パパ黒が親バカだった世界線   作:限界社畜あんたーく 

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いにしえの文化。




最後の方寝不足で書いたから後日書き直す可能性大(ストーリーは変えないです)


9.吹 っ 切 れ た 。

 

 夏油が任務へ向かう一日前───

 

 

 七海と灰原──とついでに補助監督──は、がらんどうの電車の中で帰路に着いていた。

 

「いやー、まさかアレが一級呪霊だったなんてね!夏油さんにいい土産話が出来たぞー!」

「嬉々として報告することではないですよ。…ですが、私達に準一級術師相当の力があることは確認できた。感謝したくはないですが、伏黒さんとの特訓のおかげですね」

 

 二級呪霊の討伐任務に出向いた二人。だが実際に対峙したのは土地神──一級呪霊だった。

 だが甚爾との血みどろの特訓のおかげか、二人は苦戦することなく祓うことは出来た。上面だけ見れば美談で終わりそうなものだが、七海としては本来の等級と異なる呪霊と戦わされたことに納得していないらしく不満げな顔を浮かべている。

 

「夏油さんに頼んで推薦してもらおう!」

「私は五条さんに推薦してもらうので結構です」

 

 一級術師への推薦は、誰に推薦してもらうかは別に重要視されていない。が、今後を見据えるなら五条の推薦を受けた方が得と言える。一応語弊が無いように言うが、この場合夏油の推薦の価値が低いのではなく、五条の方が高すぎるだけだ。

 

「……全く、億劫ですね」

「え?なにがなにが?」

「私達がこうやって汗水垂らして祓っているというのに、五条さんはソレを片手間で祓うことができる。私達がいくら研鑽を積んでも届かない領域……壁が高いのは良いのですが、流石に高すぎるとやる気を削がれる」

「僕達だって、いつか五条さんみたいに強くなれるよ!」

「だといいですね。…さて、早く帰って報告を済ませましょう。今日は流しそうめんを(おこな)うそうですし」

「僕はやったことがないから楽しみだよ!」

 

 電車が停まると、空いた扉から二人は高専へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「推薦ね。私でいいなら構わないよ」

 

 流しそうめんが行われる中、推薦の話を受けた夏油は快く引き受ける。別に断る理由も無いが、何より自分を頼ってくれるというのが嬉しかったからだ。

 

「ありがとうございます!」

「とはいえ近頃は忙しいからね。一段落するまで待ってもらうけど、それでもいいかい?」

「大丈夫です!夏油さんから推薦が受けられるなら、いくらでも待ちます!」

「そうか?ならいいんだが。…ところで今回の任務、一級呪霊と対峙したそうだね。怪我はしてないか?」

「見ての通りピンピンです!」

「それは良かった」

 

 眼の前で恵、甚爾、五条、直哉の四人による流しそうめんの取り合いが行われる中、夏油はその光景を微笑を浮かべ眺める。

 

「…灰原は行かなくていいのか?」

「いえ!僕はさっき沢山食べたので!」

 

 灰原の視線の先──流しそうめんが行われる横では、家入と歌姫、冥冥がバーベキューを行っていた。どうやら予定日が被ってしまったようなのだが、それならば一緒にやろうということで、真横で行っているわけだ。

 ちなみに夜蛾と七海は手持ち花火を買いに行っている。

 

「それに、僕があの輪に入ると伏黒先生に殴られそうですし」

「ハハ、それは言えてるな」

 

 そうめんを根こそぎ奪った五条に畳み掛ける三人──無下限で阻まれているが──を見ながら、灰原が冷や汗をかく。

 今の血相の甚爾に当たられたら、多分灰原は死ぬ。少なくとも半殺しにされる。

 

「それより夏油さんこそ、行かなくていいんですか?」

「私か?私はさっき食べたし、それに───」

 

 

「傑ー!お前も来いよー!」

 

 

 それに──あの巻き添えにはなりたくないのだが……。

 

 無下限を超えんばかりの三人に押されながら、五条が呼んでくる地獄絵図。反転術式はもう習得したとはいえ、あまり怪我はしたくない。

 

「……ハァ、しょうがないな。呪霊使ってもいい?」

「やめろそうめんが不味くなる」

「甚爾クンも呪具使おうとしとるやろ!」

「直哉も術式使ってんじゃん。みっともねー!」

「「お前が言うな!!」

 

 

 

 

 

 その後、帰ってきた夜蛾達と手持ち花火で遊び尽くすと、甚爾達は家に帰り、高専生はそれぞれ寮へ戻る。

 

