パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

4 / 30
タイトルのラップ感好き(小並感)




誤字報告助かります


4.脳筋教師伏黒甚爾

 

 東京都立呪術高等専門学校。

 通称高専と呼ばれる、呪術界の(かなめ)の一つ。

 呪術を基本とした教育は勿論、任務の斡旋や術師のサポートも行う。

 またその名の通り高等学校としての役目も果たしており、武道場や各教室の他、体育館やグラウンド等も設備されている。

 

 

 グラウンドへと続く道の途中──整えられた並木の傍で三人の生徒が歩いていた。

 真ん中を歩く女生徒以外の二人の頭部にはたんこぶが膨れ上がっており、それぞれがそれぞれの表情を浮かべながらグラウンドへと向かう。

 

「任務に失敗したぐらいで怒んなってのな。高血圧で死ぬぜアレ」

「仕方ないだろう。まさか()()()()()()()()()()()()漿()()()()()()()()なんて、眼の前で見た私達ですら信じ難い事実だ」

「その上、まさか死んだはずの天内ちゃんだっけ?と瓜二つの子が廉直女学院に転校してきたらしいもんねー。すごい偶然」

「だろ?しかもDNAも指紋も完全一致!これで他人ってんだからなァ?」

 

 白髪の青年──五条悟がそう言うと、横に並ぶ二人──夏油傑と家入硝子はそれぞれ笑みを浮かべた。

 

 五条と夏油が任された任務──星漿体の護衛と抹消は失敗に終わった。

 星漿体はどこからともなく現れた呪霊に取り込まれたのだ。

 一応呪霊は五条と夏油の活躍により祓われたものの、星漿体の行方は今も知れず、書面上では死亡という扱いになっている。

 

 尤も真実は異なるのだが──それはこの世でたった三人しか知らない秘密である。まぁ大体察しはつくが。

 

「しかし問題は天元様だ。未だ音沙汰無しだが…どうなっているんだ?私達にそれらしい刑罰もないし…」

「拳骨一発受けたろ」

「それは術師としてではなく、学生として受けたものだろう?」

「なら、上も学生にこの一件を任せたことを反省してるんじゃねーの?」

 

 夏油と五条。

 両者とも現呪術界においては最強の一角として数えられる程の実力者。特級案件ですら片手間で処理出来るほどである。

 だが二人はあくまで学生──年齢的にも精神的にも未だ子供だ。

 凡ミス、手違い、判断ミス、或いは任務に私情を持ち込むことは幾らでも想像できたはずだ。

 

「つまり責任は大人が取るものもので、子供の私達は関係ありませーんってこと」

「流石に今回はそれが十割通用するかも怪しいけどね」

 

 夏油はそう言うと、日差しを手で遮りながら眼前に広がるグラウンドへと目線を向けた。

 

「…で、なんで私たちはグラウンドに呼ばれたんだっけ?」

「さぁ?しかも硝子も呼ばれたじゃん?傑と俺だけならまだ分かんだけどさ」

「だよねー……って、何アレ?」

「「あー?」」

 

 家入が指を指す先。

 二人が目線を向けると、そこには筋骨隆々な男と背の小さな子供、そしてその二人より離れた場所に夜蛾と和服を来た青年が立っていた。

 

「まさか、あの男の護衛と抹消──!?」

「今度のは随分と逞しい星漿体だね」

「寧ろ私達いらないでしょ」

 

 と冗談を交えつつも、五条はグランドに立つ彼等──特にムキムキな男に対しては警戒の眼を向ける。

 

(強いなアイツ。呪力が見えねぇが…どっちにしろタダモンじゃねぇだろうな)

 

 しかしだからこそ、何故そんな男がココにいるのか分からない。

 警戒心を一層強くし、五条たちはグラウンドへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──で、こいつら誰よ?」

 

 この場の三人の誰もが思ったことを、開口一番に唱える五条。

 まぁそう聞かれるだろうなと予想していた夜蛾は、溜息と一緒に紹介し始める。

 

「こちらは元禪院家の伏黒甚爾さんとその息子の伏黒恵くん。後ろの彼は本日より高専に入学した禪院直哉だ」

 

 呼ばれた順に軽く会釈をする。

 

「禪院家だ?なんで御三家の連中が?」

「俺と恵を含めるなガキ」

「あぁ゙ン?」

「悟は全く…その、色々と把握できていないんですけど、その直哉くん?は兎も角として、あの二人は?それに私達、特に硝子も呼ばれた理由は?」

 

 最初からバチバチにメンチを切り合う二人を無視し、夏油が夜蛾に質問する。

 

