パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

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ファンパレやりすぎて一月弱放置しちゃった…すまぬ
あと誰か上下一心の残滓よこせィ


22.開戦

 

 東京校チームは二手に分かれ、京都校チームの居る西へと向かっていた。

 北からは三年だけで構成された「三年チーム」

 南からは二年と乙骨の三人で構成された「合同チーム」

 

 作戦会議の際、赤ハチマキの防衛は綺羅羅一人に任せることになっていた。が、しかし綺羅羅の術式は相手の呪力にマーキングを施す準備が必要であり、それまでは当然一人で耐久をしなければならない。

 綺羅羅一人でも不可能ではないものの、相手の実力が未知数。万が一を考え、綺羅羅の術式発動までの時間稼ぎとして乙骨達が駆り出されたわけである。

 

 

 

(マ、相手の二年が赤ハチマキを持ってないとも限らないしな)

 

 二年の綺羅羅に赤ハチマキを持たせたのはあくまで術式を配慮しただけのこと。

 仮に綺羅羅抜きで考えるのであれば、三年のプライドを尊重するという意味でも、戦闘経験豊富な三年に持たせるのがセオリーだろう。

 ただ向こうも向こうで二年に化け物が二人居る。

 ブラフという択でも二年に持たせるのはあり得る話だ。

 

(…つーかこの作戦、相手も二年と三年に分かれる前提の作戦なんだよな…仮に今向こうの全戦力で脳筋リンチにでも()やこっちの敗北がほぼほぼ確定するっつー結構リスキーな策だ。その上仮にあっちが二チームに別れたとして、俺達が二年に鉢合わせるか三年に鉢合わせるかも運ゲーだしな…)

 

 このゲームの性質上、ニ手に分かれるよりかは集団で纏まった方がハチマキを取られる心配もない。

 相手チームの作戦にも委ねられるため、二年対二年三年対三年の図を作るのは至難の技だろう。

 

(即席だから仕方ねぇとはいえ…この作戦割と穴あんな…)

 

 別にこの作戦を練った三年を批判をする気はない。

 寧ろ時間がない中思い付いた策としては上出来ではあるだろう。

 多少の見落とし、多少のリスクには目を瞑れる。

 

 だが、忘れてはいけない。

 この戦い、もし敗北すれば文字通り処刑されることになる。

 

(しかも、俺は前の件で先生から少し嫌われてる節がある。…二度目となりゃあ…俺の死は確実…ッ!)

 

 焦燥からか、秤の額からダラダラと結露のように汗が垂れ始める。

 

 

 余談だが、以前パンダが言っていた「秤は恵を貶したせいで半殺しにされたことがある」というのは、少し事実と異なる。

 実際は恵をパシリに使おうと連絡をしただけであり、秤としては「それだけで半殺しにされるのはおかしいだろ!」と今でも思っている。

 

 …尚、パシリの内容を要約すると───

『呪物回収の任務サボってパチンコ打ってたんだけど、そろそろ任務の方行かねぇと不味くなってきてな。で、俺の代わりにこの任務に行ってくれると嬉しいんだが…』

 ───である。

 

 まさに自業自得とはこのことなのだろう。

 

 

「なんとしてでも勝たねぇとな…」

「?そうですね?」

 

 妙にやる気に満ちた秤を横目に、乙骨達は警戒を解かず西へ進む。

 

 

 

 

 ────と、その時。

 

 強い視線とそれに伴う強い呪力の気配───。

 

 

 

 

「…!固まるぞ」

 

 秤が小さく呟く。

 その掛け声と共に乙骨と綺羅羅は目配せをし、互いに背を合わせ死角を作らないよう陣形を整える。

 

『固まるぞ』───その言葉の意味は、自分たちが既に後手に回っていることを示していた。

 

 

 後手に回った今最も危惧すべきは、死角からの不意打ちである。

 

