パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

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色々書き直してたら万字超えてたので分割
3パートぐらいに分ける予定(尚2と3はまだ未完な模様)


26.才華爛発 その1

 

 

…………

 

 

 

………………

 

 

 

………………………

 

 

 

………あれ………僕…………

 

 

 

 

………なにしてたんだっけ………?

 

 

 

 

目を開けると、自分は落ち葉の上に大の字になっていた。

視界の先には青い天井。雲一つない快晴が広がっていた。

 

………どこだ……ここ……?

確か…自分は京都校との交流戦のために新幹線に乗って…それで………。

…なんだ?何かがおかしい…?

周囲を見渡すと雑木林の中。一部方向だけ綺麗に開けており、目を向ければ幾本という木々が薙ぎ倒されていた。

…なんだろう…見覚えがあるような…ないような…。ついさっきまで、薙ぎ倒されるその木々を見ていたような…。

…記憶が曖昧だ。頭も体もふわふわと浮遊感がある。

 

乙骨は立ち上がろうと身体に力を込める。

だが、途端に全身が激しく痛み悲鳴を上げる。

立ち上がることはおろか、指先一つ動かすのも億劫な程、度を越した痛みだった。

 

なんだ…この傷…?

記憶が無い間に、誰かと戦ったのか?

それとも里香ちゃんが暴れた…?

 

グルグルと回る頭を抑えながら、必死に思い出そうとした。

……と。その時。

 

「乙骨ク〜ン?生きとる〜?」

 

木々を掻き分けてどこか見覚えのある男が歩いてきた。

何処で見たんだっけ。確か…交流戦の最初に、京都校の人たちと…顔合わせを……

それで……

 

………………あ

 

そこで、乙骨はようやく全てを思い出した。

 

「……直哉…さん…ですよね…?」

「…なんやその顔。ポケーっとしよって」

「いや…その…ついさっきまで、頭に血が回ってなくて。ボーッとしてました…」

 

ほーん、と興味もなさそうな声を漏らす。

なんというか…飄々としている割に、言葉の節々に圧があるのが少し怖い。

 

「…その様子じゃ、マトモに立てそうもないなぁ。いつもなら硝子ちゃんに治してもらうんやけど。…まぁ、無理矢理戦えって話でもなかったハズやし。少しぐらいサボってもええやろ」

 

まるで年老いた老人が重い腰を下ろすように、ドッコラショと倒れた木に腰を下ろす。

戦意が感じ取れない。さきほどの戦々恐々としたオーラが嘘のように掻き消えた。

本当に、同一人物なのかと疑いたくなるほどだ。

 

「…あぁ、そうそう。君に憑いとるあの呪霊。アレなら向こうの方で寝ぼけとると思うで」

 

後頭部の方に指を向ける。

今更気づいたが、直哉が指した方向には巨大なクレーターが出来ていた。

しかも、今も絶えずに土煙がもくもくと立っている。

 

「ただ、ちょびっと速度出しすぎたからなぁ。中々起きんのもしんどいやろなぁ」

「ちょびっとって…なんか爆発してません??」

「いんや?ただ速度乗せて体当たりしただけやで?」

「体当たりって…えぇ…?」

 

ただ体当たりをしただけの形跡には全く見えないが…。

それこそ、何かが引火してガス爆発が起きたようにしか見えない。

さも当然のように呑気に説明しているあたり、やはりこの人も別格の実力者なのだと再認識する。

 

「ま、そのうち起き上がるやろ。しっかし、君もあんなんに取り憑かれて、苦労しとんなぁ」

「はは…まぁ、確かに苦労することは多いですけど。でも、彼女のおかげで助かった場面もありますし」

「ふぅん。…まぁ、モノは使いようやからな。これからも気張りや」

「…はい…」

 

…なんだろう。

本当に、なぜあそこまで皆の評価が低いのか分からない。

こうして喋っていても、何も悪い印象を抱かない。

何処となく鼻につくような感じが無くもないが…それだけであそこまで言われるものなのか?

