ゲームな世界に転移したけどマッタリ生きたい   作:ゆたにぃ

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書きたかったエピソードの一つ、手漕ぎポンプです。


004 ポンプ

目を覚ましたら知らない・・・いや、宿り木亭の客室か。

やはり昨日の事は夢ではなかったらしい。

ぼさぼさになった髪は軽く手櫛で撫でただけで整った。

昨晩は体も拭かないで寝てしまったため少しベトベトした感じがする。

前世ではよくあることだったが、今の見た目的に無いなと思い体を洗うために井戸まで移動することにした。

 

「あ、エヴァさん。おはようござます。」

 

井戸にはサーシャが居て水汲みをしていた。

 

「うん、おはよう。朝から大変だね」

 

木製の車の付いた台に乗せられた大きな瓶にせっせと水を組み入れている。

額には結構な汗がにじみ、既にかなりの回数水をくんだようだ。

 

「このあたりにポンプってないの?」

 

昨日考えていたことをサーシャに聞いてみると。

 

「ポンプって何ですか?」

 

どうやらポンプは存在しないか、少なくとも一般の家庭には知られていないものの様だ。

 

「えーっとね、前に俺・・・私が居た所にあった楽に水をくむための道具なんだけど」

 

「へー、そんなものが有るんですねぇ、ウチにもあれば水汲みが楽になるんですけどね」

 

水を汲みながらもニコニコと話に相槌を打ってくれる。なんて可愛い娘さんなんだ!

 

「あ」

 

ウォーターボールの魔法を使えば水汲みしなくていいんじゃないか?

 

「サーシャちゃん、ちょっと離れてて・・・魔力を弱く・・・弱く・・・【ウォーターボール】」

 

ボシャーーーン

 

瓶の上に瓶の倍はあろうかと言う巨大な水の球が出来上がり、自由落下。

入りきらなかった分、と言うは7割近くが周りに飛び散ってしまった。

むろん、私もサーシャも水浸し、美女がビジョビジョと言うわけである。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

気まずい沈黙が流れる

 

「ふふ、あははははは」

 

「ふふふ」

 

なんか可笑しくなって二人して笑い出してしまった。

 

 

 

 

ひとしきり笑った後

 

「エヴァさんって魔法が使えたんですね」

 

「えーっと、魔力はかなり多いらしいんだけど、誰かに習ったわけじゃないから

 今みたいに加減がまだうまく行かないんだけどね」

 

とりあえずごまかしておいた。

 

「そういえば、エヴァさんって街の外からいらっしゃったんですよね?フリーデンには何をしに?」

 

「仕事を探しにね。」

 

二人で女性用の小屋に入りタオルで体を拭く。

サーシャの目線が俺の胸元をチラチラとみてくる。

そして俺もサーシャの胸元を・・・・今なら女同士だから問題なし!

 

「お仕事と言うとやはり冒険者ですか?」

 

「え?なんで?」

 

「だって、魔導士なんですよね?魔導士と言えば冒険者の中でも人気職ですよ!」

 

「うーん、危ないことはしたくないなぁ、どこかに家でも買ってお店でも開こうと思って」

 

「そうなんですか、何のお店ですか?」

 

「まだ決めてないんだよね、近いうちに決めるつもり」

 

 

 

サーシャに持って来てもらった服に着替え、濡れてしまった服は物干し場に干してもらうことになった。

かなり時間を食ってしまったが、普段の瓶に水を汲むのが終わる時間と変わらなかったらしい。

やはり手漕ぎポンプは何としてでも作ってあげよう。

 

朝食時、サーシャに近所の鍛冶屋を何件か教えてもらった。

さっそく手漕ぎポンプを作成するための鍛冶場を借りるためだ。

スキルが有っても場所と道具が無ければどうにもならない。

道具一式に関しては空間倉庫に全て入っているが、宿屋の中庭にいきなり

炉や金床が現れたら騒ぎになりかねない。

 

宿屋を出て人気のない場所に移動すると

ジェントルにキャラチェンジする。

流石にエヴァのまま鍛冶屋に行っても門前払いされるのが関の山である。

ジェントルの服装も鍛冶屋使用に着替える。

空間倉庫からの着替えだと一瞬だ、裸を見られる心配はない。

ナイスミドルの裸の需要に関しては考えないでおこう。

 

 

3件ほど廻ってみたが初めて見るやつを鍛冶場には入れられん!との事で入れてもらえなかった。

サーシャに教えてもらった最後の1件、店の名前はアカイザーと言うらしい。

その場所にたどり着いてみると今までの中で一番小さい工房だった。

ここはサーシャと同い年の娘がいるらしく、幼馴染らしい。

 

「ごめーん、どなたかいらっしゃるか?」

 

店の扉を開け、中に入りながら声をかける。

 

「ハーイ」

 

店の奥から女の子の声が聞こえた、サーシャの幼馴染の子だろう。

店は入口から6mほどが店舗、その奥が鍛冶場になっているようだ。

現れたのはススで所々が黒くなった女の子だった。

 

「いらっしゃいませ、ナイフから剣、お鍋まで何でも作るアカイザーへようこそ」

 

元気いっぱいである。

金髪のショートカットでブルーの瞳をしたボーイッシュな感じの娘だ。

 

「実は鍛冶場を貸していただきたくて、勿論料金は払う。どうだろうか?」

 

「いいですよー」

 

即答だった。

今までの鍛冶屋はいったい何だったのだろう・・・

 

「いや、親御さんは?君がそんな簡単にOKを出して大丈夫なのかい?」

 

「親父はぎっくり腰で半引退中だし、実質今は私がここの店主ですから」

 

何やら複雑そうな家庭環境の様だ。貸してもらえるなら貸してもらおう。

 

