この話は一番書いてみたかった話です。
ではどうぞ。
宿にポンプを設置した晩、夕食を食べていると食堂へ門番のアレクがやって来た。
「エヴァさん、やはりこの宿に決めましたか」
「ええ、可愛い看板娘にお迎えされましたからね」
どうやらこの食堂はアレクよく使うお店の様だ。
しばらくアレクと話をしているとサーシャがやって来た。
「アレクさん、エヴァさんを紹介してくれたんですよね、ありがとうございます。」
サーシャは仕事がひと段落したらしく休憩を貰ったらしい。
「ちぇ、アレクのヤツ上手くやりやがって」
「俺も門番になろうかな」
「お、俺のアレクさんを・・・」
他の客からアレクへの嫉妬の視線が集中する、
若干1つ寒気のする支線が俺に注がれている気もするが気にしたらダメな気がする。
「あれ?アレクさん、その剣・・・」
サーシャの声で俺もアレクさんの剣を見る。
鞘に入ったまま中ほどから少しくの字に曲がっている、おそらく鞘を壊さない限り抜けないだろう
「ん?ああ、今日ちょっとね」
詳しく話を聞くと、門の所で商人の馬車が荷崩れを起こしたらしい、その時近くにいた商人の娘を
助けたそうだ。その時、二人は無事だったが剣が荷物の下敷きになってしまったそうだ。
「ハハ、村を出る時に親父にもらった剣なんだけどね、そろそろ買い替えかな・・・」
ちょっと悲しそうにハハと笑うアレク、なんかこう、胸がキューっとなる。
身体が女性になっているせいか、ちょっと心にも変化が有るのかもしれない。
実際3/5は乙女成分でできた体になってしまっているわけだし、脳に何の影響もないとは言い切れない。
「アレクさん、その剣貸してください。私の父は鍛冶が出来ますので頼んでみます。さすがに鞘は新しくなりますけど」
気づいたときにはそういっていた。ああ、なんかBLのタグも付けた方がいいのかな(メタ発言
「え、お父さんですか?エヴァさんのお父さんってこの街に?」
「ええ、私と同じ日に来たジェントルが私の父です」
「え!!??あの人が??!!」
どうやら覚えているようだ、とにかく剣を貸してくださいと強引に受取り、2~3日で返しますと伝えた。
サーシャはニヤニヤとこちらとアレクを見ていた。はやまった事をしてしまったかもしれない・・・
翌日、俺はジェントルにキャラチェンジをしてニキーの店【アカイザー】へと来ていた。
「ごめーん、ニキー殿はおられるか?」
ハーイと声がしてニキーが出てくる。
「ジェントルさん、いらっしゃい、今日は?」
「また鍛冶場を貸してくれんかね?」
そういいながらまた銀貨を5枚差し出す。
「い、いえいえ、今日はただでいいですよ。前回もらい過ぎだって父さんに怒られまして」
「そ、それはこちらとしても申し訳ない・・・」
頭を下げながら鍛冶場へと通してもらう。
「今日は何を作るんですか?またポンプですが?ウチも欲しいです」
「はは、作り方は教えるから自分で作ってみるといい、それと今日はコレだ」
そういいながら曲がってしまった剣を見せる
「これはまた・・・ん?どこかで見たことが有るような」
「門番のアレク殿の物だ。事故にあい曲がってしまったそうでな、またエヴァに頼まれた」
炉に火を入れながら今日の獲物の説明をする。
鞘を割り中の剣を確かめる。
【鋼の剣 HQ+1】
鋼の剣のハイクオリティ品だった。しかもプラス1までついている。
武具に関しては高品質になると性能が上がる。
品質はNQ(ノーマルクオリティ)HQ(ハイクオリティ)と上がり
さらに+1、+2と付くと性能が上がっていく。
鋼の剣を例に挙げると
NQ 攻撃力12
HQ 攻撃力15(+3される)
HQ+1 攻撃力16
となる。+2では17とプラス分そのまま加算されていく。
NQ+3とHQが同性能となる。
ゲーム時代にいろいろな武器を作っていたが
