パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

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鬼というか鬼ヶ島が丸々来た感




あとこのあとオリキャラが沢山出ますが、別に覚えなくていいです。どうせ次話でダイジェスト形式で処理されるんで。

PS あと、一応アニメ勢へのネタバレあるんで注意して下さい。


15.前髪呼んだら鬼が来た

 

 廃病院一階──会議室にて───

 

 円卓にはそれぞれ十席用意されており、入り口より一番奥の席を除き、その全てが埋まっていた。

 席に座るはXが誇る最高戦力の9人。

 

 不可侵のモールス

 要塞城のガンダル

 黒神足のトルバチ

 白鬼足のトルネア

 嵐荒蠅のレイン

 水天秤のマルク

 全能神のウェクス

 無重力のトロイ

 復讐鬼のバイエル

 

 彼等は神妙な面持ちで空いた席を見つめており、未だ会話のひとつもなく刻一刻と時間のみが過ぎている。

 そんな中入り口の扉がギイと鳴る。入ってきたのは金の五つ星が付いた軍帽を被る、額に縫い目のある女だった。彼女は円卓の奥の席へゆるりと移動すると、時間を掛けてゆっくりと腰を下ろす。

 この状況でも変わらず冷静で居られるとは、と感服する者が四人。何も表情を変えず、ただ命令を教示されるのを待つ者が四人。今の状況が分かっていないのか、と怒りを抱く者が一人。

 それぞれ内に抱く感情は異なるものの、しかし確固たる忠誠心が揺らぐことは無い。

 反発も反抗も意味は無く、むしろする意味が無いことを理解しているからだ。

 

 彼女は他の面々が集まっていることを確認すると、口を開く。

 

「緊急招集であるにも関わらず、迅速に集まってくれてありがとう。さて、早速本題にはいるが、先程この本拠地に術師達が攻め込んできた。人数は9人、その中には夏油傑の姿も確認されている」

「…随分と早いですね」

 

 結界が破られた時点で大体予想はついていた。が、それにしてもあまりに対処が早い。

 本来であれば夏油が操る呪霊が結界を破り、その存在に気付いたことで改めて夏油自らが対処のため出向いてくる──という図を描いていた。だが今回に至っては、夏油自らが一直線に乗り込んで来ている。

 

「まさか…裏切り者か?」

「下手な勘繰りはよしなさい。我々の中にそのような者がいるはずがないでしょう」

「仮に居たとしてもだ。問題なのは犯人を見つけることではなく今をどう対応すべきかだ」

「総統、敵勢力はいかほどか?」

 

 彼女──総統にガンダルが問いかける。

 一瞬、総統の眼が泳いだように見えたが、恐らく見間違いだろう。

 

「未知数、と言っておこうか。我々が勝つことは当然だが、しかしここは君達全員の力を借りる必要がありそうだ」

「遂に我らが動く時が来たと…?」

「その通りだ」

 

 おぉ、と驚きに似た声が辺りから漏れる。

 というのも、最高戦力である彼らが実際に戦闘したことは数える程度しかなく、更に言えばこのような大規模戦闘の経験は初めてだったからだ。

 そもそもX自体あまり表立って活動するような組織でもなければ、そもそも対抗馬足り得る組織が存在しないため交戦の機会は一度もない。あるのは内輪揉めや過去組織に入る以前に戦ったぐらいだ。

 そのため、久方ぶりの戦闘に彼らはとても興奮していた。

 

「血が騒ぐなァ兄弟!」

「久しぶりの皆殺し…手の震えが抑えられん…!」

「新しい技を試したい…」

「相手は9人、こちらも9人。おお丁度、それぞれ一人ずつ当たれるじゃないか」

「貴様、総統のことを忘れていないか?」

「あー、いいよ私のことは気にしなくても」

「早く殺したいからって横取りすんなよ?」

「誰に言ってやがる?」

 

 ピリピリとした空気が所々で起こる中、総統はコツンと机を爪で叩く。

 ほんの小さな音。それこそ彼らの会話で掻き消えるような小さな音だったが、辺りは瞬時に静寂に包まれる。

 

