パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

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女というか娘というか


ちなみに今の直哉の女への思想観についてですが
1 反転術式訓練でプライドズタボロ
2 家入に何度も傷を癒やしてもらった
3 家入にちょっかいかけようとして悟と傑にボコられた
の三拍子のおかげで基本見下すことは無くなりました(まぁ家入以外の女性にはまだ当たり強いけど)


7.誰よその女!!

 

「誰だ?」

 

 

 甚爾の名を知っている人間は相当限られている。

 その上相手が女児ともなれば、心当たり皆無である。

 

 電話の相手は甚爾の威圧的な声が怖かったのだろう。

 声を震わせながら、ゆっくりと言葉を綴る。

 

 

「わたしの名前、つみき。おかあさんが居なくなって、頼れるのとうじさんしかいなくて…」

「………あ!津美紀か!」

 

 会う機会も殆どなかったのですっかり忘れていた。

 

 伏黒津美紀。

 甚爾が再婚した相手が連れていた娘の名だ。

 確か恵の一個上で、子供ながらにしっかりとした子だった記憶がある。

 

 ちなみに甚爾の親バカは津美紀には発揮していない。

 甚爾にとって津美紀は「向こうが連れてきた子供」であり、赤子の頃から育ててきたわけでもないので恵ほどの愛でれる愛情はない。

 

「ごめんな怖い声出して。それで、おかあさんが居なくなったっていうのは?」

「おかあさん、さんにち帰ってきてないの」

「三日も?出かける前に何か言ってなかったか?」

「………なにも」

「そうか……」

 

 理由はわからないが、取り敢えず津美紀の元へ向かったほうが良いか。

 

「悪いが野暮用が出来ちまった。暫く席を外すが、休憩すんのも程々にな」

「「「うぃーっす」」」

「恵くんはどうするんですかー?灰原が背負ってますけど?」

 

 いつの間にか灰原の背中の上で寝ていた恵を指差す家入。

 

 ちなみに家入は最近禁煙を始めたらしいのだが、灰原が参加した日は大抵恵の世話を灰原をするので、恵が家入と触れ合う機会は減っている。その影響からか家入──と甚爾も──の灰原に対する当たりが結構強い。逆に灰原は何故当たりが強いのか理解できず嫌われたのかと勘違いしている。

 尚甚爾は嫉妬深い目線を灰原に送っているものの、流石に慣れたのか直接口に出すことはない。

 

「灰原、恵任せてもいいか?」

「もちろんです!」

「私には?」

「……必要があればな。それじゃ行ってくら」

 

 甚爾は手を振りながらグラウンドから離れる。

 その姿が視界から消えるまで、笑顔でその背中を見送る五人──ちなみに夜蛾はもう校舎に戻っている。

 

 そして姿が消えた瞬間、それまで笑顔を作っていた三人が一斉に真顔になった。

 

「よし、行くか」

「傑クン追跡に使えそうな呪霊おらん?」

「以前任務で捕まえた呪霊がいる。コイツを使おう」

「相手は五感の鬼。バレないよう細心の注意を払うぞ」

「ピンチなったら俺の術式で足止めしたるわ」

「いや、直哉だけ死なせるわけにはいかない。死ぬときは三人一緒だ」

 

 反転術式の訓練と言う名の拷問で随分と仲良くなった三人。

 これからストーカーをしようとすることに目を瞑れば眩しい限りの青春だ。

 

「ところで津美紀って誰やろな」 

「反応的に子供じゃない?多分だけど再婚相手とかの──」

「待て待て家入。ココは賭けようぜ?俺は誘拐した少女(ガキ)になっちゃんオレンジ四本」

「私は硝子の言う通り、再婚相手の()だと思うね。デカビタ五本」

「ほんなら俺は隠し子にしとこか。ペプシコーラ三本」

「私は夏油と同じく。スプライト八本」

「傑クンも硝子ちゃんも威勢ええな」

「お前らそんな安牌引いて楽しいかよ」

「その分賭けてるだろ」

 

 兎も角賭けが成立すると早速夏油が呪霊を召喚する。尻尾が黒い小さな犬のような呪霊。ソレに灰原の背で寝る恵の匂いを嗅がせると、早速甚爾の後を負い始めた。

 

