パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

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説明パートとバトルパートは苦手。


5.聞いてた話と違うやんけ!!

 

 昨晩─居酒屋の席にて───

 

 

「なんで俺が五条家の坊を教育しなきゃなんねぇんだ?」

 

 前のめりになると直毘人に顔を近づける。

 威圧──むしろ殺意すら帯びた眼光だが、二度目ともなれば鼻で笑うほどの余裕がある。

 

「話してやってもいいが、それを説明する前に先ずは今の禪院家を話さねばならん。長くなるぞ?」

「…ッチ、簡潔に話せよ」

 

 そんなに聞きたくはないが、かといって聞かないと先に進むこともできない。実質詰みだ。

 直毘人は姿勢をダラけたものへ変えると、盃を一杯仰いだ後ゆったりと語り始める。

 

 

 今の禪院家には二つの勢力が存在する。

 その2つに名称は無いが、説明のため分かりやすく「現禪院家勢力」(以降現勢力)と「新禪院家勢力」(以降新勢力)としよう。

 現勢力は当主直毘人の意向を重んじ、今の御三家の対等な関係を維持しようとする勢力。

 対して新勢力は御三家のヒエラルキーを明確にし、禪院家至上主義を確立しようとする勢力。

 勢力図としては3:7といった具合で、新勢力の方が優勢とされている。

 

 というのも、禪院家に居る者の大半は元々、今の五条家、加茂家を舐めている節があるのだ。

 加茂家は相伝の術式から見て分かる通り、自分達が前衛に立つ立ち回りを得意としておらず、基本は味方のサポートと遠距離攻撃が中心の戦法を旨としている。そのため個としての実力は高くはなく、仮に戦おうものなら禪院家に軍配が上がる。

 五条家は五条悟のワンマンチーム。確かに単騎とはいえその戦力は術師の中でもトップクラスであり、同じ御三家の禪院家ですらタイマンで適うものは一人としていない。

 が、これはあくまで一対一での戦いの場合。

 五条悟の最も恐れるべきは攻撃の一切が通じない点。対処するには領域展開を行い術式に必中効果を付与するか、無下限が切れるタイミング──とどのつまりスタミナ切れを待つしかない。

 領域展開は当人の術式相性にもよるため勝つ可能性は低いが、スタミナ切れを狙うのであれば禪院家総出で波状攻撃を仕掛ければ良い。無論犠牲はかなり伴うし、勝率は実際には3割にも満たないが、勝てる可能性自体は秘めているのだ。

 

 更に言えば五条悟は未だ学生。大人である自分が挑めばワンチャンある──と夢を見てしまうのも理由の一つだ。

 

 

「五条家より上であることを明確に示すには、御前試合を行うことが手っ取り早い。が、それを行うには、どうしても現勢力──特に当主である俺が邪魔だ」

「で、今はその二つの勢力がバチバチってわけか」

 

 今の禪院家の状況を聞いた甚爾だが、幾つか疑問を抱く。

 

「説得できねぇのか? カスばかりとはいえ、んなバカじゃねェだろ」

「それが出来たら苦労はせん。それに、奴らは本気で天下を取れると思っているらしい」

「ハッ、ならそのまま天下取らせに行かせろよ。勝てる可能性あんだろ?それともなんか問題あんのか?」

「問題大アリだ。日本に蔓延っていた呪詛師共を抑えているのは何を隠そう五条悟だ。仮に新勢力が勝り五条悟が死ぬようなことがあってもみろ。全国の呪詛師が一斉に息を吹き返すことになる」

「それぐらいなら──」

「確かにこちらも全国の術師をフル稼働させれば対処はできる。だがそれは()()()()()()()()()()()()()()()だ。五条家は壊滅。それ以外の御三家も御前試合により疲弊している。また御三家がパニック状態に入れば情報ネットワークも死ぬ。迅速に対処することは極めて困難だろう」

 

 更に言えば、仮に術師が呪詛師の対処に間に合ったとしても、その後の問題として自然発生する呪霊の対処がある。

 現状ですら人手不足により対処が間に合っていないのだ。

 そうなれば日本はもう終わりだ。

 

「こりゃ海外にでも逃亡するしかねぇな」

「その上、仮に五条悟が死のうが死ななかろうが、禪院家が勝とうが負けようが、なんにせよ禪院家全体の戦力は低下する。攻め落とすカッコウの的だろうな」

「で、この状況を打破する方法が五条悟を最強にするだ?理解できねぇな」

「安心しろ、これから説明するところだ」

 

 