「…あぁ、それと。夏油傑に関しては元々私が相手取る手筈だったが、敵の数が数だからね。ウェクス、君が先に相手をしてくれないかい?」

「俺ですか?構いませんが…」

「無論君だけで勝つことは容易ではないだろう。だが安心してほしい、君は夏油傑相手に時間を稼ぐだけでいいんだ」

「…成る程、つまりウェクスが時間を稼ぐ間に他の術師を総統、そして我々が最速で倒し、その後夏油傑を全員で叩く、と」

「話が早くて助かるよ。その通り、私達の目的はあくまで夏油傑を倒すことだ。他の術師に手間取る暇はないからね」

 

 皆にとっては初めてとなる大規模戦闘だが、それを楽しむ余地はない。特級術師である夏油は例え総統を除く最高戦力全員が揃っても確実に勝てるかは怪しい。それがウェクス一人ともなれば、3分足止めできれば御の字だろう。

 

「ウムゥ、折角の戦闘故、長く楽しみたいと思っていたが…」

「ならガンダルのとこへは最後に行くことにするよ。それで2.3分は楽しめんじゃないかな?」

「良いのですか!それはなんとも有り難い!」

 

 深く頭を下げるガンダルにいいよいいよと手を適当に振って応対する。

 総統は壁に掛けられた時計を見ると、少々焦った様子で皆へ目を配った。

 

「さて、そろそろ時間も迫ってきている。皆各持ち場に急ぎ付くように」

『イエスサー!!』

 

 皆一斉に敬礼を行うと、立ち上がり会議室からぞろぞろと出て行く。その姿はマントの色も相まって、巣へとなだれ込むアリの様。

 

 そして扉が閉められ、総統ただ一人が残った会議室で、どこからともなくとんでもなく重い溜め息が落ちる。

 

 

 

「全くさー。なんでこんなことになってんのさ…」

 

 

 

 彼女の目的は夏油傑の肉体を手に入れることだった。

 理由は二つ。

 第一として術式の強さ。

 現在彼女の肉体に刻まれた術式は戦闘に使えはするものの、少々心許ない所がある。だが呪霊操術は特級として認められる程強く、また今後の計画に役立てる可能性がある。術師の中では五条を除けば、一番に欲しい術式だ。

 そして第二に五条悟封印のための鍵。

 運要素が絡むものの、今彼女が持つ手札の中で唯一、五条を封印できる可能性がある。その鍵となるのが夏油の肉体だ。

 仮に呪霊操術が無かったとしても選ぶほどには、優先度は高い。

 

 だが夏油傑の肉体を手に入れることは困難を極める。

 教師である彼は基本高専に居る。当然高専には現代最強術師の五条も居るので、高専へ突撃した瞬間即刻アウト。

 では家に帰ってから襲うのは?それも五条と連絡を取る手段があればアウト。仮にそれを防いでも呪霊を使って逃げられればアウト。

 

 頭を悩ませた結果彼女が思いついたのは、Q──今のXを用いたこの作戦だった。本来は手頃な呪詛師達が数人いれば良かったのだが、運良く目の前に解散目前の呪詛師組織があったのでそれを利用しただけなのだが、それが意外にも功を奏した。

 

 五条悟は高専に居る。

 逃亡、連絡の手段は対非術師対冥冥用の結界が破られた後に自動構築するよう設計した結界によって防ぐ。

 夏油は幹部含む全員で袋叩きにすれば勝てるし、万が一夏油が他の術師を連れてきても、夏油を殺した後にじっくり料理すればいい。

 

 その上、夏油の肉体を乗っ取った後組織を壊滅させれば、人身売買によって稼いだ銭もそのままそっくり手元に来る。

 素晴らしい。まさに完璧な計画だ。

 

 そして計画もいよいよ大詰め。

 東京で適当な児童一人を攫い高専を煽ることで、夏油を引っ張り出す。

 そうすれば結界は解け夏油がこちらの存在に気付く。

 何も知らない夏油はそれが罠とも知らず数人の術師を連れてこちらへ挑み───遂に目的は達成される。

 

 

 

 

 だが───そう思っていた矢先。

 

 

 

 

「特級術師が二人?一級術師が五人?ヒーラーが一人に知らんオッサンが二人??どうなってんの???」

 

 

 

 しかも一級の中には上澄み中の上澄みが二人いる模様。

 

