ねじれた世界のオンボロ寮より   作:蒼桜満

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オンボロ寮の探偵団、不可思議な事件を追う

 

今日の私は学業の傍ら、急遽探偵として助手にしては頼りないグリムを引き連れ聞き込み調査を行なっていた。

そうして不審な事件の被害者がいるらしい保健室の戸をグリムは道場破りのようにバターンと大きく開け放った。

 

 

 

 

 

 

 

事の始まりは今朝方にマジカルシフト大会に出たいと1日経ってもジメジメ引きずってるグリムに対して、オンボロ寮の面倒見のいいゴースト達がわざわざマジカルシフトを教えてくれて、皆でワイワイ外で楽しく遊んでいると学園長が尋ねて来たのである。

 

「おやみなさん。マジカルシフトですか。寮内のゴーストさんたちとも仲良くやってるようですね。感心感心」

 

一見和やかな世間話を挟みつつ、昨日の今日で何用かと思えば突然手伝ってほしいと言い出して来たので、面倒だと感じた私とグリムは依頼を聞く前にお断りした。しかし学園長は自身がこの学園のトップであることを強調しながら、手伝わなければ実質学費を1円も払ってないどころか生活費を出してもらわなければまともに生きていけない私達への援助を打ち切ると仄めかして来た。クルーウェル先生が気づいてくれなかったら食費やお小遣いもなかったくせに、権利を剥奪することだけ一丁前なのだから学園長は本当にいやらしい大人。

オンボロ寮だって未だ荒れ果てたままで他に構っている暇などないと言うのに…仕方なく詳細を聞けば、昨日話していた寮対抗マジフト大会の参加者である寮生が最近よく怪我をするのだと言う。怪我の原因は階段からの転落や火傷など様々。

学園長みたいに大会にウキウキして気が緩んだはずみで怪我でもしているのでは?と初めはグリムと大したことないのではと軽く話を聞き流していた。

しかし学園長いわく、例年よりも圧倒的に怪我をする生徒が激増した上に怪我をした生徒は揃って大会に出場予定の活躍が期待される選手であると言った共通点もあるんだそうだ。

 

(大っきな大会前に増える保健室利用者…その負傷者は揃いも揃って大会出場予定の有望な選手達…う〜〜〜ん、これは!)

 

「事件の予感がしますよ学園長!例えば大会を台無しにしたい真犯人がいるとか」

 

「察しがいいですね、幸緒くん。名推理です。ただ、事件とするには証拠がなにもない。全ての事故は人の目があるところで起きていてしかも目撃者は口を揃えてこう言うんです。『本人の不注意にしか見えなかった』と」

 

「おお…まさにミステリーじゃないですか…!」

 

こう気になる謎を提示されると解き明かしたくなる探偵心を動かされる私とは対照的に、グリムは全く関心がない様子で気のない返事で学園長の申し出をあしらった。

しかし学園長は狡賢くて汚い大人の筆頭、グリムが食いつきそうなネタを餌に次々と報酬の提案をしてくる。そして現在マジフトのご執心だったグリムはマジフト大会参加資格と言う餌にまんまと釣られ、私達はこうして学園長のお願いを聞いて調査に取り掛かることになったのである。正直学園長が約束を守ってくれる保証はないが、私は謎解きの方に興味があるし、学園長の依頼を達成すればこちらの要望も通せる可能性もあるし、正直マジフトには興味ないしグリムの承認欲求を満たすためだけの願いなど尚更どうでもいい。

 

とにかくそんな経緯を経て、使命を果たすべく保健室に踏み入れた私達に今さっき治療を終えたらしい足を真新しい包帯で巻いていている男子生徒とその付き添いの友人と目が合った。

 

「こんにち…ワッ、温玉先輩と一緒にいた…」

 

「ん?お前…監督生じゃねーか」

 

「麓の町以来だな」

 

偶然にも最初の調査対象者はハーツラビュルの温玉先輩と一緒にあの騒動で力になってくれた先輩達の内の2人だった。同時に町での騒動も思い出して少し気まずくて何とも言えない笑みが張り付いた顔のまま控えめにお辞儀した。

 

「その節はどうも…ヘヘッ」

 

「何だぁ?お前ら知り合いだったのか?なら話が早いんだゾ」

 