 京都校チームの方はまだ場所もメンツも割れていない。そのメリットをわざわざ潰すような、それこそ真っ向勝負を挑んでくるとは到底考えられない。 

 そのため向こうは不意討ちを主体に攻めてくるハズ。

 それが分かった上で、しかも相手の術式がわからない現状、ハチマキをみすみす晒す行為は得策とは言えない。

 相手の手札を見るためにも、待ちの姿勢で構える方が良いだろう。

 

 互いに背を合わせ、神経を張り巡らし、注意深く周囲を警戒する。

 臨戦態勢のまま刻一刻と時間が過ぎる中───。

 

 

 風により空を舞った木の葉が一枚、綺羅羅の頭上を揺らいだ。

 日を遮り、綺羅羅の視界を一瞬翳らせ───

 

 

 

「避けろッ!!綺羅羅ッ!!!」

 

 

 

 その瞬間、枝木の間を縫い通り、三本の矢が綺羅羅目掛け放たれた。

 

「危ッ!イチチッ!」

 

 秤の呼び掛けもあってか、綺羅羅はそれを間一髪身を捻じることで直撃は免れる。がしかし、命中自体を避けられたわけではなく、掠めた腕からはジンワリと血が滲み出していた。

 

「今のは…!?」

「正体なんかどうでもいい!それよりも──ッ!」

 

 乙骨が地面に刺さった矢に注目する中、秤が言葉を紡ごうとしたその時。

 今度は上方向から風切り音が迫る。

(風切り音!?別のヤツの術式か!?いや、それよりも───!)

 避けることが先決。だが、それを説明している暇は無い。

 振り返ると、背後の二人を殴り飛ばし自身もバックステップで距離を取る。

 

「秤先輩!?」

「動くなッ!!」

 

 秤が乙骨を呼び止めたその直後、呪力によって形成された斬撃が、先程まで乙骨達のいた地表部に雨あられと降り注いだ。

 仮に直撃していればかなりの痛手を負うことになっていたであろう──そう思えるほどの傷跡を地面に残し、数秒後斬撃は収まった。

 

「クソ、分かり切ってはいたこったが、中々強者(つわもの)じゃねぇかよ」

 

 やはり向こうのペースから覆すのはあまりに至難。

 その上相手に二回も行動を許していながらまだこちらは相手の居場所すら特定できていない。

 

(さっさと巻き上げねぇと、ハチマキ云々されなくても先にこっちが落ちちまうな…)

 

 ここから逆転する最善の一手は、綺羅羅の術式をいち早く発動させること。

 だが、敵の位置もわからない現状、どうやって綺羅羅の術式を発動させるべきか。

 

「二回もごめんね金ちゃん」

「僕も油断していました…すいません…」

「んな謝らねぇでも───?」

 

 二人の謝罪を断ろうとしたその時。

 

 秤の脳裏に過った違和感。

 

(今、三人が個々に分かれてるんだぞ?なんでそんなチャンスに奴等は追撃してこねぇんだ?)

 

 今の秤達は主観的にも客観的にも、どう見ても恰好の的でしかない。

 だというのに、追撃どころが不意打ちの影すらありゃしない。

 

(そもそもさっきの攻撃にしたってそうだ)

 

 さっきの矢も上から降ってきた斬撃も。

 どちらも秤達を狩るには速度が足りなかった。

 それこそ斬撃に関しては、見てから避けても間に合った程度である。

 

(向こうが力加減をミスった──とも考えられるが…)

 

 無論コレはゲーム。仕留める気で打つことは流石にないだろうが、かといって甚爾の教育を受けた者等がその力加減を誤るとは思えない。

 だとすれば、相手の目的は何か。

 

(…俺は座学はてんで駄目だからな。相手の目的なんざこれっぽっちも分かりゃしねぇ。だが、今この状況、この場面、この展開。それが奴らの描いた絵通りなのは間違いねぇ)

 

 証拠も根拠もない、ただの勘である。

 だが、こういう時の悪い予感というものは確実に当たる。その自負が秤にはあった。

 

 頬を伝う冷や汗。

 それを拭いながら、冷静に思考を巡らせる。

 