どうしても、それが気になった。

あまりにも気になったので───疑問が無意識に口から溢れた。

 

 

「………なんで、直哉さんは皆さんに嫌われているんですか?」

 

 

思わず、馬鹿正直に聞いてしまった。

口が滑るとは、まさにこのことなのだろう。

事実聞かれた本人も、キョトンと呆気にとられたような表情を浮かべている。

………しまった。反応を見てから自分の犯した過ちに気付いた。

  

「あ?なんそれ」

「い、いや!嫌われてるっていうのはその───!」 

 

急いで訂正しようとした。

が───

 

「…何慌てとるん?」

「……へ?」

 

意外にも、直哉は平然としていた。

それも表情一つ変えずに、恐ろしいほどケロッとしている。

 

「もしかして、怒鳴られるとでも思ったん?」

「…まぁ、正直に言えば…」

「せやろな。むしろ怒らん方が珍しいやろな」

 

あっけらかんと呟く。

本当に、1ミリたりとも気にも留めていないのだと言うことが伝わる程に、さも他人事のように呟いた。

 

「そないなこと悟クンや傑クンに言われ慣れとるからな。元々人の目なんて気にしとらんし、ンな下らんことで一々怒ったり傷付いたりなんてせん。…まぁ、言ったんが他の学生らやったらキレとるかもしれんけどな」

 

勿論冗談やで?と忘れたように付け足しながら、ナハハと演技くさく笑った。

 

 

なんというか…この人、すごいな…。

思うに、自意識が固まりすぎて人からの意見に靡いていないのだろうと思う。

まるで一本の、筋の通った我を持っていて、それを一切曲げる気がない。

人の言葉を受け入れているのではなく、その言葉をまるで痛みとして受け入れていない。

 

こう…表現するなら……どう言えばいいのか………

 

 

…そう。言い表すのであれば、この人は無敵の人だ。

 

 

(………どうしよう。オブラートに包もうとしても若干悪口っぽくなっちゃう…)

 

ちょうどいい表現の仕方で悩んでいると、直哉が先に口を開いた。

 

「それよりも。俺が気にしとんのは、なんでその話を唐突に投げたってとこや。人から噂でも聞いとったんか?」

「そ…それは…その…」

 

口から出した以上仕方がない。

大人しく人伝に聞いた話を直哉に話す。

勿論、具体的な人名は出していない。

 

「ふぅん……」

 

言われた言葉に何処となく心当たりがありそうな表情を浮かべる。

同時に、少し不快そうに口をへの字に曲げている。

流石に面と向かって、堂々と具体的な罵倒されるのは苛立つようだ。

 

「思ってたよりも、俺の評判悪いんやね…まぁ気にしてへんけど」

 

とってつけたような誤魔化し方に、少し笑いそうになる。

 

 

しかし───それも束の間。

次に発した直哉の言葉を皮切りに、空気は少し淀み始める。

 

「それに、どうせそういうの言っとるの、どうせあの()()が大半やろ?」

「……男…女……?」

 

一瞬、誰のことを言っているのか分からなかった。

思わず聞き返すような素振りを見せてしまう。

しかしそれをどういう風に理解したのか。

直哉は納得したような相槌を打ちながら、ケタケタと笑った。

 

「もしかして乙骨クン、()()のこと女やと思っとったん?」

 

…………あぁ、成程。

そこでやっと理解した。

この人の言う男女とは、綺羅羅先輩のことを指しているのだ。

そしてこの人は、自分が綺羅羅先輩のことを女性と勘違いしていると、そう思ったのだろう。

 

「いえ、そういうわけでは……確かに、初対面のときは少し勘違いもしましたけど…」

「なんや、知っとんたんかい」

 

つまらなそうに溜息を吐く直哉。

だがそれも束の間、ニヤニヤとした笑みを顔面に張り付ける。

 

 

「しっかし、幻滅したやろ?男のくせして女のカッコして、信じられへんよなあ。乙骨クンもそう思うやろ?」

 

 

唐突に吐かれたその言葉に対し、乙骨は眉を顰める。

正直理解ができない。

仮にそれに理解を示したとしても、自分にとって親しい人を、面と向かって貶されたのだ。

苛立たないわけが無い。

 

「人の格好や趣味、それこそその人の生き方を、僕はそれを否定できません。むしろ、人に貶されようとも突き通す姿を、僕は尊敬します」

 

思わず意固地になって反論してしまう。

 