「行くぞポチ」

「……」

「……」

「……なんだその目線」

「いやあ、ネーミングセンスないなぁおもて」

「ここは三人でそれぞれ出して多数決が定石だよな。つまんねぇ男だこと」

「……じゃあ聞くけど、君たちならなんて名付けるんだ?」

 

 直哉が頭を悩ませる中、五条はハー、と呆れたようなため息を吐く。

 

「あのな、名前ってのは見た目からも取るべきなんだよ。ほら見ろよ、尻尾が黒いだろ?そこから取って黒尾だ」

「黒尾か……認めたくはないが、結構いい名前だな。直哉は?」

Killing(キリング)Armored(アーマード)Slayer(スレイヤー)Ultra(ウルトラ)やな」

「「それはなしで」」

 

 

 結果。呪霊は黒尾と命名されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 甚爾の後を追い住宅街へと繰り出した三人と一匹。

 道中でアイスを買ったりジャンプを読んだりと満喫しながら後を追っていると、二階建ての寂れたアパートに着いた。

 

 恐らく甚爾は既にアパート内に入っているだろうが、甚爾の五感はアパート外すらも捉えているだろう。念のため離れた位置で甚爾を観察することにする。

 が、流石に距離があるので会話は当然聞こえないし、中で何が行われているかも見えるわけがない。

 

「聞き耳立てれる呪霊いないの?」

「悪いね。僕は冥さんみたいに感覚の共有はできないんだ」

「しゃーないなぁ。実はこんなこともあろうかと買っといたんや」

 

 直哉が取り出したのは集音部分が魔改造されたガラケー。画面側──所謂上半身側が改造されすぎてバランスがヤバいことになっているが、その見た目のダサさは必要犠牲と割り切るしかない。

 

「なんでンなもん持ってんだよ」

「任務で必要になるかもしれんやろ?」

「多分だけど、そんな任務は私達には回ってこないんじゃないかな?」

「ほらほら本当の事言えよー。先輩特権で殴るぞー?」

「ほんまにやましいことは考えとらんわ。親父に持っとけ言われただけや」

「ホントかー?」

「ホンマやて!」

 

 そう言いつつも、直哉からガラケーを受け取ると召喚した呪霊に握らせ、アパートの窓近くへと運ばせた。

 音声は直哉が持つもう一つの専用のケータイに送られるようになっており、リアルタイムで聞くことが出来る。

 だが魔改造しているとはいえガラケーのスペックでは流石に機能不足な点があるのか、流れてくるのは雑音の紛れたボソボソとした音声。だが今の手持ちの最大限がこれなので、遠くから会話が聞けるだけでも満足しておくべきだろう。

 

 三人がアパート近くの物陰に潜むと、早速音声が流れ始めた。

 

 

『…おかあさんが居なくなってからはどう過ごしてたんだ?』

『れいぞうこの冷たいご飯をたべてた…でもそれもなくなっちゃった…』

『そう、か……それで津美紀はどうしたいんだ?おかあさんの所に戻りたいか?』

『……おかあさん、私と会ったら迷惑かも』

『なんでそう思うんだ?』

『おかあさん、私が嫌いだったからいなくなったの。私がもっといい子だったら』

『そんなことは……いやいい、それよりこれからの津美紀の話だ。津美紀はおじさんたちと一緒に暮らすか?それとも……』

『………私は──………でも……』

 

 

 津美紀がモゴモゴしだしたところで長くなりそうだと確信した三人は、道中で買ったお茶とおにぎりを食べ始める。

 

「とりあえずこれで誘拐したガキはないやろ。残念やったなぁ悟クン」

「うっせ。言ってもお前も可能性低いからな?」

「なんでや、別に今の会話だけでそんなん分からんやろ」

「アイツの本当の娘ならもっと溺愛してるだろ」

「……たしかにそうやな!」

「いやそこ納得する所なのか?……お、進展」

「「なになに〜??」」

 

 すっかり会話を気にしていなかった二人は、一人だけずっとケータイに集中していた夏油の背後へ回った。

 

 

『なら、おじさんと恵がこの家に来るのはどうだ?というか、元々そのつもりだったしな』

『…甚爾さんは…私がいていいの…?』

『別に子育てに一人も二人も変わらねェからな。貯金も…いや、二人だと流石にもう少し稼ぐ必要あるか……?』

『甚爾さんが迷惑なら……私は別に……』

 