(相手のメリット…一箇所に固まった俺等を分散させるためか?孤立したヤツから落とすために…。つまりこの状況下、狙うとすれば───)

 

 

 

 

 ────パァン。

 

 

 

 秤の思考が纏まったその直後。

 乾いた音が、どこからか響く。

 

 

 その次の瞬間───

 

 

「───ッガ!?!?」

 

 

 ───秤は背後に突如現れた東堂によって、顔面を勢い良く殴り飛ばされていた。

 

「秤先輩!!」

「金ちゃん!!」

 

 殴り飛ばされた秤は宙を一回転し、そのまま地面へ滑りながら仰向けに叩きつけられた。

 

「………」

 

 焦げるような匂い、引きずったような跡の先でピクリとも動かぬ様はまるで死体。

 荒い呼吸音は聞こえるため生きていることは確実だが、それでもかなりのダメージが入っていることは一目瞭然だった。

 

 

「ちょっと東堂くん。背後から静かに接近できた時はハチマキ取るって話じゃなかったの?」

「そうだ東堂。不意打ちができた以上、わざわざ傷つけるような真似をする必要は無かったはずだ」

 

 

 乙骨達の背後から、草木をかき分け現れたのは西宮と加茂。

 二人は得物であろう箒と弓矢をいつでも抜けるよう構えている。

 

「俺の勝手だ。一々口出しをするな」

「…確かにルール説明にあった通り、戦闘自体の禁止はされていなかった。だが、無防備な相手に戦闘を仕掛けたこと、そしてそこに重傷になり得る攻撃を加えることは禁止されている。にも関わらずオマエはそれを行った。この意味が分かるか?」

 

 加茂の論理的な説教を真正面から受けた東堂。

 しかし面倒くさそうな雰囲気で後頭部掻くと、ハーッと緊張感の欠片もない溜息を吐いた。

 

「無防備?重傷?何を見て言っている。あんなものはただの挨拶に過ぎん」

「挨拶だと?」

 

 そうだと頷く東堂。

 いや、どこからどう見ても死んでいるだろう…加茂と西宮がそう思った時。その死に体だったハズの男から、ククと含むような笑い声が響いた。

 

 

「挨拶にしちゃ、ちと重すぎやしねぇか?」

 

 

 その言葉を皮切りに、乙骨と綺羅羅が動く。

 乙骨は刀を抜くと、振り向きざまに加茂の弓を切り払う。

 綺羅羅も懐から短刀を抜くと、それを西宮に向け振り回し距離を取った。

 

「聞いていたよりも随分乱暴じゃないか乙骨君?」

「へー。やな感じ」

 

 折れた弓を投げ捨てながら、拳を乙骨目掛け構える。

 西宮も同様箒を握ると標的を綺羅羅に引き絞る。

 

 

「まぁまぁ、焦んなよ二人共」

「加茂。西宮。落ち着け」

 

 この場で(例外を除き)最も実力の高い両者によって、緊迫したムードは一気に静まり返る。

 

 その最たる要因は、秤のその外見にあった。

 

 腫れた頬に摩擦により焼けた顔面。

 砂利と石によって細かく捲れた皮膚からは流血する勢いで血が流れている。

 誰がどう見ても無事とは程遠い状態だった。

 

 だがそんな傷を物ともせずに、ドシンと仁王立ちで構える姿はまさしく強者と言わざるをえない。

 

「あの立ち姿からある程度予想はしていた。…食らう直前、脱力していたな?」

「正解。どっからか不意打ち仕掛けてくんのは予想してたからな。…ただ、ハチマキ取られると思ってそっちに神経注いでた分、反応が遅れちまったな。…流石に痛ェぜ」

 

 綺羅羅と乙骨は互いに庇える距離についていたため、狙うにはリスクがあった。

 そのため孤立していた秤を狙うのがあの場の最善手、何なら定石とまで言えるだろう。

 だからこそ秤は自身のハチマキ、その結び目に全力の呪力ガードを行い、いつでも不意打ちに対応できるよう全方向への警戒に神経を注いでいた。

 