 この状況を解決する方法は至ってシンプル。

 他の御三家が禪院家以上の武力を持てばいいのだ。

 新勢力がその勢いを増しているのは今の御三家が自分達だけでも壊滅可能だと思っているから──つまり逆説的に他の御三家の力が増せば、その勢いも鈍化する。

 

 だがこの方法には当然デメリットが存在する。

 一つ──禪院家の立場の下落。

 これに関しては止むを得ないと素直に認めるしか無い。

 二つ──五条悟の放遊。

 五条悟が最強になるということは、彼を止められる存在はこの世に存在しなくなるということ。具体的にどのような行動をするかは不明だが、少なくとも禪院家にメリットになるようなことはしないだろう。

 そして三つ──禪院直毘人の命は未だ危ういこと。

 そもそも新勢力の矛先は現在直毘人へと向いている。仮に五条悟が強くなり御三家へのヘイトが無くなったとしても、直毘人を打ち倒し当主の座を奪おうとする者は少なからずいるだろう。その上新勢力には当主の座を狙う古参の者も多くいるため、その可能性は大いにある。

 

「そこでお前に委ねた書簡よ。ソレには五条悟と俺の間にある(ちぎり)を結ぶための書が内包されておる」

「契?……ハッ、成程な。大体予想はつく」

 

 

 直毘人と五条の間に結ぶのは、有り体に言えば同盟である。

 同盟と言ってもそれは個人間──二人の間でのみ結ばれる小さなものだ。

 その内容は簡潔に言えば以下の二つ。

 

 一つ──互いに自分の身に危険が及ぶ時、或いは緊急時又は非常時である場合、一度だけ相手を呼ぶことができること。

 二つ──呼ばれた場合は救援、救助、助っ人として迅速に参上し相手の命令、救助条件に素直に従うこと。

 

 

「仮に結ばれれば、それをチラ見せするだけでも効果覿面(てきめん)。一度だけとは言え新勢力の奴等に「自分の背後には五条悟という最強の後ろ盾がいる」という最上級の脅しができるわけだしな。そうなれば少なくともアンタに手を出そうと思うやつは居なくなるだろうな」

「五条悟としても俺という手札を一枚握れるのはデカいだろう」

 

 自分で言うなよ、と思わなくもないが実際その通りだ。

 直毘人は一級術師の中でも最上位に位置する実力の持ち主。

 それを抜きにしても禪院家当主であるため手札として持っておいて損はない筈だ。

 

「だが……どうやって渡すんだ?五条悟を最強にするっつたって高専にアポ無しで突撃しろってんじゃねぇよな?」

「無論策はある。…が、そのためにはもう一人、出向いてもらわねばならぬ者がいる──」

 

 腕を組み直毘人が難しい顔をする。

 甚爾もまるで予想が出来ないのか顎に手を置き、一方直哉は頼んだコーラを優雅に飲んでいた。

 

「誰だそいつ?」

「ほーん。まぁ俺や無いやろ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

「直哉。お前だ」

 

 

 

 

 

 

 

 盛大にコーラを吹く直哉。

 口元を拭きながら威勢良く立ち上がるとダンッとテーブルを叩く。

 

「アホ言うなや親父!なんで俺がそんな面倒臭いことせなあかんねん!」

「まだお前に何をやらせるのか言ってないが?」

「そ、そやな。確かに内容も聞かずに怒鳴るんは可笑しいな。で俺は何するん?」

「高専に入学する──」

「アホ言うなやクソ親父!なんで俺がそんな面倒臭いことせなあかんねん!」

 

 二度同じようなことを言う直哉。

 流石に疲れたのか席に着くと、ふんぞり返ってそっぽを向く。

 

「お前には特別教師として高専に向かってもらう。禪院家からの推薦という体でな。だが一人で高専に向かえば変な疑いを掛けられるやもしれん。故に直哉と共に高専へ向かうことでその警戒心を薄れさせる。所謂カモフラージュというやつだな」

「成程。で、五条はどうやって最強にすんだ?」

「それは追々伝えよう。それと、あまり他の情報は漏らすなよ。面倒事は避けたいからな」

「……恵はどう──」

「無論分かっている。お前のことを高専に説明する際に恵のことも話すつもりだ」

「話が早くて助かる」

 

 二人の間で着々と話が進む中、直哉は納得しないまま指先を直毘人に向ける。

 

「俺は行かんで!四年もあんなむさっ苦しい場所に幽閉なんか拷問の方がマシや!」

「むさ苦しいのは禪院家も同じだろ」

「それはそうやけど!」

 

「……うーん…」

 