 

 

 

『何言ってんだ。俺は津美紀のパパなんだぞ?迷惑なんてバケツに目一杯でも遠慮なく掛けてけ。俺が全部受け止めてやる』

 

 

 

 

『!…………本当、に…?』

『それが俺の仕事だ。いくらでも掛けろ』

『………本当に……これから甚爾さんに迷惑、掛けても…いいの?」

『そう言ってるだろ?ドーンと来い!』

『……じゃ、じゃあ…今から温かいご飯がたべたい…!』

『いいな。ついでに味噌汁もつけよう』

『デザートにアイスも食べたい…!』

『お腹が痛くなるまで食べたらいい』

『甚爾さんと恵くんと一緒にゲームしたい!』

『俺は下手だが、それでもいいなら勿論』

『……本当に……嘘じゃない……?』

『嘘じゃねェさ。全部俺に任せろ』

 

 

 胸を張って宣言する甚爾。

 感極まった津美紀は泣きじゃくり床に(うずくま)った──的な音が聞こえてくる。

 

「親の仕事は迷惑を掛けられること……よッ!甚爾パパカックイイ!」

「伏黒先生良い親してるよね。私達にもその片鱗ぐらい見せて欲しいものだけれど」

「こりゃ恵クンもベッタベタなわけやな」

 

 外野が盛り上がる中、津美紀を宥めた甚爾は腰を落として視線を合わせる。

 

『取り敢えずご飯食べようか。アイスは後で考えるとして……』

『恵を呼んでゲーム──』

『──は今すぐはちょっと難しいな。恵は今昼寝中だし、おじさんもまだ仕事の途中なんだ。帰ったら一緒にやろう。な?』

『分か、りました……あの、その……』

 

 顔を赤らめる津美紀。直接甚爾の顔を見ないよう目を逸らしている。嫌われるようなことしたか?

 

『どうした?』

『…甚爾さんの好きな…………いえ!その、仕事って何ですか?』

『好きな仕事…?仕事……好きかどうかは置いといて、今は…まぁ教師──先生をやってるんだ。三人…時々四人とか五人になるが、ソイツらに色々教えててな』

『それって、私と同じ子供?』

『あぁ。物覚えの悪いクソガキどもだよ』

 

 

「「「あぁん!?」」」

 

 

『だが、こんな俺の下手な授業に付き合ってくれる……まぁなんだ、いい奴等でもある』

 

 

「「「いやー、それほどでも?」」」

 

 

 

 津美紀の手前貶すだけではと思い適当を言ったのだが、何故か一番聞かれたくない奴等に聞かれたような気がした。

 流石にこの会話を高専にいる奴等が聞いているわけがないので、確実に甚爾の思い違いではあるのだが。それを理解してもなお胸糞が悪い。

 

 

『…まぁいいか。取り敢えず今からご飯作るか』

『…う、うん!!』

 

 

 と、そこで電話を切ると三人は下ろしていた腰を持ち上げ妙に清々しい顔を浮かべる。

 

「さて、と。高専に帰って、アップでもしとくか?」

「俺も賛成や。三人で模擬戦でもしとこか?」

「いいねソレ。ついでに灰原と七海も混ぜて交流戦だ」

 

 肩で風を切りながら、浮き立つ気分を抑え歩く三人。

 何処と無く自信に満ち溢れたその顔は、高専に帰ると家入に「気持ち悪い」と言われたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして───時は流れること一年。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日。

 夏油傑は旧□□村への任務へと赴いた───。

 

 

 




「……どうしたお前ら?」
「別にどうもしてへんよな?」
「ただちょっとばかしやる気に満ちてるだけ。なぁ傑?」
「そうそう、いつまでも休んでたら鈍っちゃうよね。適度に体動かさないと」
「ま強いて言うなら?俺たち褒められたら伸びるタイプというか?」
「…………ところでさっきから気になってたんだが、俺についてくるこの呪霊はなんだ?」
「あ、そういえば黒尾のこと忘れ…………あ゛」




黒尾の名前の理由に気付けた人は多分天才
(そんな凝った理由じゃないけど)

明日投稿できるか怪しい所。
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