パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

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妖怪親バカ

今回はちょっと無理矢理感ある話かも



3.おじいちゃんだろ?おじいちゃんだよな?

 

 居酒屋のテーブル席。

 テーブルには烏龍茶とオレンジジュース、フライドポテトとタコの唐揚げが置かれている。

 甚爾は割り箸を割ると、早速タコの唐揚げをつまみと口へと運ぶ。

 

 口に含んだ時の感想は旨い、だった。

 衣はカリカリ。揚げたタコの香りが口の中で広がり、味への期待を膨らませる。

 だがそれも束の間、二、三度噛んだ瞬間甚爾は思わず眉を顰めた。

 味は旨い。居酒屋のメニューを張るだけはある。

 がしかし、タコの感触があまりに微妙。カリカリの衣からベチャ付いたガムが出てきたような、想像するだけでも気色の悪い感触。味どうこうへの感想が吹っ飛ぶほどのインパクトであり、思わず口から出しそうになる。

 

「……50点だな」

 

 酒のツマミとしてなら、まずまずといったところか。

 恵も試しにと食べてみているが、なんとも言えない顔をしている。

 

 と、そこで居酒屋の入口から懐かしい顔の男がチラリと見える。禪院家現26代目当主にして最速の術士の異名を持つ、禪院直毘人である。

 その後ろに見覚えがあるようなないような青年も着いているが…。

 

「久しいな甚爾。お前から呼ばれる日が来るとはな…その小僧はお前の子か?」

「俺の息子の恵だ。ほら、恵もおじいちゃんにこんばんわ〜って」

「こんばんわ!伏黒恵です!」

「……………は?」

 

 直毘人は狐につままれたような顔をし暫くフリーズする。

 まるで自分の術式を喰らったかのようだが、それにしては随分と長いような気もする。

 10秒ほど経ち、ようやく脳に血が巡りだしたのか直毘人が口を開いた。

 

「お前、本当に甚爾か?」

「正真正銘伏黒甚爾。呪力だってねぇだろ?」

「いや、それは分かる。分かるんだが……」

 

 直毘人は額に手を当て熱がないかを確認する。

 しかし非情にも平熱。アルコールも抜けて寧ろいつもより健康体だ。

 

「それよりそっちは?後ろのガキは誰だ?」

「あ、あぁ。コレは俺の息子の直哉だ。お前に会いに行くと言ったら付いてくると聞かなくてな」

「こんばんわ〜」

 

 直哉と呼ばれた青年は笑顔を作ると軽く会釈する。

 たしかに記憶を掘り返してみれば、行く先々であんな顔のヤツを見たような…。

 

「それで?俺を呼んだ用件はなんだ?」

 

 鋭い眼で直毘人がこちらを見る。

 相手を見定めるような鷹じみた眼だ。相も変わらず、いや寧ろ年季を重ね更に鋭利さを増したようにも見える。

 

「そう焦んなよ。数年ぶりの再会だ、席に着いて酒でも呑みながら、ゆっくり話そうぜ」

「…まぁよい。お前のその変わり(よう)の種も知りたいところだ」

 

 二人はそれぞれ向かいの席へと着席する。

 すると恵は二人の顔を見つめ、甚爾の顔をちらりと見ると、もう一度二人の顔を穴が空くほど見つめる。

 何か思うところがあるのか、怪訝な顔を浮かべる恵に疑問を抱く。

 

「どうしたんだ恵?」

「……本当に僕のじいちゃ?パパにそんなに似てないよ?」

 

 甚爾は烏龍茶を、直毘人は水をブッと吐き出す。

 そういえばそういう設定だった。すっかり忘れていた甚爾は、むせながら思い出す。

 ちなみに直哉は理解していないのか、頭に?を浮かばせ首を傾げている。

 

「そ、そうだな。確かにそんなに似てないよな。けど、父さんとおじいちゃんはちゃんと血は繋がってるぞ」

「おい甚───」

 

 その瞬間、甚爾から射殺さんばかりの殺気立った瞳が直毘人を貫く。直接見られていない直哉ですら肩を震わせるほどで、当の本人ともなれば顔は青くなり額に脂汗をダラリと浮かべている。

