パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

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色々考えたけどこれで採用。





前話のハイキューと左門くんのどっちも見破られて悔しぃ



8.一番強いのはバフキャラってね

 

 夏油が任務へ向かう一週間前──。

 

 

 

「いっくよー」

 

 

 ペンを持った家入。消しゴムを持った夏油。

 掛け声と共にそれぞれ投げつけると、ペンは五条の無下限に阻まれ停止し、消しゴムは五条の頭へコツンと当たった。

 

「うん、いけるね」

「げ、何今の」

「…術式対象の自動選択か?」

「そ」

 

 これまでの五条はマニュアル──手動で対象を選別していた。が、それをオートマチック──自動選別にすることで、意識外からの攻撃を防げるようになり、また一々手動で選別していたため分散しがちだった集中力を全て攻撃に回せるようになった。

 

 脳の焼き切れも自己補完の範疇で反転術式を回し続けることで対処済み。掌印の省略も完璧にこなせる。

 

「赫と蒼の同時発動もボチボチ。後の課題は領域と長距離の瞬間移動かな。……そんじゃ次、傑ね」

「私は別に見せびらかす程のものじゃないんだが…」

 

 五条と場所を入れ替えると、早速呪霊を呼び出す。

 犬型の呪霊──以前世話になった黒尾だ。

 夏油は黒尾に二本指を指すと、その指先を五条へとスライドさせ手首をくるりと回した。

 すると黒尾は五条の足元へ向かい、その正面で座ると尻尾を振り始めた。

 

「呪霊操術の主従関係を自分以外に強制させられるようになった。当然主従関係にある悟を攻撃できないし、悟の言う事もちゃんと聞く」

「お手!お座り!チ◯チ◯!スカイラブハリケーン!」

 

 五条の命令を聞き順番に芸をする黒尾。流石にスカイラブハリケーンは出来なかったが、しっかりと主従関係は敷かれているようだ。

 

「でもそれ前も出来てなかった?」

「私が呪霊に対しそう命令すればね。でも相違点として、主従関係はあくまで悟にあるから、呪霊は私に対して攻撃が出来るという点がある」

「デメリットじゃん」

「まぁ主従関係はいつでも戻せるけどね。だけど、本題はココから」

 

 そう言うと、夏油は黒尾にもう一度指を指す。

 すると───

 

「ん?……おぉ?」

「あれ?悟なんか変わった?」

「本ッッッ当に微量だけど、呪力の総量と出力が上がった?」

「そ。主従関係の一部を反転させて、呪霊から悟に向けて呪力による強化を施せるようになった。あくまで反転してるのは呪力強化の方向だけだから、悟の命令は当然聞くし強化も解除できる」

 

 詰まる所、バフ掛けが可能になったわけだ。

 その上呪霊はバフに回っているとはいえ、普段と同様攻撃や守備に回ることも可能。今試しに呼び出している黒尾は四級呪霊でありバフの量も必然的に少ないものの、仮に特級呪霊を用いればその上がり幅は飛躍的に上昇し、戦闘における自由度も高くなるだろう。

 

「デメリットは呪力強化が出来るのは一人に付き一体まで。一体を複数体が保有するのは呪霊操術の基盤に背くからね。それと呪力強化している間は当然だけど、その呪霊が脆くなるのもデメリットかな」

「それ強化分の呪力自体は呪霊持ちでしょ?縛りをいくつか設ければもっと上がるだろうし…」

「主従関係自体の反転は出来るのか?」

「呪霊が人を従えるってことかい?出来はすると思うけど、その場合呪霊の手綱を握る者が居なくなる。簡単に言えば暴走しちゃうだろうね。まぁ、そもそも格上には通用しないし、仮に呪詛師を拘束する手として使うにしても無しかな」

「傑を強化した状態で呪霊は何体呼べるの?制限とかは?」

「複雑化しているとはいえ呪霊との主従関係自体は殆ど一方通行。負担は多少掛かるけど、前と変わらない使用感でも大丈夫なはずだ」

 

 尚、呪霊のバフ役は一人につき一体が原則と説明したが、他に従えている呪霊がいれば入れ替えてバフを継続することが出来る。

 流石にバフ役を変えるには夏油自らが操作する必要があるが、それを織り込んでフェイントやブラフを交えることが出来るため、頻繁に操作しなくともそれ相応のアドが見込める。

 

 

 五条のように本人があからさまに強くなったわけではないものの、前衛以外でバフ役としても活躍できるようになったのは紛れもない長所だろう。

 

「呪霊の所有権は夏油じゃないから、夏油からいくら離れてもその人の命令を聞くし…何気に凄くない?」

「誰でもお手軽に強くなれる呪霊セットってわけだ。悪用されるリスクはあるけど」

「流石に目に見えない所で悪用されたら気付けないからね。絶対に信用できる、それこそ高専生にしか与えないよう縛りを設ければいい」

「ま、誰に与えたとしても、俺達最強コンビに敵うヤツはいねェけどな!」

「……あぁ。そうだな───」

 

 

 

 

 

 

 