「全力でないとはいえ不意打ち一閃。寧ろその程度で済んでいるのは、オマエの実力がいかに高いのかを示している。…やはり、俺の目に狂いはなかったな」

 

 如何にもな台詞を吐く東堂。

 敵味方の境無しに五人揃って呆れた目線を送る。

 その最中、腫れた頬を撫でていた秤がふと東堂の額に目をやった。

 

「…あ?てかオマエ…そりゃァ…」

「今更気づいたのか?」

 

 ここまで一切気にしていなかった相手のハチマキ。だがよく見てみれば、東堂の額に結ばれていたのは赤のハチマキだった。

 

(東堂が赤ハチマキ持ちか。…しかしこうも最前線に出張るやつが爆弾握るかよ普通)

 

 取られないという自負があるのか。それとも最前線に出たのはそう思わせるためのブラフで、実は後方型の戦闘スタイルが基本なのか。

 だがどちらにせよ、戦闘の合間に安々とハチマキが取れるほどの相手ではないことは確実だ。

 

(それとあの不意打ち。殴られる直前まで気配が無かったことを踏まえるに術式絡みなのは間違いねぇ…姿を消す術式?瞬間移動?それとも…てか加茂と西宮の術式も…あー、ほんと情報がねぇな!)

 

 とはいえ手の内を見せていないのはコチラも同じ。

 秤のヒットポイントが四割近く削れているという点にさえ目を瞑れば、対面したこの状況は五分と言える。

 

「…いや、三年が隠れてるって線もあ──」

 

 秤がそう言いかけた所で、北の方から戦闘音が響き始める。

 

「尚、こちらの三年は『二年は眼中にない。三年同士で戦り合いたい』とのことだ」

「ま、この際ネタバラシするけど、こっちの三年の先輩に探知系の術式持ってる人がいてね。その人のお陰で不意打ちできたってわけ」

「なーる」

 

 完全に手のひらの上だったということか。

 不幸中の幸いとしては、二年と三年のチームを分けたこの作戦が功を奏したことだろうか。

 一斉に不意打ちにでも会えば、それこそこちらの即敗北が決まっていたハズだ。

 

(…それとも相手の思考を読んだ上で、この作戦を決めたのかもな。敢えて初っ端からチーム分けしたのもこれを読んでたってのも…流石にねえか)

 

 実際、この作戦を決めた三年はそこまで考えてはいなかったのだが…どちらにせよ、その選択に間違いはなかったのだ。一先ずは安堵してもよいだろう。

 

 問題があるとすればやはり───

 

 

「さて。もう休む必要もないだろう?」

 

 

 東堂は羽織っていた学生服を脱ぎ捨て、更に中に着込んでいた紫のシャツをブチブチと千切り捨てた。

 中から放たれたのは完全無欠。指摘しようのない完成された肉体。

 呪力による強化──。

 縛りによる底上げ──。

 術式による膨張──。

 そんなものは不要だと拒絶するかの如く、完成された筋肉が立ち塞がる。

 

 

「とことん戦り合おうか?秤金次ッ!!」

 

 

 

(やっぱ、そうくるよな)

 

 強敵邂逅。対戦相手に選ばれたのは当然秤。

 ───問題は、眼の前の敵に勝てるか否か。

 

 癒えるはずのない傷。既に満身創痍に近い肉体。

 全身から迸るように流れる痛みの嵐。

 しかし誰が逃れられようか。

 真正面から叩きつけられた熱気。その熱量に誰が退けるだろうか。

 

 

 

 

「まだまだ足んねぇぞッ!上げてけボルテージッ!!」

 

 

 

 

 咆哮。その叫びと共に、戦いの火蓋が切られた。

 

 




「……唐突にやる気になってるようだが…」
「…えーっと、どうします?」
「どうするもこうするも…戦らなきゃ変じゃない?」
「そだね………じゃあ、あっちでやろっか…」
「そうだな…」
「うん…」
「二人に悪いしね…」


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