「あー…ね。あの、最近不審な怪我する生徒が多発してるんで監督生としてちょっと調査してまして。怪我した時のお話、伺ってもいいですか?」

 

スッと懐からメモとペンを取り出して二人へ視線をやればハーツラビュル騒動で共闘した仲でもあるおかげか、素直に頷いて語り出した。

 

「とは言っても、俺にもよくわかんねぇんだよ。コイツと話しながら歩いてて……気付いたら階段から落ちてたっていうか」

 

「ほう…?足がもつれたとか、何の前触れもなくですか?」

 

「うん。躓いたとか滑ったとかそういうカンジじゃなくて」

 

「勝手に身体がフワッと前に出たっつーか……うまく説明できねぇけど」

 

「ふむふむ。なるほど」

 

グリムが完全に理解ったような顔をして頷いているが、実のところ何もわかっていないのだろう。

しかし初っ端から妙な話だ。そば見ていた目撃者によれば当然のように彼は階段を踏み外していくし、当事者にまるで自覚ないとはますますミステリー…楽しくなってきたな!

 

「先輩方、お話聞かせてくださりありがとうございます!ご自愛くださいね」

 

「おう」

 

ペコリと情報提供してくれたハーツラビュルの先輩達に深々と頭を下げて、私とグリムは保健室を後に次なる調査対象者の元へ向かった。

このように走り出しは極めて順調であったが、しかしナイトレイブンカレッジの生徒は警戒心が強くて…話しかけたら即バトルに発展することもある。

現に2人目の調査対象は美意識高い系のポムフィオーレ寮の生徒であったが、グリムが不躾に問いかけたのがよほど気に入らなかったようでオネェ口調で怒りを露わにし、私の顔にペシっと手袋を投げつけて決闘を申し込んで来た。昔の少女漫画みたいな決闘の申し込みだなと…古さを感じながら床に落ちた手袋を拾い上げ、戦闘は暴力担当のグリムに任せた。

ハーツラビュルの修羅場を乗り越え多少は強くなったグリムだ。命懸けの実践経験のアドバンテージはかなりデカいだろうし、やたらと無駄のある艶やかな隙のある動きをする先輩方を1匹で圧倒してみせた。

 

「ふんっ。やるじゃないか……仕方ない。あの日のことを教えてあげよう」

 

どうやら実力を認められたらしく、手袋を投げつけて来た方の先輩が話す気になってくれたようだ。お手柄だぞ、グリム!と頭を撫でてやれば当然のようにドヤ顔。

そうして手袋先輩が静かに語り出そうと口を開いた瞬間、横にいた友人の方がずいっと視界いっぱいに割り込んで来て早口で喋り出した。

 

「あれは実験室でのことだ。薬を煮出してる鍋を急に彼が素手で掴んでしまい教室は騒然さ!しかも薬をひっくり返して机の上はびしゃびしゃ。僕は本当に驚いたよ!」

 

「全部キミがしゃべるのかい!?」

 

「おっ…おう…(勢いすご…新宿2丁目に生息してそう)」

 

「ふむふむ。なるほど」

 

ポムフィオーレ寮の生徒、漫才見せてくれるし、口調から行動まで中々に愉快な人達だなと思う私の傍でまたしても何も理解していないであろうグリムが腕を組んで頷いていた。

 

「お話聞かせてくださりありがとうございました。お大事に!」

 

手袋先輩に拾った手袋を返して私とグリムはその後も数人に話を聞きつつ、ある程度証言を集めた後に一旦オンボロ寮へと戻った。

バタンとドアが閉まると共に空気中に漂ったキラキラ舞うホコリを浴びながら、私とグリムはその場で揃っって思案中のポーズを決めて情報整理を行なった。

 

「なーんか、どいつもこいつもおっちょこちょいってカンジしかしねーんだゾ」

 

「ん〜…確かに要領を得ない感じなのよね、皆。でも揃いも揃って自覚ないってのも気になるじゃん?」

 

「そうかぁ〜?オレ様は気になんないんだゾ」

 

「ん〜…なんかつい最近似たような事案が身近にあったような…」

 

まるで考える気のないグリムであったが、私としては不注意にしては当の本人が怪我する前に少しも予兆を感じてないのも気にかかる。確かにぼんやりしているとタンスの角に足の小指をぶつけたり、しゃがんで入るような狭いとこで頭を上げてぶつけたりなどすることもある……結構痛いのよね。しかしそれは私のような気が散漫になりがちな人間ならばよくある話だけれど、今回の怪我人達は全員マジフトの期待の選手達である。大会前なら尚更怪我とかコンディションを気にしているはずだし、仮に避けられない怪我を負う状況下にあったなら咄嗟に受け身とか、怪我のリスクを下げる行動を取ると思うんだけれどもそう言った素振りもない…本当に怪我をするまで気が付かなかったというのはうっかりで済ませられることなのか?