自分は綺羅羅のように、何があっても押し通すような意志の強さは生憎と持ち合わせていない。

何事にも染まりやすいし、すぐに折れてしまく。脆弱性の塊、それが乙骨が思う自分の人間性だ。

だからこそ、人の目など気にせずに一途に貫く、あの心の強さを尊敬している。

 

「…ん〜…なんやって?俺の聞き間違いか?アレを肯定しとるって君言うた?」

「はい。それに、あなただって、自分の好きなものや趣味を馬鹿にされるのは嫌じゃないですか?」

「そうやなぁ…。俺の好きなモンを貶すアホが居るとするンなら、俺はソイツを迷わずブチ殺したるなぁ」

 

口から出た単語の羅列だけを見れば、関西弁も相まって冗談臭くは感じるだろう。

しかしその口調と表情。まるでどこにも冗談の気配を感じない。

どころが、まるで目の敵を目の前にしたような強い怒りと殺気を感じる。

先程までの飄々とした態度とは打って変わって、まるで別人のようだ。

 

「それなら───」

 

自分がされたくないことを、なぜ人に出来るのか。

そう問おうとした。が、それよりも前に、直哉は口を開いた。

 

 

「────で?それがどないしたん?なんで俺が他人の、それも好きで女のカッコしとるヤツの尊敬なんかせなあかんねん。それと俺の趣味になんの関係があんねん」

 

 

───何と言ったのか。

乙骨は一瞬、理解できなかった。

理解するのを、脳が一瞬拒んだ。

同じ言語を喋っているのかが分からなくなるほどに。

その言葉はとても人の口から出たとは思えなかった。

 

絶句するとは、このことを言うのだろう。

まるで時が凍ったように、この一瞬を錯覚した。

 

 

「しかもあんな、弱っちいくせになぁ?我を通すなら悟クンや甚爾クンみたく実力つけろって話や。…まぁ、無理やろうけどな。さっきにしてもそうや、俺の邪魔して何かと思えば『謝れ』やと。カスの分際で人に命令すんなや。人の目がある手前、俺も必死に耐えたんやけどなぁ。それが無ければどうなってたか俺でも想像つかんわ」

 

 

 

 

────あぁ。そうか。

 

そういうことだったのか。

 

やっと、あの人たちが言っていた言葉の意味が理解できた。

 

『ソイツさ、僕ですら引くほどのカスなんだよね』

『アイツ呪術界最凶のクズ男なんだぜ?』

 

そうだったのか。

 

そこまで言われる人ではないと思っていた。

言われるとしても、過剰な表現だと思っていた。

だが…違った。2人の言っていた言葉は正しかった。

 

 

───初めてだ。

初めて人に、こんな感情を抱いた。

黒い泥を穴という穴から吐き出すような、ドロリとした感情。

言うなれば憎悪。嫌悪。厭悪。

腹の底から煮えくり返るほどの、激しい憤り。

自分はこんな人と親しげに話していたのか。

自分の知らない所で、自分の親しい人達は、こんな人に虐められていたのか。

 

 

許せない。

 

この人も。

自分も。

 

許せない。

 

 

 

「加えてあの態度。人が折角守ってやっとんのに、ほんま何様やって話や。なぁ、乙骨クンも───」

 

 

「────もう、いいです」

 

 

スクッと、何事もなかったかのように立ち上がる。

ハイライトの消えた漆黒の瞳を宿し、睨むように視線を向ける。

 

 

「上手く聞き取れないので…後で聞き改めます」

 

 

人生で初めて。

人に向けて、自分の意思で、武器を翳した。

 

正義感。或いは執行心。

 

人の間違いを正すために。

自分の正しさを証明するために。

 

戦うことを決意した。

 

 

 

「………へぇ?中々男前になったやん。────ほな、始めよか?」

 

 

 





「よし、では改めて仕切り直しを…む?」
「あれ?金ちゃん?どうしたのそんなボロボロで…」
「いやぁそれがな。東堂とバチバチにやり合ってたんだが、見えねぇなんかに共々ぶっ飛ばされてな」
「見えない何か…あぁ…成程…」
「…む?その東堂はどうした?」
「三途の川の向こうに高田ちゃんが見えたとか何とか言って二度寝してる」
「「なにやってんだアイツ…」」



ほんとは直哉活躍回にしたかったんだけど…書き直してる内に乙骨覚醒回になっちゃった…

誤字報告ありがとうございます!
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