 すると直哉の叫びで眠りから目覚めたのか、恵が唸り出す。

 三人は声を張りすぎたと反省しつつ、起こした戦犯である直哉を二人が睨む。

 

 

 

「パパ……直哉にいちゃ……ムゥ……」

 

 

 

 だが恵の囁きで怒りのムードはまるで消滅。

 

「グッ……ゥゥ……」

 

 直哉はグッと顔のパーツを中心に寄せ、何かに耐えている。

 甚爾は拳をグッと握り今にも直哉を襲わんばかりだが、流石に店の中で騒ぎを起こすわけに行かず理性で耐えている。

 因みに直毘人はちょっと悲しそうだ。

 

「…ハァ。わぁったわぁった。恵くんと甚爾くんに免じて今回だけは乗ったるわ。そん代わりやることやったらトンズラさせてもらうで」

「別に構わん。だが五条を最強にする手前、お前にも色々と手伝ってもらうからな」

「手伝い?……ま、(らく)そうやしええで」

 

 どうせ茶出しかそれくらいだろうと踏み、直哉はそれに承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───なんで俺が、んな目に遭わなきゃいかんねん

 

 

 直哉は走馬灯のように昨日のことを振り返っていたが、体中から走る痛みによって現実へと戻される。

 

 甚爾が振り回す得物によって、直哉と夏油は既にズタボロだった。運良く致命傷になり得るような一撃は食らってはいないが、それでも時間の問題だろう。

 対して甚爾と五条は擦り傷切り傷のみ。出血量だけ見れば五条が押されているが、基本どちらもほぼノーダメ、無傷だ。

 

「…あのよ。俺はお前らと戦うつもりはねェんだ。単にお前らを半殺しにするだけだ。あんま抵抗すんな」

 

 そんなことを表情も変えず言う甚爾に寒気すら立ってしまう。

 

「バケモンだろアイツ…」

「悟もね。…しかし幾ら呪霊を出しても、あの鎖による分厚い壁が邪魔で近づけない。鎖の長さはどれぐらいあるんだ?」

「術式を見る感じ、射程は大体無限と考えたほうがいいな」

「何やそれ。チートにも程があるやろ」

「ということは、遠距離にも安地はないと考えた方がいいか」

「かといって近づけってのか?死ににいくようなもんだろ」

「近づいても死。遠のいても死。全く勝てる気がせんわ」

 

 ジリジリと近づいてくる甚爾。だが確かに甚爾の持つ鎖の射程は無限だが、高速で精密に動かせる距離はあまり遠くはない。せいぜいが10〜15m程度であり、それ以上離れれば精密性は低くなり速度も落ちる。

 まぁ速度が落ちると言っても目視がようやく可能になる程度なのだが。

 

「ココはアレじゃね?ライバルと共闘して倒すイベントボス」

「そもそもこれは私達が勝つための戦いではない気がするが……確かにこのまま半殺しにされるのも嫌だしね。協力するよ」

「共闘言うても、どない甚爾クン倒すねん。それに俺は君等と一緒に戦うんと初めてなんやで?」

「そこは…ほら、アレ──

 

 

 

 

 

 

 ──ノリでよろしく!」

 

 

 

 

 

 甚爾へ向け駆ける五条。

 それを合図に夏油は一体の呪霊を召喚する。

 

 人間大のイカの形をした二級呪霊。

 召喚されたソレは甚爾に向け真っ黒の墨を吐きつける。

 墨は当たる直前に拡散し、甚爾の視界を覆い隠す。

 

 ──これで視界と嗅覚は潰した。

 

 アイコンタクトを受けた五条は甚爾の背後へ走りながら呪力を回す。

 最大出力。今出せる最大火力。

 

 

 

「術式順転────『蒼』!!」

 

 

 

 全てを飲み込む蒼き無限は、墨に飲まれた甚爾目掛けて放たれ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイ、お疲れ〜」

 

 

 蒼が放たれる直前、甚爾は墨の中から五条の眼の前に瞬時に移動すると、無防備な腹に向けて剣を二度刺す。

 だが五条も一筋縄ではいかない。一度目はなんとか回避に成功。しかし二度目はフェイントを織り交ぜられ丹田へ深く刺されてしまう。

 激痛により五条は一瞬だけ意識を持ってかれ──その瞬間無下限が解かれた。

 その刹那を逃すこと無く間合いを詰めると、鳩尾を蹴飛ばし地面へと転がした。

 

 甚爾は視覚と嗅覚以外の五感も優れている。目と鼻を潰した所で意味はない。

 そのため墨は甚爾の視界を潰すどころか、むしろ始動のタイミングを読まれなくするための目隠し代わりに使われてしまった。

 