どんなに質問内容を変えても同じ文言しか返さないグリムと対話しても推理は進みそうに無いので一人で黙々と考え込んでると、家のチャイムが鳴らされて早々に考えることを放棄したグリムが背後のドアを開けて来客を迎えていた。

突然の来客者の声はよく聞き覚えのある陽気なものでグリムの反応からも意外な来客では無いことが伺える。

 

「おーっす。あれ、グリムは機嫌が直ったみたいじゃん」

 

「なんだ、オマエか。今オレ様は忙しいから遊んでやるヒマはねーんだゾ」

 

「おっすー。忙しいのは主に私な?」

 

即座に結論を出して他の可能性を考えようともしなかったくせに、この獣ときたら息を吐くように嘘をつくのだから手に負えない。まぁ、グリムの発言を怪訝そうに小首を傾げるエースが信じるとは思えないけど。

 

「忙しい?宿題終わらねーの?」

 

「それは…まぁ、グリムは主にそれもあるけど。実はさ………」

 

 

 

***

 

 

 

「……ま、そうゆうことで学園長から使命を申しつけられたってわけ。ほんで証言集めの探索パートを終えて今は推理パートってとこ(オリオリ…)」

 

玄関で立ち話も何なので、腰を据えて話すべく私達はソファーのある談話室へと移動して忙しくしている理由をエースに伝えた。

 

「ふーん。不審な事故による怪我、ねぇ」

 

「でも話を聞いてるうちに全員がおっちょこちょいか、大会が楽しみで浮かれてるだけなんじゃねーかって思ってきたんだゾ」

 

「グリムじゃないんだから全員が全員同じ思考をしていると思うな。しかし不思議と共通点が見つかっても謎は深まるばかりだよ…(オリオリ…)」

 

「……つーか、さっきからお前は何してんの?」

 

「あーこれ?」

 

悩ましく唸る口元とは正反対に忙しなく動く私の手元を見て、気になって仕方ないエースはジロリと怪訝そうな目を向けてくる。

私は完成したそれを手のひらに乗せてエースに告げる。これは我が祖国、日本の伝統的な遊び…正方形の薄い色紙を折って自由に作品を作るその遊びの名はーー

 

「そう!折り紙っ!!雅な日本文化ってやつよ」

 

「オリガミ?へー、これがお前の故郷の文化ねぇ」

 

「紙一枚で色んな作品が作れるってわけ、素晴らしいでしょ。これ鶴さんね」

 

「なーんか……地味っ」

 

「紙なんて折って、腹の足しにもなんねーのに何がそんなに楽しいのかわかんないんだゾ」

 

「ふぁっっっっきゅーー」

 

我が国の文化を地味とつまらんで一蹴されて思わず発してはいけない呪詛が口の端からまろび出たが、気を取り直して私はせっせと鶴を量産した。

文化なのは理解したが何故今折り紙をと訊ねるエースに、私は考え事の最中は適度にリラックスできる作業をしている時の方が思考がまとまるため、ひたすらに鶴を折っていたのだ。推理ものの作品でそんなシーンがあったから真似てるだけともいう。

 

「で?何かわかったの?」

 

「全然わかんないんだなこれが」

 

「意味ねーー」

 

「子分はアホなんだゾ」

 

バチくそにエースとグリムに煽られて言わせておけば!と食ってかかろうと立ち上がった瞬間、バターン!と玄関から大きくドアが開け放たれる音が響き、ダダダダッと談話室に駆け込んできたデュースがとっても焦った様子で叫んだ。

 

 

「エース!大変だ!クローバー先輩が階段から落ちて怪我をしたって……!」

 