鋼のつるぎにはHQで+10までつけることが出来た。
攻撃力25である。
それは店売りで買える攻撃力をはるかに超え、
レアドロップ武器のNQ品なら超える性能である。
閑話休題
鍛冶のスキルで鑑定して見ると、曲がった部分が既に金属疲労をおこしており、
普通に打ち直した場合、いつかそこからポッキリと折れてしまうことが判明した。
「これは一度溶かして打ち直さないと危険だな・・・」
炉の温度を上げ、さっそく作業に取り掛かる。
出来るだけものと素材のみで修復したかったがこのままでは少し短くなってしまう。
手持ちの材料から同じ鋼を取り出し少し足す。
昨日も感じたがゲームとは違う実際の炉の熱さ、ハンマーの重さに感動しつつ作業を進める。
後ろではニキーが真剣に俺の作業を見つめている。
3時間ほどでひと振りの剣が完成していた。
量産するつもりならおそらく1時間で1本は行けそうだが、丁寧に作成した。
そして完成した剣の能力値
【鋼の剣 HQ+35】
ぷらすさんじゅうご
基本性能と合わせて攻撃力50である。
剣士であるレイがソロでエンシェントドラゴンを倒した時の装備が
ドラゴンスレイヤー+3、ドラゴン相手の場合のみ攻撃力が63になる。
ちなみにドラゴンからの超激レアドロップで、プラス付なんてゲーム内でも何人が持っていることか・・・
それに匹敵する武器という事だ、さらに言おう。
武器にはエンチャントが出来るのだ!
また説明になってしまうがエンチャントとは道具に付加効果を付ける魔法である。
ドロップ品であるスクロールを使用してエンチャントスキルで付加するわけだが、
NQで1つまでエンチャントが可能。
HQの場合は+0~+4までが1つ、+5で2つ、+10で3つと増える。
NQ品は+10だろうと1個までだ。
さて、今回の武器、HQ+35
7個・・・
さて、何をエンチャントしよう、こうなればトコトンだ!
自重?そんなもの課長にくれてやったわ!
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後悔はしていない。
【鋼のつるぎ HQ+35】
攻撃力増加+20
物理防御力増加+20
魔法防御力増加+20
HP回復+20
状態異常耐性【無効】
自動修復【大】
使用者限定【アレク】
攻撃力が70になりましたとさ。(涙目
他の能力は察してください。
一つだけ補足すると使用者限定は別の者が使うと攻撃力が0になるのと、
自動で持ち主の元に戻る能力である。
ゲーム中のアイテムロスト防止の保険エンチャントだ。
実際は成功率は低いのだが、そこはINTが高いからだろう。普通に成功した。
と言うか能力のプラス値もおかしい。
俺は考えるのを止め、大工スキルで鞘を作成しニキーの礼を言って店を出るのだった。
ニキーside
ウチは今日、神の御業を見た。
昨日やって来たジェントルさん、その人が今日も来て鍛冶場を貸してくれと頼んできた。
昨日のポンプ?を作る時点で只者ではないのは分かっていた。
しかし今日、剣を打つ作業を見て只者ではないどころの話ではないと実感した。
曲がった剣を溶かし素材に戻す動作、素材から剣に打ち上げていく一連の流れ
剣に命を吹き込んでいく作業の数々。それはまるで世界の成り立ちを一から見ていくような
そんな錯覚さえ覚えてしまった。
そして完成した剣、私は見てしまった・・・まがいなりにも鍛冶屋の娘だ、鍛冶スキルによる
武器の鑑定くらいはできる、それなのにだ【鋼の剣 HQ+・・】
見ることが出来なかったのだ。
・・だ、つまりは最低でも二桁、伝説の鍛冶屋と呼ばれる存在が+10と言う剣を残している。
その剣は今は王城の宝物庫へと厳重に保管されていると聞く。
「世話になった、また寄られてもらう」
そう言い残し工場を出ていくジェントルさんをウチは茫然と見送ることしかできなかった。