 

「な!?」

 

 五条が刺されて蹴飛ばされた。

 その事実を夏油が認識した頃には、既に甚爾は夏油へその刃を向けていた。

 

 ──呪霊を出しても間に合わない。

 

 音をも置き去りにし向かってくる甚爾を眼の前に、潔く敗北を認める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「忘れて貰ったら困るで甚爾クン!」

 

 

 

 投射呪法によりその速度を上げていた直哉は間一髪、甚爾を殴り飛ばした。

 

 

 そう、全てはこの瞬間のためだった。

 仮に目や鼻を潰した所で、それ以外の五感も底上げされた甚爾には効果はない。

 それを見越した上で甚爾に攻撃を与えるには、甚爾が反応できない速度による攻撃を行うか、意識外から攻撃するかしか術はない。

 前述した方法は直哉であれば可能ではあるものの、そのためには甚爾が視認できない程の速度になるまで上げ続けなければならず、それまで甚爾を足止めしなければならないリスクが発生する。

 後述した方法は五条と夏油を倒すため集中する、その一瞬を狙えば可能だが、チャンスは二回しか無くこちらもかなりのリスクがある。

 どちらを取るか──三人が選んだのは、両取りの策。

 直哉が速度を上げ続ける間に二人が攻撃。

 二人のどちらかが狙われることがあれば、その隙を狙い直哉が攻撃する。逆に二人が残り続け十分な時間を稼げれば、最速の一撃を甚爾に与えられる。

 リスクはかなり高いものの、十分成功を期待できる作戦だった。

 

 結論から言うと、時間稼ぎは失敗。作戦は2つ目──意識外からの攻撃へと移行する。

 五条を刺された際はその動きを捉えることができず、攻撃することは出来なかった。

 だが、五条を刺した後に夏油へとその刃を向ける、その一瞬に直哉は攻撃する隙を見出した。

 

 そして遂に甚爾へその拳を叩き込むことに成功。

 五条という犠牲は払ったが、成果としては十分だろう。

 

 

 殴られた方向にあった壁へメリ込む甚爾に警戒しながら、倒れた五条の元へ二人が寄る。

 

「悟!大丈夫か!」

「……うっ…せぇ……早く硝子呼んでくれ……」

「傷は……深いが致命傷じゃなさそうだ。良かったな」

「君のおかげで甚爾クンも倒せたしな。ほんまぶっ倒れてくれてありがとな!」

「このヤロー…覚えとけよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー。意外と連携取れんだな」

 

 

 

 

 

「「ッ!!」」

 

 

 

 二人が振り向く間もなく、背中を二回刺される。

 五条の横に川の字のように綺麗に倒れた二人は、うつ伏せの状態で首だけ振り返る。

 

「なんでや…!確かに俺の拳は当たってたやろ…!」

「アレか?もう少し速ければ完璧な不意打ちだったかもしれねぇが、生憎アレぐらいの速度なら見てから受け身まで反応できる」

「…流石甚爾クン……や…で」

 

 ガックシ、とそのまま直哉は気を失う。

 

「気失ったか…ま、どうせ明日もやるし別にいいだろ」

「「……え?明日も?」」

「そりゃそうだろ。最低二人は覚えるまで続けるからな」

 

 甚爾は笑顔でサムズアップをする。

 一方夏油と五条は引き攣った笑顔で頷いた。

 

 





「そういや、お前ら今俺に負けたってことだよな?なら俺の言う事に従えよ?」
「ガキ大将かよ」
「でも私たちが負けたのは事実。一応、内容だけ聞いてもいいですか?」
「これから俺と戦う時は術式の使用禁止。使っていいのは呪具と素手だけだ」
「はぁ!?それでどうやって勝てってんだよ!」
「元々お前らが勝つ前提じゃねぇんだよ。あのオッサンも言ってただろ?「近接格闘と地力の強化、反転術式の習得」がこの教育の目的なんだよ」
「確かにそう言っとったけど、甚爾クンに術式なしで挑むて無理やて」
「人の心ねェのかよ」
「あぁ、悪い。術式アリですら俺に勝てねぇ雑魚が、術式ナシで俺に勝てるわけねぇか。すまんすまん、今の話は──」
「術式なしでも戦えらァ!!舐めんじゃねェよクソゴリラ!!!」
「…普通に乗せられてるね」
「やね」




前半の説明パート、投稿する前になって色々矛盾してることに気付いたけど、ええいままよ。
ツッコミどころは多いけど我慢してちょ
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