クソ緩い空気から一転して私達の間に途端に湧き出た緊張感が談話室を包んだ。

謎に怪我人が増えている最中ついに同じ寮で、しかもしっかり者のトレイ先輩が階段から落ちるなんていくら何でもタイムリーすぎる。とても偶然とは思えない…と視線を送ったエースも同様に不審に思ったらしく、グリムにも目配せすれば早々にお見舞いに行くぞと話は即座にまとまり、私達は揃ってハーツラビュル寮のトレイ先輩の部屋へ押しかけた。

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「先ーー輩っ!!大丈夫ですかーー!?」

 

バターンッ!と駆け付けた勢いに任せて部屋のドアを開けると、室内のベッドには存外元気そうなトレイ先輩と先に見舞いにいらっしゃってたケイト先輩がいた。

エースとデュースはケイト先輩に呼び名を合体させられたりと揶揄われる中で聞いたトレイ先輩の容態は松葉杖生活を余儀なくされるなど割と重症であるらしくて痛ましい気持ちになった。

そんな先輩の様子を見ておもむろにグリムが見舞い品に秘蔵のツナ缶を偉そうに押し付けていて、先輩は苦笑しながらも受け取っていた(優しい)。今までの付き合いからのイメージだと、ケチケチの食いしん坊のグリムが秘蔵のツナ缶を分け与えるなんて天変地異が起きるんじゃってほど意外すぎて驚きを禁じ得ない。何故なら一番近くで同居している私は享受したことないし、そんな優しさがあるとは微塵も感じさせない私へのクソ舐めくさった態度はどういうことなんだとちょっぴり怒りが募った。

 

「なんだいキミたち。怪我人の部屋にどやどや集まって」

 

「うおっ!リドル先輩!?」

 

「ふな゛っ!怒りんぼリドル!」

 

「怒りんぼって。キミたちがルール違反をしないのなら怒らないよ」

 

「え、へへっ…そ、そっすか…うるさくてすんません」

 

静かに部屋に入ってきていたリドル先輩は甲斐甲斐しくトレイ先輩の世話を焼こうとして、あの一件から反転して寮生を死ぬほど大事にするようになったのか!?と驚いたがしっかり理由があった。先輩達の話を聞いてるとどうもリドル先輩が階段で足を踏み外して落ちそうになったのをトレイ先輩が庇ったことで怪我をしたらしい。

例の事件と全く同じかと思いきや、今まで集めた証言に照らし合わせると被害者と同じ状況に当てはまるのは怪我をしてない以外はリドル先輩の方であり、足を踏み外したリドル先輩をトレイ先輩が助けたことで結果が変わったように思う。そして完璧超人のロボットみたいなリドル先輩がうっかり階段から落ちるなんて…ないとは言えないが、このタイミングで起こるあたり偶然とはとても思えない…つまり、これはただの事故ではない!何者かの仕業だろうと探偵さながらに頭の中で勝手に推理をしてると背後からブレザーの裾を軽く引かれ、振り返ると何か言いたげなエースと目が合った。

気になることでもあるんだろうが、まだ会話が続いてるので遠慮でもしてるのかと私は少し後ろに下がって耳を寄せた。

 

「なぁ、これってさ……」

 

「私も例の件だと思う。そんでこうなるとやっぱり偶然じゃないと思うの…先輩の無念を晴らすためにも事件の真相を突き止めないと」

 

「トレイ先輩が死んだみたいに話進めんのやめなさいよ」

 

エースとそんな風にボソボソと小声で話してる間にそろそろトレイ先輩を休ませようと解散の雰囲気が漂ってきた。

 

「先輩、私からもちょっとしたお見舞い品を…どーぞ」

 

皆、部屋を立ち去ろうとするので慌ててトレイ先輩に駆け寄りそっと見舞い品を先輩の手の中に握り込ませた。

 

「なんだ、幸緒もわざわざ用意してくれたのか?そんな気を遣わなくて…も…?…???…これは?」

 

自分の手の中でもそりと跳ねたその見舞い品を見てトレイ先輩のいつものにこやかな微笑みがぎこちなく固まった。

 

「鶴です。折り紙の」

 

「オリガミ?」

 

「はい。私の故郷の文化なんですけど、長寿祈願、病気や怪我が早く治りますようにって、折り紙一枚一枚に想いを込めながら折って千羽の鶴を繋げ合わせたものをお見舞い相手に贈ったりするんですよ」