「よくぞ聞いてくれた。実は昨晩、禪院家から禪院直哉の入学と特別教師の派遣の話が来てな。昨日の星漿体の一件で弛んでいる二人にいい薬になるだろうと踏み、内密に承諾していたのだ」

「特別教師?彼がですか?」

「そうだ。だが調べても経歴は不明。禪院家には数年前まで居た記録は残っているが、それ以降は一切の記録が無し。詳しく調べれば何か出るやもしれんが──」

「触らぬ神に祟りなし。相手が御三家なら尚更って事ですか」

「へー。道理でこんな胡散クセェ泥棒みてぇなツラしてンだな」

「生意気で小五月蝿ェクソガキと比べりゃ良心的だろ」

「……それと恵くんは一応、高専で預かることになっている。その内お前たちの任務に同行させることもあるだろう。今の内に仲良くするように」

「親に似て無愛想な顔してんだな」

「あ?殺すぞガキ。無愛想なのはテメェが眼の前に突っ立ってるからだ。それにそのちょっと無愛想なところも可愛いんだろうが。節穴なのか?六眼も使い手次第で使い物にならねぇんだな。ならその眼球にそのグラサンブチ折って詰めてやろうか?」

「……わ、分かりました…」

 

 更に二人が(いが)み合う中、家入が夏油に変わり質問を続ける。

 

「特別教師って何教えるんですかー?」

「俺も詳しくは知らないが、近距離戦闘のコツと呪力の上昇、そして反転術式の習得を学ぶと──」

「はぁ!?コイツが?!反転術式を!?」

「そうだが?なんか文句でもあんのか?」

「あるに決まってるだろ!反転術式どころが呪力すら持ってねぇヤツに何が教えられるってんだ!」

「確かに悟の言う通り。呪力を持っていない貴方がどう反転術式を教えるんですか?」

 

 声を荒げる五条に夏油も賛同する。

 

 反転術式は負のエネルギーである呪力を掛け合わせ正のエネルギーへと変える技術。これを用いることで自身の傷を癒やすことや、術式を反転させ多様な攻撃方法を用いること、また極めれば他人の傷すらも癒やすことが出来るようになる。

 だが反転術式はおいそれと出来るほど簡単な代物ではない。

 使い手は現代術師の中でも相当限られており、その上狙って出来るようになれた者、他人の傷を治せる者は合わせても指折り数えられる程度だ。

 

 だがそんな高度な技術を、それも呪力を持たない人間が教えるというのだ。疑い、或いは苛立ちが浮かぶのも致し方無いだろう。

 

「なんや君ら、甚爾くんに文句あるんか?」

「テメェは誰だよ。知らねぇヤツは引っ込んでろよドブカス!」

「あ?同じ御三家かて手出さん思ったら大間違いやぞ」

「ハッ!お前俺と同じ御三家だったのかよ!呪力も術式も普通過ぎて一般人(パンピー)と勘違いしちまったよ!」

 

 それまで怒りの形相を浮かべていた直哉だが、怒りが頂天に達したのか次第に殺意を帯び始める。瞳が据わり低く構えると、全身に呪力を滾らせた。

 

「死ねやボケ」

「レスバに負けたら実力行使かよ!発想も幼稚で救いようがねぇなァ!」

 

 対する五条も無下限術式を張ると指先で直哉を煽る。

 一触即発──。

 

 だが、それは割って入った甚爾によって中断される──否中断せざるをえなかった。

 

 

 

「待てよ。まだ授業のチャイムは鳴ってねェぜ?」

 

 

 

 五条の首筋に突き付けられた二股の剣。

 直哉の腹部に添えられた大刀。

 その両刀はどちらも甚爾が向けたものだった。

 

 いつ取り出したのか──。どこで抜刀したのか──。いつ二人に割って入ったのか──。

 疑問が尽きることはないが、その何れも考える余地が無い程、五条の思考は今目の前にしているその現実と向き合っていた。

 

 

(もしコイツが俺を殺す気だったのなら──俺は確実に、為す術なく死んでいた)    

 

 

 甚爾が右手に握る二股の剣。

 六眼で見たところ、アレに込められた術式は、「あらゆる術式の強制解除」。

 五条の無下限を突破することができたのはその術式のお陰だろう。

 

 ならば五条の死因(仮)はあの呪具か?