「そうか、私はエ、じゃなくて、ジェントルと言う。前払いでこれだけ払おう」

 

懐に手を入れ、空間倉庫から銀貨を5枚ほど取出し手渡す。

 

「え!?こ、こんなにですか!?」

 

驚くのも無理はないかもしれない、日本円に換算して約5万円ほどだろう。

 

「ああ、それと材料と道具も持込だ」

 

背中に担いでいた袋を見せる。

 

「は、はぁ、ではこっちです」

 

奥の工房へと通される、炉は2つあるようで、片方には火が入っていなかった。

どうやら今ちょうど何かを作成していたようだ。

 

「奥側の炉を使ってください。手前のはウチが今使ってましたので」

 

見ると何本かのナイフをちょうど作っている最中のようだ。

鍛冶スキルのおかげか品質がなんとなくわかる全てのナイフが

【ナイフ-1】

となっている。

ゲーム時の店売りナイフのすべてが+-0だったことを考えると

品質的には少し粗悪品と言ったところだろう。

 

「このナイフは君が?」

 

「あ、はい、最近やっと形が・・・いや、何でもないです」

 

あ、目をそらした・・・

この品質だと鍛冶スキルは12~13位、DEXは50位か、ほぼ駆け出しの何を作ってもスキルが上がる辺りだろう。

 

「では使わせてもらう」

 

空いている方の炉へと移動し、袋から材料を取り出す。

鉄とその他モンスター素材、さびにくい鉄をイメージしたら必要な材料がパッと思い浮かんだ。

おそらく鍛冶スキルの影響だろう。

 

一度鉄を溶けるまで加熱し、モンスター素材を投入。型に流し込みインゴットの形に一度戻す。

そこからまた加熱しながら形を整えつつ不純物を取り除く作業に入る。

またしても鍛冶スキルの恩恵かどの部分をどのくらいの力でたたけばよいかがわかる。

さらにDEX、器用さのおかげで寸分違わぬ加工ができる。

部品一式を作るのに全てが出来上がるのに2時間かからなかった。

材料はそろっていたとはいえ、全く形のないところからこんなにも早く作れるとは思ってもいなかった。

あんな長いパイプ作るのに15分ってどういう事なの?

これは思った以上にスキルとステータスの恩恵は高いようだ。

 

「す、凄いですね、ジェントルさん。」

 

いつの間にか自分の作業を終えて・・・諦めてこちらの作業を見に来ていた。

 

「まぁ、鍛冶には自信が有る、えーっと、すまん、まだ名前を聞いていなかったな」

 

「あ、すいません、ウチはニキーって言います。」

 

「そうか、ニキーか。」

 

「ジェントルさん、それなんですか?見たことないんですけど」

 

手漕ぎポンプのパーツ一式を指さして言う、やはり手漕ぎポンプは存在しないのだろう。

 

「これは手漕ぎポンプと言ってね、井戸から簡単に水を汲む道具なんだよ」

 

「え!そんな道具が有るんですか!?」

 

「ああ、サ、じゃなくて娘に頼まれてね、宿り木亭に取り付けてほしいと。」

 

「サーシャの所に?いつ?いつ取り付けるんですか!?」

 

「今から行くつもりだが、ニキーも・・・って店番が有るか」

 

「いいです、どうせお客なんて来ないし」

 

オイ

 

 

そんなわけで二人で宿り木亭に移動することになった。

見た事も無い道具を担いで歩く俺を周りの人は怪しげな目で見てくるが

ニキーは全く気にする様子はない。

俺の心はすでに折れかけていると言うのに・・・

 

 

そんなこんなで宿り木亭に到着した。

 

「ごめん、サーシャ殿はおられるか?」

 

目の前にサーシャがいるが今はジェントルなので知らないふりをする。

 

「あ、はい、私です。お客様は?」

 

「ああ、俺はジェントル、エヴァの父だ」

 

「は?はーーーー!?」

 

 

サーシャが落ち着くのを待ってから説明を始めた。

エヴァに頼まれて手漕ぎポンプを作ってきた事。

 

「はぁ・・・本当にあったんですね、そんな道具」

 

「ああ、さっそく取付させてもらってもよろしいか?」

 

「はい、父と母には私から説明しておきますので」

 

井戸に案内され荷物を置く。

 

まずはロープをたらし井戸の深さと水の量を調べる。

水はそれなりにたまっているようなのでそこの部分と水面の中間になるようにパイプを切断する。

井戸の半分を塞ぐように蓋を作りそこにポンプのパーツを取り付けていく。

取付には20分とかからなかった。

 

まずは呼び水として少しポンプに水を入れる。

あとはひたすらポンプをこぐだけでボコボコとパイプの中の空気が抜けていき

最終的にはポンプから水が流れ出した。

それを見ていたサーシャとニキーは「おーーー」と歓声を上げた。

 

「使い方は今見てもらった通りだ。最初に少し水を入れたのは呼び水と言って・・・」

 

使い方を詳しく説明すると二人はワイワイと騒ぎながらポンプを試し始めた。

 

「では私は帰る。エヴァには説明しておくよ」

 

水でビジョビジョになった二人に挨拶をすると「ありがとうございましたー」と返事があった。

 

また人気のない場所でエヴァにキャラチェンジして宿に戻ることにする。

チェンジした瞬間ズシっと前荷重になる、やはり重い。

 

「サーシャ、ただいま。今そこで父さんに会ったよ」

 

おかえりなさーいと水しぶきを上げながら走ってくるサーシャ。(美女がビジョビジョ)

なんだあの巨大な果実は!と目を見開くニキー。

俺はそんな二人を見ておかしくなって笑い出すのだった。

 

 




なんと二つ目の感想もいただきました。
感想を貰うとテンション上がりますね、ありがとうございます。
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