 

ここぞとばかりに我が国、日本の奥ゆかしい伝統文化をわからせてやろうと私は自信満々に折り紙の啓蒙を始めた。1年ズはぽかんと間抜け面で先輩の手にある鶴を見ていたが、3年生であるリドル先輩とケイト先輩はほぅ…と頷いていて好ましい反応を返してくれる。

 

「へぇ…聞いたことのない変わった文化だね。興味深いじゃないか」

 

「でも幸緒ちゃんのその鶴、千羽もいなくない?それになんか…」

 

「はい…さすがに悠長に千羽も折ってる時間なかったので…この鶴はトレイ先輩の怪我が治って元気に走り回れますようにと願いを込めた『足の生えた鶴』です!」

 

デーーンとトレイ先輩の手にある横いっぱいに羽を広げ、細い足を蛙のように股を開き自重を支える健気な鶴さんを指して、内心私は自分の頭の回転の速さを褒め散らかしていた。グリムが見舞い品を持っていくと言い出した時、私も何か用意しなければと慌ててた時に思いついたのがこれだ。ちょうど患部も足だし、天才だな!私っ!

 

「足の生えた…鶴………!?」

 

唐突な異文化にトレイ先輩もびっくりドッキリの驚愕の表情である。

 

「さっきオンボロ寮で折ってたやつと形違くない!?すっげーガニ股なんだけど……あとなんか絶妙にキ……可愛くねー!」

 

「キモいんだゾ」

 

「おいエース!それにグリム!幸緒が心を込めて折ったものに…さすがに…そのっ…失礼だぞっ!」

 

「本当だよ!あれはデフォルトの鶴さんだから。これ派生系なの。…こうしてテーブルに置くと、なんと自立します!」

 

「お、おう。そうか」

 

「さらにこうして羽を持って揺らすと…踊ります!」

 

「ふっっ!…そ、そうか」

 

シュールな動きを見せる足の生えた鶴に困惑気味だったトレイ先輩は肩を震わせながら笑いを堪えていて、とりあえず喜んでもらえたと解釈した私は大変満足した。

 

「ちなみにトレイ先輩とリドル先輩とケイト先輩の3色カラーです。こうして羽を連結すると仲良く三羽とも踊りますんで、暇を持て余した時にでも遊んでくださいね!」

 

「ぶふっ!…ふはっ…はははっ!わ、わかった。ありがとう、幸緒。嬉しいよ」

 

もは若干涙目になりながらヒィヒィ笑うトレイ先輩に緑赤オレンジの鶴を渡して、私達は先輩の部屋を後にした。ちょっと思っていた反応とは異なるが、先輩のことを元気付けられたようでよかった。

 

そのまま流れでハーツラビュルの談話室に通された。

深い赤色の薔薇模様の壁紙、白黒チェックの可愛いタイルの床の上にフワフワもふもふの赤い絨毯、広々とした空間に飾られるお洒落な家具はハーツラビュルらしさ全開で可愛らしい限りだ。そして如何にオンボロ寮が酷い有様なのかとまざまざと突き付けられて泣ける。埃が舞わないなんて…いい環境だな…いや、それが普通なんだよな。

無駄に辛気臭い嫉妬心は隅に置いといて、さて今後はどう調査したものかと考えていると、ふとリドル先輩と話していたケイト先輩と目が合い、ニッコリと微笑まれてついつい笑い返してしまう。

 

「幸緒ちゃんたち、トレイくんの怪我についてなにか知ってるんじゃない?」

 

「ふあっ!?」

 

お互い違う会話してたから聞こえてないものと思っていたが、ケイト先輩は結構地獄耳なのか私とエースの会話をしっかり把握しているようだった。

どうやらケイト先輩達もトレイ先輩の怪我の状況に違和感を持っていたようだ。

確証がない私の妄想推理を聞かせて良いものかと一瞬悩むが、目の合ったエースが何故か自信満々に頷くから学園長に依頼を受けた件から先輩達と何も知らないデュースにこれまでの話をした。

 

 

 

***

 

「なるほど、学園長がそんなことを……」

 

「やっぱりね。グリちゃんたちがただお見舞いに来るわけないと思った」

 

