がここにきて生きるなんて、まさしく運命だね!」

「その代わり荷物を置くスペースがなくなりましたが」

 

 サードシートに座る甚爾達に聞こえるように言う七海に若干腹を立てるも、本人に悪気は無いらしく灰原が謝ってくる。まあ、それはそれとして後日〆ることは確定したが。

 

「武器庫にある物じゃ駄目なのか?」

「高専の武器庫にある物は私が扱うとなると総じて使い勝手が悪いものばかり。私の術式相性的に、角があり薄く弱点(ウィークポイント)を狙いやすいものを扱いたいのです」

「フーン。で、買いに行くのがショッピングモール?」

「実は以前、良さそうなモノを見つけまして。その時は手持ちが足りなかったので、今日改めて買おうかと」

「へー」

 

 自分から聞いた割に興味無さそうな返事をする甚爾。

 ちなみに余談だが、七海が払う費用は武器扱いなので金は高専から下りている。また買いたくても年齢上入場出来ない場で売られている武具の場合、窓に頼むことで代理で購入することもできる。

 また今回に関しても窓に頼み代理で購入することが出来たと思うが、それをしなかったということはつまり、灰原と一緒に遊びに行きたかったからなのだろう。

 本心がどうかは分からないが、そう思うと中々可愛げのあるヤツだ。

 

 甚爾の思考を知ってか知らずか、七海の視線が流れる景色へと移ったところで、すると今度は灰原が身を乗り出してきた。

 

「伏黒先生は何か用があるんですか?」

「夏油の買い物に付き合うことになってな」

「夏油さんも…アレ?」

「なんだ?どうかしたか?」

「…いえ、多分僕の勘違いだと思います…多分」

「?」

 

 何のことかは分からないが、どことなく嫌な予感がする。

 ──まさか五条たちもいるなんてことは無いよな?

 夏油に加えて灰原と七海、更に五条と家入も加われば、絶対に面倒事に巻き込まれる。

 

 まさか、まさかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雑多な店舗が建ち並ぶショッピングモールの一角。ブランド物の化粧品が宝石のように並んだ店の前に、見覚えのあるサングラスと家入がいた。

 

「灰原と七海じゃん。キグー」

「伏黒センセーもいんじゃん。傑もさっき見たし、直哉以外全員集合じゃね?」

 

 家入が恵と津美紀をむぎゅーとする中、甚爾はひどく冷めた目線で五条を睨みつける。

 尚、灰原と七海については挨拶だけ済ましてすでに去っている。

 

「…なんでお前らいんだよ」

「硝子が期間限定のファンデと口紅が買いてーうっせぇんだよ。化粧品なんてどれも一緒だよな?」

「それ言ったら、悟が掛けてるサングラスもどれも一緒でしょ」

「家入の事情は分かった。で、お前はなんだよ」

「ただの暇人~」

 

 暇人なら家でも寮でも大人しくしとけよ。

 口にしたいところだが、その先を五条に防がれる。

 

「で、センセーはどったの?」

「夏油の介護役だ」

「介護って歳かアレ」

「同年代だろ。そんぐらい把握しとけ」

 

 おっと、そういえばここに来たのは夏油の件があってのことだった。

 雑談はそこまでに、夏油の後を追わねば。

 

「傑ならあっちのエスカレーターに──」

「ああ、三階の北側か。確かそこに店があったな」

 

 前来た時の記憶を頼りに足早に──勿論恵と津美紀の歩幅に合わせて──歩き始める。

 急いでいるというよりは、さっさと二人から離れたかったのが本音だ。

 でないと絶対に粘着される。

 

「そんじゃ、また学校でな」

「「はーい」」

 

 

 エスカレーターに乗った甚爾の姿が見えなくなると、残った二人は顔を合わせる。

 

「コレはアレですな?」

「コレはアレだね…」

 

 

「「絶対面白くなるヤツ!」」

 

 

 家入は買い物を素早く済ませると、早速甚爾達の後を追跡し出す。

 

 

 

 

 

 

 

 ──ま、こうなるよな…。

 