 とはいえ流石禪院家の当主、恐怖で震えながらも冷静に頭を働かせ、今の状況を瞬時に把握する。

 

「──あぁ、そうとも。俺と甚爾は(れっき)とした親子。そうだとも」

「ちなみにそこのお兄ちゃん──直哉お兄ちゃんは、俺の弟なんだ」

「そうなの!?」

 

 いきなり矛先が振られた直哉だが、先のやり取りで流石に状況を把握したのか笑顔で恵へ手を振る。

 

「せやで。俺は甚爾くんの弟の直哉や。直哉にいちゃんって呼んでな」

「分かった!直哉にいちゃん!」

「……カワッ………フーーーーーーーン?」

 

 恵の天真爛漫な笑顔を受け、おかしな息の吐き方をする直哉。

 なんか満足げというか、若干灰汁が取れたような顔をしているが…多分気のせいだろう。尚甚爾は嫉妬により生まれた殺意の波動を抑え込むのに必死で凄い形相をしている。

 一方の直毘人は一連のやり取りで何となく察しがついたのか、面白いモノを見つけたという眼を甚爾に向ける。

 

「成程成程!変わりの種はソレか!随分と可愛い理由だなァ?」

「なんだ?可笑しいか?」

「可笑しいなァ、可笑しいともよ!子の可愛さに鬼神が人になるなど……クハハハハッ!」

「……おい」

「待て待てそう怒るな。確かに笑いすぎたな。それは謝ろう」

 

 頭を下げる直毘人。甚爾は別に止めるわけでも何か反応するわけでもなく、ただ黙ってそれを受け入れる。

 

「成程なぁ。確かに呼ばれた理由(わけ)にも合点が行く」

 

 やはり頭が切れる男だ。

 

「そうか。なら──」

「そう焦るな。テーブルを見ろ、まさかツマミだけで俺に頼み事などとは、言うつもりはないだろうな?」

 

 そう言いながら、直毘人はタコの唐揚げを指でつまみ口へと運ぶ。が、その瞬間顔を大きく歪ませ眉を顰めた。

 

「どうした?それだけで十分だったか?」

「馬鹿を言うな。慰謝料も込めてこの場はお前が持て」

 

 元々その予定だったが、流石に意地悪しすぎたか。

 甚爾は顎で注文するよう指図すると、直毘人は悪い笑顔を浮かべ早速呼び出しベルを叩く。

 

「何より先ずはアルコールだ。子の前だからと断るなよ?」

「悪いが今は禁酒中だ。呑むなら一人で呑んでくれ」

「カーッ、つまらんな!だが、まぁいいだろう。それに…ククッ、今日は旨い酒が呑めそうだしなァ」

 

 甚爾と恵を見ながら、直毘人はクツクツと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(二人共食べんけど、そんな不味いんかコレ?)

 

 直哉は唐揚げを一つ箸で摘むと口へ運ぶ。

 

(……俺は好きやけどなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頼んだ料理があらかた届いた頃。

 満腹になった恵は甚爾の横で眠っており、残った三人──直哉は基本聞き手に回っているが──は起こさぬよう声を落として会話していた。

 

「──ところで甚爾よ。殺しは止めたと言っていたが、呪具はどうしている?」

「アンタが心配しているようなことにはなってねぇよ。呪霊と一緒に家に置いてある。無論恵に届かない場所にな」

「あの呪霊も貴重だからな。間違えても無くすなよ?」

「無くせる程軽い存在じゃねぇよ」

「だな。売ればいくらだ?全て合わせれば数十億は下らんだろう?」

「さぁ?あんま考えたことねぇな」

 

 甚爾が持つ呪具は延べ十数個。

 ものによっては単体でも十億の価値があるモノも含まれるため、売る場所が場所であれば百億超えも夢ではない。

 といっても売る気は勿論手放す気すらないのだが。

 

「……そんな話はどうでもいい。そろそろ本題に入らせてもらうぞ」

 

 直毘人は腕時計を見ると、過ぎた時間におおと驚きの声を漏らす。演技っぽく見えたが多分素だ。

 

「どうせお前の小僧、恵のことだろうがな」

 