「───私"()"は最強だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一人忘れてもらったら困るで!」

 

 

 

 灰原達と組手をしていた直哉が休憩がてら近付いてくる。

 

 ちなみに直哉は反転術式をまだ覚えていない。

 恐らく甚爾に一番ボコられているはずなのだが…

 Mなのだろうか(五条談)

 

 

「お前はまだ反転術式覚えてねぇだろ」

「灰原の方が飲み込み良かったよね」

「うっさいわ!それ言うたら七海クンもやろ!…それにこちとら反転使えへんけど()()は使えるんやで?一年やからってなめとったら痛い目見るで」

「でもたしかソレ、まだ未完成じゃ……」

「ソレは言わんといてや硝子ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───二日後──シャッター街にて──

 

 

 

「そろそろいけるんちゃうかー?」

「あぁ、今なら取り込める」

 

 

 夏油は手を翳すと、呪霊は手のひらサイズの球体に収まった。泥団子のように黒光りする球体。掴んだそれを口に含むと、勢いよく丸呑みする。

 

「……傑クンが食べてるそれって美味いんか?」

「食べてみるかい?」

「いや遠慮しとくわ。キモい呪霊になりそうやしな」

 

 もし食べられたとしても、誰にも勧めない。

 吐瀉物を処理した雑巾を丸呑みにするような───

 

「……美味そうやな」

「…本当にそう見えるか?」

「見た目はアレやけど、食べとる傑クンの顔見たらな」

「どんな顔だよ」

「なんやろ。例えるならアメリカのハンバーガー食べとるデブみたいな、食べることが生き甲斐みたいな顔しとったで?」

「……それ貶してないか?」

「ほんまそんぐらいに見えるんやて。それとも去年夏バテでもしとったんか?」

「───あぁ、去年はそうめんを食べ過ぎてね」

 

 取り込むほどに 飲み込むほどに

 その味が口の中に広がる度に実感する

 誰のために? 何のために?

 

「そうだ。最近食べてなかったし、帰ったら皆で流しそうめんでもやろう」

「面白そうやな。けど食い過ぎたらまた夏バテなるで」

「分かってるさ。ちゃんと注意するよ」

 

 

 皆を守る力。

 皆を高める力。

 

 誰一人として失わない。失わせない。

 

 

 

 

 

 

 

 私達は最強なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「特級術師様がぶっ倒れてちゃ、全く世話ねェな」

「…………伏黒さん」

 

 高専内のベンチで目元にタオルを当てて休む夏油。

 甚爾はその近くの壁に凭れて、顔を顰めながら缶のコーヒーを啜っていた。

 

「まぁ分からんでもねェ。今年はムカつく程暑いしな」

()()()()()()()()()()()()()()()んですか?」

 

 五条と夏油──と滑り込みで灰原も──が反転術式を学んだことでお役御免となった甚爾は今年の春頃高専を去った。

 それからもちょくちょく顔を出してはいたのだが、ここ一ヶ月は音沙汰なし。今の甚爾達がどうなっているのか気になってはいたが……。

 

「金も貯まったし、もうここにも来ないつもりだった……んだがなぁ…」

「?何かあったんですか?」

「親が職に就いてなかったら、それが原因で恵がイジメられるかもしれねェだろ?」

「ま、まぁ否定はしないですけど…」

 

 実際、小中学生の頃一度は親のコトでイジメられる、又はイジられることはあるが…。

 

「そう考えたら、今の内に職就いたほうがいいだろって思ってよ」

「それだけの理由で高専の教師に再復帰ですか…」

「ここは儲けもいいし、仕事も楽だからな。何より親の職が教師ってのは、割と自慢できるしな」

「仕事が楽って……まぁ、確かにその通りだと思いますけど」

 

 教師と言っても語弊があるのだが…。

 ボコられている身からするとあまり賛同はできない。

 

「そんな俺のことよりもだ。お前どうした?」

「何が、ですか?」

「前見た時はさも社畜ですみてェな面してやがったのによ。今度はテーマパークのキャストみてェな面してやがる」

「行ったことあるんですか?」

「恵達と二~三週間前にな。流石にこの暑さもあって疲れたな」

 

 にしては満更でもなさそうな顔をしているが。

 

 ──この人になら話してもいいか。

 タオルで顔を拭い身体を起こすとベンチに腰掛ける。

 

「あまり面白い話じゃないですが──」

「なら面白くしろ。酒の肴に出来そうなぐらいにな」

「お酒は呑まないんじゃ?」

「お前達の奢りで飲むかもしれねェからな」

「生徒から(たか)る気ですか…?」

「冗談だ。お前って意外とそういう真面目なとこあるよな」

 

 

 イラッとくるが流石に抑える。

 苛立つ息を整えると、夏油は語り始めた。

 

 

 

 反転術式を覚えるあの日まで、夏油は劣等感で一杯だった。

 五条と共に最強という看板を掲げていたハズが、あの日から五条が一人で担いでいた。

 怒りは湧かなかった。

 むしろ、何故その隣に自分が立てないのだと、自分自身を責めていた。

 