 夏油が物色する中、背後に感じる気配からなんとなく察していた甚爾は、別に指摘するわけでも威嚇するわけでもなく、ただ茫然と突っ立っていた。

 質の悪い奴らだ。

 

「…それで、どれがおすすめとかありますか?」

「二人が欲しいもん買やいいだろ」

「それはそうなんですが…」

「…ま、男ならまだしも女だからな。雑に扱うことはしねえし、多少値が張るモン買っても損はねえ。それと、小せえ付属品が付いてるヤツはどうしても無くしやすい」

「ということは…これがいい…かな?」

 

 持ち運びができるようコンパクトに収まるおままごとセット。

 材質は木製でタンスの隙間に入らない程度のサイズ感。

 値段は中々張るものの、手に取った時のボリュームは成程確かに値段相応と言える。

 

 夏油が手を取ったそれをミミとナナに見せると、二人は目を輝かせて頷いた。

 どうやら当たりだったようだ。

 

「ありがとうございます。それじゃあ少し待っててください。今から買って──」

「お前が買っちゃ俺が来た意味ねえだろ」

「…あ、確かにそうでした…」

 

 夏油は甚爾に玩具と財布を渡そうとする。

 甚爾もそれを受け取ろうとするが、その直前夏油の背後で殺気立った視線を送るミミナナに気付く。

 

 まあ、確かに大の大人が学生から財布を、しかも子供達の前で受け取るのは流石に大人げない。

 それに今思い出したがこの光景は五条たちも見ていた。写真でも撮られれば間違いなくいじられる。

 だが、分かったうえでも金を払いたくない。だって払ったら確実に五条たちに集られる。

 しかも夏油に払った手前、五条たちだけ別というのは通らないだろう。

 だが、かといって──

 

「………ハア…しょうがねえな…」

「?」

「分かった分かった、俺が払えばいいんだろ?」

 

 致し方なしとするしかないだろう。

 それに、甚爾は別に誰彼構わず嫌われたいわけでは無い。

 少なくとも、教師として彼らに教えていた立場である以上印象は良くありたい。

 

 

 ───変わったな。

 

 

 我ながらそう思う。

 昔は誰にも好かれることを望んでいなかった。

 誰にも愛を注ぐつもりはなかった。

 それが今───。

 

「…ほら、さっさと渡せよ」

「わ、分かりました…」

 

 ふんだくる様に玩具を奪うと、それをレジまでもっていく。

 支払いを()()()()()()()()()()()()()()で済ませると、袋に入ったソレを夏油に投げた。

 

「これでいいだろ」

「あ、ありがとうございます…!」

 

 ───初めて面と向かってこいつの笑顔見たな。

 

 しかし夏油如きの笑顔で腹が膨れるはずもなく。

 むしろ財布から重みが減ったことに対する空しさから、フンと荒い鼻息を吐く。

 

 

「なあセンセー?俺達にはご褒美はねぇの?」

「そーだそーだ!」

 

 

 後ろからサングラスをズラした五条がオラオラと迫ってくる。家入はそれほど熱心に前に来てはいないが、五条の背後でえっさと腕を振っている。

 更に足元の恵と津美紀も物欲しそうな顔をする始末。

 

「………分かったよ!その代わり一人八千までだからな!!」

「灰原と七海の分は?」

「この場にいないなら無し!」

「もしもし灰原~?今三階で───」

「おい五条!電話すんな!!」

 

 

 

 結局灰原と七海も来ることになり、甚爾の財布から重みが消えることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから───五年の月日が流れたある日────

 

 

 

 

 

「お父さん!」

「津美紀?どうしたそんな───

「恵が……恵が……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───誘拐された!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛?」

 

 

 




「休日はクーラーの効いた部屋で寝るんに限るわ。ん?なんや親父。買い物?行くわけないやろほんま面倒なぁ。あ?甚爾くんが居るかもしれん?んなわけないやろ(笑)」

~数日後~

「親父、光の速度越えたら過去に戻れるってホンマか?」



次回からオリ短編(恐らく4,5話で終わる)
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