「いや、純粋な気持ちで来てましたよ!…まぁ、4割くらい下心もありましたけどぉっ!」

 

「ほらね」

 

ちょっと人間性を誤解されてるのが腑に落ちないが、どうやらリドル先輩はトレイ先輩の一件を不審がってケイト先輩と共にしっかり調査をしていた。そして私とグリムと同じく有力選手達が揃って怪我をしているという情報を得ていた。わかってたならさっき私に語らせてた時間なんだったん?得意げに語ってたの、ちょっと恥ずかしいんだが。

 

「確かにボクはあの時足をかけられたり背中を押されたりはしていない。でも……なんていうか、身体が勝手に動いたような感覚があった」

 

「他の怪我したヤツも似たようなこと言ってたんだゾ!」

 

「故意に選手候補を狙った犯行とみていいと思う」

 

「マジカルシフト大会でライバルを減らすために強そうな選手を狙って事故らせてるってこと?」

 

「世界中が注目する大会だ。試合での活躍が将来のキャリアに繋がる以上手段を選ばないヤツがいても不思議じゃない」

 

「そっか…大会を台無しにしたい方かと思ってたけど、そっちの方が可能性が高いのか」

 

そうなると犯行に及んだ犯人から外部犯の可能性はまずなくなる。ナイトレイブンカレッジでマジフトに関わりある者、一選手…つまりどっかの寮生だというのは確定だろうか。

 

「んー。にしても、不思議だね。風の魔法で後ろから押されたりしたワケじゃないんでしょ?」

 

「うん。衝撃で落ちたわけじゃない」

 

「授業中に怪我した人もいたみたいだしどういうことなんだろ?」

 

その犯行のあたりがホントフワフワしていて全く推理が捗らないのよね…つーかミステリーもので魔法を使ったトリックなんてもうズルじゃん!本当に真相究明出来るのか不安だ。

 

「それは犯人を捕まえたらゆっくり吐かせればいいさ。そんなわけで、犯人捜しにボクたちも協力するよ」

 

「あ、あざーっす……えっ!?マジでっ!?」

 

リドル先輩達、流れるようにパーティー入りしてくるから一瞬スルーしそうになったがまさかの助力で私とグリムは大いに驚いた。何せ前まで敵対してた相手だ。

 

「ほぁっ?オマエらが協力?なに企んでるんだゾ。特にケイト!」

 

「人聞き悪いなあ。ウチの寮生がやられたんだから当然でしょ」

 

「まぁ…そうですよね。ハーツラビュルは複数怪我人出てますもんね」

 

「そういうことなら、オレらも犯人捜し手伝うぜ」

 

「クローバー先輩のお礼参りッスね!!」

 

「うわっ、急にどうした?」

 

リドル先輩やケイト先輩に乗っかって急に、やりますか!感を出してきたエース達にリドル先輩もちょっと困惑していたが、ケイト先輩がずばり怪我で空いた選手枠を狙っているなと言い当てるとエースはペロリと舌を出し、デュースは慌てて言い訳を述べていたがわかりやすく動揺していて下心がダダ漏れだ。まぁ、善意で動くタイプではないのはわかりきっていたがこの学園の生徒って本当にとことん自分本位だなとしみじみ思う。

 

それから始まった作戦会議でリドル先輩が犯人を捕らえるためにも後手に回らず、こちらから仕掛けようと提案してきた。

一体どうやってと不思議がるグリムにリドル先輩が提示した作戦は次に狙われそうな有力選手を陰ながら見張って現場を押さえようという刑事ドラマの定番、張り込み調査だった。

ケイト先輩の調べによって次に狙われそうな生徒のリストアップもすでに完了していると来た上に、SNSを活用した先輩の聞き込み調査の成果をマジカメで情報共有もする有能さには脱帽だ。ツイ廃でネットの海に顔写真等の個人情報を無断で垂れ流すだけの人じゃなかったんだなと素直に見直した。

私とグリムはマジカメを所持していないため、エースやデュースに画面を見せてもらいながら、ありがたく情報のアップデートを行った。

そうして計6名にもなる探偵団を結成した私達は張り切って駆け出すグリムを先頭に、早速調査に乗り出す。

そんな長い長い1日が始まったのであった。

 

 

 

 

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