「しかもあの二人も結構強そうだし。マジでどうなってんの?」

 

 ちなみに彼女自身甚爾の存在は知っているものの、顔も素性もよく知らないのでその知らんおっさんの一人が甚爾だということには気付いていない。

 あと、ミゲルについては全く知らない。本当に一切の心当たりがない。

 

 何処がどう歯車がズレてこんな悲惨なことになったのか。当然ながら恵の存在は知らないし───というか知っててもこんなことになるとは思わないだろうが───内部から本拠地の情報が漏れたことも知らないので、彼女は内心激焦りしていた。

 

「……まぁ幸い、私は残穢は残さないようにしているし、この身体の呪力出力も低いから気付かれずに逃げることはできそうだけど」

 

 想定していた夏油との戦いでは、いくつか縛りを課せることで出力を限界まで引き伸ばす予定だったが、アイツら相手には命を賭けた縛りを設けたとしても、3秒経てばチリすら残らないだろう。ここはさっさとトンズラするのが賢明だ。

 彼らが勝つ奇跡が極に1も起きないとは限らないが………期待するだけ無駄だ。

 

「はぁ。なぁんにも、この組織に思い入れとかないけど。流石に同情しちゃうなコレは……」

 

 過去に最悪の呪術師と呼ばれた彼女でさえ、これから起こる凄惨な未来に身震いしてしまう。

 二、三度去りゆく彼らに合掌を行うと、纏めていた荷物を持ってさっさと撤退するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 道中を塞ぐ呪詛師共。それを難なく蹴散らし続け、遂に甚爾達は廃病院へと突撃する。

 朽ちた自動ドアを思いっ切り蹴飛ばし中へと侵入すると、五条はサングラスをズラし辺りを見渡した。

 

「…多分二階に恵はいるね」

「そうか」

「…ん?ちょいまっち!」

 

 早速二階へ向かおうとする甚爾を止め、五条が天井──上の階を見渡す。

 

「…どうやら見たところ、上の方にも奴らいるっぽいね」

「それがどうしたんだ?」

「ンなもん蹴飛ばせばええやんけ」

 

 二人の言葉に五条が「まだ理解できないんですかぁ?」と言いたげな、腹の立つ溜息を吐く。

 

「この廃病院は4階作り、当然僕達は恵を助けるために一階から二階へと上がる必要がある。けど、奴らはそんな僕らの魂胆は知る由もないし、それよりも僕らを倒したいと躍起になるハズ──」

 

 五条の言葉にふと気付いたのか、直毘人は朽ちた壁をチラリと見る。壁はボロボロに崩れており、中の鉄筋の一部が剥き出しになっている。

 

「そしてココは廃病院、つまり上で廃病院をワザと崩壊させ埋めようとしてくる可能性がある…ということか」

「最低限組織の形が保てればそれでいいからね。建物や子供(商売道具)が無くなったところで、身内が大多数死ななければ極論幾らでも復興できる」

「そゆこと。冥さんは分かってるねぇ」

「でもそれを言ったら、悟達が大暴れしても駄目じゃない?」

「確かに、俺が亜音速出したらヤバそうやな」

 

 つまり恵を安全に救出するためには、各階層の呪詛師をこの建物が崩れない範囲で、根こそぎ刈らなければならないということになる。

 甚爾としては元々全員皆殺しにするつもりだったのでそこに不満はないのだが、建物のことを気遣わなければならないというのは正直面倒臭い。別に相手がどうであれ手を抜いても負けることはないが、激しい動きができないのは苦痛だ。

 他の面々も思うところがあるのか、少し不満げな顔をしている。

 

「そ・こ・で・!」

 

 すると五条は家入の横に回ると肩を組もうとする。

 しかしそれは未遂に終わる。華麗なターンでそれを回避されると、少し残念そうな顔で家入を指差した。

 

「硝子にこの建物を補強するための基礎結界を張り巡らせてもらう。傑の持ってる特級呪霊も付ければ、僕達の攻撃でも2分は耐えられるハズだ」

「それ、私じゃなくて伊地知で良かったんじゃないの?彼そういうの得意でしょ?」

「いいじゃん、ソレにアイツセンセーのこと嫌いだし」 

「確かにその通りだが、どちらかと言えば伊地知はお前のほうが嫌いそうだぞ?」

「ア゛ァ゛ン!?」

 