 

 否、断じて否である。

 五条の六眼に捉えられないよう死角を利用し、かつ瞬時に移動したこと。

 呪具を二人に気付かれないほどの速度で抜刀、そして突き付けたこと。

 例えあの呪具を持っていたとしても、それらを為せる技術と技量が無ければ断じて為し得ない。

 

 無論五条は油断していた。甚爾のことを思考に置いていなかった。敵対することすら毛頭無かった。

 だが、それは全て言い訳だ。

 このまま甚爾が刀を刺せば、間違いなく五条は死ぬ。それが現実、それが事実だ。

 

 五条は今、甚爾によって殺されたのだ。

 

「…硝子。今の彼の動き見えたか?」

「傑が見えないモンが私に見えるわけ無いじゃん。ねー恵ちゃーん」

 

 いつの間にか家入の腕に抱かれていた恵。

 二人がぶつかり合うことを予想した甚爾は恵を掴み家入の元へと投げていた。

 尚、恵はたばこ臭い家入は嫌なのか、必死に離れようともがいている。

 

 五条と直哉はゆっくり手を引くと、滾らせていた呪力、術式を引っ込めた。

 

「流石甚爾クンやな。俺の速度着いてけるんは親父と甚爾クンぐらいやで」

「…アンタの実力は分かった。だが、それと反転術式は別物。どうやって俺等に習得させてくれンだ?」

「面倒だがな。そこの前髪にも教える予定だ。さっさと来い」

 

 甚爾は夏油を呼ぶと、眼の前に三人を横一列へ並ばせた。

 ちなみに、夜峨は既にグラウンドから消えている。

 

「改めて、特別教師とかいうやりたくもねェ仕事を任された伏黒甚爾だ。今からお前らに反転術式やらなんやら教えてやるから覚悟するんだな」

「覚悟?私達はこれから何をするんですか?」

「私が呼ばれた理由も分からないんですけどー?」

「お前は恵にベタベタ触るな!恵がタバコ臭くなるだろ!」

「えー?でも恵くん可愛いんだもーん」

「だろ?恵はこの世で最も可愛いんだ」

 

 恵が不満げな顔を浮かべる中、並ばされた三人は小声でヒソヒソ喋る。

 

「聞きたいんだけど、あの人っていつもあーなの?」

「昔はあーやなかったんやけどな。昔はもっと一匹狼みたいで迫力凄かったで」

「まぁ今でも迫力はあるにはあるが…ところであの肩に巻いている呪霊は?悟分かるか?」

「見た感じあの呪霊内部が四次元ポケットみたいになってるんだろ。呪具もアレから取り出してた──かも」

「いつあの呪霊を出した?気が付いたら巻き付いていたが…」

「ソレは俺にも分からん。どこから出したのかも皆目検討つかねぇな」

「呪力も無いのに、どうやって呪霊見てるんやろな」

「それは俺の五感が常人以上に優れているからさ」

 

 それまで恵のことで家入と会話していた甚爾が三人へと寄る。

 

「天与呪縛。聞いたことぐらいはあるだろ?俺は呪力が無い代わりに身体能力が全部底上げされてんだ。そのおかげで呪霊すら感知出来る察知能力が身に付いてるってわけだ」

「思ったよりスゲェ脳筋な方法で見てんのな」

「ついでに言っておくと、この呪霊は俺の身体の中に取り込んで運んでんだ。そうすりゃ側から呪霊は見えねぇだろ?」

「成程。それで呪具をノーリスクかつ大量に運べると」

「そゆこと。結構便利だろ」

 

 へー、とトリビアみたく唸る三人。

 

「おっと、話が脱線したな。そんじゃ早速、お前らに反転術式を覚えてもらうとするか」

「んで、どう教えんだ?」

 

 甚爾は左手に持っていた大刀を呪霊の中に仕舞うと、中から鎖をジャラジャラと取り出し始める。

 その鎖の先端に先の二股の剣を取り付けると、手元でグルグルと回し始めた。

 

「つっても、俺は反転術式のやり方なんざ知らねぇ…」

「だからどうやって教えんだよって……おい?」

「………嫌な予感が」

「甚爾クン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから──お前等全員本気でボコる。死ぬ気で感覚掴まねぇと、死ぬぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

「「「はァァ!!??」」」

 

 

 驚く間もなく、音速の刃が三人を襲った。

 




「それで、私はなんで呼ばれたんですか?」
「治療役兼恵の世話係だ。俺はアイツらで手一杯だからな」
「ですよねー」
「……何度も言うがそんなにベタベタ触るな!恵がタバコ臭くなるだろ!」
「えー?恵くんプニプニで気持ちいいんだもん」
「それは分かる」



ストックが残り一個なので投稿頻度下がるかも。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。