 風呂を済ませ、自分の部屋へ戻ろうとする五条。

 その道中で、ガラスの向こう──暗くなった外で星空を見上げる夏油を見つけた。

 

 

「どうした?ロマンチストにでも目覚めたか?」

「…ただ夜風に当たりたくてね」

「それをロマンチストって言うんだろ。ほれサイダー」

「奢りか?」

「馬鹿言うな。後で請求する」

 

 ペットボトルのサイダーを投げると、夏油はソレを空中で受け取る。キャップを回すと、夏油の方のサイダーだけが勢いよく吹き出した。

 

「『最大の敵は身内にあり』って言うだろ?これから気をつけた方がいい」

「あぁ、とても勉強になったよ」

「……で、これ誰の言葉だっけ?」

「ナポレオンじゃなかったか?」

「さぁ?俺もシラネ」

 

 ちなみに人は合っているが言葉の方が合っていない。

 といってもどちらもそこまで気になることではないので、多分明日には忘れているだろうが。

 

「で?なんかあったか?」

「…お見通しか?」

「ブラフ。言ってみただけだ…何かあったか?」

 

 流石にこうもあっさり騙されると、むしろ清々する。

 一瞬、自分の悩みを打ち明けるべきか迷うが、今更引くにも引けず自白した。

 

「……悟。私は、私にしか出来ない大義があると思ってる。人には出来ない大きな役割があると思ってる。下らないと罵られるかもしれないが、私にとってそれは使命であり、果たすべき目標だと思っているんだ」

「…それで?」

「伏黒さんにそれを伝えたら、お前は真面目すぎだって言われてね」

「そらそうだろな。お前会った頃から正論極堅生真面目人間だもん」

「…だけど、私は気楽な生き方というのを知らなくてね。君みたいに何にも考えないようになるには、どうすればいいのかな?」

「……仕返し?」

「お返しだ」

 

 そう言うといたずらっぽく五条は笑う。ふーんと顎に手を当てると、星空を見上げ暫く考え込んだ。

 

「気楽と言うか半端と言うか、いわゆる俺みたいになりてェなら、別に何も考えない必要はねェよ。というかソレただの馬鹿だし」

「そうじゃなかったのか?」

「おーやんのかー?……ま、冗談はさておき。俺みてェになりたいなら、お前がやることはただ一つ!

 

 

 

 

 ───諦めるこったな」

 

 

 

 

「……諦める?」

 

 怪訝な顔してそう聞くと、空っぽになったペットボトルで夏油の顔を指してくる。

 

「妥協できる(ポイント)を探すもよし、別の目標見つけるもよし、そのままその目標を丸々諦めるもよし。行き詰まった時とかは一回諦めるのも手じゃね?」

 

 諦める───か。

 考えてみれば、子供の頃の我儘を除けば、何かを諦めたことは一度たりとも無かった。

 何故──それを成し遂げる力と意思を持っていたからだ。だからこそ特級術師になれた。だからこそ反転術式を習得できた。

 

「…ま、いきなり諦めろっつったってそんなすぐ出来るわけじゃねぇしな。なんかの拍子で諦めようってなるかもしんねぇし。というか、そもそもお前が何にそんな思い詰めてんのかも知らねぇし」

「それはいつか話すよ」

「そうか?…なら、いいけどよ…」

 

 五条はペットボトルを蒼で潰すと、そのままゴミ箱へ投げ入れる。

 

「…ところで、悟はなんでそんなに詳しいんだ?君がそんなに諦め癖があるようには見えないが…」

「…これ、本人には言うなよ?……七海が俺によく『()めたい』とか『諦めたい』って愚痴ってくるからさ。そのおかげで理解度増したんだよな…」

「なんというか……七海が…そう、意外だね」

「俺以外には愚痴りたくないんだと。そういうことは灰原に言えよな!」

「信頼してるんだよ。多分」

「そうか?だよな〜!」

「でも尊敬はしてないよ。絶対」

「あ゛ぁ!?」

 

 小声で怒鳴りつつ、五条は寮へと帰っていった。

 後を追うように夏油も寮へと戻る。

 

 

 諦める───それが出来れば夏油も苦労はしない。

 理想を現実へと変える。その力が自分にある。

 

 

 この世界を変えるのは、この私だ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2007年9月

 

 □□県□□市(旧□□村)

 

 

 

 任務に赴き、いつものように呪霊を祓った夏油。

 

 その後帰ろうとした夏油だったが、村民に呼び止められ木製の古い牢へと連れられた。

 

 

 そこで目にしたのは───。

 

 

 

 

「……これはなんですか?」

『なにとは?この二人が一連の事件の原因でしょう?』

「違います」

『この二人は不思議な力で村人を度々襲うのです!』

「事件の原因はもう私が取り除きました」

『私の孫もこの二人に殺されかけました!』

 