 手に持った盃を口元に近づけクイッと呑み干す。

 乾いた盃をテーブルに力強くカンッと置くと、それまで垂れていた眼を尖らせた。

 

「アンタの予想を聞かせてもらおうじゃねぇの」

「当たれば今日はお前の奢りだ。構わんだろう」

「いいぜ、乗ろう」

 

 甚爾が承諾した後、直毘人の推理が始まった。

 

 

「お前が俺を呼んだ理由、先ずはそこから紐解こうか

 素直に考えれば、お前が俺を呼ぶなど俺を殺すか俺以外を殺すかしか用はないだろう──と、最初は思っていたが、来てみればそのその小僧に溺愛の様子。となれば小僧に関する用であることは確定だ。

 では小僧に関する要件とは一体何か。

 小僧の歳は二か三か。その辺りの童に起きる問題は幾つか心当たりはあるが、お前や小僧の様子を見るにそれは関係ないように見える。

 となれば絞られるのは──将来を見据えた教育に関することだろう。大方お前はその小僧を術師として育てていきたいと考えていた。が、お前には唯一安心して預けられる高専へのコネがない。禪院家に預ける又はフリーの術師に預けるという手段はあるが、それはどちらも信用信頼できない。

 ならばどうするか。

『禪院家のマトモな当主に頼み込み、恵を高専へ預ける手筈を整えてもらう』

 俺がお前の立場ならばそうするだろう。

 

 ──さて、どうだ?俺の推理は合っているか?」

 

 

 長々と自分の推理を説いた直毘人。

 その全てを聞いた甚爾は、その視線を若干逸らし頬杖をついた。

 まさか最初から最後まで全部当てられるとは思いよらず、どう反応すればいいのか分からなくなった結果だ。

 

「どうやら当たっていたようだな」

「…何も言ってねぇだろ」

「よいよい、その反応さえ見れればな」

 

 満足げな笑みを浮かべる直毘人に思わず舌打ちをしてしまう。

 あなたのことならなんでも分かってます──みたいな顔をしていいのは、あの世でただ一人だけだ。

 

「さて、焦らすのもそこまでに。お前が求めているであろう返答──可か否か。それを今ここで返そう」

 

 乾いた盃に焼酎を注ぎ、それを口へと流し込む。

 一連の動作は現実時間ではものの数秒で行われた行為なのだが、返事を待つ甚爾にとってはそれは、悠久の時すら短く感じる程の、この世で最も長い瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

「いいだろう。この一件は全て、禪院直毘人この俺が引き受けた」

 

 

 

 

 

 

 その返事を聞き、甚爾は心の中でガッツポーズを取る。

 直毘人は冗談は言うが嘘は言わない。

 流石に鵜呑みにするほど馬鹿ではないが、当面はその言葉を信じてもいいだろう

 

「だが何故引き受けた?アンタなら拒みそうなもんだが」

「只の気まぐれ──ではない。当然だが、お前にもそれ相応の見返りは求めるぞ?」

 

 まぁ当然だろう。

 というか、甚爾はそのつもりで来ている。

 

「わあってるよ。で、誰を殺ればいい?五条家の六眼持ちのガキか?」

「殺る、か。それが出来れば話は早いが、生憎そうも行かん」

 

 直毘人は懐から一つの書簡を取り出すと、それを甚爾へ向け投げつける。

 空で歪な軌道を描くソレを容易く受け取ると、その宛先へと目線を向ける。

 そこに書かれていたのは──

 

「…五条悟?」

「如何にも。それは五条へ宛てた書簡よ。俺が求める見返りは、それを五条悟へと手渡すこと──」

「は?なんだそれ、自分でやればいいじゃ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──そしてもう一つ。五条悟を呪術界最強へと導く。それが条件だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────は?」

 

 




同時刻────






「……さて、これからどうする?悟」
「さぁな。俺は別にこのまま帰って知らんぷりでいいと思うぜ」
「高専にか?俺たちは天元様に──」
「バーカ、んなもんバレてからでいいんだよ。どーせバレたところで俺達なら問題ねぇよ」
「…フッたしかにそうだな。なんせ僕たちは──







「「──最強だからな」」





書簡等の話は5話で解説せるつもりなので暫くステイ
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