 その劣等感を唯一忘れられるのが、呪霊を取り込むあの瞬間。人々を救うことが術師の使命。祓う程、取り込む程にそれを実感させてくれる。

 

 だが次第にそれも薄れていく。日に日に最強の高みへ近づく五条と、ゴールのないイタチごっこを続ける夏油。

 自分は誰のためにこんなことをしているのか、それすらも忘れる程に、精神的に参っていた。

 

 そんな時、夏油はついに掴む。

 呪力の核心──反転術式を。

 

 

 

「その時、私は悟りを開いたようでした。今まで取り込み続けたその意味を──自分の存在意義を見出したんです」

「存在意義?」

「非術師を救うだけじゃない。私のこの力には術師でさえも救える力がある!呪術界は人手不足が常、その大きな原因の一つが死亡率の高さにある。ただでさえ同級の任務でも危険が伴うというのに、更に危険な自分の等級よりも高い任務が回ってくる。そのうち今の術師だけでは回りきらなくなるだろう───が、私の力があれば術師は今よりも強くなり、死亡率はグンと減ることになる!」

「……へー」

「昔の私は、最強であることに拘りすぎていた。けど、今になって見れば幼稚な看板、妬むほど欲しいものではなかった。それよりも私は、術師の皆が誰も傷付くことがない!誰も居なくならない!まさに理想郷を作り上げたい!いや、作り上げてみせる!!」

 

 

 両手を上げ、高々と宣言する夏油。

 対する甚爾は冷静に、呆れたような顔で飲んでいたコーヒー缶を専用のゴミ箱へと入れた。

 

「そーかそーか。そりゃ大層な目標で。せんせーは応援してるぞー」

「……何か言いたいことがあるんですか?」

「別に?いい夢掲げてるようで結構、文句も何も言う事ねぇよ」

 

 なら何故そんな──と言いかけたところで、甚爾は「だが」と言葉を続ける。

 

「俺に言わせてみりゃ、お前は真面目過ぎなんだよ。まだ大人(卒業)まであと半年以上もある学生(ガキ)だ。現実なんてまだ見ねぇでいい。ンな自分が術師界を支えるなんて夢見ンのは卒業間近にしろ」

「…高校3年の夏は進路を具体的に考える──というか、もう既に決めてる時期ですよ」

「そうか?まぁどっちにしろだ。お前は何でもかんでも背負おうって気張り過ぎだ。なぁなぁでも適当でも柔軟にいかねェと、そのうち折れるぜ?」

「折れる程脆い目標じゃありません」

「だといいな。けど、そういうのって、意外と簡単なことでポックリ折れるもんだぜ?」

「……灰原をイジメた時みたいにですか?」

「アレは灰原が悪い」

 

 

 というのも、私用や三人の修行の際は恵のことを灰原に任せることが多かったので、一時期恵の灰原への好感度が甚爾を超えたことがあったのだ。

 最初は「恵が灰原を選ぶなら……文句はない」と言っていたのだが、ある日恵が画用紙に描いた飛行機の絵を灰原に上げたことで、抑えていた怒りが爆発。

 それから一週間灰原への当たりが理不尽なくらい強かったことがあった。

 ちなみに一週間後、恵が描いた消防車の絵を甚爾に上げたことで、灰原への当たりは軽減した。今思えばこの件のおかげで灰原は反転術式を習得したのかもしれない。

 

 

「まぁ、兎に角だ。俺が言いてぇのは、お前はもっと気楽に生きた方がいいってことだ。真面目ちゃんなお前には難しいかもしれねェがな」

 

 

 甚爾はそう言うと、ケータイの時計を見つめ「そんじゃ」と背を向ける。

 

「まだ手続きの途中だったんでな。コレ済んだらまた伏黒先生の復活だ」

「そ、そうですか…」

「なんだ?嫌か?」

「嫌じゃないナイデス」

 

 

 廊下から甚爾の姿が見えなくなる。

 それを見送った後、ベンチでもう一度横になると、タオルで目元を覆った。

 

 

 ───なんで泣いてるんだ?

 タオルに涙が染みたことで、初めて自分が泣いていることに気付いた。

 

 劣等感。その穴を埋めるために、無理矢理全てを背負おうとした。

 誰にも言えなかった。誰にも言うことができなかった。

 

 その全ての捌け口に甚爾はなった。そして逃げてもいいと言ってくれた。

 

 

「……この借り、いつか返さないとね…」

 

 

 目元を拭うと、タオルを肩に掛け立ち上がる。

 それまでの作ったような笑みは消え、その顔はいつもの夏油へと戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっべ。出るタイミング完全に見失ったわ」

 

 

 尚、どちらかに会おうとした結果どちらともタイミングが合わなかった特級術師がいたのだが。

 

 それは二人の知らない事実である。

 




 恵「パパ」
五条「伏黒センセー」
夏油「伏黒さん」
家入「伏黒先生」
直哉「甚爾クン」
七海「伏黒さん」
灰原「伏黒先生」


「……一人だけおかしくないか?」
「確かに一人生徒やない子がおるね」
「お前だよお前」



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