 牢の中に閉じ込められた、二人の幼い少女。

 二人は顔に打撲傷が複数付けられている。村人の証言的に彼等が付けたものだろう。

 二人を傷付けているのはただの勘違いだ。呪霊による被害がこの二人により行われたことだと思っているようだ。

 

「それはあっちが!」

『黙りなさい化け物が!』

『やはり赤子の頃に殺しておくべきだった!』

 

 少女たちの言葉に村人は耳を貸そうとすらしない。

 これは大分深刻なようだ。

 

「いいですか、この子達は無関係です。あの事件は──」

『ならこの二人はなんなのですか!?事件の原因でないなら一体何者なのですか!!』

『早く祓って下さい!このまま祟りにでもあったらどうするんですか!?』

「…もう一度言います。彼女達は無関係です。あの事件の原因は取り除きました。これからまた何か起こるようなことは──」

『早く!!』

『今すぐこの二人を退治して下さい!!』

『もうあんな目に遭わされたくないのです!!』

 

 

 会話が通じない。

 これ以上進展は望めない。

 彼らと二人の関係は、このまま平行線を続ける。

 

 その時、脳裏に過る。

 

 

 

 

 

 

 

 ──私は、こんな人間も守らなくてはいけないのか?

 

 

 

 

 

 

 皆を守る───。

 

 そのために世界を変える───。

 

 ならば、いっそのこと───

 

 

 

 

 

 自分の中にある

 大切な何かが

 砕け────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前はもっと気楽に生きた方がいい』

 

『お前がやることはただ一つ!諦めるこったな』

 

 

 

 

 

 自分の中の、寸前まで崩壊しかけていたブレーキに二人の言葉が歯止めのように引っ掛かる。

 

 ───このまま、彼らを殺したとして何になる?

 

 

「………あ〜。なるほど、そうですか〜」

『どうかされましたか?』

『も、もしかして祓ってくれるんですか!?』

「えぇ対処しましょう。ですが二人は一応人間。ここで祓うとなると少々面倒事になります。なので、一先ずは私に二人の身柄を受渡してほしいのですが…構いませんかね?」

『えぇ勿論です!今すぐにでも!』

 

 

 牢から出された二人の身柄を──見かけ上そう見えるように──拘束し呪霊に跨ると、そのまま村から離れる。

 速度は振り落とされないギリギリラインの最高速度。

 

 大分離れた位置にある駅に降りると、夏油は真っ直ぐにトイレへ向かい、そして一気に───。

 

 

 

 

「……五、六ヶ月振りに、()()を味わったよ…」

 

 トイレの外で待っていた二人に聞こえないようそう呟いた。

 

 

 

 

 人間の醜悪さをコレでもかと見せられた時、夏油が思い描く理想の世界にヒビが入ったような気がした。

 

 コレを救わなければならないのか?コレも守らなければならないのか?コレのために死ななければならないのか?

 色々な感情がせめぎ合い、感情が暴発しかけた。

 

 だが、二人の言葉を思い出した時、自分が抱いていた幻想に。彼らにぶつけようとしていた感情に。その全て──何もかもに、ようやく諦めがついた。

 悩みも理想も、全てが吹っ切れた。

 

 

 

 

 

「さて、君たち二人は…どうしようか」

 

 

 高専に連れて行くのが道理だが、さてどう報告すれば良いのだろうか。正直今の吹っ切れた状態ならなんでも行けそうな気がするが、流石に理性が止めてくる。

 

「直球で言うわけにもいかないし…誤魔化しも効かないだろうし…一応聞いておくけど、君たち名前は?」

「…枷場美々子」

「…枷場菜々子」

 

 ミミとナナ。わかりやすくて覚えやすい名である。

 

「私は夏油傑、よろしくね。それで、二人は私の親戚として保護されるか、孤児として保護されるか、どちらが───」

「「親戚!!!」」

「…元気一杯で何より」

 

 何故そこまで食いつくのかは分からない。

 それと、あまり耳の近くで叫んで欲しくはないのが本心だ。

 

 ───まぁ、何はともあれだ。

 

「…なら、帰ろうか。私達の家に」

「「はい!」」

 

 呪霊に三人で跨ると、帰るべき高専へと向かった。

 




(昨日の話、一体どういう意図だったんだ…?)
「ただいまー」
「おかえ……り?」
「あ、この二人は美々子と菜々子──」
「……目標って、つまりそういう……?」
「……待て、何かとんでもない勘違いしてないか?待て!悟!逃げるな!!」


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