 仲良く口喧嘩する二人にハイハイ仲良くちましょうね〜と仲介してくる夏油。

 それを見ながら、家入が溜息混じりに相槌を打つ。

 

「面倒だけど、ここまで来た以上は仕事しないとね。今頃高専はかわいい後輩たちが守ってくれてるでしょうし」

 

 ちなみに硝子は五条に無理矢理連れ去られる形でここに同行してきている。まぁ一応、夜蛾にはメールでちゃんと事情を通しているため怒られるのは五条なのだが…。

 

「あ、結界はこの廃病院の地表から天井までを覆う形で張ってねー」

「りょうかーい」

「よしよし。そんじゃ、こっちも振り分けしますか」

『振り分け?』

 

 家入を除く全員が首を傾げた。

 五条曰く、1階に3人、2階に3人、そして3,4階と屋上に1人ずつの計9人、恐らく幹部枠の敵が居るらしい。

 そしてこちらの頭数も家入を除けば等しく9人なため、それぞれに割り振ろうという算段のようだ。

 

「1階は硝子の護衛も兼ねて、俺と傑と冥さん。2階の恵救出は…伏黒センセーは確定として灰原と七海かな?3階と4階は足の早い直哉と直毘人のオッサンで……。あとは……まぁ、アンタは屋上のヤツ倒しといて」

「俺ダケ扱イ酷イナ!」

「それを言ったら俺もだ!直毘人のオッサンだと!?せめてさん付けにしろ!」

 

 

 五条の口振りには一定数不満がありそうだが、振り分け結果自体に文句を言う者はいなそうだ。

 

 

 それぞれ配置に着く中、階段を登ろうとする甚爾を呼び止める。

 振り向き様にドスの効いた声で威圧されるが、それを無視して笑顔でサムズアップを向けた。

 

「恵は任せたよ」

「……誰に言ってやがる」

 

 甚爾は五条にサムズダウンを送ると、いそいそと二階へ登って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 開幕の合図は家入の結界が張られてから。

 2分間という短い時間で、全ての決着をつける必要がある。

 

 

 

 ──待ってろ恵。もうすぐ父さんが行くからな。

 

 

 

 道中で五条から返してもらった格納式の呪霊、その口から釈魂刀を取り出すと、柄をギリギリと強く握り締める。

 

「…アレ?七海の持ってる武器、いつもと違くない?」

「今更気付いたんですか?」

 

 確かに見てみれば、七海の持つ鉈の形状がいつもと異なる。ただ、別に突飛したような差異があるわけではなく、唯一上げるとすれば柄尻の部分にリングが付いているぐらいだ。

 

「だって会うの半年振りぐらいじゃん。そりゃ気付かないよ」

「私が悪いみたいに言わないで下さい」

「そうかなー。でも少しぐらいヒント出してくれたらすぐ気付けたね」

「逆に何故私がヒントを出さなければならないんですか?」

 

 二人の会話を傍で聞きながら、何喋ってんだコイツらと冷ややかな目線を送る。

 ただ、この二人程ではないが張り詰めすぎるのも失敗の元、多少リラックスしても罰は当たらないだろう。

 深呼吸をし、柄を握る力を緩める。

 

 

 

 

 そして────ついにその時が来た。

 

 

 

 建物全体に黄色味がかった薄い膜のようなものが広がる。

 結界術の応用。建物や人体の外面に呪力の膜を張ることで、崩壊や自壊を一時的に凌ぐことができる。

 

 あくまでその形を維持させるための結界であり、建物の保全、要救助者の保護以外では使用することはほぼない。結界術に多少なり才能がある者は必修の科目とされているが、習ってもその大多数が使うこと無く死ぬことの多い呪術の一つだ。

 

 

 だが、誰も使わない、使う機会のなかったその呪術は、この日史上最大の日の目を浴びることになる。

 

 

「行くぞ」

「はい」

「押ッ忍ッ!!」

 

 

 なにせ───彼等が本気を出しても建物が壊れないことが証明されたのだから。

 




(((そういえば総統は何処にいるだろ……)))



誤字報告ありがとうございます。
AC6神ゲー過ぎんか…
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